横芝町の要望書

 新東京国際は空港は開港20周年を迎え、今やわが国を代表する国際空港としての評価を高めておりますことは貴職をはじめ関係各位のご努力の賜であり、深く敬意を表するものであります。

 また、日頃より横芝町に対しまして騒音対策、落下物対策等いろいろな面でご尽力、ご指導いただいておりますことを厚く御礼申し上げます。

 さて、この度公表された地域と共生する空港づくり大綱により200O年度を目標とする平行滑走路の整備を含む成田空港の整備の全体像と手順が示されたところであり、横芝町はもちろん、住民の代表である議会といたしましても早期完全空港化が図られるよう願うものであり、また同時に同事業の推進には全面的に協力を惜しまないところであります。

 しかしながら、これが完成し、平行滑走路供用の暁には、横芝町の上空が両滑走路から離着陸する航空機の飛行直下となり、これまで以上に地域住民が騒音や落下物に悩まされることとなるものであります。

 今回示されました地域と共生する空港づくり大綱により「空港づくりは地域づくり」という考え方のもと共生策、空港づくり、地域づくりを三位一体として取り組んでいく考えを示されており、平行滑走路の整備に伴い新たに発生する騒音等のマイナスの影響については、後追いにならないよう、対策を講"していくとしておりますが、空港と地域との共生問題は、成田空港がこの地にある限り永遠の課題であると認識しております。

 特に、当町は昭和五十三年の開港以来予想もしなかった騒音と落下物に悩まされ、地域住民は恐怖のどん底に落とされて参りました。

 このようなことからも、平行滑走路の整備に伴う騒音対策には、現滑走路の騒音対策の反省に立ち、地域住民が納得のいく、特に住民一人ひとりの生活に思いをいたし、きめ細かな対策を講じていただきたいと強く望むものであります。

 貴職におかれましては、当町のおかれる実情をご理解いただき、共生大綱の公表にあたり、空港と地域との実リある共生の実現に向かって、次の事項について特段のご配慮を賜りたく要望いたします。

一、騒音対策について

 当町は、A滑走路から離着陸する航空機騒音の影響を受けており、町内の一部地域については空港公団、共生財団、町のそれぞれの事業主体により住宅防音工事が実施されております。平行滑走路の供用時の騒音予測では、当町は基準以下となり住宅防音工事の対象区域外になるとしているが、当町全域が二本の滑走路の飛行直下となり、終日騒音に悩まされ大変大きな影響を受けることは必至であります。また、今回示された飛行コース幅の設定により、今までは滑走路延長線上が飛行コースとされていたものが、空港用地界から南北方向に順次拡がり、南側の九十九里浜地点で四.五キロメートルの飛行コース幅となるが、これによると飛行許容範囲が拡大されることになり、さらに騒音被害が拡大されることが懸念されます。また、平行滑走路についても同様に飛行コース幅が設定されますと、当町全域が飛行直下となり、騒音被害が懸念されます。町全域が二本の滑走路から離着陸する航空機の飛行直下となり、町民は大きな不安を抱いており、住民が安心して日常生活が出来るよう当町全域に対して新たな対策を講じ、住民不安の解消のための騒音対策の充実を図られたい。

 なお、その対策について貴重な町財源を投入することについては疑問があり、また、限られた人員の中での事務対応にも無理があるため、空港公団により実施されたい。

二、航空機の飛行コースの遵守について

 航空機の運航に際しては、その飛行コースにずれが生じないよう要請を重ねてきたところでありますが、未だコースを外れ飛行する航空機が見受けられますので、直進上昇、直進降下の遵守について特段のご配慮を願いたい。

三、落下物対策について

 洋上脚出しの実施により氷塊落下事故は減少しているが、皆無となっていない状況にあります。航空会社や航空機製造メーカー等に指導、改善を求めるとしているが、平行滑走路の供用により当町全域が飛行直下となり、地域住民が危険にさらされることとなるため、平行滑走路についても洋上脚出しの実施を図る等地域住民が安心して日常生活が出来るよう氷塊等の落下事故の根絶を図られたい。

四、芝山鉄道の延伸計画について

 芝山鉄道については、東成田から整備場前駅(仮称)までの進捗を図り、更に空港南側地域への延伸も進めるとしているが、

芝山町中心部まででなく、騒音、落下物等による大きな被害を受けている飛行直下町村の振興のため、横芝町を含めた南側町村までの更なる延伸計画を示されたい。また、今後の延伸計画推進のため資本参加できるよう特段のご配慮を願いたい。

五、地域振興について

 地域振興については、県、地元の計画には出来る限り協力するとしているが、財政基盤の弱い当町では、地域振興策といっても限りがある。騒音、落下物等による大きな被害を受けている飛行直下町村、特に空港裏側といわれている当地域の振興のため、芝山鉄道の延伸、圏央道の早期完成を図るとともに、農業振興や商工業の振興、生活環境整備等、国、空港公団は独自の振興策を打出し、空港周辺地域間の格差是正を図られたい。

六、平行滑走路供用開始後の標準飛行コースについて

 九十九星浜につくられている待機空域が陸上にかかつて設定されているが、そのコースに添って午前六時前に飛行されると騒音の影響を受け就寝を妨げることになるため、待機空域を騒音の影響を受けないよう海上沖合に設定されたい。

七・騒時法による防止特別地区、防止地区に対する取り扱いについて

 騒特法に基づく基本方針の見直し作業が現在進められており、その中で航空機騒音防止特別地区、防止地区の線引きがなされ、今後の都市計画の決定によりてい地区指定されることとなっておます。航空機騒音防止特別地区内の住民が移転を希望したときは、代替地の確保をお願いしたい。また、現行法では防止特別地区内の住民が移転希望をした場合は、宅地、農地のみの買上げが対象で、それ以外の土地は買上げ対象としないこととなっているが、移転者は空港設置による被害者であり、防止特別地区内、外に拘らず移転者の希望により土地の買上げを実施していただきたい。

 また、航空機騒音防止特別地区内の住民と落下物地区の既移転者との均衡が保たれるよう既移転者から農地等買上げの希望が出されたときは、住民の希望により対応願いたい。

 また・防止特別地区、防止地区の指定を受けると、航空機の騒音による土地評価の下落に加え防音工事等が義務づけられ一般土地取引としての土地評価が更に下落することが予想されるが、その損失をどのようにカバーしていくのか具体的施策を明示されたい。

平成十年十二月十八日

千葉県横芝町長 實川堅司郎

横芝町議会議長 伊橋慶一

運輸省航空局長 岩村 敬 様


同文の要望書を 新東京国際空港公団 総裁 中村 徹 様 宛で提出しています。