第34回騒音対策委員会における本会の発言と回答(議事録から)
(平成19年3月29日)
【郷土とくらしを守る会(岩田委員)】
それでは質問します。第1点目は2月6日の毎日新聞に黒野社長がインタビューを出していますが、それについてお伺いしたいと思います。黒野杜長は空港の機能拡張について話しています。はっきりは言っていませんが、この機能拡張というのは平行滑走路の3,000m級の滑走路を作ること、それから発着回数の拡大を指していると読み取れるわけですが、我々としては納得できないところがあります。
すでに工事が始まっていますが、今の北伸の2,500m化を行うときの説明会、色々な話を聞いてみますと住民からは切実な話が出ているわけです。例えば「もう今でも限度なのだ、これ以上は困る」という話も出ているし、それからもっと切実なのは2,180mの滑走路が供用開始になってから、「飛行機の音が聞こえてくるとどこにいても頭痛がしてくる、だからもう鎮痛剤は離せないのだ」という人もいるわけです。それから「夜寝ようと思ってもいつ飛行機がまた飛んでくるかと思うと非常に寝っきが悪くなる。だから結局寝るためには睡眠剤を飲むしかない、あるいは酒を飲んで紛わして寝るしかない」と切実な意見は会社の方も聞いていたと思うのです。
そのような意見があるにもかかわらず、これから3,000m級にするのだとか、インタビュー記事の中でヒースロー空港の例を挙げて、「ヒースロー空港では3,000m級滑走路2本で年間発着回数は48万回もやってるじゃないか」と黒野さんはおっしゃる。とんでもないことだと思います。こういうことをおっしゃるというのは騒音に本当に苦しんでいる住民の気持ちがわかっていないのではないかと考えざるを得ないと思います。
2,500mの滑走路について言えば、私が28回の騒音対策委員会で「南側の用地問題が解決したら平行滑走路3,000m級にするのではないか」と質問しましたら、当時は空港公団でしたが、その空港公団の平山共生部長は「そういうことは考えておりません。もし南側に延ばせたとしても(あの頃は供用開始になっていませんけれども)北伸部分については、滑走路の航空灯などを設置したりして、使わないのだ」とはっきりお答えになっていました。
その答えと今回の黒野社長の発言と乖離しているのではないかというわけです。我々としては黒野社長の発言が非常に気になる。しかもこの中で黒野さんが言っているのは「2,500mで十分というならば成田空港の地位は低下する」と、あるいは「東峰地区住民の納得がなけれぱ地域は負け空港も負ける」と、だから「機能拡張がなけれぱ地域の発展もないのだよ」と、要するに地域の発展がないと脅して、「なんとかおまえら考えろ」と言っているのに等しいのではないかという気がします。これはちょっとひどい発言なのではと思い、認められないのではないかということです。
第2点目は、騒音被害を被っている住民は全体の周辺市町村全体の人口から見れば数は多くないが、非常に苦しんでいます。ところがそういう人に対する直接の補償制度というのは今何もありません。もちろん周辺対策交付金はあります。この周辺対策交付金はそういう騒音地域に使われていることは間違いないわけですが、騒音に苦しんでいる住民一人一人に対しての補償制度というのは現在何もない。
例えば状況は違うかもしれませんが、このところ判決が続いている基地騒音の判決を読んでみますと、その中で裁判長はこういうことを言っています。「裁判をしなければ騒音に苦しむ人達の補償が受けられないというのは国の怠慢だ、早くこういう状況を何とかしなさい」という判決をだしています。多分基地周辺でも色々な周辺対策交付金のようなものがあると思います。しかし個人個人に対する補償、私達は例えば騒音の程度によって住民一人一人に対して年間いくらいくら、それで騒音が激しくなればその額は上がる、騒音が低くなればその額は下がるというような補償制度を作るべきではないかと思います。
それから第3点目は、空港の軍事利用の問題です。アメリカがアジアのこの日本の周辺で、「事を起こした際に民間空港を利用したい」と日本の政府に申し出ているようです。その中に成田空港を使いたいということも名前を挙げてはっきりと言っていると聞いています。
これを具体化するために今年に入って特に新聞なんかでも報道されていますが、「共同作戦計画5055」の検討が進んでいるという状況があるわけです。ところが成田空港については、前身の空港公団それと私達守る会、日本山妙法寺とで成田空港の軍事的利用はしないという約束があります。これについては当時の歴代の運輸大臣と国会答弁等で確認をしています。米軍や自衛隊等の成田空港の利用はないと私達は考えています。
