共生財団が行う事業についての問題点
1997年に共生財団が設立されました。円卓会議の合意を経てこの合意を実現するための組織として設立されるといううたい文句でした。このほど、以下のようなこの財団が行う事業に関する資料が手に入りました。
これを読んでみると、様々な問題点、疑問点が浮かび上がってきます。以下、それらの点について書いてみたいと思います。
1、何故、国と公団の責任で対策を行わないのか
第1に、民家防音の助成事業についてですが、4事業のうち新たに実施さ れるのは『特定地区緊急防音工事助成事業』だけです。
『民家防音工事再助成補完事業』は既に制度化されているのではないでしょうか。とすれば、国と公団の権限で行えるはずです。
『特別民家防音工事助成補完事業』も騒特法の地域指定が効力を発した段階で、騒防法第1種地域に後から建築されたために防音工事の助成が受けられなかった家屋にたいして助成をしなければならなくなる、という家屋に対する助成制度を先取りしただけのものです。これも、将来は当然、国と公団がやらなければいけない事業です。
『民家防音工事助成空調機等補完事業』も既に制度化し、行われている事業です。
このように考えると、何故、わざわざ共生財団を新たに設立して行わなければならないのか、理由があいまいになります。公団で話を聞いたときは「『特定地区緊急防音工事助成事業』を行うために」という事でした。だとすれば、共生財団の行う事業はこれだけに限定すれば良いことになります。
防音工事関係を全部共生財団に移すことは、国と公団の責任を曖昧にし、責任の所在をぼかすことになるのではないでしょうか。
2、民家防音対策は3年間で打ち切りなのか
この資料を読んでびっくりしたのは上記に挙げた民家防音対策関係の事業が「3年の期限限定事業」になっていることです。これはどんな意味を持っているのでしょうか。善意に解釈すれば、「防音対策を早く進めたい。」ということになりますが、逆に考えますと、「民家に対する防音対策は、この3年間で終わりだ。」ということにもなります。もし、そう言う考え方が少しでもあるとすれば、これはとんでもない事です。将来の騒音は予測は出来ますが、実際にどうなるかは誰にも分かりません。ところが、今回の資料を読むかぎり民家の防音対策に関しては予算上からもこの3年間かぎりとしか読み取れないのです。将来、航空需要が増大すれば、騒音値は当然上がって騒音区域も広がるはずです。このような時の事を共生財団は考えていないのでしょうか。
3、共生財団だからこそ環境基準を最終目標に
また、将来の騒音値が現状と余り変わらないとしても、共生財団だからこそ、13年前に達成することになっている『環境基準』を最終的な目標にすべきではないでしょうか。これが、解決できてこそ、「騒音対策は達成された。」と胸をはっていえると思うのです。
4、谷間対策はどうなるのか
谷間対策というのは2本の平行した滑走路に挟まれた地域では、両側からの騒音に曝されて、数値にはあらわれない心理的な被害が起こると考えられ、それに対して民家防音などの対策を取って欲しいと自治体などから要望がでている問題です。この谷間対策についても共生財団は全く考えていないようです。これについてどのように考えているのでしょうか。
5、出資金は全額国の負担とするのがすじ
この共生財団の原資は関係自治体が25%を負担していますが、1997年3月の騒音対策委員会で本会が主張したように、出資金は全額国が出すのが当然ということがこの資料からも明らかになったと思います。何故なら、これらの事業は本来、国が行わなければならないものだからです。自治体が負担すればその分、他の防音対策にまわるべきお金が使われてしまうからです。
6、騒音測定値は全面公開を原則に
3年間の『期限限定事業』(期限を限定することは出来ないはずですが)の終わった後は共生財団では『成田空港周辺地域の騒音対策周辺事業』『航空機騒音等測定・調査研究事業』『航空機騒音等に関する測定及び調査・研究事業』の3事業を行うことになっていますが、この中に、自治体や空港公団が行っている騒音測定の一元化をはかるとのことです。これは効率の面では良いし、空港周辺の騒音を総合的に捕らえるには良いことと思うのですが、心配はその測定結果の処理と公開の方法が住民サイドで行われるか、と言う点です。例えば、千葉県で実施している騒音測定の基本は『環境基準が守られているかどうか。』と言う所にあります。しかし、国や空港公団は環境基準には一切触れようとしません。騒音コンターも環境基準に関係する70WECPNLコンターは絶対に出しません。共生財団はどちらの立場に立つのでしょうか。
以上が共生財団に対する疑問点です。
共生財団関係資料
事業費法人発足後10年間事業費である。
民家防音工事再助成補完事業・特別民家防音工事助成補完事業・民象防音工事助成空調機等補完事業については、法人設立事業開始から3年間で集中的に行なうこととする。(期限限定事業)
特定地区緊急防音工事助成事業 総額10億3000万円
民家防音工事再助成補完事業 総額 2億2000万円
特別民家防音工事助成補完事業 総額27億2000万円
民家防音工事助成空調機等補完事業 総額 4億5000方円
合計44億2000万円
基金造成が完了し、期限限定事業が終了した後は、次の経費を基金運用益で賄えることとした。
1、特別民家防音工事助成事業 年間 8,500万円
2、サッシ部品交換事業 年間 1,000万円
3、振興事業 年間 3,000万円
4、基金事業事務経費 年間 5,200万円
計、17,700万円
基金造成中又は期間限定事業終了前は、基金運用益のほか一部基金元本を事業費に充てることとした.
