環境基準改正案への本会関係者の提出意見


岩瀬松治


意見1
〈該当箇所〉 標題
〈意見〉 標題は、住民や自治体関係者が切望していた“環境基準全般に関する改正案”と読めるので賛成です。
〈理由〉 本件は憲法第13条と第25条及び環境基本法第16条に基づいて検討されるべきものと考えます。環境基本法は「(環境基準は)常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない」と定めています。
 千葉県は「国内の統一的な評価方法、さらには環境基準の見直しについても検討されるべきである」旨の意見を提出しています(平成17年6月22日、航空機騒音に関する評価方法検討委員会への意見)。

意見2
〈該当箇所〉 全体

〈意見〉 専門委員会の運営に関し、非公開とする理由及び部会長と専門委員長兼任の理由を開示して下さい。
〈理由〉 傍聴が許されず会議録もないと、専門委員会の質疑・応答、議論の内容が分からず、意見の考察が十分にできません。中央環境審議会の運営方針は、非公開を「審議に支障のおそれ又は特定者に利益不利益を生じるおそれのある場合」に限っています。また、
運営方針は「部会長と専門委員長の兼任を原則禁止」しているので、専門委員会の運営に疑問を生じかねません。

意見3
〈該当箇所〉 項目の目次

〈意見〉 理由欄に報告(案)目次を列挙しますが、項目の目次が不揃いです。次に修正目次を提案します(修正箇所にアンダーライン。以下の意見同様)、
   1 環境基準改正の背景
   2 検討の基本的考え方
   3 評価方法の再検討
   4 航空機騒音の状況
   5 環境基準の検討
   6 環境基準達成の方策
〈理由〉 報告(案)の目次
   1 背景
   2 検討の基本的考え方
   3 航空機騒音に係る環境基準における評価指標の再検討に当たっての考え方
   4 航空機騒音の状況
   5 航空機騒音に係る環境基準の基準値について
   6 結語
 「目次」は項目の見出しです。一見して概要が分かるように、第1項は何の「背景」か示す。第3項は修飾語が突出して長過ぎ。第5項は「基準値」だけではありません。第6項で最も必要なことは「基準達成の方策」です。なお、報告案の目次は部会資料12の目次案とも異なります。

意見4
〈該当箇所〉 第1項 1〜2行

〈意見〉 運航側と行政側の対策だけが書かれています。公平かつ客観的に「住民側の状況や訴訟の動向」及び「科学的知見の蓄積」を書き加えて下さい。
〈理由〉 環境基準見直しは、講じられた対策の評価、住民環境の状況、改善に資する知見や技術の各側面を検討する必要があります。国の機関報告ですから公平かつ客観的な記述に改めて下さい。

意見5
〈該当箇所〉
 第1項7〜12行 及び第2項1〜2行 
〈意見〉 「見直し」の根拠に、「地方自治体等が要望している社会調査の必要」を書き加えて下さい。「測定技術の進歩」と「国際的動向」だけを背景とし、検討を評価単位に絞り込むことは、自治体の要望に応えていると言えません。
〈理由〉 千葉県及び成田空港圏自治体連絡協議会の要望(平成16年7月26日)は「睡眠影響や日常生活への影響などに対する住民反応を十分調査し、住民の体感に則した評価方法、適正な基準値設定」を求めています。千葉県蓮沼村議会(現山武市)の国宛意見書(平成10年7月17日)も「生活環境への影響など・・被害内容の把握、精査を行い、総合評価を改善すること」を求めています。同様の要望が数多くあります。
 確かに、環境大臣の諮問理由は、「測定技術の進歩と国際的動向」を例示し、必要な見直しを「評価指標」と記載しています。しかし、この諮問理由を字義通りに限定解釈することは、地方自治体の要望の一部分に応えるだけで、環境行政として当を得ていません。
本件は「逆転現象の解消」がきっかけであり、「技術と国際性」も重要な検討項目ですが、究極の検討目標は環境基準です。関連する「社会調査や知見」も重要な検討課題です。専門委員会は、要望されている環境基準全体の検討について見解を明示して下さい。

