軍事利用問題についての小泉議員の質問と扇国土交通大臣の答弁

第156回国会 参議院 国土交通委員会 第23号
平成十五年七月三日(木曜日)

○小泉親司君 日本共産党の小泉でございます。
今日は国土交通委員会で質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は成田空港のいわゆる民営化法案について質問をさせていただきたいと思います。
具体的な質問に入る前に、私はまず基本的な問題について国土交通大臣にお尋ねしたいと思います。
成田空港は、御承知のとおり、農民の土地の取上げがありまして、大変激しい運動が繰り広げられてまいりました。私は、決してこの運動は暴力学生集団の運動ではなくて、農民の道理ある運動も行われてきたと思います。その中で、成田空港の問題については七二年の九月二十日に当時の運輸大臣と空港公団総裁、千葉県知事及び平和塔奉賛会の間で四項目の合意が行われております。
この合意では、新東京国際空港は純然たる民間空港であり、安保条約及びこれに基づく地位協定の存在にもかかわらず、これを軍事的に利用することは絶対に認めない。その意味においてMACのチャーター機の離発着もこれを認めない。なお、現在羽田空港に行われているMACのチャーター機の離発着も極力やめさせるよう努力する。
二、新東京国際空港の騒音対策については、乙等は、乙というのは運輸大臣、当時の丹羽喬四郎さんでございますが、及び千葉県知事の川上さん、新東京国際空港公団総裁の今井さん、こういう方が、署名をされた方々が重要な問題として騒音の各種対策に努力する、また、乙等は甲に対して騒音対策委員会委員を委嘱し、周辺住民の立場に立って積極的な活動を期待する。
三、周辺農民に対して現在用地買収未決済の地主及びやむを得ず集団移転を余儀なくされた地主に対し、その個々の要望等を聞き、その移転補償問題の解決に誠意を持って対処するなどの合意でございます。
この中で、私、今回取り上げたいのは、安保条約や地位協定にかかわらず軍事利用をしないという合意が行われてまいりました。
私、この法案の衆議院の審議の中で、当時有事法制の問題がございまして、るる大臣もこの問題についてお答えになっておるんですが、何かどうも本当にこれ軍事利用しないという約束が守られているのかという点での大変私疑問を持っているものですから、その意味で、私はこのような合意、これは成田空港がいわゆる民営化されても当然私守らなければならない問題だというふうに思いますが、大臣にまずこの点をお尋ねしたいと思います。


○国務大臣(扇千景君) 今、改めて小泉議員からかつての、一九七二年のこのお互いの取決めに関して御説明がございました。
私は、そのとおりであろうと思いますし、歴代の運輸大臣もこの答弁の重みというものを重々感じながらされてきたと思っておりますし、現在もそれが引き継がれております。また、私の手元に、これ四十三年三月の五日でございますけれども、運輸委員会で小川三男委員のお話で、中曽根運輸大臣でございます。これは、成田空港は軍事基地には絶対使わせない、戦闘目的や軍事基地用として成田空港を使うことは拒絶するというのが中曽根運輸大臣の御答弁でございます。これは今もありますし、現在もそのとおり守られてきておりますので、私たちはこの重みというものを十分に拝して、今、今日ここにいませんけれども、総裁が今日午前中も来ておりました。きっとこの委員会もごらんになっていると思いますから、それは当然認識していらっしゃることで、当たり前のことだと思っています。


○小泉親司君 私は、個人的に申し上げると、七二年というのは実は千葉大学に在学しておりまして、ちょうど卒論を書いている時期にこの成田闘争というのがありまして、私は暴力学生集団ではございません。当然、この農民の土地取上げの闘いをやりましたが、このときは、当時、もう御承知のとおり、ちょうどベトナム侵略戦争が非常にさなかでありまして、このベトナム侵略戦争にこの羽田空港が利用されるんじゃないかという世論、意見が非常に強かったんです。 実際に、この成田空港闘争というのは、本当に土地、農民の土地を取り上げたと、この点では大変問題があったことで、御承知のとおり、この成田空港というのは、一番初めが設置されたのは、あれは八街、富里という案がありまして、それが今度はいわゆる天皇家が持っておりました御料牧場を中心にしましてこの成田空港が建設された。そのときに、この問題が合意されたというのは、大変多くの人々が将来にわたってこの成田空港は軍事利用化しちゃいけないと。
もうこれは御承知のとおりであると思いますが、この成田空港には、当時軍事郵便局がございました。つまり、MACのチャーター便と先ほどお話ししましたのは、アメリカ軍が羽田空港に軍事郵便局を持っておりまして、この軍事郵便局を成田に移すんじゃないかということがありまして、そういった問題でこの軍事利用の問題というのはあるわけですが、私は、現在、この成田空港の軍事化反対の合意を取り上げるのは、どうも有事立法や周辺事態法でもこの問題が議論になって、アメリカが成田空港なども軍事利用化するんじゃないかという懸念が非常に強いと、県民の中にも強いということもありまして、是非この点について、私は、民営化がもし行われたということであっても、当然この点については守られるべきだということを重ねて大臣に御要望しておきたいと思います。