暫定滑走路計画に対する本会の声明


《成田空港問題の真の解決のために》

「暫定滑走路」計画は直ちに撤回し

真の住民合意に向け

関係者がこぞって参加できる話し合いの場を

1999年5月26日 

成田空港から郷土とくらしを守る会

 運輸省と新東京国際空港公団は平行滑走路の『2000年度完成断念』を発表しました。そして、この表明の直後に『平行滑走路用地の北半分を使って、2180mの暫定滑走路を2002年6月のワールドカップまでに建設する。』と言う案を千葉県や周辺市町村に提案し、21日の閣議で、「反対派の説得は続ける。」と言う条件付ながら、はやばやと決定しました。

 昭和41年の閣議決定以来、成田空港建設がここまでもつれたのは、あげて歴代政府の住民無視の姿勢にその責任があることも指摘せざるをえません。

 国もこのことを反省し、話し合いの必要性を認め昨年12月に『共生大綱』を発表し、話し合いによる成田空港建設を表明したはずです。

 ところが、それから半年もたっていない今月に示された『暫定滑走路』案はこれらの教訓を無視して、再び、『住民無視の強行路線』を目指すものと言わざるを得ません。

 暫定滑走路は現在平行滑走路用地内で生活と農業を営んでいる島村さんの北側からアプローチエリアを設け、滑走路を建設しようとするものですが、これは、島村さんの生活権を脅かし、強引に立退を迫るものとなります。運輸省は「暫定滑走路を建設しながら、用地内地権者との話し合いを続ける。」と言っていますが、常識で考えてもこの考えが『虫の良い、手前勝手な考え』であることは明らかです。運輸大臣は「反対派は話し合いの呼び掛けに応じようとしないので、暫定滑走路しか選択の道がなかった。」と述べましたが、円卓会議の際にも、国と熱田派が作った“土俵に乗れ”と強要しただけのものでしたし、その後の話し合いの呼び掛けも“平行滑走路建設を前提”にしたもので、真摯に相手の意見を聞こうとするものではありませんでした。

 また、運輸省は「暫定滑走路によって、騒音区域が広がることはない。」と言っていますが、北側に1Km弱滑走路が伸びることにより、北側の下総町や神崎町や茨城県各市町村の騒音コンターや飛行コースの変更を余儀なくされる事も予想されます。滑走路を延ばす地域に新たに買収すべき土地が「ある。」「ない。」だけの問題ではすまないはずです。

 ましてや、将来、暫定滑走路完成後、平行滑走路の南半分が完成することになれば、暫定滑走路と合わせて3200m級の滑走路として使用され、現在運用されている4000m滑走路と同様のひどい騒音がばらまかれることも予想されるのです。

 さらに、なぜ「ワールドカップまでに」なのか、と言う疑問もあります。ワールドカップは一時的なものです。その1ヶ月間増える外国人観光客を捌くためだけならば、羽田空港の一時的な使用や他の近隣の空港との連携を考えるべきではないでしょうか。

  私たち、「成田空港から郷土とくらしを守る会」は成田空港の現状が現在のような膠着状態のままで良いとは考えていません。

 成田空港が、まがりなりにも日本の表玄関として機能していることは事実ですし、周辺住民の生活に多大な影響を持つようになってきていることも否定できません。このことから、平行滑走路を早期に完成させる必要があると考えています。

 しかし、今回の『暫定滑走路』案は成田空港問題の解決にとって逆効果になると考えます。これを強行することは今まで国が犯してきた『住民の意向を無視する』と言う過ちを再び繰り返し、暫定滑走路は出来ても、完全な平行滑走路の完成と、成田空港問題の本当の解決に禍根を残すことになりかねません。

 そこで、本会は、『暫定滑走路計画をいったん白紙撤回し、円卓会議の教訓をふまえ、地元・周辺の住民、自治体関係者、航空関係者、成田空港で働く人達などの代表に加え運輸省・空港公団が一同に会し、自由に発言できる「場」を設け、成田空港の役割、環境基準達成などの騒音対策、地域振興策の具体化、地域づくりの構想などを精力的に議論し、お互いの理解を深めることが必要』と提案します。