第43回騒音対策委員会質問と回答
(2017年3月24日開催)


【成田空港から郷土とくらしを守る会 岩田事務局長】

 今回は成田国際空港株式会社(NAA)から提案されている「空港機能拡大」に絞って質問いたします。

空港運用時間の拡大について

 「静かな時間が4時間しかない」と言う今回の案は、飛行コース直下住民にとって死活問題になります。何で、このような非人間的な提案が出てきたのか理解に苦しみます。
 世界中で行われている各種研究でも、睡眠が健康に大きな悪影響を与える事は証明されています。
 例えば、1741名を10〜12年にわたって観察調査した研究では「睡眠時間6時間未満の男性の死亡率は21%高かった」と報告しているのです。
 2月21日の毎日新聞には子供の睡眠と脳の発達についての記事が掲載されました。前から言われていることですが、騒音に晒される子供は切れやすいとの調査結果が出ています。

 NAA は運用時間を拡大する理由として「早朝の時間を有効に利用したい、と言う外国人がいる」「 LCC や貨物航空会社などからの要望が強い」としていますが、これらと、数万人にも及ぶ周辺住民の命と生活と較べることが出来るのでしょうか。これが「共存・共栄」の目指す道なのですか。

 NAA は「カーフュー弾力的運用」の際に約束して実施した「健康影響調査」をとりあげて「大きな影響はなかった」としていますが、この調査そのものが、諸外国の調査に較べて十分とは言えないと思います。諸外国の調査は数百万人単位で行われています。

  NAA の調査では、本会が求めていた「子供や病気と闘っている人」への詳しい調査を、調査対象者を20〜70歳に制限して実施されていません。弱者を切り捨てているのではないでしょうか。また、睡眠中の血圧や脈拍などの影響調査・研究も行われていません。

 また、この調査を実施した第3者委員会委員の名簿も、会長は安岡先生と発表されていますが、全員は報告書の要約版には今もって出ていませんし、報告書全文は NAA のホームページにも掲載されていないようです。

 この調査報告書の概要版にも、「カーフュー弾力的運用から、間もない調査であり、今後も継続的に調査する必要がある」としています。今回の、「運用時間拡大計画」が騒音下住民の健康に影響がないかどうか、判断するためにも、「カーフュー弾力的運用」が定着した今、疫学的に騒音と死亡原因の関係とか、睡眠中の血圧や心拍数や睡眠状態などの関係も調べる再調査を早急に実施して、その結果が出るまで、「運用時間拡大計画」の是非を判断すべきではないでしょうか。

  現在までの説明会でも、出席者のほとんどが「運用時間拡大は絶対に反対」と言っています。命にかかわり、地域の存続にかかわる問題だから、当然の事です。
 寝室の窓の2重化などで解決できる問題ではありません。「家族全員がこの寝室で必ず寝ろ」と言うことでしょうか。
 先頃完成した2重窓のモデルルームでは「遮音効果が45dBに達する」と言いますが、これは、モデルルームとして土台から完璧に作られた建物での理想的遮音効果であり、一般の既存住宅では、このような効果は見込めません。

 1999年に世界保健機関(WHO)が示した「WHO環境騒音ガイドライン値」では、睡眠妨害が発生しない基準値として「屋内で LAmax 45dB」としています。
 しかし、成田空港では滑走路端から5Km以上も離れたところで、夜間の騒音がLAmax 85dBを超えることが、頻繁にあるのが現実です。
 この中で、「深夜の静かな時間が4時間しかない」という今回の提案は住民の健康に大きな影響があることは明白です。 

 「カーフュー弾力的運用」の導入の時には、四者協議会で、住民の反対意見を無視して、強引にまとめた確認書で、「2 弾力的な運用によって、なし崩し的に運用時間が拡大することのないよう、23時以降に新たなダイヤを設定しないこと。」としています。約4年前に、このような「取り決め」をしているのに、突然、今回のような非人道的で憲法違反の提案が出てくるのは理解しがたいことです。

 航空局と NAA は「運用時間拡大には、厳しい意見を頂戴している」と言いながら、「了解を得るまで、説明する」と言って、「住民の意見を聞いて判断する」とは絶対に言いません。これでは、何のための説明会なのでしょうか。住民に「意見を聞いてやるのだから、ありがたく思え」と言うことでしょうか。

