航空機騒音に関する要望書と回答

航空機騒音に関する要望書


環境大臣 小池百合子様


平成17年10月14日

成田空港から郷土とくらしを守る会
会長 木内昭博



 貴職が、わが国における環境保全に関し、日夜努力しておられる事に敬意を表します。
 私たちの会は成田空港の建設がこの地に決定されてより、飛行騒音とコースずれの測定、大気汚染濃度の測定などを行ってきました。
 航空公害についても、開港前より暗騒音の測定を初めとして、測定と調査研究をしてまいりました。
 これらの成果は調査資料集1「航空機騒音の測定資料と予測図」から調査資料集5「成田空港における騒音軽減に関する5つの提言と参考資料」や「提言 騒音評価方式を改めよう」などとして発表してきました。
 成田空港周辺では未だに環境基準が完全には達成されておらず、環境基準を上回る70〜75WECPNLの地域は、法による民家防音工事助成対象から除外されたままです。
 これらの地域でも、日平均評価値が75WECPNLを超える日も多く住民は睡眠障害などに苦しんでいます。
 しかし、現行の年平均評価法はこれらの被害を十分には反映しておらず、生活環境保全には有害なものとなっています。
 また、暫定平行滑走路運用後に騒音評価値に「逆転現象」も発生しています。
 貴省においては航空機騒音に関する環境基準の見直しを騒音評価方法も含めて検討されていますが、この見直しは全国の空港周辺住民にとって少なからぬ影響が生じるものと考えられます。
 そこで、見直しに当たって次の点に配慮して検討していただき、合わせて現在の環境基準を完全に達成していただくように、以下の事項を要望いたします。


要望事項


1、 航空機騒音が住民に与える精神的・身体的な影響について、大規模で科学的な調査を実施して下さい。

2、 航空機騒音に関する環境基準は、国民の健康な生活を営む権利を保障した憲法と環境基本法に基づき、前第1項の科学的知見に裏付けられた検討を進めて下さい。なお、検討に際し世界保健機関の「環境騒音のガイドライン」も参照して下さい。

3、 航空機騒音は、比較的騒音値が一定である新幹線騒音等と異なり、飛行態様により騒音値の変動が大きい実態があります。従って週平均や年平均で評価すると望ましい環境が保全されない場合が発生しています。前第2項の法の精神で保証される評価法を検討して下さい。また、どのような平均法でも、著しい高騒音は望ましい環境を破壊します。発生源規制の観点に基づく評価方法を検討して下さい。

4、 成田空港周辺では、航空機騒音に関する環境基準の達成率がおおむね40%前後です。環境基準の見直中においても、環境基準の完全達成に向けて早急に対策を進めて下さい。

5、 現在、航空機騒音に関する環境基準が未達成の地域に対しては、航空機騒音防止法などの改正によって、未達成地域に住む全ての住民に対して、民家防音などの航空機騒音防止対策を速やかに実施して下さい。


以上



環境省の見解

 環境省からは「水・大気環境局 大気生活環境室長補佐」、「自動車環境対策課課長補佐」他1名の3名が対応してくれました。本会からは木内会長をはじめ会員4名が参加し、共産党の志位議員の秘書の方も参加しました。検討中の資料については志位議員事務所に出してくれる事になりました。

環境省の要望事項に対する見解

第1項目;現在、連続的な道路騒音と人体に対する影響との調査を大学の先生にもお願いして進めている。しかし、なかなか難しい。「睡眠の度合いを測る器具をつけると眠れない」などの問題があり、うまく進んでいない。5年かけて進めているが後2年になってしまった。今後は間欠騒音と騒音の平均評価方式の関係について調査を進めたい。航空機騒音との関係はもう少し後になる。
第2項目と第3項目;成田空港周辺でのWECPNL値の逆転現象は計算方法の簡略化に原因がある事がはっきりした。前年度まではこれの検討を進めていた。今年度はWECPNLかエネルギーベースのLeqやLAEなどがどうかの検討をしている。この検討は騒音制御学会に委託して検討委員会として行っている。この会に今年から千葉県もオブザーバーとして入ってもらった。我々は事務局として参加している。検討会の結論が出ると審議会に諮る事になる。騒音評価方式を抜本的に改正するかどうかも含めて今年度中に検討会で判断が出る事になっている。単発騒音の評価をどう扱うかも考える事になっている。世界保健機関(WHO)のガイドラインはかなり厳しい内容になっている。田園地帯でカエルが鳴いてもいけない事になる。このガイドラインはロングスパンの指針であり、当面できるものではない。
第4項目;環境基準の達成率は成田空港周辺ではおっしゃる通りである。我々としても、着陸方式や離陸方式で出来るだけ騒音を小さくするように努力している。
第5項目;環境省だけで出来る事ではないので、検討したい。全国の空港周辺に関係する事なので、なかなか難しい。

質疑応答

守る会;「現在のWECPNLの問題は1年の間に非常にうるさい時期と比較的静かな時期があるとそれを平均する所にある。例えば、刑務所で(我々も騒音が激しい、と言って出て行くわけにはいかないから、刑務所に似ているが)冬に非常に寒く『毛布をもう1枚欲しい』と訴えたら、『夏は35度になる。1年平均すれば20度で快適ではないか。』と言われて拒否され、風邪から肺炎になってしまった、と言うのと同じではないか。当時の局長の通達でWECPNLは1年の平均をとる事になったそうだが、基準は最もうるさい時期を基準とすべきではないか。将来、横風用滑走路が造られたとして、横風の時には非常にうるさくなるが、年間平均にすると数値は全く低くなってしまう。」
環境省;「WECPNLが一概に悪いとは言えない。しかし、睡眠中の単発騒音が数は少なくても大きな影響がある事は確かで、それをどうするかも検討している。」
守る会;「審議会にかかって、具体的に答申が出て改訂されるまでにどのくらいの時間がかかるものなのか。」
環境省;「通常は1年以内で答申が出される。」
守る会;「審議会にかかってから意見を出しても遅いのではないか。検討委員会に意見は出せるのか。」
環境省;「審議会は色々な人の意見を聞く事になっている。その段階で、修正がある事は珍しくはない。検討委員会に意見を出されれば、委員会に伝える。」
守る会;「国土交通省や成田国際空港株式会社は『室内で環境基準達成と同等の環境だから良いではないか。』と言う事を良く言うのだが、環境省も同じ見解なのか。」
環境省;「我々の立場はあくまでも『屋外での環境で基準が達成されるべき』との立場だ。」

以上

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