2001年7月4日 空港公団交渉の内容

共生企画室長挨拶
 「工事も順調に進んでいる。今後の気象状況にもよるが、うまくいけば、ゴールデンウイーク前にも前倒しできるのではないか。いずれにしても、1日も早く暫定平行滑走路を完成させたい。」

事務局長の要望についての補足説明
(1)環境基準の早期達成については、短い距離で離陸できる航空機の開発など発生源対策で早期達成が出来ないだろうか。
(2)騒特法の防止特別地区の移転補償は山林も含めて、騒特法発効の前の価格でかいあげて欲しい、ということで、これは地権者のわがままではなく、当然の要求と考える。
(3)周辺対策交付金について、根本的には国土交通省の方で法的な改正をしていただかないと解決はしないと思いますが、一般会計に繰り入れると、実際に騒音被害を被っている人たちに使われる分が少なくなるのではないか、と言う懸念がある。被害を被っている人たちの人数による配分を厚くするなど、出来ることがあるのではないか。
(5)騒音の被害を空港公団の人たちに体験してもらうために、新人の研修などを騒音下の民家で、一定時間行うなどの方策をとれないだろうか。これが、騒音被害に苦しむひとたいの気持ちの一端を理解することになるのではないか。
(6)新しくもうけられる騒音測定局の位置に、自治体の希望だけではなく、被害を被ると考えられる住民の意見を聞いてもらいたい。
(7)騒音測定値のリアルタイムの公開はインターネットなどで1日遅れではなく、出来るのではないか。早く実施してもらいたい。
(8)南側にも大きな貨物基地を作る計画もあるという。とすれば、空港の真ん中を南北に縦貫する道路が片側1車線では間に合わないのではないか。これを、拡幅してもらいたい。
 以上である。

空港公団回答
(1)成田は騒音の低いチャプター3の航空機が98.7%になっている。これが、14年度からはチャプター3以下の航空機は乗り入れられなくなる。また、ICAOでは2006年1月から新たに作る航空機は1ランク上のチャプター4に限定するという話し合いが進められている。ACI(国際空港協議会)ではうるさい飛行機は入れてくれるな、と言う働きかけを行っている。
(2)山林はいつも管理をしなければいけないものではないので、今は、買い上げられないと言うことになっている。しかし、個別的には防風林などもあるので、相談させていただきたい。だが、移転を伴わない山林の買い上げは今のところ難しい。資産価値の問題もあるが、現行法上は土地だけを買い上げることは困難である。
(3)交付金は国内線の燃料贈与税に準じたものとなっている。これも、昭和51年に全国の着陸料ではなく、成田空港の着陸料を基準にして算出し、20%の増額にした。また、平成9年には平行滑走路の世帯数も算定のカウントに入れている。しかし、現行制度の中ではこれ以上の増額は難しい。配分であるが、当初は特別交付金が6%だった。現在はこれを40%にして、特定市町村に集中しないようにしている。配分であるが、使途については指定しているし、報告の義務もある。違反すれば、減らすことにもなっている。そこで、これ以上の自治体に対する要望は空港公団としては出来ない。
(4)共生財団の隣接地域の防音工事の基準であるが、現A滑走路では季節コンターの大きい方で隣接地域を考えている。平行滑走路についてはまだ飛んでないので、この季節コンターも引けない。そこで、A滑走路の季節コンターを参考にして7月1日から申し込み受付を始めている。基準が低いではないかと言うご指摘もあるが、後追いにならないようにやっていく。
(5)意味がとれなかったところもあるが、研修のカリキュラムは空港公団でたてるものであり、要望の趣旨は担当部署に伝える。蛇足かもしれないが、空港公団の宿舎でも騒音地域に建てられているもののある。
(6)A滑走路の測定局は当初は17カ所で始まったが、現在は自治体設置も含め71カ所になり、これを共生財団が統一して管理している。平行滑走路関係では空港公団は16カ所を設置する予定である。A滑走路の場合は空港公団の測定局と自治体の測定局がすぐ近くにある例もあった。平行滑走路についてははじめに空港公団の測定局の位置を決め、自治体については県に調整をお願いしてやってきたので、住民の意向がどのくらい入れられているか、わからないが、調整はとれていると思う。
(7)測定値のリアルタイムの公開であるが、現在は3カ所で公開しているが、これを、市町村段階で公開できないか検討している。インターネットでの公開も工夫はしているのだが、まだ、出来ない。飛行コースはリアルタイムでなく1日遅れではあるが、飛行コースの動画システムの中に騒音値を入れる研究を行っている。
平行滑走路の動画システムでは騒音値も含めたものを提供できるのではないか。
(8)時間帯によっては確かに混んでいる。縦貫道路の複線化は簡単には言えないが、南側の市町村から要望があった南側ゲートを開設して縦貫する道路を一坪共有地を迂回してつける方向で検討している。おそらく、来年の12月には南側ゲートが開設でき、これによって縦貫の混雑緩和にはなると考えている。

