千葉県の「平成21年度成田空港周辺航空機騒音測定結果報告書」を読む
この報告書は毎年発行されるものですが、測定資料は9月に発表される共生財団の「平成21年度 成田国際空港周辺航空機騒音測定結果(年報)」に基づいています。そこで、この分析では一部に共生財団の年報からとっています。
しかし、千葉県の報告書が共生財団の年報と違っているところは、成田空港周辺の航空機騒音を「環境基準」の観点から取り上げていることです。
(1)環境基準達成率が65.9%と6.9ポイント上昇
このところ、環境基準の達成率は年々改善されてきています。平成18年度が50.6%、平成19年度が53.6%、平成20年度が59.0%で、今回の平成21年度が65.9%となりました。
この原因は、発着回数が増えない中で、成田国際空港株式会社が着陸料を騒音の程度によって段階的に設定するなど、低騒音機の導入に力を入れて来た結果と考えられます。
しかし、21年度の改善はリーマンショックに端を発した世界景気の後退により、航空需要が冷え込み発着回数が減少したことと、燃料費の高騰で燃費の良い小型機の導入が貢献しているものと思われ、一時的な“改善”の可能性があります。
今後、発着回数が現在の年間19万回前後から増えていくとしますと、この改善も21年度や今年度限りとなる可能性が高いと思われます。平成25年度に可能となる年間発着回数27万回や、その先の30万回になれば、環境基準達成率は再び50%前後に落ち込むことになるのではないでしょうか。成田空港発着回数の推移を年報から下記に載せます。
全測定局の結果は膨大になりますので、別ページとします。
(2)騒音コンターも大幅に縮小
騒音の改善に伴い、県が毎年作成している騒音コンターも大幅に縮小しました。下に平成21年コンター図と平成19年コンター図を比較のために載せます。
【平成21年度コンター】
【平成19年度コンター】
(3)平行滑走路(B滑走路)北側直下地域は騒音が増加
今回の調査期間は平成21年4月1日〜平成22年3月31日までですが、この間の平成21年10月22日に平行滑走路の北伸による2500mとしての供用が開始されました。従って、この調査期間の約半分で平行滑走路が2500m滑走路として使用されたことになります。これにより、平行滑走路直下地域は4000m滑走路直下地域に比べて、騒音の軽減が少なくなっています。
特に北側の直下地域は平成20年度と比べても平均すると騒音が増加する結果となっています。別ページの表を参照にしてください。なお。この表は本会が作りました。
今後発着回数が増えていくと、平行滑走路の発着回数がどんどん増えることになり、平行滑走路直下地域の騒音は激しくなることになります。4000m滑走路の発着回数は現状でもかなり満杯に近くなっていますから、大幅に増えることはなく、騒音の増加も平行滑走路ほど激しくはないと考えられます。
(4)ふに落ちない測定結果「飛行回数が減っているのに騒音は増加」
共生財団の年報の中に、下にあるような図が載っていました。この図の平成22年3月のところを見て「はてな?」と思いました。上のグラフでは2月に比べてWECPNL値は増えているのですが、下のグラフの「日平均測定回数」は逆に減っているのです。同じような傾向は平成20年7月にもありますが、こちらの「日平均測定回数」の減少は蝉の鳴き声による、測定不能があると考えられます。しかし、3月のように顕著な例は珍しく、何が原因なのか、気になりました。