意見6
〈該当箇所〉 第1項10〜17行

〈意見〉 該当箇所を次の文に改めて下さい。
 10行目「等価騒音レベルを基本とした評価手法が主流と・・」
 11〜12行目「このような状況を契機に、我が国においても環境基準の見直しが必要となってきている。」
 15〜17行「・・委員会において、航空機騒音に係る環境をより的確に評価できる方法について検討を行った。」 
〈理由〉 報告全体を通して用語「評価指標」は、現行の環境基準の「単位」に相当すると解される箇所が随所にあります。「単位」とともに「基準値」「測定期間」「評価期間」「測定位置」等を含む場合は、より広義の用語「評価方法」又は「評価手法」に適切に置き換えるべきです。
 なお、15〜17行の文章で対象を「航空機騒音」とする物理的表現は不適切です。検討の対象は「環境」です。なお「観点」と「検討」を続ける文は長過ぎます。

意見7
〈該当箇所〉 第3項(1) 見出し

〈意見〉 「現行の評価指標(WECPNL)の考え方」より「現行の評価方法」が適切です。
〈理由〉 「測定の単位」のほか「評価の算式」等を含むので「評価方法」が適切です。

意見8 
〈該当箇所〉 第3項(1) 25行目

〈意見〉 「測定方法」は「評価の算式」が適切です。
〈理由〉 現行の告示で「測定方法」は、測定の期間、地点、時期、測器と測定法を指示していると解されます。

意見9
〈該当箇所〉 第3項(2)
 
〈意見〉 「諸外国の評価指標」の内容が、騒音振動部会と評価手法等専門委員会及び報告案別添の三つの資料で異なります。各資料を修正し再検討して下さい。
〈理由〉 例えば肝心の指標について、部会参考資料を専門委員会資料と比べると、14か国中一致しない国が4、一部不一致の国が4あります。また報告案別添資料は「Laeqを採用している国はない」と記述していますが、部会と専門委員会資料には該当国が記載されています。

意見10
〈該当箇所〉 第3項(2) 第5項(2)(3)(4)

〈意見〉 騒音振動部会の参考資料には、等価騒音レベル(Lden)に最高音(Lamax)あるいは夜間指標(Lnight) を併用する手法が14か国中の半数あります(理由欄注1)。併用方式の必要性と採用方法を書き込んで下さい。
 理由欄に列記する通り、騒音評価の専門家の方々は、単発的な騒音に対し等価騒音レベルと併用する評価法の必要性を説いています。また併用法は、地方自治体も要望しています。環境省も「睡眠中の単発騒音は数が少なくても大きな影響があることは確かで、どうするか検討中」と回答(理由欄注2)しています。 
〈理由〉 航空機騒音はピークレベルが高い特徴によって睡眠や会話妨害をもたらします。
 現行基準作成時の専門委員だった方は「機数が少ない場合はLmax の限度を設定しLdn の不備を補うこと、夜間規制を行う等」を勧め「単一指数を期待することは不可能に近い」と述べています。(小林理研ニュースNo.14.4)
 また別の専門委員だった方も「研究者の間では、航空機騒音のような単発的な騒音の影響を評価する際には、最大騒音レベルなどの指標の方が望ましいと考えられるようになっており、WHOが示した環境騒音のガイドラインにもLAmaxやLAEをLaeqと併用するべきであると明記されている。」と指摘しています。(騒音制御Vol 29.No4))
 さらに、最近の騒音振動部会や専門委員会委員を歴任されている専門家の方も、平成13年の部会で「LAeqは長い時間の評価量で、瞬間的な音の評価に使えない。環境省で審議を」と発言されています。
 千葉県蓮沼村議会(現山武市)は国宛の意見書(平成10年7月17日)で「一時の高騒音であっても、乳幼児、病人等の安眠安静を阻害するならば、最高音こそ重要」と指摘しています。泉大津市の意見書(平成10年8月)も「65WECPNL以下遵守と単発騒音70EPNL以下の併用」を求めています。
 (注1):海外諸国の評価指標 騒音振動部会資料4
   Ldenに Lnight併用=オーストリア イタリア オランダ トルコ
   Ldenに Lamax併用=デンマーク イギリス
   Ldenに Lnight Lamax併用=スペイン
   Lden=ベルギー フランス ノルウェー
   他の指標=アメリカ Ldn等  スウェーデン Lamax  韓国 WECPNL 
        オーストラリア ANEF等
 (注2):平成17年10月14日、環境省大気生活環境室ほかと成田空港から郷土と
     くらしを守る会の交渉、志位和夫議員事務所同席。

