第30回騒音対策委員会報告

(2003年3月26日 ヒルトンホテル成田)

 各部会の質問と回答の概要

☆成田部会(渡邉成田市議会議長)
 第1点は空港公団民営化についてだが、完全民営化の時、「覚書」にも別途話し合うとなっているが、住民の意見を直接聞くようにしてもらいたい。対話の継続をお願いする。例えば、農業支援の土地改良についての支援などへ助成を考えていただきたい。第2点は騒防法や騒特法の線引きが地区集落を分断しているがこれを解消してほしい。谷間地域を第1種区域にしてほしい。第3点は民家防音工事に対する助成措置を恒久化していただきたい。現行法では一度助成を受けると家屋を解体しない限り再度の助成は受けられない。しかし、老朽化すれば防音効果は減少する。また、家族構成などにも配慮していただきたい。第4点は落下物についてであるが、落下物事故の根絶をお願いすると供に、落下物事故多発地域につては移転対策をお願いしたい。南側は洋上での脚下げが行われているが、北側は、飛行の安全上鹿島沖での脚下げは無理と言われ成田市上空で脚下げが行われている。

★回答
 
国土交通省
「覚書については今後とも真摯に対応していく。住民の意見は十分に聞く。」
 空港公団「覚書は住民の意見を反映していると考えているが、要望を謙虚に受け止めたい。直接的協議の場を組織していきたい。土地改良についての助成は非常に難しいが、空港公団としてどう協力できるか勉強させてほしい。」
 千葉県「騒特法の線引きは市町村と協議して決めたものなので理解してほしい。」
 国土交通省「民家防音工事に対する助成の恒久化については、これからも注意深く見させて対応していきたい。」
 空港公団「騒防法の線引きについては周辺の地形や集落分断などに配慮して市町村と協議して決めている。騒音測定も周辺101カ所の測定を夏と冬に各1週間実施している。騒特法の線引きは5年ごとに見直すことになっている。共生財団において第1種地域の隣接300mの範囲で民家防音工事の助成を行っている。谷間対策についてはきめ細かく実態を把握して協議したい。民家防音工事に対する助成措置の恒久化については国とも協議しているが、成田空港に合ったきめ細かな対策を共生財団の事業としてやる方が良いのではないか。共生財団の制度として防音効果の回復が出来るのではないかと考えている。」
 国土交通省「落下物については国土交通省としても根絶に向け努力している。航空会社だけではなく航空機製造メーカーに対しても要請を行っている。アメリカの航空当局は航空機の給排水関係の定期点検を指示する耐空改善命令も出している。今後とも、航空会社に対しては点検を徹底するよう求めていく。」
 空港公団「落下物については空港公団としてもあってはならないと考えている。落下物多発地域についての移転問題ですが、移転は騒防法・騒特法に基づいて行われているものでこれには当てはまらない。困難と考えている。落下物事故の根絶を目指したい。」

☆芝山部会(相川芝山町長)
 第1点はこの騒音対策委員についてですが、空港公団の民営化に際して存続されるのかどうか伺いたい。当委員会は成田空港周辺市町村が一同に会する場であり、様々な要望も出、実現もして来た。第2点は民営化の時に周辺自治体の出資について配慮をお願いしたい。と言うのは民営化に際して周辺住民の民意が反映されなければならない。その一つの手法として出資が考えられるのではないか。第3点目は民営化になったときに周辺対策事業を推進する上で違いが現れるのかどうかと言う点である。「覚書」でも先送りされている問題がある。これが会社になった場合にどのようになるのか。第4点は空港公団が移転により取得した土地の利用についてである。これらの土地は公共事業で使うには分断されているなど困難がある。一時的に花壇などに利用したいという住民の要望もあるがこれも認められない。土地管理の上からも今後どうするつもりなのか聞かせてほしい。」