成田空港株式会社の方では、昨年4月に国民保護法に基づく保護計画を策定しているようです。当然、保護計画があるということはそれに基づく訓練や演習というものが考えられるのではないかと思います。私たちとしては、例え訓練や演習であっても、その米軍関係や自衛隊関係の参加をするような訓練や演習は認められないと考えています。一度でも訓練や何かであっても、軍事訓練というのは戦争行為の1つであることは間違いないわけで、それに備えるわけですから、その米軍や自衛隊の利用が1回でもあれば、もし事が起こった場合に軍事施設とみなされて攻撃の対象になっても全くおかしくはない。そういう事態は避けなけれぱいけないということで、訓練や演習であっても米軍や自衛隊を参加させないという約束をしていただきたいと思います。
それから第4点目は、飛行コースの問題です。私のところに千葉県旭市の人から「自分の家の上空を成田空港に離発着する飛行機が年中飛行しているが、飛行コースがあるのか」という問い合わせのメールがきました。それで私も調べてみて、今日、配られている環境報告書の24ぺ一ジにその標準飛行コースの図が出ていますが、これを見ても旭市の上空というのは、ほんのわずか北の方に西の方へ旋回する航空機の飛行コースが1つあるだけです。とくに北側離陸の場合には他にないのです。
しかし「年中飛んでいる」と言っています。まるっきり信用するのも何かと思い、1月9日現地へ行き、実際に測定をしました。簡単な方法ですがカメラを使いました。すると確かに飛んでいるのです。もちろん旋回する飛行機もありました。それは遥か手前の方から旋回して西へ向かっていく、ところが明らかに私が測定している真上の近くを通って太平洋の海岸に抜けていく飛行機が何機もありました。そういう標準飛行コースはないはずです。ですから、この人の言っていることは間違いないということがわかりました。この人から年中メールがきます。今日はこういう状況で飛んでいた、今日はこういう風に飛んでいたと。
やっぱり標準コースではないところに飛行機を飛ばすことは、まずいのではないかと思います。指導をもっと徹底していただきたいと思います。
第5点目ですが、騒音の評価基準、評価方式についての問題です。世界で多く用いられているLden(読売新聞で、はっきりLdenにしたいのだという報道がありました。環境省は色々な方式について世界中の方式を調べています。その評価方式)との相関関係についてお伺いしたいです。
例えぱWECPNLあるいはLdenの評価方式と被害感覚との相関関係をきちっとしていただかないと困ると思います。現在のままですとLdenに変えたら何が変わるのか、確かに逆転現象がなくなります。ただ逆転現象がなくなるということで終わってはいけないと思います。
私達もいろいろ調べているわけですが、WECPNLが同じ音の飛行機が2倍飛んでも、あのWECPNLの値が3ポイントしか上がらないのです。ところがLdenで計算してみても、まったく同じです。Ldenで機数が倍になっても、結局ポイントは3ポイントしか上がりません。
ところが現在のW値ですと、その騒音区域の区割りは5ポイントです。ですから結局3ポイントだけしか上がらないということは、場所によっては倍の飛行機が飛んできても騒音区域の変更はないということになります。果たしてこれでいいのだろうかと考えるわけです。
その被害感覚、例えばWECPNLで数値が変わると住民はどう感じるのか、あるいはLdenで数値が変わったらどう感じるのかということを、調べたデータに基づいて今度の諮問が行われているのかどうか。それを抜きにして、そのWECPNLとかLdenに変えるとか、それだけのことで終わってしまうのか、しかも区割りの基準はまた5ポイントずつ区切っていくと、あまり変化がないじゃないかということになってしまうわけです。住民としては、もう少し検討していただきたい。
もしそういうデータがないのならぱ、ちやんとした科学的な調査を行ない、その上で結論を出していただきたいと思います。以上です。
【田邊委員長】
はい。ありがとうございました。問題は5問ありました。最初に空港会社からお願いします。
【成田国際空港株式会社(後藤部長)】
それでは平行滑走路再延長の件にっいて回答させていただきます。現在2,500mの平行滑走路北伸整備については、2009年度内の供用を目指して工事を進めています。供用時には年間の発着回数は22万回となるというところまでは地域の方々のご理解を得て決まっています。したがって当然成田空港について北伸整備以降どうするのかというのは白紙の状態です。このような状況の中で成田空港の将来計画については、地域の発意と協力なくして事態が進んでいかない構図となっていることから、弊社の社長は「そこに留まっていいかどうか、どのように地域の方々はお考えなのか」といったような主旨で発言したわけです。ぜひともご理解をいただきたいと思います。
