池田秀和氏の公述
○池田公述人(会社員)
私は、このたび暫定滑走路ができる、それから騒音被害を受ける下総地区の住民代表として話させていただきます。
高倉地区は滑走路の端から約5,7Hに位置し、着陸時においては上空約320mの直下になります。皆様方御存じだと思いますけど、ゴルフをなさる方でしたらよくおわかりだと思いますけど、ちょうど総成カントリーのゴルフ場あたりが今想定されているところでございます。そういうことを踏まえて、今我々はここに宣言いたします。我々住民は、国及ぴ地域周辺住民との社会共同生活が成り立っていくための共同の利益を重んじ、騒音等によるある程度までの音による侵害を受認します。今の宣言を前提に本日の主題に入らさせていただきます。
今年の9月12日、暫定滑走路と想定される場所において騒音実体験調査がありました。我々住民は、女性、子供も含め全家族がそれに参加いたしまして、実体験調査をいたしました。その結集、住民全員一致で、とてもじゃないが人間が生活できる環境ではないという結論が出ました。これほどひどい騒音が想定されるにもかかわらず、公団側は一切の話し合いの姿勢を見せず、口から出るのは騒特法、騒防法しか出ないのが現状であります。
そこで、公団、運輸省の皆様に思い出していただきたい。1、共生大綱。これは去年の12月16日、空港間題シンポジウムからの引用で、成田空港問題の原因として、国側の一方的な空港づくりの手法に問題があった。国側はこの指摘を重く受けとめ、対立構造を根本的に解決すると書いてあります。対立構造というのは、必ずしも地権者だけではなく、騒音を受ける住民にもあるわけなんです。騒音を受ける住民は、怒りや怨念を持っています。これは今現在、芝山地区、成田地区でもそうでありますし、これから我々騒音を受ける側にもあります。しかしながら、それをどのような形で皆様方に表明していいのかわからないだけなんです。何かのきっかけがあれば、いずれは必ずや大きな問題となることは必定だと思います。
2、これからの空港建設。これからの空港建設に当たっては、地域と空港との共生を図り、地域の方々と十分に話し合い、それを通じて信頼関係を築くと書いてあります。一度も話し合いがないのにどういうふうにやって信頼関係を築くのか。現在、我々と国との信頼関係はゼロです。全くありません。
3、前川崎運輸大臣が、平成11年5月21日の総理大臣のいる閣議において、空港建設を地域の人々の理解を深めて進めていくというふうに言っているわけですけど、地域の人々というのは騒音地域は入っていないのか。一度も話し合いのない中で、どのように理解を深めるのか非常に不思議でなりません。
平成11年6月、運輸省、空港公団、「暫定滑走路についての基本的な考え」というレポートの中で、「滑走路の位置が北側にずれることに伴い、住民の方々が抱かれる様々な御懸念についてよく相談させていただき、必要な対策を実施する」と書いてあります。いつ相談するのか。我々は相談なんか受けてない。1O年後か、20年後か。この件に関して今まで全然話し合いがなされてないということに関して、千葉県知事、中村空港公団総裁、運輸大臣、果たしてこのことを御存じなのであろうか。
もしそういうことを知っていてやっているとすれば、我々住民を愚弄するもので、確信犯である。しかし、下には指示してあるというんであれば、担当部署がただ動いてないだけであります。日本の玄関となるこういう空港プロジェクト、大切な問題です。こういう大切な問題のときに、中村空港公団総裁の顔が全然見えてこない。何しているんだ今。今やらないでいつ仕事する。頭の中は退職金の計算でいっぱいか。我々住民の前に顔を出して、話し合ってもらいたい。この件に関して早急に回答をいただきたいと思います。
そもそも、あなた方は絶対権力者ではないはずなんです。我々と同じ国民じゃないですか。たまたま行政の代表として、我々の代表として、行政を司っている専門家であるはずなんです。
ある行政の専門家がこういうことを言っています。あなたたちの意見を通すには、同じテーブルに乗せるには、大規模な運動、署名運動、請願書を何通も書いて、出しては引っ込め、出しては引っ込めという気長な運動を起こさなければ無理であると。じゃ、この運動をだれがやるのか。我々には仕事がある。生活もあります。ところが、お金はない。暇もない。知恵もない。指導者となるべき人間もいない。皆さん方はこういうことを見越しているんじゃないんですか。
一体、空港の公共性というのは何か。国の所有物だから公共性と言うのではないはずなんです。国民全体のものをもって公共の施設と言うのではないでしょうか。騒特法、騒防法というのは公共の施設を運営するための法律であって、そのカをもって国民を絶対的権力で束縛するものではないはずなんです。なぜなら、憲法25条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、29条財産権「これを侵してはならない。」、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共の福祉のために用いる。」、民法第1条「主権の共有は公共の福祉に尊ぶ」、「権利の乱用はこれを許さず」。
昭和63年、福岡空港公書訴訟において第一審判決が出ました。この中で、公共性は受認限度をある程度は高める。要するに我慢の限度をある程度は高める。しかし、侵害行為の違法性がなくなるものではないというふうに言っているんです。これは大阪の空港訴訟、それから、横田基地でも同一の判示が出ております。大阪空港では、W値で70から75、福岡では75をもって受認限度の基準値としております。それから10年が今現在経過しておりますけど、環境基準がこれからは、厳しくなることがあっても緩やかになるはずはないんです。
これは裁判からの引用ですけど、社会生活を営む上で、騒音住民の権利を考慮しない絶対的権利は存在しない。受認限度とは、権利を有する者の権利の行使に伴う侵害を違法と判断するについてとられた基準である。
最後に、この場をおかりしてお願いします。我々住民は、実体験調査によって受認限度を超えると判断しております。ぜひ誠意ある話し合いを求めます。我々は反対はしません。話し合いをしたいだけなんです。ぜひこの場をもちまして話し含いを提案します。しかしながら、話は聞く必要ない運動を起こせというのであれば、我々は十分に立ち上がります。以上です。ありがとうございました。