意見11
〈該当箇所〉 第3項(3)
 
〈意見〉 測定技術・機器の発展に関する報告案は異議ありません。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。

意見12
〈該当箇所〉 第4項(1)

〈意見〉 運航者と国の努力は8行にわたって詳述されていますが、騒音下の住民が長年苦しんでいる状況が全く書かれていません。8行目以降を次のように書き換えて下さい。
 ・・・対策が採られてきた。しかし、環境基準未達成地点の割合は25〜30%程度を推移しているため、住民の困難な生活が続いている。被害の実態を把握する大規模な社会調査も各地で実施された。騒音訴訟も大阪、福岡、横田、厚木、嘉手納、小松、普天間と続き、判決で「設置管理上の違法性」が指摘されている。
〈理由〉 そもそも騒音対策も環境基準も、騒音被害が存在するから必要となります。前提である住民側の状況及び客観的な調査や判決について叙述することがなければ、公平であるべき国の機関報告とはいえません。

意見13
〈該当箇所〉 第4項(1)

〈意見〉 上記書き換え案文の次に、下記の一文を追加して下さい。
 航空機の発着数は今後も増加の傾向にあるが、法の主旨は「環境基準以下に騒音を低減させる」ことであり「基準未満の地域は基準まで増加させてよい」と解釈する施策は許されない。なお、現行の環境基準告示後、達成期間を著しく超えても基準が達成できない状況については、この状況を打開する真摯で抜本的な政策検討が必要である。
〈理由〉 成田空港周辺では、平成17年度に環境基準値を超えた測定局は102局のうち50%(年平均値)、同64%(月平均値)です。このような状況が、基準の達成期限を過ぎてもなお23年も続いています。
 環境基準達成は住民救済の根本課題です。国土交通省と防衛省は、抜本的な政策をたて評価することが求められています。

意見14
〈該当箇所〉 第4項(2)

〈意見〉 この項末尾に次の趣旨の一文を追加して下さい。
 なお、この逆転現象は単一滑走路でも発生する。たとえば高騒音機が夕方・夜間に飛び、昼間に低騒音機が飛行する場合、昼間の機数が増えるに従い評価値WECPNLは低下する。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。

意見15
〈該当箇所〉 第4項(3)

〈意見〉 地上音も把握・評価する手法は、現状に比べ改善であり賛成です。ただ成田空港や普天間飛行場で低周波騒音が問題になりました。別に扱われる対象ですが、報告文に補足すると誤解されないと思います。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。
意見16
〈該当箇所〉 第5項(1)

〈意見〉 評価指標に関する検討結果が簡潔に記述されており、内容と文章に賛成です。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。

意見17
〈該当箇所〉 第5項(2)の前文とBF点の見出し
 
〈意見〉 (2)前文中の「逆転問題の発生」とB点の見出しは「逆転問題の解消」に統一し、(2)前文中とF点の見出しは「住民反応との対応性」と改めて下さい。
〈理由〉 F点の見出しは、単語だけで他の見出しと不釣り合いです。なお、前文末尾の「各点による」は「各点について」が適切です。

意見18
〈該当箇所〉 第5項(2)@

〈意見〉 簡潔な文章と内容に賛成です。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。

意見19
〈該当箇所〉 第5項(2)A

〈意見〉 記述文は賛成ですが、文末に次の一文が必要と考えます。
 なお、多くの国では、等価騒音レベルに最高音(Lamax)あるいは夜間指標(Lnight) を併用している。
〈理由〉 意見10欄に記述の通りです。

意見20
〈該当箇所〉 第5項(2)B

〈意見〉 簡潔な文章と内容に賛成です。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。

意見21
〈該当箇所〉 第5項(2)C

〈意見〉 簡潔な文章と内容に賛成です。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。

意見22
〈該当箇所〉第5項(2)D

〈意見〉 簡潔な文章と内容に賛成です。
〈理由〉 意見欄に記述の通りです。

意見23
〈該当箇所〉 第5項(2)E 5行目以降

〈意見〉 次のように記述を改めることをご検討下さい。
 ・・特徴がある。(改行して)なお、(以下、次のF5〜6行を移す)環境騒音の測定方法に関する・・・。(E5行目の「さらに・・」以降の文は削除する。
〈理由〉 E5行目「さらに・・」以降の文と、F4〜6行目「なお・・」以降の文は重複しています。細目見出しに照らし修正意見とします。

