成田空港の平和利用を誓う新東京国際空港公団総裁;今井榮文氏が日本山妙法寺山主;藤井日達上人への親書
拝啓
酷暑の地にて藤井日達貌下には、益々御元気に御活躍の由、御同慶にたえません。かねてより貌下の三里塚にての御講演の記録や、佐藤上人への御手紙など拝見させていただき、また佐藤上人の猊下の御意見に基ずく行動や主張などを通じ、猊下の空港の軍事利用に対する御懸念を十分理解するとともに、私共といたしましては本空港の非軍事的性格についての明確な説明、また地元住民の生活安定などに対する配慮が必ずしも十分でなかったことを反省いたしております。
しかしながら私共の建設する空港は日米安保条約下とはいえ、如可なる場合においても軍事的に利用することは一切なく、平和な民間空港として周辺住民の方々とともに親しく共存して行くものであり、そのためには周辺住民の生活の安定と騒音対策を中核とする周辺の開発計画の推進など誠意をもって行なって行く決意であります。
つきましては空港の建設も進捗し開港を日前にしました今日、平和塔は航空の安全の立場からみましてもこれを空港の近くに遷座していただき末永く国際空港の平和護持と住民生活の安定、航空の安全を祈願して頂けたらと存じます。
なお遷座にあたりましては塔や付属建物の再建について公団として出来るだけの御協力を申し上げる所存でございます。
以上の私共の決意に国、千葉県からも賛同を得ましたので、佐藤上人と協議してまいりましたその内容について上人より十分御聞き取りのうえ是非とも御了承下さいますようお願い申し上げます。
末筆ながら貌下の御健康と平和護持の目的の達成を御祈り申し上げます。
敬具
昭和四十七年四月十五日
新東京国際空港公団
総裁 今井榮文
日本山妙法寺山主 藤井日達貌下