第44回騒音対策委員会での本会質問要旨
(2018年3月29日 開催予定)


第44回騒音対策委員会質問事項

成田空港から郷土とくらしを守る会

1,今回の合意は拙速であり、騒音下住民の切り捨てである

 今回の四者協議会での合意には、心底幻滅した。

 国土交通省と成田国際空港株式会社(NAA)は当初「期限を設けず、理解を得るまで、説明する」とくり返し表明してきた。

 確かに、説明会は約200回実施してきたが、これはあくまで、「説明」に過ぎなかった。肝心な騒音下住民の心配に答えるものではなかった。

  NAAの夏目社長は合意後のあいさつの中で、「『成田空港の国際競争力の確保』 と『地域住民の皆様の生活環境の保全』の両立を図る」としているが、説明会は「騒音下住民の不安」に答えるものではなかった。

 我々は今回の「合意」に同意できるものではない。

 この観点から、以下の質問をする。

2、運用時間拡大計画は速やかに白紙撤回すべきである

 まず、運用時間の拡大である。

 建設時の地元の要望は

         本会交渉覚書で「夜間21時から07時まで、航空機の発着を禁止」

                               1972年9月20日

         成田市が「早朝・深夜飛行を禁止されたい」1977年2月10日

         芝山町が「午後9時より翌朝午前6時までは全面的に禁止されたい」

                               1977年3月9日

         旧下総町「午後9時から翌朝7時までは航空機の離着陸を全面禁止」

                               1977年11月

         騒音公害から住民を守る会「成田市も夜9時より朝6時迄の

             飛行禁止を主張していたことについてはどうなったのか」

                              1978年4月26日

         旧松尾町区長会「『午前6時から午後11時まで』とあるのを、

                 『午前6時から午後9時まで』と変更されたい」

                               1978年7月21日

などとなっている。

 本会とNAAの前身である「成田空港公団」との約束は、航空局長の立ち会いの下に、空港公団今井総裁と締結されたものである。現在の当事者は夏目社長であるが、この約束を変更する事について、夏目社長からは一回の連絡もなかった。一般の常識としてもこの態度は許されるものではない。

 建設当時の運輸大臣や航空局長、また、当時の空港公団総裁は「羽田空港なみの禁止を厳重に実施する事は可能」として、「午後11時〜翌朝午前6時の飛行を禁止する」としている。

 上記の約束や要望に鑑み、この約束は守られるべきである。「時間が経っている」「国策だから」と言う言い訳は約束を反故にする理由にはならないが、どのように考えているのか。

 昨今の内外の学者によれば、「睡眠時間は最低でも7時間を必要とし、6時間を切った場合は健康に障害が出る」とする研究結果が相次いで発表されている。

 また、2009年に発表された「欧州WHO:夜間騒音ガイドライン」によれば、「ほとんどの高感受性群を含む公衆を健康影響から保護できる」ガイドラインは「Lnight,outsid40dB 」としている。これは屋内ではなく野外での基準である。

 また、他の研究・調査によると、夜間の睡眠時の騒音ピークレベルが飛んでいないときよりも10dB高くなると目が覚めなくても、血圧は14%ずつ上昇するとされている。

  これらを考えるときに、現在の「午後11時〜翌朝6時まで」との飛行禁止時間は騒音下住民の健康を維持する最低ラインである。

 ましてや、今回の「空港運用時間拡大」案は、飛行禁止時間をたったの4時間半にしようとする、暴挙である。

 これは、国民の健康な生活を補償する基本的人権を無視する憲法に違反する行為である。

 国や NAA は「スライド制で、静穏時間を7時間確保する」と言うが、「静穏時間イコール睡眠時間」にならないことは、誰が見ても明らかである。

 さらに、このような「スライド制」が騒音下住民の心身に大きな影響を与えることは明らかである。

 今月18日のフジテレビで放映された「『子どもの睡眠を奪う親が多い』5歳児に必要な睡眠時間はどれくらい?」では、「『睡眠リズム』が乱れた場合、これを修正するには、大人で半年を必要とする」との研究を明らかにしている。

 また、「内窓が40dBの遮音効果がある」と言うが、これは土台からしっかりと建設した、理想的な防音家屋の値であり、既存の住宅に施行してもこのような遮音効果は得られず、経年劣化で遮音効果は減るばかりである。

