成田商工会議所など主催の「運輸政策研究機構 講演会」メモ

(2014年9月18日)


講演後の質疑応答

【商工会議所 野間口氏】

 「先日、『首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会』が開催された。その場で干葉県は『国の政策判断として成田に新たな滑走路が必要と決定され、そのために地域との協議が必要になった場含には、県としても役割を果たしていきたい」と発言されたと聞いている。3本目の滑走路整備により経済的なメリットを一番享受する干葉県の発言かと驚いた。
 地元が要望していかない限り3本目の滑走路の実現はできないと感じている。
 羽田の都心上空飛行については、騒音もあるが落下物の影響も大きいと思う。成田に比べて東京は人口密度が高い。東京・川崎の住民が都心上空飛行を本当に受け入れる可能性があるかについても見極めたい。

【黒野会長】

 「千葉県の発言については、空港は迷惑施設という沼田知事時代のDNAが残っていると感じる。最近の干葉県は変わってはきているが、空港整備は、県も進んで協力するのが普通と考える。成田周辺の方々がこれまで以上に頑張っていただき、千葉県が重い腰を上げるように努力して頂くことも重要である。
  羽田の3.9万回の容量拡大に向けて、国は精一杯頑張っているところ。南風時の着陸時に都心上空の飛行が必要となり、A滑走路は渋谷、C滑走路は新宿上空を飛行することになる。品川の上空は450mの高さになり、東京タワーとスカイツリーの中間程度の高さで着陸機が飛行することになる。品川・高輪は閑静な高級住宅街となっており、住民が受け入れるのは難しいとは思うが、国として実現に向けて努力しているところ。
 しかし、羽田については、メディアの応援がある。成田の場合は農民の方々がかわいそうという報道が主流だが、羽田についてはメディアが必至に応援している。 これから国は地域への説明に入っていくこととなるが、成田の30万回化の際は、小さい集会を100回以上行った。東京でこのように丁寧な地元説明を進めるのは非常に大変と感じている。落下物についても、成田はビニールハウスだが羽田の場合は人工構造物上に落下することになる。
 客観的に考えれば、東京は大都市であることから、都心上空飛行を進めて欲しいと思うが、かなり難しいと思う。時間制限の条件はあると思う。いずれにしろ、来年の夏までにどの程度協議が進むかにかかっていると思う。

【講演後の黒野会長のご挨拶】

「今回の研究成果は、緻密な議論の上に成り立っている。しかし、これはあくまで運輸政策研究機構による自主研究である。実際に50万回で進めるのかもう少し少ない容量とするのか等については、NAA、国、地域の皆様が決めること。
 国は、オリンピック対応の羽田3.9万回、成田4万回を死にもの狂いで進めているが、成田の4万回は技術的な話しだが、羽田は地域とのチャンネルがなく苦しいと思う。
 東京都、各区は、羽田の国際線枠の拡大は大賛成しているが、騒音にかかる地元調整は国がしっかり進めてほしいというスタンス。成田の場合は、市町が先頭に立って地元調整を行っている。東京の場合は、本音は違うかもしれないが、住民側に立って受け身になっていることから短期間で議論が進むのかについては心配している。3.9万回の先に第5滑走路を整備し1日を通じて都心上空を飛行するのはもっと難しいと感じている。
 また、羽田については、東京だけでなく干葉市の問題もある。干葉市は、今後の増枠分は全て経済的メリットを享受する東京都で騒音を受け持って欲しいと言っている。
 94万回という首都圏需要に応えていくためには3つの方法がある。3つの方法は、成田は30万回で終わりにして全て羽田で受け持つ、羽田を増やさず3本目の滑走路を整備して成田で受け持つ、羽田・成田双方ともに最大限に努力して受け持つというもの。成田・羽田の争いではなく、日本国として中国・韓国等と肩を並べていくためには、首都圏空港に充分な発着容量が必要と考える。
 羽田の第5滑走路は埋め立てを伴い、1兆円超えの整備となり、それを上回る収益を上げるのは困難な状況。成田が遠いことは変えられず、羽田に発着枠が拡大されればマーケット論からは羽田に航空会社が移動するのはあたり前のこと。一方、大きな潜在需要のある東南アジアもあり、成田も減るということではない。一つの心配としては、アメリ力の航空会社の動向である。米系キャリアは、成田から羽田に全便移動できるなら良いが、成田・羽田の二重投資は困ると言っている。米系キャリアのCEOには、成田のハブ機能を放棄して、日本のOD旅客だけをターゲットとして羽田に移り、ハブ機能は成田から仁川空港に移すと言っている。
 国においては、成田・羽田の役割分担の戦略がない。あるとしても、政治的に捻じ曲げられているため、非常に心配している。
 成田の北米路線はトランジット客を5割含んでいる。またB787は燃費が良くアジア・北米間の直行便が増えてくると思う。今後はハブ機能も変わってくることが見込まれ、アンテナを高くして市場の動向を注視していくことが必要。
 成田の将来、日本の将来のためにも成田空港は頑張る必要がある。今後とも皆様のご理解・ご協力を期待している。」

黒野会長への質疑応答

【野間口氏】

 「羽田の第5滑走路はいずれできると思う。その前に成田の第3滑走路の着工が必要と思う。40年前の反対運動当時とは違い、諸条件を考えると、成田の方が条件的に良い。羽田空港の情報があったら教えて頂きたい。」

【黒野会長】

 「少し前の話になるが、東京湾の航路の話もあり、羽田のD滑走路を予測した人は誰もいない。成田がもたもたしていたから実現が可能となった。
 羽田の第5滑走路は難しい、今のD滑走路も大型船が航行する際は飛行機が待機している状況である。
 成田の3本目の滑走路の方が環境面、機能面、工事費等、羽田の第5滑走路に比べて優位な状況にある。しかし成田がもたもたしていると、国は、東京の地盤沈下を防ぐ必要があるため、D滑走路と同じように第5滑走路を実現すると思う。」

【長谷川氏】

 「署名活動中に『第3滑走路は必要と思うが、どこに整備されるのか?』と聞かれて回答に困った。今後は、本日説明を受けた案をイメージしてお答えすれば良いか。」

【黒野会長】

 「緻密に検討を行った結果、この2案となった。しかし、これからNAAが考え、3案目も出るかもしれない。滑走路整備位置を決めるのは、NAAと国土交通省になる。」

【池内会頭】

 「今までは、成田だけでなく、首都圏全体で航空需要に応えるという方針で活動を進めていたが、スカイマークの撤退といった地元の中小企業に直接打撃を与えるようなことが起きた。首都圏全体で頑張るという意識が減り、成田の企業を守りたいという気持ちが強くなっている。」

【黒野会長】

 「スカイマークは、A380のキャンセル問題等があり得意な例と考える。」

以上


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