成田国際空港株式会社 田村明比古、社長への要望書
要 望 書
成田国際空港株式会社 代表取締役社長
田村 明比古 様
2022年3月8日
成田空港から郷土とくらしを守る会
会長 木内 昭博
成田空港の運用時間延長を元に戻し、「さらなる機能強化計画」の見直しを求めます
未曾有の新型コロナウイルス感染症流行の中、成田空港の安全運用と感染防止のために日夜奮闘している貴職に感謝いたします。
今年の1月27日に貴社が発表した「2021年通年空港運用状況」によりますと、年間の成田空港利用者数は、1978年5月20日の開港年以降の最低となる524万4194人に落ち込んでいます。
このような状況を見るとき、貴職が推進しようとしている、「年間発着回数50万回」を目指す「さらなる成田空港機能強化計画」は、その必要性に疑問を持たざるをえません。
貴職も指摘しておられるように、成田空港の諸施設は、改修を重ねているとはいえ、老朽化が進み、現在もB滑走路誘導路の改修や、第8貨物ビルの新設などの工事や設計が進められています。
このような現状を見るとき、今、必要なのは、飛行コース直下の住民と、新たに騒音区域に入る人々に新たな苦痛を強いる、B滑走路の延長やC滑走路の新設ではなく、現在ある旅客施設や貨物施設の新設や、効率的な改良ではないでしょうか。
上記の観点から、住民の願いを踏まえて、本会は次の事項を要望いたします。
要望事項
1、現在、成田空港A滑走路で行われている「運用時間の延長」を元に戻してください
現在の運用時間の延長により、航空機の発着時間は午前6時から
午後11時59分とされ、さらに、翌日午前0時から0時29分までは、「カーフュー弾力的運用」として、遅れた場合には、発着が認められています。
しかし、この時間帯の騒音は、A滑走路飛行コース直下や谷間地区 住民の睡眠を妨害していることは明らかです。
日本国憲法は第25条第1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めています。
この、A滑走路運用時間の延長は明らかに憲法に違反しています。
この運用時間延長を直ちに、開港当初の約束である「午前6時から午後11時」に戻してください。
2、「さらなる機能強化計画」を直ちに凍結してください
今回の「成田空港のさらなる機能強化計画」を凍結して、中止も含めた再検討を行ってください。
この計画の根拠とされた、「今後の空港需要見通し」はイベントリスクを一切考慮せずに作成されました。このようなずさんな「需要予測」に基づいた「さらなる機能強化計画」は、その必要性も含め、根本から見直しを行ってください。
新型コロナウイルス感染症の流行により、すでに2年間にわたって、航空需要は冷え込んでいます。
航空関係者の間では、「今後も数年は新型コロナウイルス感染流行前の段階に戻らない」とされ、さらに「回復したとしても、コロナ前のような成長は期待できない」と予測されています。
さらに、地球温暖化による気候変動から、全世界的に大自然災害が多発し、「二酸化炭素などの地球温暖化ガス排出削減」は待ったなしの緊急課題になっています。
航空機や空港からの排出ガス削減も強く求められ、騒音軽減をも含む技術革新も急速に進むと思われます。
くりかえしになりますが、このよう新たな状況を踏まえ「さらなる機能強化計画」をいったん凍結し、その中止も含めた再検討を直ちに始めてください。
その検討には地元住民や住民が推薦する人を検討委員に加えて、透明性を重視した検証を行って下さい。
3、騒音被害住民全てを対象とする賠償制度を創設を
飛行コース直下にすむ住民は開港以来、約45年にわたり、成田空港を発着する航空機の騒音に悩まされています。
貴社からの周辺対策交付金などは周辺自治体に交付されますが、直接騒音に苦しむ住民一人一人には、その騒音被害に対する賠償は行われておりません。
全国の空港や基地周辺住民が起こした騒音訴訟の判決では、国や空港設置者の責任を認め、住民一人一人に賠償金を支払うようにと言う判決が出されています。
これらの住民が住む地域にも周辺対策交付金等や民家防音工事は行われています。
このことを考えた場合、騒音を発生させる貴社は、日夜の騒音被害を受けている住民一人一人に賠償金を支払う責務があると考えられます。
このような制度を一日も早く創設してください。
以上の要望を検討して、早期の回答をお願いいたします。
なお、運用時間の約束については、本会のウエブページである
「成田空港サーバー」の「開港当時の運用時間に関する住民要望と国・ NAA(成田空港公団) の回答」を参考にしてください。
URLは下記の通りです。
http://naritaairport.sakura.ne.jp/archives/unnyoujikanyoubou.html