意見24
〈該当箇所〉 第5項(2)F

〈意見〉 次のように記述を改めて下さい。
 WECPNLの評価値は本来のエネルギー評価値と若干異なる。Lden,Ldn,Laeq24hでは、この点が改善されるとともに、地上音も含めて総合評価できるため、住民の騒音実感に近づける。(4行目「なお・・」以降の3行をEに移し、行替え。)
 しかし、住民から「騒音機数評価の疑問解消」と「最高音レベルの規制」が要望されている。また、地方自治体から「睡眠影響や日常生活への影響などに対する住民反応を十分調査し、住民の体感に則した評価手法、適正な基準値」を要望されている。(以下、検討結果を続ける)
〈理由〉 騒音下の住民は、騒音機数が2倍になっても評価値が3しか上がらない点に強い不満と疑問を持っています。この点は、WECPNLでもLden,Ldn,Laeqでも同じです。
 また、航空機騒音はピークレベルが高い特徴があり、会話妨害や睡眠障害を発生させます。等価騒音レベルに最高音基準等を併用する例証も意見10で述べました。そもそも騒音のエネルギー平均値である等価騒音レベルが、航空機騒音の被害実感を評価する最善の評価指標であるか否かは、科学的な検証が必要で専門委員会に期待されている課題です。

意見25
〈該当箇所〉 第5項(3)基準値設定の考え方

〈意見〉 報告案に記載された「現行基準値と同等レベル」が、法の定める「望ましい基準」として適正か否か科学的に検討して下さい。
〈理由〉 報告案は「現行同等レベル」の根拠を「騒音対策の継続性」と記述しています。しかし、航空機騒音訴訟の判決から求められることは、現行の「騒音対策の継続」ではなく「騒音対策の抜本的な改善と真摯な対応」です。
 また、報告案は「急発達した測定技術の導入」「国際動向との整合」を「喫緊の課題」と記述しています。しかし、「逆転解消」は早急に改善を要する課題ですが、技術導入と国際性は誰も「喫緊の課題」とは考えません。
 真に「喫緊の課題」は、住民や地方自治体が待ち望んだ34年ぶりの環境基準見直しです。

意見26
〈該当箇所〉 第5項(3)又は(4)

〈意見〉 航空機騒音の評価を、1日値に改正して下さい。この改正によって、測定地点ごとの環境基準達成率が明らかになるメリットが生じます。また、『基準以上のうるさい日があっても、平均値が基準以下だから我慢せよ』とする現行評価法の矛盾は解消します。
 なお、現行の7日間平均や年平均値は、対策上の参考値と改めて下さい。
〈理由〉 日ごとの1日評価値が著しく変動する場合、たとえば騒音評価値がゼロの日が6日あると週平均値は8.5も下がります。このような変動は、横風滑走路や非優先滑走路の使用、あるいは基地飛行場におけるNLP等で現実に発生しています。
 飛行状態が連日定常的な成田空港においても、例えば成田市新川測定局(平成16年度)では、年間平均値は69.9WECPNLですが、日最大値はすべての月で70 を超えています。なお同地点の年間日最大値は75.0 に達していますが航空機騒音防止法の第1種区域には指定されず、地域住民は環境対策の改善を切望しています。
 羽田空港D滑走路計画に関連し、千葉県環境研究センターの担当者は「一日ごとの評価値が日常生活に密着した指標であり、基準値超過日数に着目した指標が住民の感覚を的確に表現」していると見解を述べています。羽田発着の8%(年間5000機)が通過する計画だった浦安市も「年間平均値で評価するのは妥当ではない(広報紙)」と批判しました。
 現行の環境基準案作成に携わった専門家の方は「当初、いずれの1日も指針値以下とすることを想定していた」「(日間)変動の95パーセンタイルなど最大値に近い指標が住民反応と対応の点で優れていることが明らかにされており、パワー平均値を指標とする確たる根拠は存在しない(騒音制御Vol 29.No4)」と述べています。
 外国では、最繁忙週(イタリア)や最繁忙月(スペイン)を評価対象とする例があり、1年間を評価する国は2例に過ぎません(平成16年度航空機騒音に関する評価方法検討業務報告書)。
 国内では、大気汚染に係る環境基準は1時間値、1日平均値が用いられます。
 航空機騒音に係る環境基準は、1日値を評価対象とすべきで、7日間平均値や年間平均値は参考値とすべきです。
 
