鬼澤伸夫氏の公述
○鬼澤公述人(会社役員:(株)きざわ)
御紹介いただきました鬼澤伸夫でございます。私は、この文化会館から約100mか200mのところで自動車の販売・整備をしている会社を営んでいる者でございます。私はちょうど30数年前、成田市商工会青年部長、その後に成田青年会議所理事長、現在は成田空対策協議会会長という立場、あるいは、その間に空港問題シンポジウム、円卓会議に全面的に参加てまいりまして、一応深いかかわり合いを特ってこの問題の解決に取り組んできたつもりでございす。そういった背景の中で現在の心境を述べさせていただきます。基本的にはこの暫定案について賛成でございます。ただし、いろいろな条件がございますので、その辺を踏まえて述べさせていたきます。
私は、成田空港暫定滑走路建設に賛成いたします。ただし、当初計画の2,500m滑走路整備に継続して取り組むことを求めます。4,000m滑走路の環境対策も完了していない現状もあり、新滑走路とあせて、騒音対策等環境整備の継続を要請します。特に、空港周辺地域において都市計画区域の線引が急がれるため、関係者にその努力を要請します。滑走路の整備だけで当然ながら空港づくりは完了するものではなく、交通、情報システムの整備、都市整備の進め、ハブ空港と評価できる空港及ぴ空港都市を築いてもらいたいと思います。
我が国の経済社会は大きな曲がり角に差しかかっていますが、空港周辺地域においても経済活性化が強く求められています。公共工事に依存し、新鮮味がない施策を提唱してきた今までの自治体に滑走路の着工後は空港問題を解決して、などの言いわけは通用しないことを自覚し、魅力的な政策を提示するとともに、地域を活性化する実績を築くことが求められています。
また、反対派の一部に、農業には不況はないなどと無責任な言動がありますが、多様な人々が生きる社会にあっては、自分のことばかり主張するのではなく、他者への思いやりこそが大切なことであり、そのことが人間社会を支える基本ではないかと私は思います。
運輸省、空港公団、千葉県には、ここまで2本目の滑走路整備が遅れた原因の分析と反省を求めす。その原因は決して、反対派がいたからだけではないはずであります。空港建設の現場を預かる立場にあって、事業を進めることよりも、個人の栄位、栄達を求めるような体質はなかったでありまようか。まず相手に対応するのではなく、自分たちの都合を押しつけた手法を用いてこなかったでありましょうか。もしも仮に民間事業者がこのような手法を用いた場合、即座に倒産に追い込まれてまうでありましょう。
空港利用料金を安くするなど、空港公団のリストラなどの対応も必要なときではないでしょうか。また、空港公団は自らを地域の一員であると述べておりますが、そのことを再認識した努力を求めます。建設主体には、多くの人々の暮らしを変えた大規模な公共工事を実施しているんだということを改めて認識し、魅力ある空港と地域をつくり上げるために尽力されることを希望します。
反対派の主張には真剣さが感じ取れません。理由は、地域全体の将来を述べていないからであります。主張の中に、地域全体、国の行く末を見通すどのようなビジョンがあるのか不明であります。地球的課題の実験村建設に地域住民のカは必要ではないのでしょうか。また、自治体や研究機関の充実情報が求められるのではないでしょうか。カを結集する努力を怠っている反対派の現状は、単に空港に反対しているだけ以外の何ものでもありません。予言者のように言いっ放しでは地域の同意は得られるはずもな<、いわば無責任で未熟な主張に地域の将来、命運を委ねるわけにはいきません。
かつての、農民が被害者、国側が加害者という図式を単純に現状に当てはめることはできません。かって被害者であった反対派は、現在、芝山鉄道をはじめとする地域の振興を妨害する加害者となっています。また、円卓会議終了後の約5年間の膠着状態は、私の経験から、あるいは一般的な慣習からも、まず時間としては長過ぎたのではないでしょうか。具体像を提示しない農業政策など、評価を得られないことを認識すべきであります。
この5年間において反対派は、努力と知識を結集する成果を提示できなかった以上、我々地域住民は、地球的課題の実験村を滑走路上にという空想に、もはやつき合うことはできません。もちろん、環境を專重し、農業を振興することに反対するものではなく、適切なる場所で関係者の総力を結集して、その目的に向かうべきであります。
今日まで、民間人だけが空港づくりに及第点をとれてきたわけではありません。空港の完全化を公約に掲げるだけの政治家を許してきたのも市民でありました。また、公共が努力不足であるならぱそれを指摘し、問題の解決へ向けて協力すべきこともあったように思います。事業を進めずとも組織が維持できるような公共組織の体質を変革することも、市民の努力にかかっています。
反対派の言論に、民主主義の手続がとられているか否かの主張があります。民主主義とは、少数意見の尊重が基本とされます。それは多数派が少数派の意見を酌み取り、実行することであります。当然ながら、少数派も主張が取り入れられたならぱそれに従わなければなりません。円卓会議終了後、反対運動を続けてきた多数の人々が反対運動を離れ、天神峰、木の根の人々が用地外に離れて移転したことを、残っている反対派の人々は重い事実として認識すべきだと思います。
100%自分の思いどおりにならなければ民主主義ではない、などという主張はルール違反であります。また、反対派の空港建設を前提にした話し合いは拒否するとの主張の中身は、滑走路建設を全面撤回しろということであり、これこそ結論の押しつけであります。地域住民は、このような反対派の身勝手な民主主義論や話し合い拒否論に賛同はできません。
成田空港問題の解決に向け、収用採決申請の取り下げ、地球的課題の実験村検討委員会の開催、共生委員会の設置、また、地域住民の行動としては、本年6月のフォーラムなどの行動がとられてまいりました。これらは完壁ではないにしろ、少なからず民主主義のルールのもとに実行されたことを評価できます。
しかしながら、現状ですべてが解決されたわけではありません。今後、平行滑走路が完成しても空港問題が存在する状況になっては、地域は大いに困ることになります。暫定滑走路着工後も問題解決に向けた十分な話し合いを継続しなければなりません。その場合、関係者は、冷静に民主主義のルールを適用する必要があることは言うまでもありません。特に地域と空港の共生を実現する上で、共生委員会の役割はますます重要となるはずです。活動領域の拡大や委員会の強化について関係者に要請いたします。
'暫定滑走路の建設に当たっては、空港建設主体に真剣な取り組みが要求されます。現時点での事業内容を暫定としているように、まだまだ多くの課題が積み残されています。速やかに当初計画の完成、空港間題の解決が実現されるべきであります。成田空港をめぐっては、かつてシンポジウム、円卓会議で提案された、成田方式の創出、壮大な実験を地域に定着させることが必要であります。
開港後20数年を経過した本格的な滑走路着工を契機として、関係者一同の一層の努力を要請します、役人は変わります。我々は変わりません。役人の人たちには、物事を進めない理由を上手に課せることを期待しません。成田空港に関する課題を速やかに解決していただくことを要望いたします。平行滑走路建設と同時に、共生策、地域振興策、公約がどのように実行されるかに対し、我々は継続して目を光らせていきます。また、反対する人たちには、話し合いに応じて解決を目指す社会的責任を果たしていただくことを強くお願いいたしまして、私の公述といたします。