WECPNLの問題点

=研究資料第5部「成田空港における騒音軽減に関する五つの提言と参考資料=より
(1978年7月1日発行)

 まず、WECPNLの問題点の一部をあげると次の通りです。

1,一般になじみのない単位で、略算にしても複雑すぎ、一般住民が騒音監視をすることをむずかしくしてしまいます。

2,新しい国際単位ですが、まだ被害との相関関係が十分立証されていません。このため、各国は、アメリカNEF,イギリスNNI,フランスR,西ドイツQ,オランダBなど、まちまちな単位を使用しているのが実状です。

3,たとえていえば、翼一枚にパケツ3杯の雨(約30ミリ)が降る場合、大つぶの雨がザーッと短時間集中して降っても、逆にこまかい雨が一日中しとしと降っても、一日の雨量が同じなら、感じも同じ、被害も同じ、だから対策も同じにする、という仕組みがWECPNLです。
 イギリスで綿密に調査された結果では、飛行回数を評価する場合、飛行回数nの対数をとる方式(K log n;Kは定数)よりも、対数をとらないより簡単な方式(0.1n)の方が、うるささとの相関関係がよいとされています。ふつう問題になる飛行回数のはんいでO.1n方式を考えてみると……回数だけが100回から200回になったとすると、うるささ指数は、10から20に10だけふえます。一方、騒音(ピークレベル)の平均値だけが10だけ大きくなるとやはりうるささ指数は10だけふえます。うるささ指数(NNI)=ホン(A)十0.1(n+1)一定数の式では、両者は等価となります。このことは、騒音の大きさが10ホン大きくなると耳の感覚で倍大きいと感じること、および、回数だけが2倍になれぱうるささも2倍ぐらいになるだろうと推定されることからもうなづけ'ます。
 ところが、WECPNLで計算すると、回数だけが2倍になった場合、うるささ指数は3しかふえません。指数の増加3は、換言すれぱ、回数が変らず騒音(ピークレベル)の平均値が3だけ大きくなったことと等しいのですが、耳の感覚では3ホンという音は"大きいかな?"と区別がつきかねる差にすぎないのです。従って、WECPNLの算式では'騒音をほんの少し3ホン低くすれぱ飛行回数を100回から200回にふやしてもうるささは変らないという被害感覚からはとうていうなづけない結果がみちびかれます。
 このことは一方で、"増便しても指数が変らないのだから対策も変えなくてよい"という航空会社や運輸省、空港公団にとっては大変好都合な結果をもたらします。
 最大の問題点であり、WECPNLと別に、飛行回数の歯止めをかけないと大変な事態をまねいてしまいます。

4,重要な問題点なので、もう一度複習してみます。あなたは、次の組合せのうち、どの組合せがうるさく被害が大きいと考えますか? 耳の感じは、大きいか同じかやっと聞きわけられるのが3ホン、倍大きいと思うときが10ホンの差です。
(イ)平均70ホンのジエット機が一日200機
(ロ)平均73ホンのジエット機が一日100機
(ハ)平均76ホンのジエット機が一日50機
(ニ)平均79ホンのジエット機が一日25機
 ほとんどの方が、音が少ししか小さくなく、回数の多い方をうるさいと考えるでしょう。うるささとの関係がよく調べられているイギリスの評価方式NNIで算定すると、うるささの順は(イ)→(ロ)→(ハ)→(ニ)です。
 ところが、wECPNLでは、どれも同じ70WECPNLとなってしまいます。うるささ指数のWECPNLが同じだからというだけで、同じ対策となると、被害感覚とはずれ、行政の公平さが期しがたくなる点に、もう一つの問題があります。

5,夜間は、1機でも3倍または10倍に重みづけするとはいっても、1機でも大きな音をたてる飛行機があれぱ安眠は保障されません。夜間の発着については、禁止するか、または騒音の最高規制値を厳しく守らせることが絶対に必要です