意見27
〈該当箇所〉 第5項(4)基準値 表中基準値57デシベル

〈意見〉 基準値57は、引き下げる方向で検討して下さい。報告案は、航空機騒音が会話妨害や睡眠障害をもたらすことを検討した形跡が全く読み取れません。
〈理由〉 数多くの知見の中から意見を裏付ける数点のみ例示します。
 現行の環境基準を検討した当時の専門委員会では「NNI35(機数200でWECPNL65相当)以下が望ましいという結論」が得られたが、技術的・社会的要因が考慮されWECPNL70となった経過があります。(騒音制御 Vol 29,No.4)(小林理研ニュースNo.20)」。この数値はLden52に相当します。
 神奈川県の調査報告書(平成13年厚木基地周辺生活環境調査報告書)によれば、70WECPNL以下の地域でも会話、電話、テレビ音の妨害があり“うるささ”を訴える回答は79%に達しています。
 間欠騒音として航空機騒音に類似している新幹線鉄道騒音の環境基準値70dB(A) は、Lden 51〜57に相当しています(小林理研ニュースNo.39)。
 世界保健機関(WHO)は「寝室の最高音(Lamax)45dB 以下」を推奨しています。この推奨値を保証する(注)には、屋外値のピークレベルは65dB(A) 以下でLden値は40〜50デシベルとなります。
(注)家屋の遮音量を平均23.8 dBとする報告(平成10年中央環境審議会、騒音評価手法等委員会)がありますが、空港周辺の防音計画量は20または25 dB以上です。防音工事後の実測では計画遮音量20dBを満たしていない木造家屋が39%あります(前掲神奈川県の調査報告書)。防音工事をしていない通常の木造家屋では15dB前後ですから屋外値65dB(A) 以上の騒音を除く環境保全策が求められます。

意見28
〈該当箇所〉 第5項(4)基準値 表中の基準値62

〈意見〉 基準値62は、57以下とするよう再検討して下さい。62は、基地騒音訴訟の判決が認定した受忍限度値と同じレベルです。専門委員会は、この数値を、環境省の公式見解(注)と一致する「適切な値」と判断されるのですか。
〈理由〉 近年、「静かな空」を求める騒音訴訟が続き、各地の判決は「75WECPN以上の地域は受忍限度を超える被害」と認定しています。75WECPN はLden62相当です。受忍限度値と表裏一体のLden62を専門委員会は本気で「望ましい基準(環境基本法)」と認めるのでしょうか。
 騒音に係る環境基準は、住居地域の基準を評価指標Leqで昼間55以下夜間45以下としています。この基準値はLden57に相当します。一般環境騒音の基準に比較してもLden62は認められません。
 渉外関係主要都道県知事連絡協議会は、「住宅防音工事区域の指定値を環境基準の70WECPNLに改めること」を要望しています。この要望は、Lden57〜62の地域においても防音対策が必要となる環境であることを示唆しており、望ましい環境とは認められません。成田空港周辺でも、70〜75WECPNLの広い地域で防音補助を求める住民・自治体の強い要望があります。
(注:環境省はホームページで「環境基準は最低限度でなく、より積極的に維持されることが望ましい目標」と解説しています。Lden62のピークレベルはパワー平均値でも80〜90dB(A)です。)

 意見29
〈該当箇所〉 第5項(4)基準値 表中の地域類型

〈意見〉 報告案は地域類型を二分しますが、「騒音に係る環境基準」は住居地域を同じ類型で扱い、「大気汚染に係る環境基準」は地域類型の区分がありません。住民の生活地域では“同一の基準値が適用されるべき”です。再検討して下さい。
〈理由〉 報告案は、現行基準を踏襲し、「専ら住居の用に供される地域」を類型氈A「汕ネ外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域」を類型としています。一方、「騒音に係る環境基準」は、「専ら住居の用に供される地域(A)」と「主として住居の用に供される地域(B)」を同じ類型として扱っています。航空機騒音を一般環境騒音の扱いと違えて「住居専用地域以外はうるさくてよい」とする論理は差別です。東松島市議会は国宛の意見書(平成18年11月27日)で「騒音区域が75Wと70Wと二重にあるのは不平等と言わざるを得ない」と述べています。
 「大気汚染に係る環境基準」は、工業専用地域など公衆が通常生活していない地域を除外しますが地域類型の区分はありません。