運用益は、10年から19年は前年度末基金残高の2.1パーセント、それ以降は3.7パーセントと想定する。
(参考) 7年l 0月現在で6年もの長期国債の実質金利2.061パーセント
10年もの 2.619パーセント
次の事業年度(平成10年4月1日〜
平成11年3月31日)事業計画書
氈@事業活動方針
成田空港と空港周辺地域との共生の実現を図るとともに、周辺地域の発展に寄与するため、千葉県、周辺自治体及ぴ新東京国際空港公団が出資し、民家防音工事助成事業、騒音対策周辺事業、航空機騒音等の測定及ぴ調査・研究事業を実施する。
事業内容
1 民家防音工事助成事業
(1)特定地区緊急民家防音工事助成事業
航空機騒音の季節変勤を考慮して設定する、騒防法第一種区域隣接地
区において、事業開始日に現に存する民家に対し防音工事の助成を行
う。
10年度実施予定戸数:600戸
(2)きめ細かな民家防音工事事業
@特別民家防音工事助成事業
騒防法第一種区域内において、事業開始日現在で居住する者の後 継者の居住の用に供するための新築・増築が行われる場合につい て、防音工事助成を行う。
10年度実施予定戸数:15戸
A民家防音工事助成補完事業
ア 特別民家防音工事助成補完事業
騒防法第一種騒音区域内に存する住宅であって、騒防法の告示日 (A滑走路は、昭和57年3月30日、平行・横風用滑走路は、昭和60 年7月l日)に存在していなかったために空港公団の防音工事助成 の対象になっていないものについて、防音工事の助成を行う。 10年度実施予定戸数:250戸
イ 民家防音工事再助成補完事業
騒防法第一種騒音区域内において、防音工事再助成制度の対象 とならなかった住宅について、助成を行う。 10年度実施予定戸数:15戸
ウ 民家防音工事助成空調機等補完事業
騒防法第一種区域内において空港公団が防音工事助成を実施す る際、限度額の制約により空調機等が設置基準を満たしていない ものに対し、その不足台数に対応して空調機等(市販品)の設置 に補助を行う。 10年度実施予定台数:370台
Bサッシ部品交換助成事業
住宅防音サッシの機能を維持するための修繕に要する費用を助成
する。 10年度実施予定件数:600件
2 成田空港周辺地域の騒音対策周辺事業
(1)航空機騒音の影響下にある住民の健康に係る事業
(2)環境問題に関する講演・研修等事業 (3)騒音用地からの移転に係る住環境の改善に対する支援事業
※上記事業を30,000千円以内で実施する。
3 航空機騒音等測定・調査研究事業
(1)現在、各自治体、空港公団が個別に実施している航空機騒音自動測定シ
ステムの運用について、財団にデータ処理システムを整備することによ り財団で一元的に運用管理を行う。
(2)空港公団の航空機騒音自動測定システムの運用を受託して行う。
(3)千葉県及ぴ空港公団の航空機騒音自動測定システムの保守管理業務を受
託して行う。
4 航空機騒音等に関する測定及び調査・研究事業
(1)航空機騒音の発生源対策調査を受託して行う。
(2)航空機騒音の測定方法に関する調査研究を行う。
次の事業年度収支予算書・総括表
(平成10年4月1日から平成11年3月31日まで)
1 収入の部
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基本財産運用収入 |
14,400 |
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補助金等収入 |
107,000 |
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負担金収入 |
5,960,000 |
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基本財産収入 |
0 |
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雑収入 |
170,370 |
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当期収入合計(A) |
6,251,770 |
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前期繰越収支差額 |
0 |
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収入合計(B) |
6,251,770 |
(単位=千円)
2 支出の部
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民家防音工事助成事業費 |
1,172,781 |
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騒音対策周辺事業費 |
30,000 |
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航空機騒音等測定事業費 |
76,711 |
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航空機騒音等調査研究事業費 |
16,829 |
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管理費 |
159,815 |
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固定資産取得支出 |
3,200,000 |
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敷金・保証金支出 |
0 |
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特定預金支出 |
1,586,634 |
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予備費 |
9,000 |
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当期支出合計(C) |
6,251,770 |
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当期収支差額(A−C) |
0 |
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次期繰越収支差額 (B一C) |
0 |
(単位:千円)