 国土交通省と成田国際空港株式会社(NAA)は、何をもって「了解を得た」とするのか、この場で、誰もが納得できる判断基準を明らかにして欲しいと思います。

 いずれにしても、今回の「空港運用時間の拡大案」は撤回して、開港時の約束である「午後11時から翌朝午前6時」という運用時間を維持すべき、と考えます。

 もし、今回の案を強行するというのならば、我々としては「差し止め請求」などの法的手段を考えざるを得ません。

「第3滑走路」と「B滑走路の北伸」について

 次に、「第3滑走路」と「B滑走路の北伸」問題ですが、この計画は、発着回数50万回に対応し、広大な新しい騒音地域を創出し、既存の騒音地域にも、今以上の激しい騒音を発生させるものであり、慎重に検討すべきものと考えます。

 方法書の需要予測によると、発着回数が30万回に達するのは早くて2021年、遅ければ2028年となっています。また、2020年のオリンピックまでは順調に伸びるにしても、その後はオリンピックの反動も考えられ、どうなるか分からないところです。

 50万回に達する見込みは、早くても2032年、遅ければ2048年になると予測しています。

 そうであるならば、今すぐに、計画を決めるのではなく、需要を見ながら、住民への抜本的対策も含め、関係住民との対話を重ね、5年程度の後に計画を再検討すべきではないでしょうか。抜本的対策とは、例えば、騒防法第1種区域内の、移転を希望する住民には、十分な条件で移転を認めることです。騒音で現住地の地価は低くなり、移転先の地価はそれよりも当然高くなります。そうしたら、移転することにより、住民は多額の自己資金を費やすことになります。また、民家防音工事の建設基準を効果あるものにして、遮音を十分なものにする、などです。

 現段階ではこのような土地買い取りや移転補償や民家防音工事基準などの詳細が、 NAA から示されておらず、賛成・反対を判断できる段階ではないと考えます。

  NAA は詳しい説明を、関係する住民に真摯に行うべきです。このような真摯な対応がなければ、50年前の成田空港建設時の二の舞になります。

 強引に建設しても、虫食い状態の未買収地が残ることになりかねず、機能強化も十分な効果をあげられない恐れが強いと考えます。

 現に、第3ターミナルサテライト北側の駐機場が出来ても、計画のように旅客機が、本館とサテライトを結ぶ連絡橋の下を通過できていません。

 第3滑走路やB滑走路北側延伸の前に、第4ターミナルの建設や新たな駐機場の整備など、すぐに実施できる「機能強化策」はいくらもあると思います。


 建設費用の問題もあります。方法準備書によりますと、建設費用は1000〜1500億円とのことです。しかも、「これは滑走路工事の費用であり、ターミナルや駐機場は必要に応じてやっていくので、含めていない」というのです。

 しかし、先頃、まとめられた福岡空港の第2滑走路増設計画では、空港敷地内に2400mの第2滑走路を作るにもかかわらず、費用は約1800億円としているのです。空港敷地内ですから、用地買収の費用はないものと考えられます。
 これを見ても、今回の第3滑走路やB滑走路北伸計画がいかに杜撰なものか分かると思います。

 最近、「共生・共栄会議」が「千葉県知事のリーダーシップを」との提言をする、との話がありますが、「空港建設で土地収用の強制代執行は行わない」との約束を反故にする考えがないかどうか、千葉県にうかがいます。

 最後に、本会も参加している「成田空港運用時間拡大に反対する連絡会準備会」が進めている「成田空港の運用時間拡大案の撤回を求めます」の署名は今後も続けます。

 連絡準備会として、4〜5月に成田市で行われたような「夜間騒音体験会」を実施する予定ですので、国土交通大臣、国会議員、千葉県知事、航空局長、夏目社長などに是非参加して、夜間騒音の実態を、住民と共に肌で感じて、住民の生の意見を聞いていただきたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。


質問への回答(議事録より)