意見30
〈該当箇所〉 第5項(5)その他の配慮事項 1〜3行

〈意見〉 離着陸の少ない空港周辺や騒音飛行機数の少ないルート下の地域は、Lden単一の指標では高いピークレベルが許容されます。当該地域の基準値を特例で45以下にするなど、環境を保全する方策を明記して下さい。
〈理由〉小規模飛行場環境暫定指針を報告案の環境基準に統一すると、指針値が3減となります。しかし、離着陸回数が1日10機程度のピークレベルは90dB(A) 前後まで許容されることになります。大館能代空港では80dB(A) 以上の騒音(最大86.8 dB(A))があってもLdenは47以下です。飛行回数が少ない地域は、基準値を45以下に定めるか、ピークレベルを規制しないと環境悪化が防げません。

意見31
〈該当箇所〉 第5項(5)その他の配慮事項 3〜5行
〈意見〉 「達成期間等」に関する文章は、現行告示の内容を踏襲する意と推察されますが難解です。平易な記述に改めるとともに、「達成期間」について抜本的に検討し報告に記述して下さい。
〈理由〉 成田空港は、達成期限を24年以上も過ぎました。しかし、基準未達成地域が広範囲に存在しています。羽田や福岡空港なども「(1983年以降)可及的速やかに」とする期限を過ぎていると解されます。
 専門委員会は、基準達成目標を検討する責務があります。「基準値設定の考え方」4行目で「早期達成の実現を図ることが肝要」と抽象的に記述するだけでは責務を果たしていません。このような報告に基づいて、現状を追認する新しい告示が発せられる事態は、環境行政の失態となります。

意見32
〈該当箇所〉 第5項(5)その他の配慮事項 末尾

〈意見〉 国の方針として「1日ごとのピークレベルのパワー平均値と最大値を公表することが望ましい」と文節末尾に追記して下さい。
〈理由〉 航空機騒音の特徴は“高いピークレベル”が会話妨害や睡眠障害をもたらす点にあり、その影響度はdB(A) 値と比較されてきました。dB(A)値は、住民に分かりやすく、社会調査にも必要です。

意見33
〈該当箇所〉 第6項 結語13行

〈意見〉 結語で最も必要なことは環境基準達成のための“具体的な方策”を明示することです。「誰が」「いつまでに」「どんな方法で」「何を」「どうするのか」を検討し報告して下さい。
〈理由〉 まず第6項の目次ですが、専門委員会資料12の案は「結語」ではなく「航空機騒音対策の推進orまとめ」と書かれています。私の提案は「環境基準達成の方策」です。
 国の対策は、基地騒音訴訟判決で「抜本的な解決」「真摯な対応」が欠けている(横浜地裁)「法治国家のありようから見て異常の事態」(東京高裁)と指摘されています。報告案が「対策を強力に推進する必要」を抽象的に2行だけ記述して結語とすることは、環境行政に対する国民の失望をもたらします。具体的な方針、方策を検討し書き改めて下さい。たとえば、現行の環境基準作成に先立つ緊急対策(昭和46年)は「指針達成のための方策」として「夜間の発着規制強化」と「定点のピークレベル最高限度の設定と遵守」を勧告しています。

意見34
〈該当箇所〉 第6項 結語
〈意見〉 検討と報告は、主として評価単位の変更に限定されています。関連する環境基準の諸事項について、本件審議のスケジュールを再検討し、早急に科学的な再検討を行うよう求めます。
〈理由〉 結語は、諮問標題について「知見をまとめ(た)」と一言述べるだけで、「標題に係る全般的な検討を行った」と書かれていません。専門委員会は、諮問内容を評価単位に矮小化し、そのため地方自治体の要望と判決の指摘に真摯に応えていません。社会調査資料や知見も検討していません。検討期間を数カ月延長し、再検討して下さい。