★回答
 
空港公団
「この騒音対策委員会は30年の歴史があり、住民の方々の意見を伺う場として重要と考えている。従って、民営化後も引き続いて開催していく。移転跡地は現在も地域農業の振興に役立てたり、公園などに貸し出している。エコエアポート構想の一環として定期的な草刈りで出た草を役立ててもらっている。会社組織になっても引き続き会社が管理することになる。」
 国土交通省「自治体の出資については特殊会社の段階では出資することは出来ない。ただ、完全民営化になり株式が公開されたときに自治体が株式を保有することは可能である。また、民営化後の共生策に対する態度が変わるのか、とのことであるが、法案にも共生策を盛り込んでおり今まで以上に取り組む姿勢は変わらない。」

☆松尾・横芝・蓮沼部会(実川横芝町長)
 これまでの色々な周辺対策について国・空港公団の努力のたまものと感謝しているが、現在でも十分とは言えない。民営化後もよろしくお願いしたい。第1点は民家防音工事の助成は世帯の人数で決められるがこれでは広い家では全体の防音工事が出来ない。何とか考えてほしい。また、工事の基準を最新の工法で出来るように幅を持たしてほしい。ペアガラスや出窓は認められない。第2点は当地域は両滑走路の騒音を受けている。最近では1日238便にもなる。このため当地域では空港公団の協力も得て直下対策として空調機器の設置事業を実施していますが、これを空調機器設置対策地域として制度化したほしい。また、空調機器改修の恒久化をお願いしたい。第3点は横芝町中台で氷塊の落下事故があったが、航空機の着氷調査を実施したはずだが結果はどうだったのか。第4点は共同利用施設の改修に対して助成をしてほしい。町村の財政逼迫で改修したくても出来ない状況だ。」

★回答
 空港公団
「民家防音工事は法律によって規定が決まっている。これは、遮音効果と公正を期するためであり現状では難しい。工事の基準については引き続き要求に添うように検討したい。直下対策については騒音測定によって実態を把握し、充実について相談したい。共同利用施設については基本的には周辺対策交付金で対応してほしいが、大規模改修についてはその都度相談したい。
国土交通省「機体への着氷調査は平成14年1月22日から2月7日まで実施した。この間、調査した1475機中着氷が確認されたのは6機だけであった。着氷に有害物質は含まれていなかった。今後とも、落下物事故の内容徹底したい。国際会議においても着氷調査の結果を報告して協力を求めている。」

☆大栄・多古・下総地区部会(土井多古町長)
 「第1点は防音対策であるが、暫定平行滑走路東側の防音堤・防音林の高さが足りず防音効果が損なわれている。ジャンボ機が飛ぶ前に対策をお願いしたい。また、民家防音工事に対する助成措置が十分でないため、増改築をしたくても出来ないと対策が遅れている家もあり、共生財団の隣接地域対策にも入らない地域があるが、集落を分断しないような線引きの拡大をお願いしたい。第2点は地域振興のためには地元への企業の進出が不可欠と思われるが、その為の道路整備などの対策が十分出来るように周辺対策交付金の増額をお願いしたい。」

★回答
空港公団
「暫定平行滑走路東側の防音堤については一部がまだ完成していない。また、完成したところでも防音堤の上に防音壁を設けることも検討している。防音効果と空調機器は騒防法で一体化したものとなっているので空調機器だけを実施するのは難しい。隣接地区の拡大については共生財団のする事であるが、空港公団としても重視していきたい。地域振興策については関係自治体の計画を聞いて十分に考えていきたい。」

☆富里・山武部会(相川富里市長)
 「テレビの視聴について、今後のデジタル化について各家庭や中継局での対応をとっていただきたい。」

★回答
空港公団
「デジタル化についてはスケジュールがはっきりしていないが、スケジュールが決まればそれに対応していきたい。中継局からデジタル波を発信できるようにする。」

☆佐原・神崎部会(後藤神崎町長)
 「暫定平行滑走路が供用開始してから飛行回数は増えたが、騒音は比較的少ないと思われる。それでも、夜間はうるさいという声がある。飛行コース・高度の遵守をお願いしたい。栗源町にも氷塊落下があった。根絶をお願いしたい。民営化に着いてはやはり不安がある。地域振興策として交通アクセスの整備が重要で、その為に、国道51号線の4車線化・県道成田下総線の延伸・圏央道の整備をお願いしたい。また、万が一の航空機事故に対処するための施設の整備をお願いしたい。観光などで周辺地域に経済波及効果が出るようにしてほしい。周辺対策交付金の増額をお願いしたい。栗源町にある過激派の拠点に対する対策を考えてほしい。このような事もあるので、栗源町を騒音対策委員会の正式メンバーに加えてほしい。」

