円卓会議と共生委員会の問題点

 運輸省や千葉県は円卓会議で旧熱田派と合意した22項目で成田空港をめぐる諸問題が解決するかのごとく言っています。マスコミも大々的に取り上げてはやし立てています。

 しかし、地元や周辺の住民はこれに対して、冷ややかに受け止めています。何故なのかを考えてみたいと思います。

 第1はこの合意はあくまでも運輸省や千葉県と旧熱田派の一部の人達との合意にすぎないと言う事です。地元や周辺の住民には何の正式な相談もなく合意されたものだからです。

 第2にこの22項目の合意事項は新たに提起されたものではなく、そのほとんどは住民が以前から提起していたものなのです。しかし、運輸省はこれらの提起に対して今までは無視をしてきたのです。このことを棚に上げて、手のひらを返したように取り上げる運輸省の態度に住民は腹をたてているのです。

 第3に、つい10年ほど前までは「騒音対策などを口にするのは、空港建設に組するものだ。」と同じ住民を非難し、時には恫喝していた旧熱田派の諸氏が、そのことに対する反省も謝罪もなしに、自分達の勝ち取った成果のように振舞うことに白けを感じているのです。また、過激派と手を組み、支援を受けて、結果的に警察官や警備員を死にいたらしめたことに対しても、きちんとした反省も謝罪もしていない事に釈然としない気持ちもあるのです。

 第4に、こんなに大事なことを一部の住民と運輸省の間で決められて行くことに対する、漠然とした不安を感じているのです。これからも、このように「自分達抜きで決められてしまうのだろうか。」と言う不安です。

 以上のような不安から、何か要求があっても、「共生委員会のメンバーを通して話をしてもらわないと、駄目なのではないか。」と言う雰囲気が出来つつあることが大きな問題になります。新たな特権階級の誕生にもなりかねません。

 また、この22項目以外の問題が無視される危険があるのも問題です。例えば、環境基準達成の問題です。成田空港周辺の環境基準は屋外で70WECPNL以下にしなければならないことになっています。しかも、これは13年も前に達成する事になっています。しかし、現在でも周辺の騒音測定の結果では約半数が未達成になっています。したがって、未達成の地域では、かわりの措置として民家に対する防音対策が必要になります。しかし、運輸省は民家防音工事は75WECPNL以上の地域にしか実施していません。このような大事な問題ですら22項目の中には入っていないのです。

 これらの問題点を解決するには、運輸省が全住民を対象にして、真に民主的な方法で空港にかかわる全ての問題を話し合う必要があると思います。