蓮沼村が政府に提出した意見書

新東京国際空港周辺における航空機騒音対策の拡充、強化に関する意見書

 新東京国際空港(成田空港)は、開港以来20周年を迎え、わが国の経済、社会の各般にわたる国際交流を支える拠点として極めて重要な役割を果たしてきたことは、国民各層遍く認めるところであると思料する。

 しかしその反面、離発着する航空機による騒音、落下物、電波障害等々、周辺地域住民に対し肉体的、精神的に計り知れない被害を及ぼしていることもまた事実である。

 そのような周辺地域にあって、わが蓮沼村は、空港南東側のA滑走路直線上に位置し、成田空港発着(南東側)のすぺての航空機が、発便では当村上空まで直線上昇して目的地へ分散飛行し、そして着便は当村海岸沖を着陸体勢基点として集まり当村上空経過空港へという立地で、日夜航空機による様々な障害に悩まされてきた地域でありながら、一般住民に対する基本的な騒音対策の実施区域の外におかれていることは誠に遺憾であり、大きな差別とさえ言わざるを得ない。

 これは現在、航空機騒音対策上の判断指標とされるものに「加重等価平均感覚騒音レベル(WECPNL)」があって、この指数が地域騒音対策の施策を行う上の唯一最善の基準のごとく扱われ、いわゆる騒音区域の指定区分がなされており、その中で第一種区域における数値が75以上とされているためであるが、この指数はあくまでも騒音状況の平均的な値を求めたものであって、騒音対策の施策を構築する上では唯一ではなくて一つの重要参考材料と位置付けるべきものと考える。真に被害住民の立場に立った現実的、多面的な対応を考えるならば、数値により括られた地域の外辺にもそれに匹敵する程度或いはそれ以上の実質的、内面的障害も実在することを認識し、必要な措置を講ずるべきである。

 例え一時の高騒音であっても、それが乳幼児、病人等の安眠安静を阻害するならば、最高音こそ重要であって・平均値なぞ無意味、無価値のそしりをうけるは当然と思考される。

 現在成田空港は、平行B滑走路の早期完成等完全空港をめざして努力中であり騒音対策等諸般の地域対応施策も"地域との共生"を基本理念としながら進めそいるが、共生と言う言葉の真の裏うちとして、地域があって空港ができたと言う当地域の実情を直視して地域住民に与える諸々のマイナス面につき本当の実態を積極的に把握し、いやしくも、世に言う「官僚の保守・現状維持志向」を排し、住民の立場に立った誠の心配りある施策を願うものである。

 以上、当地域実情の経過と現状を踏まえ、本議会は政府に対し、次の事項について積極的に対処されるよう強く要望する。

1、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(騒防法)の規定による区域措定の方法について、「加重等価平均感覚騒音レベル」によることを一つの基本としつつも、対象地域における生活環境への影響、人の健康への影響など現実的多面的な被害内容の把握、精査を行い、これ等を総合評価として加味する方法を検討改善し、住民の不公平観等素朴な疑問を排除すること。

2、生活環境を保全し、人の健康の保護を図る観点から騒防法に基づく運輸省令を改正し、公害対策基本法第9条の規定に基づいて環境庁が定めたr航空機騒音に係る環境基準」である70WECPNLを基準値として「第1種区域」の設定見直しを行うこと。

 以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。

          平成10年7月17日

千葉県連沼村議会

内閣総理大臣 橋本龍太郎様

運輸大臣 藤井孝男様