[平成13年度新東京国際空港周辺航空機騒音実態調査報告書]を読む

1,平成14年度からは固定局の結果のみで実態調査とは・・・
 まず、調査報告書の「まえがき」を読んでびっくりもし、失望しました。と言うのは、まえがきの中に「県では航空機騒音に係る環境基準の評価に使用するデータを、平成14年度からは、これまでの夏季・冬季に各1週間実施した実態調査の結果から、固定局の1年間を通したものとしましたので、夏季・冬季の実態調査は平成13年度で終了しました。」と書いてあったのです。
 確かに、短期測定の結果よりも1年間通した結果で見る方が正確と思います。しかし、固定局の数は増えてきたとはいえ、地域のきめ細かな騒音測定は出来ません。特に、空港の南部では北部に比べて面積は1.5倍以上なのに固定局の数は、13年度の報告書でも千葉県と周辺市町村が設置している固定局は北側で23カ所に対して、南側は22カ所と少ない状態です。この南側の固定局の少なさを補うために「短期調査地点」が北側7カ所に対して、南側は27カ所となっているのです。短期調査地点をなくすと言うことは「南側を切り捨てる」と言うことになるのではないでしょうか。
 短期調査にはかなりのお金がかかり、千葉県の財政が厳しいのは分かりますが、空港公団から千葉県に分配されている周辺対策交付金はこのようなものにこそ使われるべきではないでしょうか。
 また、暫定平行滑走路が供用開始になってから成田市が暫定平行滑走路直下近くで行った短期の騒音測定で、暫定平行滑走路の航空機騒音と4000m滑走路の航空機騒音を合わせたWECPNLが、暫定平行滑走路の航空機騒音のみで計算したWECPNLよりも小さくなってしまうという逆転現象が明らかになると言うような、短期測定でなければ分からない結果もあるのです。
 南側の固定局の数が飛躍的に増えるのならば良いのですが、そうでないならば、この方針の再考をお願いしたいと思います。

2,環境基準の達成率がグーンとアップ・便数減のおかげ?
 今回の調査結果で目立ったことは環境基準の達成率が31.8%から50.8%へと実に19.0%もアップしたことです。この理由として考えられるのは、第1に調査期間の夏季(平成13年8月1日〜8月7日)の風向きが夏にしては北よりの風が多く、測定点の多い南への離陸が54%と少なくなり、南側の夏季の騒音が低くなったこと(前年度に比べ約3WECPNL低くなっている。)があります。
 第2に冬季(平成14年1月30日〜2月5日)の便数が平成13年9月11日に起こった米同時多発テロの影響で少なくなった(前年度と比べて1日平均で24便減っている。)ためと考えられます。従って、これらは一時的な要因ですから騒音環境が改善されたと言うには無理があると思います。
 しかし、便数が少なくなると騒音の改善に大きな効果があることが証明されたことになります。便数を減らすことは発生源対策の一つになります。

3,固定局の13年度通年のWECPNLはダウン
 報告書には固定局の平成13年4月から平成14年3月までの通年の測定結果も載っていますが、こちらも、米同時多発テロの影響による便数減(前年度に比べ1日平均約5便減)で通年のWECPNLが前年度に比べて0.67WECPNLダウンしています。

4,環境基準未達成で民家防音対策のない地域に民家防音工事を
 現在、民家防音工事の助成対象になっているのはおおよそ75WECPNL以内の地域です。しかし、航空機騒音に係る環境基準では屋外で70WECPNL以下に騒音を軽減することを求めています。平成13年度の報告書では環境基準が未達成であるにもかかわらず、民家防音工事の助成対象となっていない測定個所が13カ所あります。
 報告書にある騒音コンター図では一番外側のコンターが70WECPNL、その内側のコンターが75WECPNLになりますから、この二つのコンターの間の地域(コンター図のピンクの地域)が民家防音助成対象でないにもかかわらず環境基準が未達成と言うことになります。
 この地域には当然、民家防音工事の対策がとられるべきと思います。一部は「谷間対策」「準谷間対策」と言う名前で自治体が民家防音工事の助成制度を実施していますが、本来は国と空港公団が責任を持って行うのが筋と考えます。