質疑応答

事務局長
 「補足であるが、最近環境庁が発表した全国の空港の環境基準達成状況で、成田空港の達成率が急に上がっているのはどうしてか。」

空港公団
 「あれは平成11年度のものだが、茨城県も含めた達成率で、千葉県だけでは34.4%になる。」

事務局長
 「南側ゲートが開設されると、空港内を通って東関東自動車道に抜けることも出来るのか。」

空港公団
 「南側ルートでチェックを受けて、ターミナルに来ることも出来る。従って、そのまま、東関東自動車道に乗ることも可能になる。」

事務局長
 「研修の件はどんなものをやっているのか。」

空港公団
 「空港公団1000人のうち、10%は周辺対策の業務にたずさわっている。従って、その人たちは一般的な騒音についてや対策についての研修はしている。また、空港公団本社が空港内に移転したときも、全員がタオルを持って、周辺のみなさんにご挨拶をして話を聞いている。」

事務局長
 「測定局の位置は決まっているのか。騒音対策委員会には出ていなかったと思うが。」

空港公団
 「決まっている。騒音対策委員会の段階では2,3カ所の契約が残っていたので出せなかった。」(終わりまでに場所の地図が配られる。)

鵜澤会員
 「下総町は20年間飛行コースずれで悩まされてきた。今回、暫定平行滑走路で北側に800m近くなる。そうすると百里の空域にも近くなり、早めの旋回による東側へのずれが心配される。このようなずれは『100%ない。』と言う約束をいただきたい。」

空港公団
 「国土交通省の方でも、飛行コースに違反したエアラインについては、その都度注意をしていく。『雷雲などの危険がある場合以外は飛行コースの監視装置があり、わかるんだよ。』と言うことも徹底している。我々が飛ばすわけではないので、国土交通省を通して注意していくしかないのではないか。」

鵜澤会員
 「口頭の注意だけでは徹底しないと思う。縛りのある注意や対策をお願いしたい。次に騒特法にかかる都市計画の問題だが、下総町では道路3本の計画しか建てられなかった。都市計画だから、生活基盤の整備をやりたいと思ってもそれをやるためには120億円必要となる。本町の財政基盤から言ったら、こんなものが出来るわけがない。やったら、莫大な借金が残る。だから、道路3本の整備にした。でも、生活基盤の整備もやりたい。そうすると、他の補助事業でやらざるを得ない。先般の騒音対策委員会では部長さんが『交付金などで対応できるものは対応していきたい。』と答えているが、周辺市町村の全部を交付金でまかなえるわけはない。そこで、成田財特法などを当てにしたいわけだが、成田財特法では新規事業の採用は認めない方向に来ている。これでは、せっかくの都市計画が進まず、“塩漬け”になってしまう可能性が強い。空港公団としても、成田財特法で新規事業を認めるように強力に働きかけてもらいたい。次に、共生財団が実施する隣接地域の防音工事が住民負担5%となっているが、下総でも芝山でも『第1種区域の防音工事が住民負担なしであるのに、防音性能が劣る谷間対策の防音工事を住民負担5%でやるわけにはいかない。』として、5%を自治体が肩代わりしている。だから、今回の隣接地域の住民負担も肩代わりせざるを得ない。この分を交付金などで補填してもらいたい。また、防音家屋に対する空調の電気代に対する補助は各市町村でまちまちになっている。これは不公平である。この電気代に対する補助は共生財団が不公平のないように事業としてやってくれるよう空港公団から働きかけて欲しい。」

空港公団
 「共生財団の事業については『全部使ってもよいではないか。』と言う意見や、『いや、対策が将来も必要となるのだから、残しておかなければ。』という意見がある。電気代、いわゆる、空調機器の維持管理費の補助についても、これを出すとなると、将来にわたって出すことになってしまうので、無理があるのではないか。成田財特法の延長は当時の運輸省や自治省が交渉してやっと認められた。成田空港が完全に出来るまでは『完成途上』と言うことで、財政的な問題について出きるだけホローしていきたいと考えている。」

事務局長
 「航空機を利用する乗客が受益者負担の意味で騒音被害に対する負担として、空港使用料に一定額上乗せして別会計で周辺対策費とする考え方はないものなのか。」

空港公団
 「空港使用料はターミナルなどの施設の使用料であり、騒音を出している航空会社が徴収しているものではない。そこで、迷惑料的なものを上乗せは出来ない。それに当たるのは着陸料のなかに含まれることになる。運航する航空会社が乗客に代わって負担し、運賃の中に繰り入れている図式になる。」

事務局長
 「着陸料なら空港公団が自主的に決められるのだから、『燃料贈与税相当』と言う国からの縛りも必要ないではないか。」

空港公団
 「着陸料が工事費をまかなえるようならば、そうは言えるが、工事費のほんの一部しかまかなえない。そこで、残りを国から補助していただいている。とすると、国は着陸料が適正に使われているかどうかをチェックする事になる。そこで、『燃料贈与税相当』と言うことになる。」

事務局長
 「環境基準を達成できないのならば、70WECPNLまでの民家防音工事をすべきではないか。」

空港公団
 「国としては法律通り75WECPNLまでの民家防音工事しかできない。成田空港では谷間対策や隣接地域対策などで国よりは柔軟に対処していると考えている。しかし、『70WECPNLまでやる』とは言えない。」

