周辺住民による成田空港問題フォーラム総括と提言

1999年(平成11年)6月29日

周辺住民による成田空港間題フォーラム実行委員会

はじめに

 地域住民にとって、成田空港間題の解決は長年の悲願であり、一日も早く解決し、地域と空港の実生を実現することを望んできた。

 問題解決の道筋はシンポジウム、円卓会議において確認された。しかし、成田空港問題の中心的命題の一つである平行滑走路の建設については、地域に多大な影響を及ぽすにもかかわらず、あたかも建設主体と用地内地権者が決定権をもっているかのような構図が続き、地域そのものが方向性を見失いかねない状況さえ顕在化してきた。これは地域の将来の命運にかかわる問題であり、時間的にも切迫した状況であるとの認識のもと、そうした構図の枠外にあった騒音下住民が中心となり今回のフォーラムを開催した。これは成田空港問題の解決に向けた、周辺住民の主体的対応の第一歩と位置づけられるものである。以下にその結論をとりまとめる。

1.シンポジウム、円卓会議の錯論

(1)シンポジウム・円卓会議において、空港整備は理解できるところであり、地域の合意を形成しつつ進めるという認識で、参加者全員が一致し、平行滑走路の用地取得は、あくまでも話し合いによって解決されなければならないとされた。また、空港建設に伴って生じた根強い不信感の解消、騒音などいまだ解決困難な問題、滑走路完成後に負荷を負うこととなる住民の諸問題が併行的に解決されることが必要であると確認された。

(2)地域はシンポジウム、円卓会議の成果が早い機会に実現されると大きな期待をもって見守り協力してきたが、残念なことに今日においても、問題解決に至っていない。

2.空港づくり

(1)空港整備については円卓会議.の合意に基づき進めることを前提とする。

(2)国・公団は地域と空港との共生の理念を実現するために、騒音対策など空港のマイナス影響の軽減を目的とした共生策、空港づくり、地域づくりを三位一体として取り組む共生大綱を提示した。この大綱は、今後の空港及ぴ周辺地域の進むべき指針である。建設主体においては地域の一員であることを改めて噛み締め、この大綱を速やかに遂行することを望みたい。

(3)平行滑走路は、騒音等のマイナス影響をもたらすものの、地域の長期的な発展を導く基幹施設となり、その早期完成は避けて通れぬ選択である。平行滑走路の未完は成田空港問題解決の先送りとなり、人々の心に暗い影を落とし、地域の活力を奪い続けることになりかねない。

(4)国・公団が提示した暫定案による新しい展開については、具体的な建設計画の説明も十分でない段階であり、また現在、県・市町が当初計画の実現に最大限努力することを方針としていることから、当面、その推移を見守りたい。

(5)特に用地内地権者に関しては、移転など多くの問題が発生することが予想されるところから、最大限、誠意をもって対応しなくてはならない。

3.共生策

(1)共生策は空港のマイナス影響を軽減し、騒音地域の生活環境を改善する施策である。騒音対策の進展、共生財団の設置などの成果はみられるものの、課題は多く残されており、現滑走路にかかわる共生策が速やかに推進されることを望む。

(2)今後の進展に伴う新たな問題の防止は、後追いとならないよう最優先に取り組まれるべきものである。万一発生した場合は誠意をもって、十分に対応することが求められる

(3)点検する機関としての共生委員会は、その機能を果たし、地域に受け入れられてきたが、今後の多くの課題を考えると、活動領域の拡大と委員会の強化が必要である。

4.地域づくリ

 地域と空港が共生する地域づくりについては二つの側面があり、一つは騒音区域の計画的地域づくりであり、もう一つは、空港県全体を見据えた地域振興である。そのためにはプラス効果をもたらす新しいシステムの構築が必要である。

(1)騒音区域の地域づくり

@空港のマイナスの影響を受けている騒音下の地域づくりは、期待されたほど進んでいない。空港のマイナスの影響を受げている地域こそ、空港の持つ活力が活かされるヘきではないだろうか。今後は、千葉県・地元自治体・公団を中心にして、地域住民の声を取り入れ、早急に騒音地区の振興計画を策定し、実現する必要がある。

A広大な騒音下の土地利用については、その大都分が農地と山林であることを考え、現在行われている農業を守り、農地や山林を保全し、活用する施策が喫緊の課題である。このため、騒音下で農業に従事する人や新たな就農者が夢をもてるように、耕作者を対象とする直接的営農支援制度の創設を提案する。

(2)空港圏の地域づくり

 空港周辺全体の視点に立ち、いわゆる東西格差をなくし、均衡ある発展が求められている。空港のプラス効果を拡大させるため、環状道路、圏央道、芝山鉄道の延伸等を早期に実現し、地域産業を活性化させることが望まれる。

5、今後の対応

(I)地域には、国・公団への不信感や、現状及ぴ今後の対応への不安が依然として根強い。もともと空港設置は国が地域に提示したものであり、当事者としての重大な責任を自覚しつつ、地域住民との間に不必要なあつれきを生み出さないように、誠意ある対応を望む。

(2)東峰区については、他の公共事業、たとえばダム工事の際に適用されるような考え方、すなわち集落を分断することなく、用地内住民と一体として対応する方式を取り入れるべきである。

(3)のフォーラムを介して一層強固なものとなった周辺住民の絆を活かし、住民相互の交流と理解を深め、実りある騒音地域、及び空港圏の形成に向かわなければならない。フォーラム実行委員会は、本日のフォーラムの提言がどのように推移してゆくのか見守ってゆきたい。

おわりに

 国・公団、千葉県、地元目治体はもとより、用地内地権者は、本フォーラムの成果に真筆に耳を傾け、局面の打開に取り組むよう希望する。また、われわれ住民は、自らが地域を築く良識ある行動、すなわち主体的かつ理性的な対応によって、成田空港問題の解決と共生の実現に努力する。本フォーラムの成果を踏まえて、一日も早く閉塞的状況が解消され、それによって地域に平和が蘇ることを切望する。地域に光と希望がもたらされることを期待する。