空港公団民営化に関する小泉議員の質問

第156回国会 参議院 国土交通委員会 第23号
平成十五年七月三日(木曜日)

○小泉親司君 日本共産党の小泉でございます。
今日は国土交通委員会で質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は成田空港のいわゆる民営化法案について質問をさせていただきたいと思います。
具体的な質問に入る前に、私はまず基本的な問題について国土交通大臣にお尋ねしたいと思います。
成田空港は、御承知のとおり、農民の土地の取上げがありまして、大変激しい運動が繰り広げられてまいりました。私は、決してこの運動は暴力学生集団の運動ではなくて、農民の道理ある運動も行われてきたと思います。その中で、成田空港の問題については七二年の九月二十日に当時の運輸大臣と空港公団総裁、千葉県知事及び平和塔奉賛会の間で四項目の合意が行われております。
この合意では、新東京国際空港は純然たる民間空港であり、安保条約及びこれに基づく地位協定の存在にもかかわらず、これを軍事的に利用することは絶対に認めない。その意味においてMACのチャーター機の離発着もこれを認めない。なお、現在羽田空港に行われているMACのチャーター機の離発着も極力やめさせるよう努力する。
二、新東京国際空港の騒音対策については、乙等は、乙というのは運輸大臣、当時の丹羽喬四郎さんでございますが、及び千葉県知事の川上さん、新東京国際空港公団総裁の今井さん、こういう方が、署名をされた方々が重要な問題として騒音の各種対策に努力する、また、乙等は甲に対して騒音対策委員会委員を委嘱し、周辺住民の立場に立って積極的な活動を期待する。
三、周辺農民に対して現在用地買収未決済の地主及びやむを得ず集団移転を余儀なくされた地主に対し、その個々の要望等を聞き、その移転補償問題の解決に誠意を持って対処するなどの合意でございます。
この中で、私、今回取り上げたいのは、安保条約や地位協定にかかわらず軍事利用をしないという合意が行われてまいりました。
私、この法案の衆議院の審議の中で、当時有事法制の問題がございまして、るる大臣もこの問題についてお答えになっておるんですが、何かどうも本当にこれ軍事利用しないという約束が守られているのかという点での大変私疑問を持っているものですから、その意味で、私はこのような合意、これは成田空港がいわゆる民営化されても当然私守らなければならない問題だというふうに思いますが、大臣にまずこの点をお尋ねしたいと思います。


○国務大臣(扇千景君) 今、改めて小泉議員からかつての、一九七二年のこのお互いの取決めに関して御説明がございました。
私は、そのとおりであろうと思いますし、歴代の運輸大臣もこの答弁の重みというものを重々感じながらされてきたと思っておりますし、現在もそれが引き継がれております。また、私の手元に、これ四十三年三月の五日でございますけれども、運輸委員会で小川三男委員のお話で、中曽根運輸大臣でございます。これは、成田空港は軍事基地には絶対使わせない、戦闘目的や軍事基地用として成田空港を使うことは拒絶するというのが中曽根運輸大臣の御答弁でございます。これは今もありますし、現在もそのとおり守られてきておりますので、私たちはこの重みというものを十分に拝して、今、今日ここにいませんけれども、総裁が今日午前中も来ておりました。きっとこの委員会もごらんになっていると思いますから、それは当然認識していらっしゃることで、当たり前のことだと思っています。