以上


岩田公宏

1、「背景」について

 環境基本法第16条は「(環境基準は)常に適切な科学的な判断が加えられ、必要改定がなされなければならない」と定めています。
 しかるに、今回の改定までに30年以上の期間が経過しており、環境基本法の精神から明らかに逸脱しており、今回の改定にあたっては抜本的な改定がなされるべきだったと考えられますが、見解をうかがいます。

2、「4、航空機騒音の状況(3)航空機騒音の対象範囲」について

 リバース音やタキシング音やエンジン試運転音では成田空港周辺住民から「振動が激しい」との指摘があります。これは低周波によるものと考えらますが、この低周波について全く言及がなく、検討された形跡もないのはおかしいと考えます。見解をうかがいたい。

3、「5、航空機騒音に係る環境基準の基準値について(2)評価指標の検討 丸7住民反応」について

 この項で「Lden、Ldn、LAeq,24h では、この点が改善されるとともに、地上音等の付随した騒音も含む総合評価もできるため、より住民の騒音実感に近い評価が可能となる。」と書かれてますが、日本においてどのような調査をし、どのような結果が出ているのかが分かりません。33年ぶりの改定であれば、このような抜本的な調査・検討は当然なされるべきと考えますが、調査・検討結果と、見解を聞かせていただきたい。

4、「5、航空機騒音に係る環境基準の基準値について(3)基準値設定の考えかた」について

 この項では「環境基準値の設定に当たっては、まずは、現行基準レベルの早期達成の実現を図ることが肝要であり、騒音対策の継続性も考慮し、引き続き現行の基準値と同等のレベルのものを基準値として設定することが適当である。」としていますが、これは環境基本法の精神に反すると思います。「環境基準」とは「国民に健康な生活を保証するためにはどのような環境が必要なのかを考える」ものであり、「現行基準の早期達成」や「騒音対策の継続性」から考えるべきものではないと考えますが、見解をうかがいたい。

5、「5、航空機騒音に係る環境基準の基準値について(3)基準値」について

 第一は基準値を「類型」で分けていますが、これも環境基本法の精神に反すると考えられます。この考え方は「工場や商店街などいつもうるさい地域は、航空機騒音もうるさくても良い」とする考え方と推察されます。しかし、住民への影響を考えた時には、「うるさいからこそ、航空機騒音は少なくすべき」ではないでしょうか。見解をうかがいたい。
 そこで、少なくても「類型」は分けるべきではなく、「地域類型1」の基準に統一すべきと思います。見解をうかがいたい。
 とくに、「類型2」の62デシベルはWECPNL75に相当し、各地の航空機騒音裁判での判決で「受忍限度」とされているものです。「受忍限度」を「環境基準値」にすることは環境基準の精神に照らして、どう考えても不合理です。見解をうかがいたい。
 第二は「類型1」の基準値57デシベルですが、世界各国の状況や世界保健機関の提言から見て、高すぎます。少なくても54デシベル以下にすべきと考えますので、見解をうかがいたい。

6、「5、航空機騒音に係る環境基準の基準値について(5)その他の配慮事項」について

 最後に、この改定案には出てきませんがこの項を読みますと、基準値を評価する期間ですが、現行は成田空港の様に通年にわたり定常的に飛行する場合は「通年」の平均値が使われており、これを継承する意向とうかがわれます。
 しかし、航空機騒音には季節変動があり通年の平均値で評価することは適当ではありません。身体への影響はある短期間に激しい騒音があった場合には影響も大きくなると考えられます。これは、「静かな時にいやされる」性質のものではありません。一旦変調が起これば、取り返しがつきません。諸外国の評価方法でも騒音が激しい時期の評価値で基準値を定めている国が多く、日本のように「通年」の評価値を使う国は少数のようです。従って、評価値は航空機騒音が激しい時期や期間で行うべきと考えます。見解をうかがいたい。
 さらに、2004年7月24日早朝に青森県沖で起こった自衛隊機の急降下による騒音で漁船の漁師1人が意識を失う事故の様に、たった1回の大きな騒音でも心臓マヒを起こすなどの致命的な事故が起きる可能性があり、極端に大きな航空機騒音に対しては例え1回でも地域の実情に応じた基準値を設けるべきと考えます。見解をうかがいたい。

