第48回騒音対策委員会 本会質問要旨と回答


第48回騒音対策委員会 質問要旨と回答

成田空港から郷土とくらしを守る会

1項目目

 世界の空港運営では、空港機能の充実だけでなく、騒音下住民への影響を軽減する運営が主流となっています。

 英国ではヒースロー空港の拡張について、空港運営会社とロンドン市長が、騒音被害の増大を理由とし、反対を表明しています。

 フランスではドゴール空港の運営会社が、ドゴール空港のこれ以上の拡張について、その予定はないと明言しています。

 オランダのスキポール空港の運営会社は、騒音軽減のため、発着回数の削減を表明しています。これらの方針について、政府や航空会社などは反発していますが、周辺住民への騒音影響や、地球温暖化ガスの排出規制を重視すれば、この方針は正当なものと考えるべきではないでしょうか。

回答:国土交通省)

 諸外国における各空港の運営方針は、各々の国や地域の事情を勘案して定め られたものと思われ、当該空港の運営方針に対してコメントできる立場ではあ りませんが、空港と地域との共生は大変重要との認識のもと、国土交通省として も引き続き地域の声をよく聞き、真摯に受け止めながら、関係機関と連携して、 空港周辺の地域づくりに最大限協力して参りたいと考えています。

(回答:成田国際空港株式会社)

 成田空港では、首都圏空港の航空需要に対応し我が国の経済成長や地域の振 興に貢献していくという使命を果たすため現在、更なる機能強化に取り組んで おります。
 更なる機能強化の実施にあたりましては、2018 年の四者協議会の場におきま して合意させていただきましたが、
 機能強化を実現させていただいた場合、これ まで以上に騒音の影響が広範に及ぶとともに、特に夜間飛行制限の緩和につい ては、地域の皆様に大きなご負担をおかけしてしまうことになることから、2020 年 4 月より発着回数 50 万回に応じた環境対策を実施すると共に周辺対策交付金 につきましても 50 万回の発着回数に基づき交付額を算出し交付させていただい ております。
 騒音下にお住いの皆様にはご迷惑をおかけしますが、機能強化と共に騒音下 の地域も含めた空港周辺地域の発展に資する取組みを行ってまいりたいと考え ております。
 また、成田空港では「サステナブル NRT2050」を策定し、2050 年度までに 2015 年度比で 50%の CO2 排出量削減を目指しており、目標達成に向けて、SAF(持続 可能な航空燃料)の導入促進や車両の低公害化など、空港全体の脱炭素化に積極 的に取り組んでおります。

2項目

(1)C滑走路が完成するまでの飛行コースと飛行方針を早く明らかにして下さい。

 年間発着回数を34万回に増やすに当たって、A滑走路の北伸とC滑走路が完成していない段階で、発着回数を増やせるのは、早朝と夜間の時間帯しかないと考えられます。
 国やNAAは騒音下住民への影響をどう考えているのか、このことについて、飛行コース直下住民に説明すべきであると考えますが、いかがでしょうか。


(回答:国土交通省)

 我が国の国際競争力の強化等の観点から、首都圏空港の容量拡大による機能 強化は必要不可欠であると考えております。
 C滑走路整備までの間に飛行コー ス等に変更があるものではございませんが、30 万回を超える運用については、 旺盛な航空旅客需要を我が国に取り込むため、成田空港会社とともに関係自治 体をはじめとする地域の皆様への説明を経て、1 月 24 日の四者協議会で確認が されたところです。

(回答:成田国際空港株式会社)
 C滑走路供用開始までの 30 万回を超える運用方法に関しては、2020 年3月の 四者協議会において、「地域の理解を得ながら丁寧に対応することを前提に、今 後協議すること」とされており、2024 年 10 月頃から、成田空港周辺地域の議会、 騒音関係団体、住民の皆様にご説明をさせていただき、2025 年1月の四者協議 会において年間発着枠 30 万回を超える運用について確認されたところです。
 成田空港は現状においても、管制機能の高度化や高速離脱誘導路の整備によ り、2020 年夏ダイヤから 34 万回を処理することができる能力を有しており、30 万回を超える運用による飛行コースや飛行方針に変更はございません。
 また、今 後は航空会社の需要の高い時間帯を中心に便が増加していくものと想定してお り、深夜早朝の時間帯が大幅に増加していくものではないと考えております。
 我が国の国際競争力強化や訪日外国人受入れ等の観点から、現在の空港処理 能力である年間 34 万回を年間発着枠として運用することは、航空需要の取込み につながり、国際線の基幹空港としての役割を担っている成田空港を更に発展 させ、空港周辺地域の発展にも寄与する重要な取組と考えております。

