1,羽田空港の国際化について
(1)1997年度(平成9年)9月の見解
本協議会は、羽田空港の国際線増便を求める動きが開始された1997年(平成9年)9月に、抗議を主眼とする決議文を採択し、関係機関に伝達した。
本協議会の主張は、成田空港が建設された経緯、首都圏における成田空港の位置づけを守るべく羽田国際化に異議を唱えたものであり、現在もこの主張を変更するものではない。
成田空港は国際空港として明確に位置づけられているものの、仮に、羽田空港の国際化を求める理由として、利用者の立場を尊重する観点や、首都圏における長期的な空港機能のあり方を展望するものがあるならば、公平な立場から耳を傾けることは必要である。
航空輸送は高速大量輸送機関として、今後とも需要拡大がみこまれている。その利用にあたっては便利であること、快適であることが必須条件である。このようなニーズに、どのように対応するかを論議すべきであって、「羽田側の離発着枠に余裕があるので国際線を」、「成田側の一度決めたことは、変更すべからず」など、自己の言い分を繰り返すのではなく、柔軟に、また、冷静に首都圏における空港のあり方を検証することが必要である。
(2)成田空港を名実ともに国際空港とする着実な努力を
ヨーロッパの主要空港は、空港を新幹線、高速道路に直結させているなど、絶えず改良を加え、マルチポートに向けた機能の充実が進められている。また、米国においては、モータリゼーションとまさしく融合された機能をもつなど、利用者に快適性を提供している。アジア各国においても、個性あふれる空港整備が急速に進められている。
このような事例と比較すると、現時点においては、羽田も成田も、満足のいく国際空港とはなりえていないであろう。羽田においては、東京都心部に位置するだけで、アクセス面で課題がないわけではなく、国際線の受け入れ体制がどの程度のものか不透明である。また、羽田の騒音影響は千葉県に及ぼされるという千葉サイドからの指摘も一理あるといえよう、一方、成田においては、暫定平行滑走路が着手されたものの、十分な空港機能とはなりえていない。
現在の課題は、首都圏において、優れた空港機能を如何に備えるかではなかろうか。一度決まれば、後は努力なしでも成果を得られるという発想では、今日の社会を乗り切っていけないことは衆目の一致するところである。この点から、現在、羽田、成田で行われている「相手から少しでも利益を奪い取るような行動」には、及第点を与えることはできないであろう。他を批判する前に、まず自らの足元を強化するという冷静な行動が両サイドに求められる。
互いに地域エゴで対峙するのではなく、成田、羽田が相互に補完し、首都圏における空港機能の充実がめざされるべきである。成田、羽田は首都の機能として必要な空港という本来の意味を確認し、相乗作用を生み出す計画や戦略を関係機関に期待する。
とくに、成田サイドにあっては、成田空港問題の経緯によって導いた貴重な成果である、「理性に根ざした対応」を羽田国際化へも適用すべきである。羽田国際化反対を叫ぶ前に、成田空港を名実ともに国際空港とする着実な努力が望まれる。空港整備においては、今後数十年を見通し、多方面から評価を受ける安全性、快適性、利便性の追求がなされるべきである。また、周辺地域においては、共生策、地域づくり、さらに、地域経済の活性化に精力的に取り組むことが必要である。
2,国際空港としての滑走路整備ー3,000メートルへ平行滑走路整備の提案ー
昨年末に暫定平行滑走路の建設が着手されたが、現時点での事業内容を暫定としているように、速やかに当初計画の2,500メートルの滑走路が実現されるべきである。
また、成田空港が国際空港にふさわしい機能を保持していくためには、安全性や十分な離発着機能をもつことが必要である。現在の成田空港は、世界にも類をみないほど大型機種の就航が多くなっている。今後とも成田空港が国際空港としての役割を担うためには、平行滑走路においても、現時点で最も利用頻度の高いB747型機が安全に就航できる滑走路延長とすべきではなかろうか。
本協議会は、現在進められている話し合い解決に向けた努力の継続を要請するとともに、目標年次を設定し、平行滑走路を3,000メートル計画とする事を提案する。
他の代表的な国際空港をみると、滑走路は3,000メートルとなっているが、平行滑走路に望まれる延長距離について、関係者による専門的な検証を要望する。成田空港は開港後22年を経過し、計画はそれ以前のものである。この間における航空面での需要拡大や技術革新に対応した計画の見直しが必要と考える。
なお、その検証にあたっては、当然ながら、国際空港は滑走路建設のみで完成するものではないことを踏まえ、騒音対策等の共生策、地域づくりの推進が同時に検証されるべきことは言うまでもない。
3,空港問題に長年向き合った努力を無駄にしないため、大いなる成果の結実を
暫定平行滑走路が着手されたが、今後、単に滑走路だけが完成しても、空港問題が存続したままでは、地域にとって十分な成果といえず、すみやかに問題解決を達成することが必要である。運輸省、空港公団、千葉県には、ここまで2本目の滑走路整備が遅れた原因の分析と反省を求める。現在までの手法や縦割りの体制が不十分であったことを踏まえるべきである。また、反対する人達には、話し合いに応じ、解決をめざす社会的責任を果たしていただくことを、改めて要望する。
今後、地域においては、平行滑走路建設、2002年初夏の供用開始を契機として、騒音対策をはじめとする共生策、地域づくりがどのように実行されるかが問われる。空港問題に長年向き合った努力を無駄にしないためにも、大いなる成果を結実させなければならない。現在がその正念場と言えよう。
成田空港をめぐっては、長年、空港問題に向き合ってきた故に、関係者にあっては、時間の経過に麻痺してきた傾向がないとはいえない。大いなる成果を導くためには、多くの力を結集することが必要であり、これまでのような計画性やタイムスケジュールの欠落した手法は許されない。
このような観点を踏まえ、関係者のいっそうの努力を期待する。