○小泉親司君 私は、個人的に申し上げると、七二年というのは実は千葉大学に在学しておりまして、ちょうど卒論を書いている時期にこの成田闘争というのがありまして、私は暴力学生集団ではございません。当然、この農民の土地取上げの闘いをやりましたが、このときは、当時、もう御承知のとおり、ちょうどベトナム侵略戦争が非常にさなかでありまして、このベトナム侵略戦争にこの羽田空港が利用されるんじゃないかという世論、意見が非常に強かったんです。 実際に、この成田空港闘争というのは、本当に土地、農民の土地を取り上げたと、この点では大変問題があったことで、御承知のとおり、この成田空港というのは、一番初めが設置されたのは、あれは八街、富里という案がありまして、それが今度はいわゆる天皇家が持っておりました御料牧場を中心にしましてこの成田空港が建設された。そのときに、この問題が合意されたというのは、大変多くの人々が将来にわたってこの成田空港は軍事利用化しちゃいけないと。
もうこれは御承知のとおりであると思いますが、この成田空港には、当時軍事郵便局がございました。つまり、MACのチャーター便と先ほどお話ししましたのは、アメリカ軍が羽田空港に軍事郵便局を持っておりまして、この軍事郵便局を成田に移すんじゃないかということがありまして、そういった問題でこの軍事利用の問題というのはあるわけですが、私は、現在、この成田空港の軍事化反対の合意を取り上げるのは、どうも有事立法や周辺事態法でもこの問題が議論になって、アメリカが成田空港なども軍事利用化するんじゃないかという懸念が非常に強いと、県民の中にも強いということもありまして、是非この点について、私は、民営化がもし行われたということであっても、当然この点については守られるべきだということを重ねて大臣に御要望しておきたいと思います。
次に、私は、なぜ民営化なのかと。私たちは、御承知のとおり、この民営化については反対であります。特に、小泉内閣が昨年の十二月十七日にこの民営化を、完全民営化を閣議決定したわけですが、大臣も御承知のとおり、当時の行革の中では、国土交通省、所管官庁としては、この成田空港の整備に当たっては、様々な理由が挙げられておりますけれども、例えば、今度の成田空港は歴史的な経過や大規模内陸空港としての特性を踏まえ、騒音対策、地域との共生策等の実施が不可欠であり、一般民間企業と同等の完全な民営化は困難であると考えるという立場を取っておられた。
この理由は、先ほど話しましたように、一つは歴史的経緯がある、大規模の内陸空港である、それから騒音対策や共生策がどうしても必要なんだと、この主に三つの理由が挙げられて、民営化は反対だという立場が取られていたわけですが、この点については、今度は国土交通省は少し心変わりをされておりますけれども、いかなる理由をもってこの民営化に心変わりをされたのか、この点について私は次にお尋ねをしたいと思います。


○政府参考人(洞駿君) お答え申し上げます。
国土交通省では、特殊法人等の廃止又は民営化を前提にゼロベースで見直すという総理指示を受けまして、平成十三年の九月に行政改革推進事務局に対しまして、空港公団の民営化に当たっては、成田空港の整備、運営というものは我が国の国際航空政策と不可分であること、あるいは過去の歴史的な経緯や大規模内陸空港であることを踏まえた環境対策、共生策の実施が不可欠であること等の諸課題の解決が図られる必要がある旨を報告いたしました。
その後、国土交通省では、昨年の四月に交通政策審議会の航空分科会に対しまして、国際拠点空港の民営化を含む今後の空港の整備に関する方策について諮問をしまして、約八か月にわたって、十五回もの空港整備部会の開催とか、航空会社、地方自治体等関係者からのヒアリングなどによって検討を進めまして、昨年の十二月に答申が取りまとめられたところでございます。
この答申におきましては、国際拠点空港の民営化については、国が国際拠点空港の整備について責任を持ち、適切に対応するということを担保する必要があると、そういう前提の下にそれぞれの空港が創意工夫を生かせるような自立的な経営環境を整えて、経営の一層の効率化、経営の透明性の向上、利用者サービスの向上等を推進することが必要であるという基本認識が示されたところでございます。
で、新東京国際空港公団につきましては、開港後二十五年を迎えまして、経営基盤も成熟しつつあること等から、完全民営化に向けて十六年度に特殊会社化して、本来の平行滑走路等の早期整備を着実に推進して、できるだけ早く株式上場を目指すことが必要であって、その際に、過去の経緯や大規模内陸空港等に配慮して、環境対策、共生策の適切かつ確実な実施を確保すると、これもちゃんと担保するということが必要だということを結論が得られました。
こういった答申を踏まえまして今回の法律案を提出したところでございますけれども、まずは国の国際航空政策なり空港整備についてきちっと国が最終的に責任を持つということを担保すると同時に、空港の過去の経緯とか空港の今後の経営等を考えますと、環境、共生策の重要性をしっかり担保するという、そういう保障措置、きちっと取ることに必要な規定を設けてございますけれども、そういう担保措置を設けることによって民営化を図って、そして民営化の持つメリットを最大限発揮して、利用者利便にそれを増進につなげていこうということを考えているところでございます。