鵜澤会員
 「70WECPNLまで対策をとらなければ、環境基準100%達成にはなり得ない。それを目指さないと言うことは『環境基準を達成する気がない。』と言うことになるのではないか。」

空港公団
 「今の全国的な段階は『75WECPNLの対策に近づきつつある。』と言うところなので、それが、達成できたところで70WECPNLを目指すことになるのではないか。」

秋山会員
 「共同利用施設の件だが、私が議員の時に飯笹には空港公団が共同利用施設を作ってくれると言う話だった。ところが、昭和62年に要望書を出したところ、『新しい第1種区域になったので飯笹には作れません。』と言われた。地域の住民は『こんな馬鹿なことがあるか。』と怒っている。」

空港公団
 「共同利用施設は空港公団が建てると言うことではなくて、何世帯かの基準で地域が共同利用施設を建てるときに、防音工事分を空港公団が補助すると言うもので、そこの所に、行き違いがあったのかもしれない。基準が変わったから出来なくなったと言うことはないはずだ。」

秋山会員
 「その席には私も居たが、当時の部長さんは『難しいですね。』と言うことだった。『要望が出れば改めて検討する。』と言うことだった。」

空港公団
 「今日は担当が居ないので、わからないところもあるが、調べてみる。ダブルカウントですでに補助の対象に入っているために出来ないと言うこともある。」

秋山会員
 「確かに23戸分は一鍬田に融通しているが、飯笹は200戸以上の世帯がある。」

椎名会員
 「A滑走路の騒音地域に住む人が『空調機器の再助成はいらないよ。空調を使ったこともない。電気の基本容量を上げてくれないのだから、使えない。』と言っていた。空調機器の電気代と基本容量を上げるところまで面倒を見るべきでないか。」

空港公団
 「公共施設の空調機器の電気代については見込みで交付金の中に繰り入れているが、民家防音の電気代については自治体にお任せするようなかたちになっている。」

萩原会員
 「暫定平行滑走路が供用開始されるまでに民家防音工事がどのくらい進むのか。芝山町では12年度の民家防音工事の実施率が35%にしかなっていない。このまま来年の5月に供用開始されたら、大変な事態になる。空港公団も市町村任せではなく、積極的な手を打ってもらいたい。第2点は新しい施設が出来たはずなのに、エンジンテストが相変わらず外で行われている。住民は『変わらないではないか。』と怒っている。第3点は移転跡地の問題である。芝山町には空港公団所有地が235ヘクタールある。このうち、移転跡地が30ヘクタールあるが、これが、ゴミの不法投棄場になっている。高い次元での共生を目指すならば、このような点で地道な努力をお願いしたい。」

空港公団
 「空港公団としてもPRにつとめているが、平行滑走路関係の方々が『飛んでみなければわからない。家の建て替えの時期にやりたい。』と考えている方が多い。今後も努力するが、希望が出れば対処する体制はとっている。新ノイズサップレサーは日本航空と全日空が運用している。他の航空会社も使えるが、使うためには使用量を払わなければならない。航空会社としては『使用料を払ってまで使いたくない。』という部分があるのかもしれない。跡地利用については私たちも色々考えているが、空港公団の業務の範囲があって、緑化計画を行えない地域もある。市町村から、『こういうものに使いたい。』と言う申し出があれば、出来るだけ協力したい。」

事務局長
 「財団で行った健康調査の結果は出ているのか。」

空港公団
 「まだ出ていない。財団の理事会では『今年度中には出したい。』とは言っていたが、先生方の分析の面まで今年度中に出せるかどうかははっきりしていないようだ。」

事務局長
 「ここに来て共生大綱の精神が形骸化してきているのではないか。千葉県議会は凍結するはずの横風用滑走路も含めた『完全空港化』を決議するし、この間の神社の立木伐採も抜き打ちで行うし、成田の民間団体は大綱の『20万回の発着』を無視して、『40万回の発着』を提言してきている。ここに来て私たちの会が指摘した円卓会議の矛盾が出てきているのではないか。」
空港公団
 「私たちとしては、今後も共生大綱の精神で物事を行っていく。」

鵜澤会員
 「暫定平行滑走路が供用開始になれば、交付金の総額も大きくなるのではないか。」

空港公団
 「2500mの平行滑走路ならば、現在の交付金の6割増の見当になると思うが、暫定平行滑走路の場合には近距離便が多くなる。交付金の算定はトン当たりなので、6割増とは行かないと考えられる。また、算定が全国の燃料贈与税の平均単価が基準になり、それが出てくるのが9月頃になるのではっきりとはわからない。」

鵜澤会員
 「暫定平行滑走路が出来て、交付金の配布団体が増えると言うことはあるのか。」

空港公団
 「現在も18団体に配布しているが、この数が増えると言うことはない。元々、平行滑走路も含めた団体だから。普通交付金と特別交付金の割合も6:4で変わらない。」

以上