★回答
国土交通省
「暫定平行滑走路の供用開始から周辺住民の方々には大変なご迷惑をかけていると認識している。飛行コースの遵守については合理的な理由がないものについては厳重に注意している。落下物については今後とも努力をしていきたい。」
空港公団「飛行コースについては平成10年よりネット上にも公開している。飛行コース幅を設定して合理的理由がないのに逸脱したものについては国土交通省を通じて航空会社に注意している。落下物については今後とも努力していきたい。成田空港は内陸空港なので、周辺住民のみなさんのご理解が必要と考え、民営化後も共生の理念を大事にしていきたい。従って、情報公開についてもよりいっそう進めていきたい。」
千葉県「国道51号については国土交通省で千葉市・成田市・大栄町で4車線化工事をしている。今後も渋滞の激しいところから国土交通省にお願いしていきたい。成田ー下総線は残りの0.8Kmでは工事を進めているが、0.7Kmでは用地買収が難航している。圏央道については神崎ー大栄間で設計などをしているが今後とも国に要望していきたい。」
国土交通省「航空機災害に対する点であるが、今後とも、地元の計画などを聞かせていただいて相談したい。周辺への経済波及効果であるが周辺地域がさらに活性化するようにご相談したい。栗源町が過激派の拠点で苦労していることについては申し訳ないと思っている。何よりも成田空港の完全空港化が問題の解決に大切と考えている。また、栗源町を本委員会の正会員にとのことですが、ご要望があったと言うことを承っておく。」

☆河内・新利根・江戸崎部会(野高河内町長)
 「第1点は騒音対策である。暫定平行滑走路が供用開始されてから多数の苦情が寄せられている。これに答えるには騒防法第1種区域の拡大が必要である。これをお願いしたい。第2点は環境基準が健康な生活を維持するために70WECPNL以下としているのに対し、対策は75WECPNLまでになっている。70WECPNLまで成田空港独自の対策をお願いしたい。第3点は周辺対策交付金であるが、施設が老朽化するにつれて自治体の維持管理費は年々増えている。しかるに交付金は横這いである。交付金の交付規定の改正と交付金の増額をお願いしたい。」

★回答
空港公団
「測定の結果が75WECPNLを越えたときには地域の拡大を実施することになる。暫定平行滑走路の隣接地域設定の件ですが、現在は暫定平行滑走路の第1種区域が千葉県側までになっている。従って、現在行っている騒音測定の結果を見て考えさせていただきたい。環境基準であるが、70WECPNL以下となっているがそれと同等の騒音になるよう騒防法で対策を実施している。成田空港独自の隣接区域などの対策も行っている。今後とも努力したい。周辺対策交付金については現在見直しを進めている。皆様方と相談していきたい。」