○小泉親司君 長い答弁の割にはよく分からないんですが、私、お尋ねしたいのは、この間でも私、運輸省に対して成田空港の郷土とくらしを守る会などの人々と一緒に交渉してまいりました。この民営化が出る法案の前には、国土交通省は、御承知のとおり、上下分離一体方式と、このことを繰り返し言っていた。我々が交渉に行くと、いや、上下分離一体方式で十分皆さん方の騒音対策はやれますよと。
続いて、この民営化が出てきたわけですが、例えば単独上下分離方式ということになると、いわゆる基本施設と土地はある会社が、公的法人が持つと、それからターミナルなどの管理運営については運営会社を作ってこれで民営化してやると。この上下分離一体方式ということを国土交通省は別にこれまで言ってこなかったとは言わないと思いますが、その単独上下分離方式というのは、なぜそうすると駄目になったのか。つまり民営化と、全体の民営化という方式をなぜ取られたのか。
例えば、国際空港の拠点の民営化についてという文書では、その理由について、空港運営を行う株式会社の当期利益が大きくなる、かつ、経営が一体的に行われることにより株式を売却する場合の市場の評価が得られやすいということを挙げておられるわけですね。となると、この民営化方式を取ったというのは、そうしたいわゆる何よりも株式会社の当期利益優先の仕組みということが主な原因なのか。その上下分離方式を今まで主張してきた、それがまた更に民営化に変わったという、その三段階の変わりようというのはどういうふうな関係になるのか、その点だけお尋ねしたいと思います。


○政府参考人(洞駿君) 先ほどの航空審議会において一年間掛けていろいろ議論をお願いしたわけでございますけれども、当初の案として三空港を一体として、下物を、下物法人を、合体して一つの下物法人を作って、それぞれの、上部をそれぞれ単独で民営化するといういわゆる上下分離案といったものをベースにいろいろ議論を重ねていったわけでございますけれども、関係者、いろいろ自治体の皆様も含め、空港の関係者、そしてエアラインの皆様方等々といろいろ議論を重ねる中において、いろいろ、それぞれの方策について一長一短があるわけでございまして、最終的には下物を統一して合体するという、これについては一番致命的な問題は、関係者の共通理解といいますか、が得られなかったというのが一番致命的な問題だと思います。
また、下物は一体としてやりますけれども上物は別々にやるということになりますと、その空港の経営全体を見たときには、下の、経営主体が二つあるわけでございまして、それぞれの経営の動機といいますか、投資一つ取ってもその利害の調整というのが非常に複雑なものになってまいります。そうした場合に、民営化した場合に、当該会社の将来性とか、そういったものというのが非常に、経営の見通しというのが非常に不安定な要素というのもあるわけでございまして、そういう意味では上下一体で民営化した方が一番ベストではないかというような結論に達して、こういう結論になったということでございます。


○小泉親司君 関係者の合意とおっしゃっているけれども、その関係者というのはだれなのかというのがよく分からないんだけれども。
例えば、成田空港は公団から発足して、今度特殊会社、いわゆる完全民営化の道を歩むわけですね。関西は、御承知のとおり、特殊会社から出発して、今後民営化が検討されると。中部はひょっとすると初めから民営化だということも考えられている。
じゃ、そうなると、成田はこのような中で公団を取ってきたわけですが、国の資金を相当入れましたから、その意味では唯一収益性が最も高い。つまり、民営化すれば財界に大きな利益をもたらすんじゃないかと。
特に経団連は、昨年十一月十九日に発表した今後の空港整備と国際拠点空港の民営化についての中では、上下分離一体方式について非常に強く批判されておられる。その点では、あれなんですか、関係者の合意が得られなかったというのは、例えば経団連はもう強硬にこれ、上下分離一体方式は駄目だというふうな見解なんですか。


