平和塔遷座の際の「取極書」


取 極 書

   前文
(三里塚平和塔奉賛会の立場、およぴ交渉の経緯)
 三里塚平和塔奉賛会は、一九六七年十一月以来、新東京国際空港四000メートル滑走路建設予定地に、平和塔を建立し、次の三点を理由にその建設に反対してきた。
 一、三里塚周辺農民の農地とその生活が、一方的に破壊され、耐え難い苦しみを農民に与えることになる。
 二、航空機騒音等により著しく周辺住民の生活環境を悪化させる。
 三、「日米安保条約ならぴに地位協定の存在する下で、大型空港が軍事的に利用されないという保障が全くない。
 以上の反対にもかかわらず、空港建設工事は進捗、完成に近づき開港が急がれている実情にかんがみ、空港周辺農民と住民の生活を守る立場から、平'和塔奉賛会は、「三里塚空港から郷土と暮しを守る会」「三里塚農民組合」その他民主平和団体とともに、千葉県土地収用委員会会長のあつせんを受け入れて、千葉県知事と交渉をつづけてきた。千葉県知事は政府、新東京国際空港公団の処理すべき問題について、解決を求める場をあつせんした。公団総裁は、この場を通じ、平和塔奉賛会、守る会、農民組合等の要求を聞き、別紙一の覚え書をもつて、奉賛会会長に対し、平和塔およぴその附属施設の遷座およぴ移転を要請した。そこで運輸大臣、千葉県知事、新東京国際空港公団総裁と奉賛会会長との間に、次のような主文による約定をとりかわすことに合意をみるにいたつた。

   約定事項
 平和塔奉賛会会長(以下甲という.)と運輸大臣、千葉県知事、ならぴに新東京国際空港公団総裁(以下乙等という。)とは、成田市東三里塚二一四の一に所在する、平和塔ならぴに附属施設(以下平和塔等という。)の遷座、移転に関して次のとおり約定する。
第一条 平和塔ならぴに附属施設は平和護持と新東京国際空港周辺住民の生活と航空の安全を守る平和塔建立本来の趣旨にのつとり、新空港に近接する適当な場所に移転する。
第二条 平和塔等の遷座、移転については、新東京国際空港公団は出来得る限りの援助、協力を行なうものとする。
第三条 平和塔等の遷座、移転にあたつて、乙等は次の事項を約束する。
 一 新東京国際空港は純然たる民間空港であり、安保条約およびこれに基づく地位協定の存在にもかかわらず、これを軍事的に利用することは絶対に認めない。その意味においてマツクのチヤーター機の離着陸もこれを認めない。なお、現在羽田空港に行なわれているマツクのチヤーター機の離着陸も極力止めさせるよう努力する。
 二 新東京国際空港の騒音対策については、乙等は重要な問題として各種対策に努力する。また、乙等は甲に対して騒音対策委員会委員を委嘱し周辺住民の立場に立つて積極的な活動を期待する。
 三 乙等は、周辺農民に対して現在用地買収未済の地主およぴやむおえず集団移転をよぎなくされる地主に対して、その個々の要望等を聞きその移転補償問題の解決に誠意をもつて対処する。
 四 第二項およぴ第三.項の細目については、乙等は甲の要望する別紙第二の主眼点について十分な政策再検討を加え、関係諸団体との間に別途協議する。
第四条 本約定に関し、とくに定めなき事項があつたとき、または、疑義を生じたときは、別に甲、乙等において協議する。

 昭和四十七年四月十五日

   甲   三里塚平和塔奉賛会会長
        日本山妙法寺三里塚道場主任    佐藤 行通 

   乙等  運輸大臣              丹羽喬四郎 
       
       千葉県知事職務代理者
        千葉県副知事           川上 紀一 

       新東京国際空港公団総裁       今井 榮文 


旧平和塔(開港前、左がA滑走路南端)
遷座した現在の平和塔(2011年7月16日)