認可にあたっての運輸省の声明
平成11年12月1日
運輸省航空局
暫定平行滑走路に関する工事実施計画の認可にあたって
1 これまでの経緯について
成田空港の2500mの平行滑走路の整備については、成田空港問題シンポジウム・円卓会議をはじめとしたこれまでの様々な話し合いの努力の中で、円卓会議終了時には21haあった未買収地が5.5haに減少するなどの成果が見られた反面、残念ながら一部の地権者の方々のご理解を得るには至っていない状況にあります。
一方、平行滑走路の整備による能力増強については、空港周辺自治体をはじめとした地元から極めて強い要請を頂くとともに、首都圏の国際空港の容量の拡大は、国民的な緊急課題であり、また、国際社会に対するわが国の責務でもあります。さらに、2002年夏にはサッカーワールドカップの日韓共同開催も予定されております。
このような状況に基づき、運輸省は本年5月、平行滑走路の建設に関する新たな方針を発表させていただきました。具体的には、
@引き続き現計画に基づく2500mの平行滑走路の早期着工・供用を日指し、地元自治体、関係者の協力の下に今後とも地権者の方々との話し合いを行い、その早急な解決を図る。
A上記の努力を続けつつ、それが当面困難な場合には、暫定的措置として平行滑走路の完成済み施設の一部と空港公団の取得済用地を活用して、2002年のワールドカップに間に合うよう延長約2200mの平行滑走路を整備する。
との内容を公表させていただいたところです。
この方針の発表後、運輸省・空港公団は暫定平行滑走路計画の内容について地域の方々のご理解を深めていただくよう、地方自治体や地元の住民団体の皆様に対し延べ150回以上にわたり説明させていただくなど、積極的にご説明を行ってまいりました。
こうした中で、暫定平行滑走路に対するご理解が地域で深まったことを受けて、暫定平行滑走路の供用を2002年の初夏に間に合わせるため、航空法の手続きを開始することとし、去る9月3日には、空港公団より運輸省に対し工事実施計画の変更認可申請が提出されました。
その後、運輸省においては、暫定平行滑走路計画の具体的な内容について、安全面、技術的な観点から審査を加えるとともに、航空法に定められた公聴会を開催する等、暫定平行滑走路の整備に関する諸手続を進めてまいりました。その結果、航空法に定める要件を満足すると判断し、本日暫定平行滑走路の工事実施計画の認可を行うことといたしました。
2 東峰地区の地権者の方々について
2500mの平行滑走路を整備するためには、地権者の方々のご理解、ご協力を賜る必要がありますが、特に東峰地区の地権者の方々に関しましては、これまで私どもは様々な形でのお話し合いの努力を続けて参りました。東峰地区の方々のうち、成田空港問題シンポジウム・円卓会議、地球的課題の実験村具体化検討委員会等に参加された方々とは、それぞれの場において幾度も議論を積み重ねさせて頂きました。また、それ以外の方々とも、運輸省・公団の職員が直接お伺いしてお話をさせて頂いたり、地元の関係者の方々のご協力を得てお話し合いのための努力を続けて参りました。
これら地権者の方々との個別のやりとりにつきましては、その内容を逐一ここで申し上げることは控えさせていただきますが、私どもとしては精一杯地道な信頼関係の醸成に努めるとともに、暫定平行滑走路計画の発表後も、東峰地区の方々との話し合いのための努力を続けてまいりましたが、誠に残念ながら現段階では東峰地区の地権者の方々のご理解、ご協力を得るに至っておりません。このため、喫緊の課題である首都圏の国際航空需要に対応するため、今般暫定平行滑走路の整備を始めさせていただく運びとなったところであります。暫定平行滑走路が供用されることとなった場合には、東峰地区の一部の方々は騒音区域内と同様の生活環境の中での生活が始まることとなります。私どもとしては、東峰地区の地権者の方々のご理解、ご協力を得て、2500mの平行滑走路を整備することが最も望ましいと考えておりますが、残念ながらそのご協力が得られない場合には、2500mの滑走路の予定地内に居住される方々についても、そのご意向を十分に伺った上で、可能な限りの騒音対策に取り組んで参る所存です。
私どもは、決して暫定平行滑走路の騒音によって東峰地区の方々を追い立てるようなことを考えているわけではありません。例えば、現在の空港用地内の農地に強いこだわりをお持ちなのであれば、農地を残していただいたまま、まず住居のみの移転を進めさせていただいた上で、お話し合いを続けさせていただいても良いのではないかとも考えております。どのような対策であっても、東峰地区の当事者の方々とよくご相談をさせていただき、そのご意向を踏まえた上で様々な対策を進めさせていただきたいと思います。
いずれにせよ、2500mの平行滑走路に関してご理解とご協力を頂けるよう、これからも東峰地区の皆様と真筆に話し合う努力を粘り強く続けて参りたいと思います。