【田邊委員長】
はい。あと残る質問は国交省側になります。よろしくお願いします。
【国土交通省(羽尾課長)】
住民の方々への直接の補助制度の創設についてですが、これは成田空港わが国の国際空港の5割を占めるシェアで3,000万人を超える量があるなどといった公共性の観点、現在の受忍限度の観点などから極めて難しいものだと考えていますが、ご承知のように騒音対策については、これまでも成田空港会社あるいは県の方のご努力をいただいて、発生源対策、住宅防音工事の実施などといった周辺対策を実施していて、それなりの効果もあげているということで総合的にご理解いただければ幸いです。
その次の成田空港の軍事的利用についてのご質問ですが、空港建設に関わる地元の方々とのこれまでの経緯、過去における国会答弁の重み、あるいは国民保護法における審議、こういったものの状況などを踏まえて慎重に検討し対応をしていくべきものと考えています。
その次に、飛行コースについては東京航空局からお答えしていただきますが、私の方から環境策については先ほどご説明したとおりです。
最後に航空機の騒音評価方法の見直しについてです。住民の方々の被害の感覚とLdenの相関関係についてのご指摘ですが、現在環境審議会を主催しています環境省にきちっとお伝えしたいと思っています。
【国土交通省(唯野空港長)】
飛行コースについてお答えをしたいと思います。先ほどの24ぺ一ジの図をもう一度ご覧いただきたいと思います。少し専門的になって申し訳ないですが、滑走路に着陸する航路は途中からほぼ直線状になっています。また離陸していく航路も、途中まで直線状になっています。しかし、その先の曲線部では、標準飛行経路が緑色の線で示してありますが、実際の航跡はかなりバラついているのがご覧いただけると思います。実は着陸するときには計器着陸装置というものがありまして無線で着陸を誘導します。これでほぽまっすぐに入れます。離陸していくときには、しばらくの間は離陸した滑走路の延長線上を上がっていきますので、ほぽブレないで行くことができます。ところがコースが回っていく部分については、これを援助するための施設が今の時代まだありませんのでどうしてもブレてしまいます。実は標準飛行経路に幅があります。この場合ですと片側約7km、全幅14kmぐらいあると思っていただければと思います。ただその幅の全部が一面に使われているわけではなく、見ていただいたらわかるように、中心をなるべく通ろうとしますので、中心部の頻度が高く、中心から離れるほど頻度が低くなっていきます。そういう飛び方が今の現実です。それと標準の飛び方以外に、ある部分をどうしても避けなければいけないとき、航空機が混んでいるため、航空機間の間隔を調整する必要があるときなどには、横にふらざるを得ません。そういときには、標準飛行経路の中心に乗ろうとするのではない飛ぱし方をします。そういうことが面的な運用になってしまいます。この辺については、ぜひご理解をいただきたいと思います。
【田邊委員長】
はい。ありがとうございました。よろしいですか。
【成田空港から郷土とくらしを守る会(岩田委員)】
今の標準飛行コースですけど、私が調べたとき特別なことはありませんでした。天候は快晴、風もそんなに強くなく、それで混雑というわけでもない。それには当たらないのではないかなと思います。でも幅14kmとなると、これは事実上「北総地域は全部飛ばしてもいいのだ」という解釈になる気がします。
【国土交通省(唯野空港長)】
幅14kmというのは14km使い切るという意味ではなく、真ん中を通ろうとするわけですが、飛行機の性能によっては早く上昇する飛行機もありますし、遅く上昇する飛行機もあるわけです。そのタイミングなどで、右に曲がっていく力一ブの半径も違ってくるわけです。それを援助して曲線の上を航空機がきちんと飛んでいくための地上援助施設があればまた別ですが、今まだこの時代にはできていません。したがってそんな飛ばし方をせざるを得ないということです。幅いっぱいというわけではありません。なるべく真ん中に行こうとしています。
【田邊委員長】
よろしいですか。予定時間を過ぎてしまい申しわけございません。本日は本当に長時間にわたり貴重なご意見をいただきました。誠にありがとうございました。今日いただきましたご意見にっいては、今後の環境対策なり共生策に反映させるよう努力して参りたいと思っております。今後とも引き続きご支援・ご協力のほどお願い申し上げます。本日は本当にどうもありがとうございました。