千葉県「平成28年度  成田国際空港周辺航空機騒音測定結果 (年報)」を読んだ感想


◎達成率は6ポイント減の58%、理由は明示されず

 今年の特徴は、何と言っても環境基準を達成していない測定局が5局増えた事です。この結果、達成率は6ポイント減の58%となりました。
 所が、この報告書の中では「6ポイント減になった」と言う、周辺住民にとっては生活環境に大きな影響を与えるこの事実には、余り触れていません。
 この件の記載は報告書5ページに「(2)環境基準達成状況 千葉県では、航空機騒音に係る環境基準の地域類型指定において、主に住宅の用に供される地域を1類型地域、その他の地域を2類型地域に指定している。環境基準指定地域内の固定測定局83局(全て1類型で環境基準値はLden 57dB)のうち、平成28年度に環境基準を達成したのは48局であり、達成率は58%であった。環境基準達成状況の推移は表3のとおりである。と触れているのみです。

 それどころか、このように成田空港周辺の騒音環境が悪化しているにもかかわらず、千葉県環境生活部大気保全課長 北橋伸一氏は「はじめに」の中で「平成28年度の年間発着回数は、新規就航や増便などにより過去最高の24.6万回を記録し、また、空港機能の拡充に伴い、『既存滑走路の延長』、『滑走路の増設』が計画されており、成田国際空港の発着便数はさらに増加すると予想されます。」と機能拡張計画を前提とした上で、「本報告書が今後の航空機騒音軽減対策に役立てば幸いに存じます。」と書き、「発着回数増が平成28年度の環境基準達成率減少をうながしているのではないか」と言う現状を容認しているようにさえ見えます。

 未達成になった5局は、29番の成田市芦田局、44番の同市久住局、56番の同市堀之内局、74番の多古町千田局、75番の同町牛尾地区となります。この5局の位置は下記「コンター図」の赤丸になります。
 この5局が未達成になった理由については、一切の記載はありません。11月10日付けの日本経済新聞によりますと、記者発表した千葉県大気保全課の担当者は「達成率低下の明確な理由は分からない」と述べています。県の職員ですから、上記のような「機能強化計画容認」方針をとる森田知事や幹部の方針をおもんばかる立場や、学問的な検証などは言える立場にないのかも知れませんが、少し残念です。

 私も、素人なりに報告書を読んだのですが、確かに、これといった、明確な理由は見つかりませんでした。いくつかの私なりの特徴と要因を書いてみますと、
(1)全測定局中で平成27年度よりも Lden が増加している局が10局、減少している局が10局と、同じになっています。
(2)飛行コース直下地域で平成28年度から未達成となった局がA滑走路南側で1局、B滑走路南側で2局増加しているのが目につきます。
(3)このことから南側地域で Lden が高くなっていることが考えられ、報告書11・12ページの図6と図7でも、A滑走路は南北共に、 Lden が横ばいか、やや下がっているのに対して、B滑走路北側はほぼ横ばい、B滑走路南側は横ばいから、やや増加していることが分かります。
(4)A・B滑走路の発着回数を報告書23ページの「運用状況」の表から、平成27年度と較べてみますと、A滑走路は離陸が5426回増、着陸が16回増となっており、B滑走路は離陸が180回減、着陸が5254回増となっています。発着回数は全体的にA滑走路、B滑走路共に約5000回増加しているのですが、この増加が全体的な Lden の押上につながり、A滑走路とB滑走路の離着陸回数の偏りが Lden に微妙に影響して、5測定局が未達成になった可能性があります。
 今後、飛行回数が増えれば増えるほど、環境基準未達成が増えるのではないでしょうか。年間発着回数を現在の25万回から、オリンピックのある2020年に30万回に、さらに、第3滑走路建設やB滑走路の北伸ばしにより、50万回にしようとする「機能極化計画」が成田空港周辺地域の生活環境を劇的に悪化させることは、火を見るよりも明らかです。

◎「コンター図」は平成27年度のものと大きく変化

          平成28年度                       平成27年度

  

 目についたのは、平成28年度のコンターが、平成27年度のコンターと較べて、細かな点で変化していることです。
(1)まず、谷間地区のコンターが大きく違っています。特に北側は谷間地区がほぼ全部 Lden 75デシベル以上になっています。平成27度では谷間地域に Lden 75デシベル以下の地域が細く存在していました。
(2)また、滑走路側方のコンターが細かくなって凹凸が大きくなっています。A・B滑走路共に、滑走路南端付近が横に大きく膨らんでいます。着陸の際の逆噴射(リバース)音や、離陸時の高出力エンジンの音が影響しているのでしょうか。
(3)何故、このような違いが出てきたのか不思議です。平成28年度コンターと平成27年度コンターの作成方法が異なったためでしょうか。と言っても、測定局の位置は変化ありませんので、作成方法に大きな違いはないと思うのです。報告書にはこれらの理由について、一切触れていません。

◎夜間の最高音についての分析を是非お願いします

 残念なのはこの報告書20ページには「最大騒音レベル(年平均値)」はあるのですが、夜間(午後8時〜午後10時59分)の測定局毎・時間帯毎の、最大騒音が一切ないことです。せめて、月別・測定局別の最大騒音レベル(平均でなく、1機毎の)を離陸機、着陸機毎に表示してもらうと、睡眠への影響が推測できると思うのです。

◎カーフューの影響について分析をお願いします

 また、午前11時〜翌朝午前6時までの飛行(「カーフュー弾力的運用」や「緊急時のカーフュー」)の騒音がどのくらいだったのか、それが、どのような影響を与えるのかについての、分析をしていただけると騒音下住民にとって幸いに思います。


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