平行滑走路の整備について

平成11年6月

運輸省航空局

新東京国際空港公団

1..基本釣考え方

 運輸省・空港公団は、国際的な相互依存関係が強まり国際交流が活発化している中で、首都圏の国際空港機能の改善は国民的な緊急課題であり、国際社会に対する我が国の責務であると考えています。このため、共生の理念に基づき地域の方々のご理解をいただきながら、平行滑走路等の整備にむけてさまざまな取組みをしてまいりました。これまでにも、成田空港の整備の全体像と手順を取りまとめ、昨年7月に「地域と共生する空港づくり大綱」(共生大綱)として地域に提案させていただきました。そして、地域の方々のご意見を踏まえて、昨年12月にあらためて共生大綱として取りまとめました。

 運輸省・空港公団としては、話し合い解決という道筋に従い、地権者の方々と誠心誠意話し合いを行い、ご理解とご協力を得られるよう努力してきたところです。本年に入ってからは、運輸省と空港公団の幹部が東峰区の方々を直接再三訪問し、空港建設に対する理解と話し合いをお願いしました。しかしながら、東峰区の方々に話し合い拒否の姿勢を変えていただくことはできず、2500mの平行滑走路の建設は、今もって見通しが立たない状況にあります。

 他方、空港周辺地域においては、市町村の首長・議長等の緊急集会や住民団体の活動等、成田空港の早期完成に向けた心強い支援活動が展開されており、また、これまでに空港整備のために土地をお譲りいただいた多くの方々からも同様なお気持ちが寄せられています。さらに、空港を利用する内外の航空会社や空港関係事業者、外国政府の方々も、成田空港への新規乗入れ、増便等のために一目も早い平行滑走路の供用を待っている状況にあります。

 こうした状況を踏まえた中で、新たな方針を検討した結果、2002年初夏のサッカーワールドカップの日韓共同開催への対応を含め、今後の国際航空需要に的確に対応できるよう成田空港の整備を進めていく必要があるという考え方に基づき、やはり第一に、現在の平行滑走路計画の早期実現に向けて引き続き話し合いによる解決を目指して最大限の努力をしていくことといたします。

 それが当面困難な場合には、暫定的措置としてこれまでに建設済みの平行滑走路の施設の一部と公団取得済みの用地を活用して滑走路を整備し、可及的速やかに供用したいと思います。

 なお、この暫定平行滑走路を整備する場合においても、その建設過程において、現計画に基づく2500mの滑走路を2002年初夏までに供用させる目途が立った場合には、ただちに暫定平行滑走路の建設を中止し、本来の滑走路建設を急くことと致します。

 暫定平行滑走路に係る今後の手順としましては、地域の方々へ十分説明をさせていただき、地域の理解を深めた上で着工し、遅くとも2002年初夏までに供用したいと考えております。

 なお、昨年12月に最終的に取りまとめました共生大綱との関係について触れておきたいと思います。暫定平行滑走路はあくまでも暫定的なものでありますので、現計画に対応するものとしてとりまとめられた共生大綱を指針として地域と共生する空港づくりを進めるという考え方にいささかも変わりはありません。共生策、地域づくりにつきましては、今後とも共生大綱に基づき取り組んでまいります。空港づくりについても、当面は暫定平行滑走路を整備する場合があると考えておりますが、これでは現計画に比べて空港の処理能力の面で制約があることは否めず、従って、今後も引き続き本来の処理能力を確保するため、2500mの平行滑走路等の早期整備を目指して努力してまいります。

2.暫定平行滑走路計画について

 平行滑走路計画については、あくまで2500mの平行滑走路を基本として話し合いを続けていきますが、当面解決が困難な場合には、暫定平行滑走路計画を進めることとし、本年9月にその手続きを開始すべく検討を重ねております。ついては、まず空港周辺地域の方々に関心の高い事項を中心にご説明し、今後、内容が固まり次第、順次明らかにしてまいります。

(1)滑走路の長さ及び位置

 平行滑走路の建設済み施設の一部と公団取得済みの用地を活用して滑走路の位置を北側に約800mずらすことにより、約2200mの暫定平行滑走路を整備します。具体的な滑走路位置は、別図1のとおりです。

(2)運用

 暫定平行滑走路で離着陸可能な航空機は、B767等の中型機が中心となります。B747等のいわゆるジャンボ機は、基本的には利用できません。従って、中型機による近距離国際線や国内線の利用が考えられます。上記の運用を前提に考えると、航空機の年間発着回数で約6万5千回(現計画の約7割に相当)程度は対応することができます。空港全体で本来予定していた処理能力に少しでも近づけるため、現滑走路の発着回数については、現状の1日あたり370回を維持させていただきたいと思います。これにより、空港全体の年間発着回数については20万回を確保することができます。

(3)標準飛行コース

 暫定平行滑走路供用開始後の標準飛行コースは、共生大綱でお示ししてご理解をいただいた平行滑走路供用開始後の標準飛行コースと同じです。滑走路が北側にずれますが、離陸の場合は、航空機は軽くて上昇性能のよい中型機が中心となりますので、利根川方面と空港の間の直進ルートのところでも、高度はほとんど変りません。着陸進入してくる場合には、昨年ご説明した高度よりは若干低くなりますが、主に中型機が運航されると考えていますので、航空機の威圧感はあまりないと考えられます(別図2、別図3参照)。

(4)航空機騒音の影響と対策

 暫定滑走路に係る航空機騒音については、滑走路の位置が北側へ約800mずれるものの、現計画より発着回数が減るとともに、騒音の程度が小さく上昇性能の良いB767等の中型機の運航が中心となりますので、75Wの騒音が及ぶ範囲は、南側だけでなく北側でも現計画において予測していたものよりも小さくなると見込まれます。空港全体の年間発着回数が20万回に達すると見込まれる時点の騒音コンターは、別図4のとおりです。

 なお、現滑走路につきましては、発着回数を現状の1目あたり370回を維持させていただきたいと考えていますので、航空機騒音につきましては、低騒音の機材の導入が進むことにより多少は低減しますが、現状とほぼ同程度のレベルになると見込んでいます(別図5参照)。

 

 このように、実際に騒音の影響の及ぶ範囲が拡大することはなく、むしろ若干縮小すると予想されますが、運輸省・空港公団としては、本来の2500mの滑走路の早期整備を目指しておりますので、航空機騒音等に対する対策については、対策区域を縮小することなく現在実施している対策に万全を尽くします。また、滑走路の位置が北側にずれることに伴い、住民の方々が抱かれる様々なご懸念についてもよくご相談させていただき、必要な対策を実施します。さらに、成田市東峰地区等暫定平行滑走路近隣での航空機騒音についても、住民の方々と十分に相談しながら必要な対策を実施します。

(参考)平行滑走路における現計画と暫定計画の1日あたりの発着回数の比較(空港全体の年間発着回数が20万回に達すると見込まれる時点)

現計画

暫定計画

1日あたりの発着回数

247回

176回

予想される使用機材

B747-400,B747

B767,MD11等

B767等