地方自治体における航空機騒音対策への取り組みの紹介(夜間騒音部分の抜粋)
一成田市一


騒音制御 Vol 41 No.4 2017.8 より

地方自治体における航空機騒音対策への取り組みの紹介
一成田市一
森田巌・栗田伊織

5.夜間に発生する航空機騒音について

 夜間、就寝時に発生する騒音は特に煩わしく感じられるものであり、深夜の離着陸騒音の発生状況は地域住民の生活環境の質に影響すると考えられる。
 本市には、悪天候などにより離着陸が深夜に及んだ際はもとより、夜間の航空機騒音に関する苦情が度々寄せられている。

5.1夜間の睡眠妨害を評価できる指標について

 成田空港周辺では22時以降の深夜に80デシベルを超える航空機騒音が多数発生する地域があり、かねてより地域住民から入眠困難や覚醒を訴える苦情が発生している。夜間閑静となる地域では航空機騒音の最大値と暗騒音との差が50デシベルに及ぶことがあり、睡眠に影響を与えているものと考えられる。
 現行の指標 Lden は夕方の時間帯で5テシベル、深夜早朝の時問帯で10デシベルの重み付けがされているが、騒音レベルを1日ごとの値として算出するため、必ずしも個々の航空機騒音の煩わしさや睡眠への影響を評価できるものではない。本市では評価指標がまだW値であった平成19年、国に対し夜問の睡眠妨害を正しく評価できる指標を加えるよう要望したが、 Lden に変更となった後の平成27年、28年にも改めて、夜間に発生する個々の航空機騒音について、睡眠妨害を評価できる指標を追加し、その基準値を実態に即した値とすることを国に要望している。

5.2カーフユー内運航による健康影響

 平成25年に開始されたカーフユーの弾力的運用は、国、県、空港周辺市町及び空港会社から成る「四者協議会」での合意によるものであるが、その際、空港会社が騒音地城住民の健康影響調査を実施することが確認された。このことに基づき、空港会社では、平成26年7月から9月にかけて騒音地城住民約8,000人、騒音地城以外の住民約2,000人の合計約10,000人を対象にして調査を実施した。調査の報告書によると、住民が受ける航空機騒音のレベルや時間が多いほど被害感など感覚的影響が強くなり、睡眠や精神面への影響も一部うかがえるが、身体的影響や血圧の面では明確な影響は認められなかったとのことである。また、深夜の離着陸緩和による健康影響については、23時台の離着陸は緊急事態等によるものと弾力的運用によるものを合わせても1日平均0.5回と少なく、健康影響を十分に判断できない発生回数であったとのことである。
 現在、成田空港の更なる機能強化が議論されているが、本市では、夜間飛行制限の緩和等により状況が変化した場合には、同様の調査を行うよう空港会社に求めていきたいと考えている。

6.おわりに

 成田空港の開港以降、本市では様々な騒音対策事業を実施してきた。現在、成田空港の更なる機能強化が議論されているが、今後も地域に寄り添った事業に取り組んでまいりたい。


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