2016年11月28日の国土交通省レクチャー要約


@国土交通省レクチャー(その1)
 「(運用時間拡大を)『直ちにやる』と言うことはないが、すぐにやりたいという気持ちはある」

 28日の後半に行われた国土交通省とのレクチャーですが、国土交通省からは航空局 航空ネットワーク部 首都圏航空課 成田国際空港企画室 専門官 「高橋健一」氏が説明に当たりました。住民は成田市から5人、横芝光町から2人、「取極書」の作成にかかわった高橋勲弁護士、日本山妙法寺から3人、日本共産党からは斎藤和子衆議院議員など約10名が参加しました。

 まず、本会から次の5項目の質問事項を、直前でしたが、提出しました。

1、「今回の「首都圏空港の機能強化」は国土交通省から持ち出されたものであるが、その中で「成田空港の運用時間の拡大」が提案されている。NAA が今回提案している成田空港運用時間拡大(午前5時から翌日午前1時)は国土交通省として了解しているものなのか。

回答「今回の案は四者協議会で合意されたものではあるが、これは、あくまでも『案』で、決定された物ではなく、住民のみなさんに説明をしている最中です。しかし、国土交通省も四者協議会の一員ですので、運用時間拡大についても了解しています。」

2、「静かな時間が4時間しかない」という、この案が、憲法25条が全ての国民に保証する「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」に違反するのではないか。国土交通省としての見解を答えて欲しい。

回答「今回の提案では環境対策についても提案している。『睡眠時間が短くなる』というご意見は説明会でも出ているので、対策をどのような物にするかを住民の方々とも、話し合って行きたい。」(憲法25条については、明確な答弁はなし)

3、「(憲法25条に)『抵触しない』とする主張するならば、『欧州WHO夜間騒音ガイドライン(2009) (騒音曝露と健康影響の関係)』や『欧州WHO夜間騒音ガイドライン(2009)』などが、『夜間騒音が住民の健康に影響する』とする調査結果と、それに基づく『ガイドライン』を否定し、『成田空港周辺騒音下住民の健康を害さない』と言う、『科学的な根拠』を示して欲しい。」

回答「今日、質問を出されたので、データを精査する時間がなかったので、後ほど回答する」

後日の追加回答
「成田空港会社は、平成25年3月のカーフューの弾力的運用開始に伴い、学術的知識の必要性及び公平性の観点から、学術経験者等で構成する第三者評価委員会『成田航空機騒音健康調査委員会』を設立後、成田空港周辺地域の住民を対象とした健康影響調査を実施し、その結果が、平成27年6月に報告された。調査結果では、身体的影響と騒音曝露量との間には明確な関連性は認められなかった。成田空港会社からは、夜間飛行制限の緩和を実施した場合には、同様な健康影響調査の実施についても関係者と検討していくと聞いている。また、皆様の睡眠を確保する観点から、通常の防音工事に加え、寝室の防音効果を一層高める内窓の設置を提案させて頂いている。」

4、「今回の拡大案の実施は『50万回実現』時からとなるのか、または、それ以前にも実施可能となるのか。」

回答「今回提案しているのは、『第3滑走路の建設』と『B滑走路の延伸』と『運用時間の拡大』の3点セットで『最大50万回』と言う事である。運用時間拡大は合意が成立すれば、すぐにでも出来るのかな、とは思っているが、今、直ちにやるという事は一切考えていない。今、説明会が済んでいないし、説明会の中でも運用時間拡大については厳しい意見を頂戴している。説明会が一通り終わった段階で、再度検討しておはかりしたいと思っている。しかし、すぐにでもやりたい気持ちはある。 LCC からは拡大の希望が強く、国土交通省や NAA としては1時間でも2時間でも拡大したい気持ちはあるが、直ちに、と言う事は考えていない」

5、「四者協議会」で、「運用時間拡大」が合意された場合、このことが、どうして「騒音下住民の了承(理解)」となるのか。その根拠は何か。

回答「今回の四者協議会の合意が、即、地元のみなさんのご『理解』とは考えてはいない。説明が終わった段階で、再度、四者協議会で『住民のみなさんが納得しました。』と言うことにならなければやらない。」

@国土交通省レクチャー(その2)
 「『住民の合意がなければ、やりません』とはこれまでの文書で一言も書いていないではないか」

成田市住民
 「前回3年半前のカーフューの合意は非常に強引だった。この時に『むやみに再延長はやりません』と言っておきながら、たった、3年半で舌の根も乾かないうちに今回の提案だ。こんな事をやっていたら、お互いの信頼関係は作れない。」

成田市住民
 「運用時間拡大で飛ばない時間が4時間になったらば、子供や学生などの若者が地域から出ていってしまうんだよ。この気持ち分かりますか」

高橋専門官
 「前回は強引にやらざるを得なかった。しかし、今回は『説明したから』と強引にやることは一切ありません。説明会でも厳しい意見が出ているので、それを勘案しながら検討し、新たな提案をもって、説明することになると思います。我々は住民のご理解をいただけるまで、期限を定めずに説明していきたいと考えています。」

岩田本会事務局長
 「質問にもあるとおり、『静かな時間が4時間』をどうして持ち出したのか全く分からない。憲法25条を持ち出すまでもなく、常識的に考えても、この提案は異常だ。『 LCC の希望』などを理由としているが、騒音下に暮らす数万人の人権をどう考えているのか。 LCC の希望は分からないでもないが、国土交通省は『周辺に住む人のことを考えて、我慢して下さい』と何故、 LCC に言えないのか。」