☆河内・新利根・江戸崎部会(野高河内町長)
 「交付金について、相談するとのことなので、その際には、十分相談に乗っていただきたい。」

☆成田空港から郷土とくらしを守る会(岩田事務局長)
 「本会では暫定平行滑走路南と東の地域においてアンケート調査を行った。それに基づいて質問をしたい。(住民の意見を10件読み上げる。)このような深刻な状態は国が内陸であるこの地に空港を持ってこなければ起こらなかった。後から、住民が移り住んで来たわけではない。国の責任を十分果たしてもらいたい。第1点は空港公団の民営化であるが、住民は民営化を望んでいるわけではない。40.3%が反対している。やむを得ないとする人が32.4%である。先の「四者覚書」でも対策を今以上に充実させると言う点は全て先送りされている。対策を充実させる点で不安がある。第2点は騒音と全く反対の音を出して騒音を打ち消す方法があると聞くが民家防音に応用できないか。第3点はテレビの音の難視聴であるが、航空機騒音に連動した音量調節は出来ないか。ただし、これは音が余計に大きくなるので問題もある。それなら、ワイヤレスヘッドホンを各家庭に人数分配布するなどでイライラを解消できないか。第4点は騒音地域に対する各種対策を成田市並に国で統一して実施してほしい。財政力の豊かな成田市は騒音地域に実にきめ細かな対策を実施している。一例を挙げれば、水洗トイレの設置補助も補助率を市の他の地域よりも上乗せしている。しかし、財政力によって、同じ騒音を受けながら他の市町村は十分な対策を取りたくても取れない。国で統一して行えば不公平はなくなる。第5点は騒防法と騒特法の線引きの見直しである。先ほどから出ているように集落を分断する線引きがある。数mの差で対策区域に入ったり、入らなかったりする。数mの差に合理的な根拠があるのか。都市部のように住居が密集しているのならば、どこかで線を引いて分断せざるをえないと言うことはあるのだろうが、成田空港は農村地帯で集落は固まっている。それを数mで分断する根拠を示せ。第6点は成田空港の軍事利用についてであるが、アンケートでも69.4%の住民は「どのような場合でも軍事利用は反対である。」としている。空港設置の歴史を見ても「民間空港ならば。」と条件付き賛成で土地を提供した人も大勢いる。「イラクの後は朝鮮半島だ。」とも言われている。日本の平和憲法の元で、戦前のアジア侵略の反省の上に立った外交努力で問題を解決すべきであるが、朝鮮半島で紛争が起こったとしても成田空港は軍事利用すべきではない。設置当初からの約束を守ってもらいたい。第7点は暫定平行滑走路の安全対策である。接触事故とオーバーラン事故が起こったが、この原因と今後の安全対策についてうかがいたい。最後に、先ほどの環境基準についての答えはおかしい。以前から、「75WECPNLから70WECPNLの地域について環境基準が未達成なのに対策がない。」と質問すると、「普通の家も防音効果がある。それで、家の中では環境基準と同等の環境になる。」と言うが、普通の家で1年中締め切って生活するわけではない。もし、それをしろと言うのであれば空調機の設置と電気代の補助は国が責任を持つべきではないか。」

★回答
国土交通省
「覚書を作る段階で時間が足りなかった。そこで、結論を出せないものついては、後の協議事項となった。」
空港公団「成田空港は内陸空港であり地域の方々の協力がなければ成り立たないと考えている。従って、周辺対策については確実に実施していく所存である。次に、音を消す装置とのことだが、私たちにはそのような情報がなかったので、専門家にうかがったところ、変化・移動する音に対しては難しいのではないか、とのことだった。テレビの音声の調節できるものについても、航空機の音か他の音か判断して調節するのは難しいとの見解をいただいている。次に、成田市並の対策を、とのことであるが、国は全国的な観点で考えざるをえない。従って、個別の問題は関係自治体で考えていただくことになる。対応可能なものがあれば空港公団としても考えたい。次の対策区域の線引きの見直しだが、実態を十分把握して必要があれば見直していきたい。」
千葉県「騒特法の線引きは騒音対策を含めた土地利用を主旨として行った。基準に基づき、関係市町村と十分相談・協議して行ったものである。」
国土交通省「成田市並の対策を、とのことであるが、やるとなると全国一律の対策になりこれを実施するには限界がある。成田空港の軍事利用については従来からの経緯については承知している。暫定平行滑走路の航空機同士の接触は停止位置にきちんと止まっていなかったのではないかと思う。オーバーランは事故には当たらない。原因は調査中だが、滑走路に問題はなかったと聞いている。」

☆成田空港から郷土とくらしを守る会(岩田事務局長)
 「オーバーランは気象条件に問題があったのではないかと聞いている。あのような場合、時間から言ってもA滑走路に着陸させれば問題は起きなかったのではないか。」

★回答
国土交通省
「原因は事故調査委員会で調査中であるが、航空会社はあの滑走路に合った機種を使っている。従って、本来問題はないはずである。A滑走路に着陸させれば、とのことだが、パイロットからリクエストがあればA滑走路を使うことになる。」

以上

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