【鈴木貴典(航空局航空ネットワーク部首都圏空港課成田国際空港企画室長】

 はい、問1番、空港運用時間の拡大についてご回答申し上げます。開港時または4年前の弾力的運用導入時の、四者協議会との合意の重さについては、国と致しましても十分認識しているところでございますが、先程来繰り返しになりますが、昨今成田空港におきましても内外の他空港と同様に訪日外国人旅行者やLCC路線が急増しておりまして、激しさを増す空港間競争の中で、成田空港が利用者から選ばれ、将来にわたって着実に成長していくためには、従来なかったこれらの二一ズに的確に応えることが避けられないということで、先般の四者協議会で夜間飛行制限の緩和についてご提案をさせて頂いた次第であります。
 他方、夜間飛行制限の緩和についてご了解頂くためには、十分な対策が必要であると考えてございまして併せて、新たに寝室における内窓設置工事の実施をご提案させて頂きましたが、部屋数の問題なども含めまして、ご指摘の点も含めまして、地域からは様々なご意見を頂いているところであり、今後関係機関と共に、これらのご意見に対してどのように応えていくことができるのか、しっかりと検討して参りたいと考えてございます。
 また最終的な結論を得るにあたっては、騒音下をはじめとする地域住民の皆様方のご意見、例えば議会の各地域の議会のご意見等を総合的に勘案して、各地域を代表する首長の市長の方々にもご出席を頂く四者協議会において、ご判断を頂くということになるのではないかと考えてございます。以上でございます。

【岩澤弘( NAA 共生部長)】

 NAAです。従来からの地域との取り決め事項につきましては、慎重な議論を重ねて整理された内容でありますので、大変当社としても大変重く受け止めているというところでございます。
 しかしながら今般少子高齢化を迎え日本におきまして、アジアの成長をしっかりと取り込み、政府目標である訪日外国人旅行者数2020年4000万人、2030年6000万人という観光立国の実現に貢献し、更には空港と共に空港周辺地域が発展していくためには、成田空港の夜間飛行制限の緩和は必要であると考えております。今回当社より提示をさせて頂きました50万回時の予測騒音コンタHは夜問飛行制限の緩和も加味しておりますので、深夜早朝に航空機の運航があることを前提として防音工事の対象範囲を確定していくことになり、夜間も含めてLden62デシベルを超えるコンターを基準として設定される、広範な第1種区域内において防音工事を行うことになります。加えて今回深夜早朝対策として法律上の対策を超えた対策として、騒特法上の防止地区内において内窓の設置をご提案しており、更なる室内の静穏を確保して参りたいと考えているところであります。
 なお更なる機能強化についての最終的な結論に至るにあたりましては、地域住民の代表である議会、そして騒音下の住民団体のご意見、また住民説明会で頂いたご意見を考慮した上で、ご理解が得られたかどうかを判断し、最終的に四者協議会で確認されることになると考えております。以上でございます。

【鈴木貴典(航空局航空ネットワーク部首都圏空港課成田国際空港企画室長)】

 続きまして問の2番、第3滑走路とB滑走路の北伸についてご回答申し上げます。少子高齢化が進展する我が国の将来の発展のためには、訪日外国人旅行者の増大を図り、成長する海外の活力を取り込んでいくことが必要不可欠だと考えてございます。このため政府として訪日外国人旅行者を2020年に4000万人、2030年には6000万人とすることを目標と致しまして、様々な施策に取り組んでるところであり、政府と致しましては、この成田空港の滑走路の整備は必要な施策であると考えてございます。
 また滑走路整備は各種の法的な手続きでありますとか、用地買収等を経て行うことが必要であるため、相当の時間を要するものでございます。このため需要が現在の成田空港の処理容量を超える時点までに、この滑走路整備を完成させて、新たな処理容量を確保しておくと、こういうことを実現するためには時間的余裕はすでに多くはないのではないかと認識しておりまして、可能な限り速やかに整備に着手できるよう努力をしていく必要があると考えてございます。
 また様々な制度の具体的な内容等にっきましては、様々な論点課題がある中で、順を追って検討し説明をしていかなければならないと考えてございます。以上でございます。

【岡本和貴(千葉県総合企画部次長)】

 はい、2点目にっきまして千葉県からもお答えを致します。
 成田空港の更なる機能強化に伴う第3滑走路やB滑走路の延伸、それに伴う空港敷地の拡張などの提案につきましては、現在、四者において地域住民の方への説明を進めている段階でございます。
 用地の問題に関しては、過去の成田空港建設の歴史を踏まえまして、地域の皆様の理解と協力が得られるよう進めて行くことが不可欠であると考えております。以上でございます。

【岩澤弘( NAA 共生部長)】

 NAAです。更なる機能強化の方策またそれに伴う環境対策、地域振興策などにつきまして、まだ当社より提案しているという段階でございます。決定した訳ではございません。
 現時点で移転補償、また防音工事の詳細についてお示しすることは難しいと考えております。
 一方で今後騒防法や騒特法に基づきまして具体的な対策範囲が決定されればその詳細について、住民の皆様にしっかりと説明をしてご協力を求めて参りたいと考えております。
 以上です。


騒音対策委員会関係」に戻る