新東京国際空港公団民営化に関する覚書

 国、千葉県、成田空港圏自治体連絡協議会を構成する市町村及び新東京国際空港公団(以下「四者」という。)は、新東京国際空港公団(以下「公団」という。)の民営化に当たり、以下のとおり確認する。

1、成田空港については、多くの農民の方々から貴重な土地の提供を受けるとともに、様々な犠牲を伴いながら建設が進められてきたという過去の経緯を踏まえ、また、内陸空港であることに起因する騒音問題等の環境問題の大きさに配慮し、地域と空港の共生を実現するために行われてきた様々な取り組みが引き続き確実に実施されるよう、環境対策・共生策の適切かつ確実な実施が確保されることが不可欠である。

2、このため、公団の民営化に当たって、国及び特殊会社の母体となる公団は、成田空港問題シンポジウム、成田空港問題円卓会議、「地域と共生する空港づくり大綱」等におけるこれまでの約束事項を引き続き遵守することを改めて約束する。

3、また、四者は、今後とも、環境対策、地域振興策、空港建設・運用等に係る問題について、地域と空港の共生を理念として、話し合いに基づき、相互に協力して対応していくものとする。

4、平成14年12月に、千葉県及び成田空港圏自治体連絡協議会を構成する市町村から提出された要望事項については、別紙のとおり対応することとし、現段階で結論を出せない問題については、引き続き、誠実に協議することとする。

5、現在の環境対策・共生策は、現行の新東京国際空港公団法の規定に基づいて実施されているが、今般の民営化のための法案(以下「特殊会社法案」という。)においては、環境対策・共生策を事業の範囲として現行法以上に明確かつ詳細に定めるほか、空港周辺の住民の方々の生活環境の改善について新たに配慮規定を設け、さらに、国は環境対策・共生策の実施について必要があると認めるときは監督上必要な命令を行うこととしており、これらの規定により、現在の環境対策・共生策の実施を担保していくものとする。特殊会社法案中のこれらの規定は、特殊会社が、事業の範囲として規定された事業の実施義務を負うとともに、地域の生活環境の改善に関して地域関係者との意見交換に努めなけれぱならないということも意味している。

6、国が特殊会社法案に係る政省令案を作成する際には、その内容について四者で事前に協議するものとする。なお、その際、国は、環境対策・共生策に係る特殊会社法及び政省令中の規定に関する解釈適用の考え方を、併せて示すものとする。

7、なお、特殊会社法案は、公団を国全額出資の特殊会社に移行させるものであり、将来完全民営化を行うときには、改めて国が新たな法令案を作成することになるが、その際には、その内容について四者で事前に協議し、必要があろ場合には、改めて覚書を結ぶものとする。

平成15年2月28日

国土交通省航空局長 洞 駿
千葉県知事 堂本暁子
成田空港圏自治体連絡協議会
成田市長 小川国彦  富里市長 相川義雄  大栄町長 佐藤末勝  多古町長 土井正司  下総町長 可瀬 力  芝山町長 相川勝重  横芝町長 賓川堅司郎  松尾町長 古谷 淳  蓮沼村長 浪川瀞一  
新東京国際空港公団総裁 黒野匡彦

(別紙)
1、従来の約束事項を継続遵守するもの
 
以下の事項は、騒防法・騒特法等に基づく環境対策等として、また、円卓会議・共生大綱における約束事項として、従来から国・空港公団が実施しているものであり、今後とも継続して遵守されることを改めて確認する。

(1)滑走路計画に関する事項
・話し合いによる本来計画の2500メートル平行滑走路整備
・横風用滑走路建設は平行滑走路完成後改めて地域社会に提案

(2)運用等に関する事項
1)運用
・発着回数20万回/年を限度(騒音対策は22万回をべ一ス)、発着回数増加については地元と協議
・滑走路運用時間(6時から23時まで)
・深夜便運航制限(22時台A、B滑走路とも10便/日以下)
・飛行コース・高度(直進上昇・降下、離着陸以外の県内通週高度6000フィート以上)

2)環境
○監視体制の整備等
 ・騒音測定・調査(公団測定局の設置・管理)
 ・飛行コース監視システム
 ・大気汚染対策等(航空機、空港内営業車両等)
 ・低周波音対策