以上

*なお、文字化けの可能性がありますので、特殊文字を算用数字などに置き換えてあります。


金澤義典


【該当箇所】基準値
【意見】基準値57が適切か、住民の反応を調査し科学的に判断して下さい。
飛行ルート直下の我が家(山武市・旧蓮沼村)ですが、窓を開けている夏場は夜の家族だんらんのテレビもボリウムを上げなければ聞こえにくいことも多々あります。
年間平均70.5WECPNLですが、平均70デシベルを超える飛行が毎日200回前後もあります。
【理由】住宅防音補償の適用外の地域とはいえ、私たち住民は住んでいる以上逃げられません。
騒音は現実にある日々です。「普段の暮らしの感覚」の視点から見直して下さい。

【該当箇所】結語
【意見】報告は、うるささの単位を変えることに終始しています。
空港と地域住民が本気で「共生」するためには、報告が数カ月遅れても、うるささの評価法と基準を根本的に検討することが必要ではないでしょうか。
「急がば回れ!」です。
【理由】よりよい空港づくりは、多種多様な人々どうしが、どれだけ「関りあえるか」で決まると思います。
もっと、「ワクワクドキドキできる」空港の実現のために、本気で「共生」の理念と進め方に、今一度立ちかえることが必要な時です。
民主主義はコスト(民意集約の費用・時間)がかかりますが、ちょっとだけ長いスパンでみれば、民意の徹底反映によって、より効率や生産性が結果として向上することは、科学的経営管理法でも重視されてきています。
一言でいうと、「急がば回れ!」と言いたいです。あらためて専門委員会のスタンスの転換を求めます。

以上


秋山三千男

〈該当箇所〉第5項
<意見> 現在連続7日の平均値で評価していますが、1日ごとの値で評価するように改めて下さい。私たちの町では、年平均値が環境基準以下でも、基準値以上のうるさい日が多い地域があります。平均値や総暴露量は、騒音対策の参考値として有効ですが、住民は平均値の騒音下で暮らしていません。基準値以上の日は、1日であってもうるさくて我慢できません。
<理由>多古町の平成17年度測定データで、年平均値は、鍬田局68.9WECPN、千田局69.1WECPNLですが、日最大値は一鍬田76.5、千田73.Oと高いWECPNL値です。この2局は全ての月間で日最大値が環境基準を上回っています。

く該当箇所>第5項(3)(4)基準値
<意見>現行と同等レベルの基準値が、会話や睡眠を妨害しないか、報告案には記述がありません。科学的に検討して下さい。
<理由>多古町の上記以外の3局の日最大値は、牛の尾71.4、船越68.0、間倉67.1WECPNLです。5局のピークレベル最大値は80〜90デシベルで、地域住民の苦情が絶えません。現行基準は、審議当初65WECPNLが望ましいと結論されたと聞いています。静かな環境を守るのが環境基準の目的であるはずです。専門委員会の科学的検討に期待しています。

<該当箇所>第5項(4)基準値
<意見>今後の増便に伴う環境悪化が憂慮されます。その評価値が、機数100が200になっても+3、126機で+1に過ぎない点は、評価単位WECPNLでもLdenでも同じです。この評価方法に住民は強い不満と疑問を持っています。住民が納得する見解を示して下さい。
<理由>意見欄に記述した通りです。

<該当箇所>第5項(5)配慮事項
<意見>基準値に関し、当町のように「基準」以下の地域については、基準値までは騒音量を増やしてもよいと解してはならないと考えますが、このことを環境行政の指針として報告書に明示して下さい。
<理由>環境省は「環境基準jについて「最低限度でなく、より積極的に維持されることが望ましい目標」「汚染が進行していない地域は、現状より悪化しない基準を設定」とホームベージで解説しています。

以上


馬込勝末

意見:5-(7)-F
 「より住民の騒音実感に近い評価可能となる」としているが、年平均値では騒音実感とは遠いものになる。少なくとも最繁忙週の平均とすべきです。

意見:5-(3)および(4)
 現行基準の早期達成とともに・WHOの環境基準に関する提言の実現にむけ、基準値を現状維持にとどまらず、より厳しいものにすべきです。
 また、地域類型で農村地域を2とし、そのまま、適用されたら成田空港周辺の住民にとっては大問題となる。住居専用地域・住居地域・無指定地域は類型1とすべきです。

以上


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