 国と NAA はスライド制を「妙案」と自画自賛するのではなく、周辺住民の生活を尊重し、「空港運用時間拡大計画」を直ちに撤回するべきである。

3,「A滑走路に先行して実施する」とする飛行禁止時間の短縮も必要ない

 また、「2020年までに実施する」としている、「A滑走路の運用時間を延長し、午前5時から午前0時までにする」との提案も撤回すべきである。

 国やNAAはこの理由として「オリンピックやパラリンピックのため」と言うが、これは一時的なイベントである。

 A滑走路の運用時間拡大はNAAが言う「混雑時間帯」の枠不足解消にはつながらない。

 成田市3月定例議会で、本会の副会長でもある鵜澤治議員の「A滑走路の延長される時間帯に何便の運航が予定されているのか」との質問に対し、成田市当局は「15便の運航が予定されている」と答弁している。

 このことから分かることは、この運用時間拡大が、主に LCC や航空貨物便のためのものである事である。
 航空会社の利益を優先し、騒音下住民の健康被害と生活権の侵害を許すことは出来ない。

 この計画も直ちに、撤回すべきである。

4,健康調査はNAAではなく、自治体が最高の権威者に委託すべきである

 確認書では、「A滑走路直下住民に健康調査を行う」としているが、健康調査は騒音をもたらす加害者、すなわち、成田国際空港株式会社(NAA)が行うことは,論外である。
 前回の健康調査でも、最も健康被害が顕著に出る、子どもや高齢者や自宅療養者などの調査が不十分であった。
 前回調査委員会の委員長も「最後のご奉公と思って引き受けた」と述べているように、 NAAと関係の深い学者であり、また、他の委員が誰であるか、今もって明らかにされていない。このような調査結果を元にして「影響がない」とすることは許されない。

 今回の調査では、調査費用を関係自治体が負担し、調査の中心には、このような調査を数多く手がけた最高の権威者を中心として行うべきである。

 また、委員の中に被害地域から選ばれた住民が複数参加するべきである。

5,B滑走路1000m延伸と第3滑走路建設は飛行コース直下住民に甚大な被害をもたらす

 次にB滑走路の1000m延伸と第3滑走路の建設問題であるが、どちらも、騒音被害を拡大する問題であり、見過ごすことは出来ない。

 特に、横芝光町については第3滑走路建設が町民の約4割に、現在の騒音と比較にならない深刻な騒音増大をもたらす、重大な問題である。
 住み慣れた今の場所に住み続けたいという気持ちは共通していると思うが、騒音被害に耐えきれず、静かな場所に移住する人が相当数出ることが見込まれる。

 また、土地や住居の資産価値が相当下がることは目に見えている。これは、今回提案された「成田空港機能強化計画」が明らかになった段階から、すでに始まっていると考えられる。
 最近、芝山町に両親が生活していた人からは「いくら値段を引き下げても、買ってくれる人が出てこない」との嘆きを聞いたが、この事からも、資産価値が低下するのは明らかである。
 やがて、騒音地域はゴルフ場や企業用地として買いたたかれてしまう。

  NAAや千葉県が示す地域振興策が10年、20年後に完成したとしても、住む人が減少すれば、人口は減り、町は寂れてしまう。

 もし、これを防ごうとするなら、新たな法整備を行い、移転を希望する人を、町内のより静穏な場所に、国と NAA が責任を持って土地を確保し、
 移転希望者の土地や家屋を「成田空港機能強化計画」前の資産評価で買い上げる、などの抜本的対策を行うべきであり、それが出来ないのであれば、C滑走路建設計画を撤回すべきである。

6,落下物事故に抜本的な対策を

 次に、落下物対策についてであるが、国と NAA は落下物をなくすために、航空会社の抜き打ち検査や、報告義務づけなどの対策を行っている。
 しかし、多くの部品で構成されている航空機からの落下物を、100%なくすことは無理と考えられる。

 そこで、根本的な落下物対策は、飛行コース直下の住民が移転を希望する際は、移転補償を行う事である。
 もちろん、これをもってしても、落下物による事故はなくならないが、人や家屋への事故が起こる確率は数段少なくなるはずである。

7,私たちは成田空港の廃港を望んでいるわけではない

 私たち「成田空港から郷土とくらしを守る会」は計画当初から、「内陸に大型空港は建設すべきではない」と主張してきた。(平和塔遷座の際の「取極書」を参照)
 しかし、「取極書」締結以降、私たちは「成田空港廃港」を主張したことはない。

 私たちは成田空港の健全な発展は望ましいと考えている。

 しかし、国策や航空会社の利益を優先し、周辺住民の平穏で、安全で、健康的な生活を犠牲とする、今回の「成田空港機能強化計画」を認めるわけにはいかない。

 今からでも遅くはない。今回の機能強化計画は撤回すべきである。

以上


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