3 暫定平行滑走路計画に関する公聴会等のご意見について
今回の認可を行うに先立ち、10月18日に成田市内で開催させていただいた公聴会では、賛成、反対それぞれのお立場から様々なご意見を頂きました。また、運輸省は暫定平行滑走路の整備について、広く国民の皆様からのご意見をお伺いするため、10月1日より運輸省のホームページを通じて、インターネット等による意見募集をさせていただきました。
運輸省としてはこれらの一つ一つのご意見の重みを踏まえながら、今後の成田空港の整備を進めて行く必要があると考えております。これらの機会を通じて頂いたご意見の大多数は、平行滑走路の早期整備を望むものでした。その中には、現状において2500mの滑走路整備が困難である以上、暫定平行滑走路の早期整備を強く望む旨のご意見や、当面は暫定平行滑走路を整備することはやむを得ないにしても、是非2500mの平行滑走路を日指して欲しいとのご意見が数多く見受けられました。このようなご意見を頂戴し、私どもはあらためて成田空港の平行滑走路に対する国民の皆様の期待の大きさを再認識いたしました。
4 共生策の推進について
一方、暫定平行滑走路の整備に伴う騒音等の生活環境への影響に関するご不安について、公聴会等を通じて地域の方々からご指摘を頂いているところです。公聴会で述べられた各々のご意見、ご要望に対し、空港の設置管理者としてどのように対応していくかについては、新東京国際空港公団から別添資料のとおり報告を受けておりますが、運輸省としても、騒音対策を始めとする環境対策に万全を尽くして参りたいと考えております。
運輸省・空港公団は、昨年12月にr地域と共生する空港づくり大綱」を地元のご要望を踏まえた上で取りまとめさせていただきました。暫定平行滑走路の整備に当たっても、この共生大綱に基づき、地域と共生する空港づくりを進めていくという考え方にいささかの変化もなく、積極的に共生策を進めて参りたいと思います。
具体的には、まず騒音対策については、これまで関係自治体のご協力を得て共生財団を設立することにより、他の空港には見られないきめ細かな騒音対策を実施してきたほか、自治体のご協力を得て、騒音区域に挟まれることとなるいわゆる谷間地区における防音工事などを実施してきたところですが、新たな滑走路の整備に伴い、騒音監視システムの充実や防音工事などの騒音対策が後追いになることのないよう万全を期して参りたいと考えております。
暫定平行滑走路の整備に伴い、滑走路の位置が北側に800mずれることに伴う住民の方々からの不安も指摘されております。私どもは、暫定滑走路に離発着する航空機は中型機中心となるため、騒音区域が拡大することはないと予測しておりますが、住民の方々が抱かれる様々なご懸念についてもよくご相談させていただき、必要な対策を実施して参ります。
騒音の関係では、飛行コースの遵守についてもご要望を頂いておりますが、管制レーダー情報を活用した航跡図の公開を開始したことに加え、本年1月より飛行コースの監視幅を設定し、飛行コースの遵守の状況を監視しているほか、さらに来年度からは航空機の航跡を動画で再現し公開することとしており、今後とも飛行コースの遵守に努力して参ります。
また、落下物対策につきましても、本年5月には耐空性改善通報を発出するなど、落下物対策の徹底を行ってきたほか、着氷状況調査の結果等に基づき航空会杜への指導を行っていくこととしております。今後とも落下物の根絶を日指し努力して参ります。
これらの対策の他、共生大綱に基づき各種の環境対策を推進し'ていくほか、昨年空港公団が発表したエコエアボート基本構想に基づき、地球的視野に立った循環型の空港づくりを日指して参ります。
5 地域振興策について
公聴会等の機会を通じて、特に自治体の方々からは地域振興に関する運輸省、空港公団による積極的な支援が求められています。地域と空港の共生を実現していくためには、空港の持つ可能性や能力を活用して、空港周辺地域の均衡ある発展を促進していくことが必要と考えております。
地域づくりは地元自治体や地域の方々が中心となって行われるものですが、運輸省・空港公団も「空港づくりは地域づくりである」という基本的な考え方に立って、共生大綱に基づき、農業の振興や空港周辺地域の交通網の整備等、自治体の皆様との緊密な連携の下に、各種の地域振興策に取り組んで参りたいと考えています。
6 今後の成田空港の整備に向けて
今回、暫定平行滑走路の整備のための工事実施計画の認可を行うことと致しましたが、首都圏の旺盛な国際航空需要を満たすためには、運輸省としてはあくまで2500mの平行滑走路を整備する必要があると考えております。多くの国民の方々のご期待を裏切ることの無いよう、引き続き話し合いによる2500mの滑走路の整備に向けて努力を続けて参りたいと考えておりますので、関係者の皆様の変わらぬご支援、ご協力を賜りたく存じます。