○政府参考人(洞駿君) 関係者と申しますのは、まずそれぞれの、成田公団、そして関空株式会社、そして中部株式会社、そして関係周辺の地方公共団体、エアライン等々でございまして、経団連の先生はメンバーには入っていらっしゃいません。
ですから、それぞれの関係者といろいろ議論しました結果、先ほど申しましたような、上下分離したものを一体で、合体して上下分離するというような案に意見の一致が見られなかったということなんです。
それで、経団連は別途提言をされております。それは、上下一体で民営化すべきだという、上下一体でそれぞれ単独で民営化すべきだという経団連の提言でございますけれども、それは、結果的に私どももその結論に落ち着いたということで、結果的に同じ結論に達したということでございます。


○小泉親司君 航空局長は衆議院の審議でも結果として結論が一致したんだということを繰り返し言っておられるけれども、その経過として、結果としてじゃなくて経過として、経団連は、例えば成田、関空、中部の拠点三空港の民営化については、例えば成田をまず民営化する、その売却収入を空港特会を通じて羽田の再拡張にも使う、それから関空の経営改善にも使う、こういう提言が、それに重点的に充当するんだと。それは、航空局長は衆議院の審議でも、そういう質問に対しては、結果として結論が一致したんだと、たまたま一致したんだというふうなニュアンスなんだけれども、現実問題としては、その一連の民営化か、初めから民営化か、上下分離一体方式か、それとも民営化、国土交通省が前に取っていたような民営化反対なのかと。そういう一連の論議の中でこうした経団連の提言が出され、それが今度の国土交通省のいわゆる成田空港に対するこうした民営化の方向に非常に大きな影響を与えたということなんじゃないんですか。その点はお認めにはならないんですか。


○政府参考人(洞駿君) 繰り返しになりますが、経団連から正式に意見を聴いたということはございません。ですから、結果として私どもの議論の結論と経団連の提言の内容がたまたま一致したということでございます。


○小泉親司君 たまたま一致したのには、非常に明確になっていると思うんですが。
それじゃ、何しろ成田を民営化してその売却収入を空港特会を通じ羽田の再拡張に使い、関空の経営改善に使う、重点的にこれ充当するんだと。この点の政策というのは、もう明確にその路線でこれから行かれるでしょう。これはたまたまじゃなくて、もうこれから将来にわたって行かれるんでしょう。


○政府参考人(洞駿君) お答え申し上げます。
今後、民営化をして、株式売却収入というのが入ってくるわけでございますけれども、これは当然のことながら、空港整備特別会計から成田公団に出資したお金でございますから、私どもの空整特会に戻してもらうというのは当然のことでございます。
空整特会に戻したということになりますと、この金をどういうふうに使うかということになりますと、今、我々がまさしく求められている現下の課題というものは、国際拠点空港等を始めとする大都市拠点空港の整備というものが急がれるわけでございますから、その一番優先的といいますか、緊急性の高い、プライオリティーの高いところにお金が回っていくというのは、これまた自然の流れだと考えております。


○小泉親司君 私は、全然自然の流れじゃなくて、実際に関空の赤字対策や羽田の再拡張という、こういうところの赤字対策から必要になった、それを成田の民営化という形にしたんじゃないかという点は、この今までの議論でも私ははっきりしているんじゃないかなというふうに考えております。
ただ、私は、こういうお金の問題は、具体的にこうした羽田の再拡張や関空の二期工事などについても当然これは使われるということになると、こういうのを私たちは無駄な公共事業で、これはもう削減すべきだということを繰り返し要求しておりますが、私は、この今度の民営化に当たって、単にこうした財界の、私は財界の要望じゃないかなと思いますが、こういうものばかりじゃなくて、先ほど言いましたような騒音対策や環境対策が万全に取られるような資金的手当てにもう少しお金を使うということも考える必要があるんじゃないかと。
特に、今、共生財団というのがこれありまして、御承知のとおりの周辺対策に取り組んでいる財団ですが、私もこの民営化に当たりまして成田空港の方々からいろいろとお話をお聞きしたり、周辺市町村からお聞きしたり、騒音対策で悩んでおられる住民の方といろいろお話ししました。そこの中で、やはり共生財団が今非常に基金を、百億の基金の利子を使いながら実際には騒音対策やっているけれども、今非常に共生財団が基金が実際に取り崩さざるを得ないような状況にあると。だから、是非この出資金を増やすとかの対策を、国がもう少し積極的に対策を取る必要があるんじゃないかというような意見が出されております。 この共生財団の今の基金の状況、これは一体どういうふうになっているのか。国土交通省としては、こういった国が責任を持って共生財団などの出資金を増やすなどのことをやって、騒音対策や環境対策に十分なお金が、資金的な手当てができるような方策を取るべきじゃないかというような意見を採用するかどうかという点についてのお考えをお聞きしたいというふうに思います。