(3)騒音対策等に関する事項
1)防音工事助成
○住宅防音工事等・初回防音工事(空調機を含む)
 ・防音工事再助成(騒特法防止地区内)
 ・防音工事再助成(市町事業の支援:騒特法防止地区を除く騒防法第1種区域内)
 ・空調機更新、再更新(設置後各々10年)
 ・公団補助対象外費用(共生財団事業)(きめ細かな騒音対策:隣接区域の住宅防音工事、サッシ部品交換等)
 ・防音工事施工方法の改善(サッシの軽量化等)
 ・直下対策事業(空調機設置補助)(町村事業への支援)
 ・移転再建防音工事(市町事業の支援:騒防法第2種区域及び騒特法の防止特別地区から騒防法第1種区域及び谷問地域に移転した住宅の防音工事)
 ・生活保護世帯空調機稼働費補助(市町村事業への支援)

○谷間対策事業(市町事業の支援)
 ・初回防音工事(空調機を含む)
 ・防音工事再助成
 ・空調機更新(設置後10年)

○学校等防音工事
 ・初回防音工事(空調機を含む)
 ・空調機更新(設置後15年)

○共同利用施設
 ・施設整備
 ・空調機更新(設置後15年)

2)移転対策
○移転補償等
 ・建物等の移転補償
 ・土地の買入れ
 ・集団移転対策(代替地買入、造成)

○転業者対策(用地提供者に対する転業対策)

3)落下物対策の徹底(洋上脚下げ・点検整備等)

4)電波障害対策等
 
・受信障害対策(個別・共聴・共同利用施設)
 ・中継局等の維持管理デジタル化への対応
 ・NHK受信料補助

5)発生源対策等
 
・航空機の低騒音化
 ・消音施設の整備(エンジンテスト等営業騒音の低減)
 ・防音林、防音堤の計画的整備

(4)地域振興等に関する事項

○周辺対策交付金制度の継続・充実

○地域振興連絡協議会、成田空港周辺地域共生財団など環境対策・共生策等の実施主体となっている団体のメンバーとしての活動

○交通アクセス整備推進と協力
 ・成田新高速鉄道への国庫補助の確保
 ・特殊会社から成田新高速鉄道への負担
 ・芝山鉄道延伸の検討
 ・首都圏中央達絡自動車道
 ・北千葉道路・空港環状・放射状道路

○国内線網の充実

○移転跡地等の有効活用等
 ・移転跡地の適正な管理
 ・移転跡地にかかろ自治体への無償貸付の継続
 ・多機能型農業公園事業への協力
 ・里山の整備
 ・騒特法に基づく施設整備費補助

○国際複合物流基地事業への協力

○県・市町村等が行う地域振興事業への支援・協力

2.環境対策・共生策の充実等について今後協議するもの
 
以下の事項は、従来から実施している対策のさらなる充実等に関するものであり、空港周辺地域においては将来にわたった騒音対策等が必要であるとの共通認識のもとに、今後とも関係者と連携してこれらの対応策について真撃に協議し、完全民営化までに、結論を得るべく努力することを確認する。

(1)助成制度の恒久化に関するもの
 ・
住宅防音工事助成の恒久化
 ・谷間対策事業助成の恒久化
 ・隣接区域対策助成の恒久化
 ・学校等防音工事助成の恒久化
 ・共同利用施設助成の恒久化

(2)助成制度の拡充等に関するもの
 ・
谷間地域の防音工事の基準を騒防法第1種区域並に引上げ
 ・隣接区域の防音工事の基準を騒防法第1種区域並に引上げ
 ・サッシ部品交換の助成制度の拡充(共生財団事業)
 ・防音工事未実施住宅への空調機設置
 ・防音工事実施済住宅の防音機能の定期的な検査
 ・直下対策事業の拡充(空調機設置補助)
 ・地域社会のつながりに一層配慮した移転対策等の実施
 ・市町村設置の騒音測定局への助成
 ・落下物多発地域の移転対策
 ・芝山鉄道の運営維持
 ・農業基盤整備への助成
 ・空港圏観光施設の整備、地域振興管理団体の創設への協力等
 ・里山の整備への協力等

3,四者をはじめとする関係者が連携してその実現に努めるもの
 
以下の事項は、空港公団民営化の動向如何に関わらず、成田空港にかかわる様々な関係者がその実現に向けて努力しなけれぱならない事項であり、引き続き、四者をはじめとする関係者が連携してその実現に努めることを確認すろ。
 ・航空機騒音評価方法の見直し(環境省への働きかけ)
 ・成田財特法(平成15年度末で失効)の期限延長(関係省庁への働きかけ)

4,四者が協力して特殊会社法案作成時にその実現に努めるもの
 空港の名称の「新東京国際空港」から「成田国際空港」への変更