(2)C滑走路完成後の離発着機「スライド運用」について、早期に住民に説明し、理解を得て下さい。

 機能強化計画が完成する予定の2029年度末に、「飛行時間について『スライド制』を考えている」と言っていますが、この運用方針については、今もって騒音下住民に何の説明もありません。

 早く案を示して了解を得る努力をして下さい。

 国土交通省やNAAはこの「スライド制」を自画自賛していますが、ヒースロー空港の「スライド制」では、深夜・早朝の時間帯において、機種や回数について厳しい制限をかけ、深夜・早朝時間帯での飛行を厳しく監視し、違反した場合には罰則を科しています。

 成田空港でも、このような制限を考えているのでしょうか。

 また、離発着の方向を、一定期間ごとに交換し、平等に均等化すると言っていますが、この“期間”の長さはどのように決めるのでしょうか。

 「スライド制」による住民への身体的・精神的影響について、科学的な調査、研究を行う考えはあるのでしょうか。


(回答:国土交通省)

 スライド運用については、飛行経路直下にお住まいの皆様の生活環境保全に 配慮したものとして導入を予定しており、その運用方法に高いご関心があるこ とは承知しておりますが、空港運用の観点から多岐にわたる事項を整理してい く必要があることから、検討を進めているところです。
 いずれにしましても、引き続きNAAと連携しながら、地域の皆様のご理解を 得られるよう丁寧に対応してまいります。

(回答:成田国際空港株式会社)

 スライド運用につきましては、地域の視点、空港運用の視点等、多岐に渡る事 項を整理し決定していく必要があることから、引き続き航空局をはじめとする 関係者と共に整理した上で、地域のご理解が得られるよう適宜適切な時期に説 明してまいりたいと考えております。
 また、当社は、成田空港の更なる機能強化に係る確認書に基づき、空港周辺地 域にお住まいの皆様の航空機騒音に係る健康影響を含む生活環境への影響調査 を実施することとしております。
 その実施にあたり設立された、学識経験者と行 政担当者で構成される健康影響調査委員会での議論において、2019 年冬ダイヤ 前に実施した事前調査の後、2020 年度内を目標に本調査を実施することで確認 されておりました。
 しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等もあり、航空機騒音の 健康に与える影響の有無を検証することは困難と判断され、2020 年度内の本調査の実施が見送られた一方、委員会での議論の過程において、2020 年 3 月 24 日 告示により新たに騒防法第一種区域が追加指定されたこと等による騒音対策区 域が拡大されたことや、今後の更なる機能強化計画により変化していく空港運用 が周辺地域に影響を及ぼすのかを継続して調査していくべき、という意見があ ったことから、現在の対策区域における現況把握等のための調査を行いました。
  「スライド制」による住民への身体的・精神的影響に関する科学的な調査、研究 について現時点で決まったことはありませんが、本調査については、健康影響調 査委員会において審議を重ね、航空需要が十分に戻っていると判断されたこと から、2025 年の秋から実施することが決定しました。
 具体的な調査項目及び調 査方法等については、準備が整い次第お知らせいたします。
 なお、航空機騒音が健康に影響を与えるか否かの結果公表については、過去に 実施した調査や今後予定している本調査も含め総合的に分析し、公表していく 予定です。

3項目目

 NAAの田村社長は先頃の記者会見で、人手不足への対策として、「働く人たちが空港周辺に喜んで住める環境を整備したい」と発言した、との事ですが、開港以来、約50年の長きにわたり、騒音に悩まされている飛行コース直下の住民に「喜んでもらえる」対策を考えているのでしょうか。

 例えば、防音家屋についても、最新の防音技術による防音家屋の新築や改修などを検討する「小委員会」などを設置して、少しでも騒音を軽減するすべきではないでしょうか。

(回答:成田国際空港株式会社)