○政府参考人(洞駿君) 成田空港周辺地域共生財団は、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律、いわゆる騒防法というものがございますけれども、その枠組みを超えて成田の実情に即したよりきめ細かな騒音対策等の事業を実施するために、成田空港公団や関係の周辺自治体の出捐によって平成九年に設立された財団でございまして、住宅の防音工事助成に関する補完事業とか騒音測定等を実施してございます。
共生財団、これはいろんな事業を行ってきておりまして、例えば民家防音工事助成事業等については、対象住宅に対する防音工事等の進捗率は約八割ぐらいになっておりまして、財団の事業はかなり進んでいると聞いてございます。しかし、その一方で基金というのがありまして、これが昨今の低金利の状況を踏まえてだんだん細くなってきているという状況にあるということも私どもは承知してございます。
こういう共生財団の今後の運営といいますか、あるいは財政的、そういったものを踏まえて財政的支援が必要かどうかということにつきましては、この財産の運用状況とか事業の達成状況、これからの事業の見込み等を踏まえながら、まさしく成田空港公団や関係の自治体においてまずは検討されるべきものだと考えております。


○小泉親司君 私は次に、民営化で本当にこの騒音対策や環境対策が十分に取られるのかという問題について大変周辺の市町村や周辺の住民の方々が御心配されておられる、その点について少しお聞きしたいと思いますが。
航空局長や国土交通省は、いわゆる民営化されても実際に法案にちゃんと騒音対策だとか環境対策が書いてあるから十分担保されるんだという御答弁を繰り返されておられる。私も、それは法律にちゃんと書いているということは大変大事なことだと思いますが、問題は、書いてあったってやっていないというのも比較的法律にはたくさんあることも、これは御承知のとおりであります。
私は、やはりこの法律に書いてあるというのがしっかりと対策を取られる必要がある。特に、今年の二月二十八日に新東京国際空港公団に関する覚書というのが合意された。これは国土交通省も参加をされて合意されておられますが、この中では騒音対策や共生対策などの今後の対策が合意されております。
そこに、私、いろいろと読んでみましたら、一番よく分からないのは、今環境対策として環境基準というのがこれは七十Wで設定されている、これの達成に努力しようと。例えば千葉県の数字を見ますと、環境基準の達成状況というのは、ちょっと年度がそこは定かじゃないんですが、三四%、三〇%台だというふうに言われている。ところが、今度の合意書を見ますと、環境基準の達成という言葉は一言も書かれていないわけですね。
それは何で書かれていないのか。私は、やはり当然のこととして、七十五W以上、八十W以上というのは当然のこととして対策が取られなくちゃいけないものでありますけれども、七十Wの問題というのは、これは環境省の全体のやはり環境基準を達成する課題というのは、単に騒音対策を取るかどうかという問題ばかりじゃなくて、基本的にそういうものを目指すんだということを、やはり姿勢を明確にするということが私は騒音対策や共生対策上も大変重要なことだと思うんですが、なぜ今度の合意書の中に環境基準の達成というのは書かれていないんでしょうか。


○政府参考人(洞駿君) 今の先生の個別の御質問について、ちょっとお答えを十分に用意してございません。ただ、WECPNL七十の環境基準達成というのは、たしか屋外において達成する話で、これは現実問題として非常に難しい問題でございまして、最終的には航空機の技術開発とか、そういったものとか、そういったもの全体のものも入れて総合的に講じなきゃいけない非常に大変難しい問題でございます。
七十五以上、八十以上というのは具体的にこういう対策を取るんだというやつがはっきりしているんでございますけれども、七十以上について、もちろんそこのところを達成しなきゃいけないんですけれども、この辺についてはもう関係自治体、そして関係者、要するにこの航空にかかわるすべての者が共同して、手を合わせて長期的に達成していくべき課題ということで、個別の具体的なこの事項については引き続きやりますとか、これについてはいついつまでに結論を得ますとか、そういったことで、今回の二月のあれについては、今やっている対策、言わば今懸案になっている騒防対策等々、八十項目について今後の取扱いを整理しているわけでございますけれども、七十の問題というのはその枠を超えた問題ではないかというふうに、ちょっと私、今、申し訳ございませんけれども、はっきり自信を持って答えられる状況ではございませんけれども、そういうふうに認識しているところでございます。