高橋専門官
 「現在航空需要は順調に伸びていて、早晩、発着回数は満杯になってしまう。これをまかなうにはこれぐらいの運用時間が必要と言うことです。案として出しているのは最大のところで出している。今後、短くするのか、新たな対策を考えるのか検討して説明させていただきたい。」

高橋弁護士
 「あなた方の発想がそもそも違っている。健康被害が現在どうなのか、どう拡大するのか、と言う調査が全くなされていない。私も公害訴訟を長くやってきたが、判決の中でも飛行機の『騒音はひどい、しんどい』と認定されている。その疫学調査などは絶対に必要だ。それを示した説明があった上で、納得できるかどうかの問題なのだ。その前提がない以上、この提案は無理だ。一番大事なのは『事業者側の都合』ではなく、『地域住民の健康』だ。『健康に影響がない』と言う事を明らかにすることが事業者側に科せられている、と言うのが、今は世界の趨勢だ」

共産党
 「『住民の納得がなければ』と言っている。しかし、今までの文書では、『納得が得られなければ事業を始めません』と言うことが、全く担保されていない。『四者協議会で結論が出た段階で』とか、『色々な対策をとった上で合意したら事業を開始する』と言う事は書いてあるが、その中に『住民の合意なければやらない』とは書いていない。これでは、住民の方々が納得しないのは当たり前だ」

高橋専門官
 
「ここには入っていないが、説明会の中では『みなさんの合意なしではやりません』と言っている」

岩田本会事務局長
 
「しかし、説明を聞いても『どうなれば住民が納得したことになるのか』が、全く分からない。そこで、住民には不信感が沸いてくる。また、前回と同じことをやるのではないか」

成田市住民
 「だから我々は文書でくれ、と要望した。『何でこんな案が出るのか、それはあなた方が騒音下に住んでいないからだ』と言うところから、説明会は始まった。そこで、カーフューの時は説明会を拒否した。そうしなければ『住民は合意した』とされてしまう。今回の案にするか、38年前の開港時の運用時間(午前6時〜午後11時)に戻すか、どちらか2案の選択で提案にして欲しい。そして、住民の意見を聞いて欲しい」

@国土交通省レクチャー(その3)
  
「『(企業の)競争で住民を犠牲にしないで欲しい』と言うのが最大の願いだ」

成田市住民
 「あなた方は一番金のかからない方法を考えているのではないか。それは、新滑走路もB滑走路の北伸もいらない。発着回数もまだ24万回程度ではないか。まだ、十分飛べる。だから、みんなは『本当の目的は夜間飛行制限緩和だ』と言っている。そうでないと言うならば、飛行制限緩和と新滑走路建設は切り離して欲しい。」

高橋専門官
 「そう言うことではない。提案はあくまで3点セットだ。」

成田市住民
 「四者協議会で切り離すように、提案してくれ。」

共産党
 「説明会をやって、それからどうするのか。」

高橋専門官
 「説明会がまだ全部は終わっていない。半分程度ではないか。年明けまでかかると思う。その後、検討して再度提案することになる、と思う。」

岩田本会事務局長
 「住民にとってはカーフューを入れて『静かな時間が6時間』と言う現状でもきついと思う。そこで、提案を一度白紙に戻して、検討する必要があるのではないか。」

成田市住民
 「3年半前に『カーフューは LCC のため』と言っていたが、蓋を開けてみたら、 LCC はあまりない。一番うるさいのは貨物便と朝一番の便だ。今回も、これを認めたら、同じことになるのではないか。」

横芝光町住民
 「我が町はA滑走路の騒音も受けているし、B滑走路の騒音も影響がある。新滑走路が出来ると、横芝駅周辺の市街地に激しい騒音が降ってくる。従って、町民の多くは『運用時間の延長だけは絶対に認められない』と言っている。また、『もう、滑走路は作ってくれるな』という声もある。先ほどから出ているように『運用時間拡大』は切り離してもらわないと、住民合意はとても得られない。是非、切り離して欲しい。」

高橋専門官
 「説明会でも同様な意見は聞いているので、今後、検討していきたいと思う。」

成田市住民
 「前回の時には国土交通省はアベノミクスまで持ち出していた。アベノミクスは何も成田空港だけでやることはないのではないか。羽田空港や茨城空港も使えるのではないか。」

高橋専門官
 「成田空港だけではなくて、当然、羽田空港も考えている。」

横芝光町住民
 「昨日も、集落の集会があったが、そこでも、深夜早朝の音を非常に心配している。発表される騒音値は飛んでいない時間もカウントされて、平均化されていて、体感とは違ってしまう。窓の防音と言うが、人は自然の中で生活するものだから、それも考えて欲しい。企業としては競争があると思うが、その『競争で住民を犠牲にしないで欲しい』と言うのが最大の願いだ。我々は新滑走路が出来れば、生涯その騒音下で生きなければならない。人としての生活を企業計画の中でも考慮して欲しい。」

高橋専門官
 「我々が今提案している案も決まったものではないし、皆さんの意見を検討して新たにご提案させていただく事になるかも知れませんし、新たな対策でご理解をお願いすることになるかもしれません。」

共産党
 「四者協議会は『ご理解をいただきたい』と言うが、住民の声をどう取り上げるのか。住民は発着回数を増やすことを望んでいないのではないか。また、多古町の説明会の時に町会議員が参加しようとしたら、参加できなかったと言うが、何でこんな事が起こるのか。みんなの意見を聞くと言いながら、町民の代表である議員が参加できないのはおかしいのではないか。」

高橋専門官
 「それについては把握していなかった。現状を把握して、適切に対処したい。」

B滑走路を離陸する飛行機から見た、横芝光町 下を流れるのが栗山川、左下隅が横芝駅 新滑走路の飛行コースは栗山川の下側に沿って伸びる。


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