 当社においては、2020 年2月 10 日より、これまでのマイナスの影響をゼロ にする地域共生策だけでなく、地域にプラスの影響を提供できるよう空港周辺 の地域振興等にかかる取組みを迅速かつ着実に推進することを目的に、地域共 生部内に「機能強化・地域振興調整室」を設置し、地域資源を活用した地域振 興の取り組みを進めてまいりました。
 具体的には、地域と空港がともに発展することを目指した、地域事業者の皆 様と連動した地域産品ブランド「+NRT Factory」を立ち上げ、地域の新たな魅 力を幅広く世界に発信していくため、お土産菓子等の新商品を開発しました。
また、2024 年3月には、DMC「プラスナリタラボ株式会社」を設立し、「+NRT Factory」ブランドを継承した、物販・卸事業、地域産品を活用した飲食事 業、空港を起点として周辺観光地への送客を図る観光事業の3事業を推進し、 地域経済の循環を促進し地域と空港が一体的、持続的に発展できるよう努めて まいりたいと考えております。
 また、防音工事につきましては、かねてより騒音下の住民の皆様からのご意 見をふまえ、更なる機能強化の環境対策においては、ペアガラスの助成や世帯 人数による防音工事限度額の柔軟化、浴室、洗面所、トイレを含めた外郭防音 化など、充実化を図ってまいりました。
 引き続き、騒音下の住民の声をお聞きし、寄り添った対策を考えてまいりた いと考えております。

4項目目

 この項目については、本会のミスで、山武市が委員として出席している事から、審問を撤回し、陳謝しました。
 今回の会議でも、横芝光町・山武市支部会として、山武市市長が出席していました。

5項目目

 NAAは「ゲートウェイ成田」に対して、用地の約4割を年間約1800万円で貸与している、との事ですが、この貸与料は順調にNAAに、入金されているのでしょうか。


(回答:国土交通省)

 当社では造成工事を目的とした土地賃貸借契約を締結しており、土地賃貸借 料については支払っていただいております。
 なお、土地賃貸借料等個別の企業 との契約内容については回答しかねます。



本会からの再質問と回答

 第1点目は、スライド制について、再度聞きたい。ヒースロー空港ではスライド制で、2本の滑走路ながら年間発着回数が45万回をこなしている。
 成田空港では将来50万回と言うが、C滑走路を新設しなくても、良いのではないのか。
 また、ヨーロッパでは、住民の健康調査というと、調査人数が100万人単位で行われ、しかも、5年から10年にわたる長期の調査をしている。この結果も踏まえて、長期にわたる調査をしていただきたい。

 第2点目は、この騒音対策委員会についてですが、もっと開かれた会議にしていただきたい。私たちは1972年に、航空局長立ち会いの下で、当時の空港公団総裁との間で「航空機騒音に関する覚書」を取り交わしました。
 この中でも騒音対策委員会についての議論を行いました。騒音対策委員会は公開で、被害住民の意見も自由に発言できるようにする、と言う事になっていました。
 ところが、45年も経って
いるのに報道陣さえ会場で傍聴できない。これをもっともっと開かれたものにしてほしい。

 第3点目は千葉県が毎年出している昨年度の「成田空港周辺の騒音調査年報」が今だに公開されていない、以前は前年の12月には公表されていました、
 先日、県の大気汚染課に電話したとこ「2月には公表される」とのことだったが、今もって、発表されていません。 
 この県の「年表」は周辺地域の航空機騒音に関する環境基準達成率を明らかにしてくれます。
 ここが共生財団の「年報」とは違うところです。早く、発表して下さい。

 最後に、ここに出席している方々全員にお願いしたい事があります。
 周辺に住んでいる方々が成田国際空港株式会社からの交付金などで、住みやすい街を作り、空港で働く人たちが「住んでみたい街」を目指すことは大事なことと思うですが、これは、約50年にわったって、日夜の航空機騒音を我慢しながら暮らしてきた、騒音下の人達の苦労がある、ということを忘れないでいただきたい。
 この人たちが「騒音はあるけれど、慣れ親しんだこのふる里に住み続けたい」と思えるように、配慮していただければと思います。
 その意味でも、もっと防音効果のある住宅を考えていただきたい。
以上です。


国土交通省回答

 スライド制についての質問があったが、今回は34万回についての話を四者協議会で説明を行った。
 スライド制については、具体的には何も決まっていない。固まれば、丁寧な説明をしていきたい。

成田国際空港株式会社(NAA)回答

 C滑走路が完成したとしても、すぐにスライド制をとるわけではない。
 今回は主に、混雑時間帯に便数を増やすことになる。
 従って、C滑走路完成でも、すぐに夜間の飛行回数が大幅に増えることにはならないと考えている。
 



以上 


ホームに戻る