○小泉親司君 自信がないように、違うんです、それは。私は、政府として七十Wをやるということであれば、これは難しいという航空局長のおっしゃるのは私は別にそれを理解しないということじゃないですよ。ただ、政府全体として七十Wはやろうということになっているわけだから、当然、それがどの段階にあるかどうかというのは別にして、合意書として当然環境基準の達成を目指そうということが行われない限り、それじゃ七十五になって対策を取る、八十になって対策を取るというのが、基本原則が全然ないじゃないですか。それは航空局長、それは私は認識が違うと。
この点については、私は、合意書の中で改めてこの点については私、確認すべきなんじゃないかと、こう思いますけれども、ちょっと大臣、それはいかがですか。


○国務大臣(扇千景君) 今、小泉先生の話ですけれども、これは見ていただいたら分かると思うんですけれども、この署名した人間が今ここにいます、洞局長と、それから堂本知事と、それから成田市長さん、あるいは富里市長さん、大栄町長さん等々、ずっとみんな署名していらっしゃるんですね。
この中に、少なくとも私は千葉県を始めとする関係自治体と何度か協議をしまして、そして環境対策等について今後とも相互に協力して対応していくことを確認するということで、これ署名しているんです。
ですから、私は、それを信じていただかないと、今七十のWというのはこれは目標でありまして、一歩でも、それは政府を挙げてです。これは空港だけの話じゃなくて、目標は政府として達成しようというすべてに対しての目標は持っておりますけれども、ここに合意したように、環境対策については今後とも相互に協力し合って、今、局長が言いました八十項目にわたっての署名をしている本人がいるわけですし、知事さんもいらっしゃいますので、私は署名していませんけれども、これだけの私は署名してあれば、間違いなく、これは公になっていることですから、これは信じていただくしかない。
また、努力目標はあるということは、私は大いにその目標に向かって達成をしようというのはいいことだと思いますので、目標値があるというために努力していくということを、私は確実に署名している人たちとともに認識をしております。


○小泉親司君 署名されておられない大臣が明確な解釈をしていただきましたので、その方向でひとつ努力をしていただきたいと思います。
この覚書は、さっき八十項目と言いましたけれども、大きく言うと四つのジャンルに分かれているんです。一つは、従来の約束事項を継続遵守するもの、二つ目は、環境対策、共生対策の充実について今後協議するもの、三つ目は、四者を始め、四者というのは先ほど大臣がお述べになった四者を始め、関係者が連携してその実現に努めるもの、それからその他、特殊会社法案作成時にその実現に努めるもの、これは成田国際空港という名前を使われただけの話ですけれども、その四つのジャンルに分かれているんです。
多くの今住民の方が心配されているのは、今までやっていたものについてはすべてやりますよと言うけれども、今後やるものについては、これは今後協議だと、ここが一番問題で、実際に、例えば昨年ですか、暫定滑走路が開港した。実際には騒音がどうなるかということになると、なかなかこれ今まで説明していたとおりにはならない。例えば、私も大窪地区というところに行ってきましたけれども、これは一種地域なんだけれども、例えば窓は騒音対策をやったと、しかし屋根はやらないので、実際には夜、暫定滑走路ができてから非常にひどくなって夜どうしても起こされてしまうんだと、だから、農民の方々は早く寝られる、御承知のとおり早く寝られますから、途中で起こされるともう大変なんだというようなことを非常に言っておられて、確かに今までは移転の要望というのは出ていなかったけれども、実際はもう自分としては移転したいぐらいなんだと、これから後継ぎも農業をやらないというふうな御家庭でしたけれども。
実際にそういう移転対策なども今後協議するということになると、実際にそういうものが今度の覚書の中でちゃんと救済されるのかと、ここに非常に不安を持っておられるわけで、その点については署名されました航空局長、どうですか。こういう対策は十分に協議を、対策を取られるというふうな方向はお取りになるんですか。


○政府参考人(洞駿君) その覚書にも明記してございますけれども、住宅防音工事に対する助成の拡充、更なる拡充であるとか落下物多発地域の移転対策など、従来の対策の更なる充実等に対する事項については、今後とも関係者と連携して対応策について真摯に協議をして、完全民営化までに結論を得るべく努力をするということで、期限をきちっと、協議の期間の期限を定めておりますので、その間に真摯に協議をして、できるものはできる、できないものはしないというふうにはきちっと整理を付けられるものと考えております。


○小泉親司君 例えば、先ほども申し上げましたが、成田空港の郷土とくらしを守る会の方々が周辺市町村との騒音対策で国に出す要望で、周辺対策の拡充という言葉を使うと、多くの人は何というかというと、拡充なんてとんでもないんだ、充実にしてくれ、言葉を変えてくれと。拡大するということに対しては非常に全体として及び腰で、実際に国としてもこの今後の対策、その拡充の対策というのは先送りだと、この点での疑問というのは非常に強いんですよ。
これは私も周辺、成田市長さん始めいろんな方々とお話ししてきましたが、この覚書の今後の協議というものが実際にどうなるのかと。先ほどもちょっと局長がお話しになりましたが、例えば荒海地区なんかの要望書を見させていただきまして、私もそのコピーをいただいてきましたが、例えばある方のおうちに行って話をすると、中に行って扉を開けて、その日もちょうど暑い日で、二、三週間前でしたが、扉を開けておくともう全然話ができないと、上から来ますから。実際にこれ、騒音対策全部やっている。窓ガラスも全部、サッシもやっている。しかし、実際にほとんど窓、農家ですから、窓を閉めてずっといるということはほとんどあり得ないんだと。
そうなってくると、実際にこの荒海地区の方々でも、こうした落下物、特に落下物なんかも非常に起こる。さらに、防音区域によって部落が分断されたと。こういうなふうな問題についても今後の対策として大変強く要望されている方がたくさんおられますので、是非その点については今後の対策というのを、単に今までのやった対策以外はやらないんだという方向じゃなくて、是非拡大対策、拡充する対策というのを是非努力していただきたいというふうに思いますが、その点、大臣、大臣でよろしいですか。


○国務大臣(扇千景君) 小泉委員も見ていただいたら分かりますけれども、役所は、私もいつまでも大臣しているわけじゃありません。局長もいつまでも局長ではありませんかもしれません。けれども、この署名の中に少なくとも黒野総裁は署名しているんです。黒野総裁は新総裁になってまだ間がありませんから。
これは黒野総裁が私に言ったときも、私は、黒野総裁を私が任命したわけですから、きちんと通常の空港になるように暫定という言葉を取りなさい、努力しなさいと言いました。それと同時に、今おっしゃったように、私はなぜ民営化ということが言えるか。それは、今空港の中で成田が大体十四年度末で私の記憶では三百億ぐらい、初めて黒になっています。空港の中では一番大きいんじゃないですかね。だから、私はその数字をもって自信を持って民営化なんていうのはおこがましいですよと黒野総裁にも念を押してあります。
それから、先ほどもお答えしたんですけれども、少なくとも成田は成田国際空港という、成田という名前を付けさせてくださいと地元の要望なんです。ですから、皆さん方のお気持ちを体して、私たちは今度は成田国際空港というこの法案に成田という文字を地元の要望で入れさせていただいたんですね。ですから、そういう意味では、成田という名前が入ったら、成田の皆さん方もやっぱり責任を持って、自分たちの名前が付いているんだという御協力も私はいただくべきだと思いますし、黒野総裁が自分で署名しているんですから、私は、そういう意味では、私が替わったり局長が替わっても黒野総裁はいますから、本人が書いた以上は、黒野総裁はこの委員会の模様も見ていただいて、きちんと責任を持って私は地元対策と、そして成田国際空港として新たな出発をすることに大きな責任を持って図ってもらいたい。そして、今まで成田に対しては少なくとも一年間平均で百五十億の皆さん方の共生の対策費、環境、共生の対策費を使っているということも是非私は御理解をいただきたいと思います。


○小泉親司君 時間が参りましたので、終わります。