成田空港の軍事利用に道を開く「平和安全法制」審議への抗議と質問書及び回答


2015年6月16日

国土交通大臣 太田昭宏様

成田空港の軍事利用に道を開く「平和安全法制」審議への

抗議と質問書

成田空港から郷土とくらしを守る会 会長 木内昭博

 今国会で審議されている「平和安全法制」ですが、この中では、成田空港も含めた、全国の空港を必要に応じて、外国軍隊も含め使用できるようにする、とのことです。

 これが事実としますと、成田空港建設の際に、本会と成田国際空港株式会社(NAA)の前身である新東京国際空港公団が、当時の航空局長立ち会いの下で取り交わした、「交渉覚書」(1972年9月20日)の約束
「新空港は、純然たる民間航空のためのものであり、軍事利用させることはない。軍事施設と思われるものの設置も一切認めない方針である。MACのチャーター機問題についても約定どおり処理する。」に違反し、

 また、日本山妙法寺三里塚平和塔奉賛会と、当時の運輸大臣 丹羽喬四郎氏、千葉県知事職務代理者 千葉県副知事 川上紀一氏、新東京国際空港公団総裁 今井榮文氏と取り交わした「平和塔遷座の際の取極書」(1972年4月15日)の約束事項
「新東京国際空港は純然たる民間空港であり、安保条約およびこれに基づく地位協定の存在にもかかわらず、これを軍事的に利用することは絶対に認めない。」に明らかに違反しています。

 さらに、開港の際、国が地元自治体に示した「新東京国際空港の軍事的利用はしない」との各種約束をも違えることになります。

 地元住民との信頼関係を台無しにしかねない、今回の「平和安全法制」審議に厳重に抗議し、以下の質問をいたします。

質問事項

1、空港建設当時の各種約束について、ご承知でしょうか。

2、これらの約束と、「平和安全法制」との関連をお答え下さい。

3、これら、当時の運輸大臣らが、住民や千葉県と取り交わした約束を、今後も維持する事を確認して下さい。

 以上の点を踏まえ、7月10日までに文書で回答をお願いいたします。


「『軍事利用はしない』との約束を変更する事は考えていない」国土交通省回答

 本会が6月16日、大田国土交通大臣提出した「成田空港の軍事利用に道を開く『平和安全法制』審議への抗議と質問書」に対する回答が、7月10日に、国土交通省成田国際空港事務所次長の森島智氏から電話でありました。

第1点目の「空港建設当時の各種約束について、ご承知でしょうか。」に対する回答は、
「建設当時の約束については承知をしている。」とのことでした。

第2点目の「これらの約束と、『平和安全法制』との関連をお答え下さい。」に対する回答は
「平成16年に制定された『武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律』によって、公共施設については手順が規定され、飛行場の使用に関する仕組みは規定されています。今般の安全法制では、利用調整で自衛隊と米軍以外の外国軍隊でも使えるようにするためのものです。しかし、利用の手順などは変更されない、と承知しています。」とのことでした。

第3点目の「これら、当時の運輸大臣らが、住民や千葉県と取り交わした約束を、今後も維持する事を確認して下さい。」については、
「当時の運輸大臣と地元の方々との約束を見直す事は考えていない。」とのことでした。

 これらの回答について、私の方からいくつかの質問を行いました。以下にやりとりを書きます。
*岩田事務局長「我々としては、このような一般的なことではなくて“成田空港についてはどうなのかな”と言う事を心配しているのだが、それはどうなのか」
*森島次長「それは軍事利用と言うことではないかと思うが、軍事利用と言う範囲が明確でないので答えにくいのだが、運用に当たっては過去の約束の重みとか、他の空港の使用の可能性などを総合的に考えて判断する事になる。」

*岩田事務局長「と言う事は『使用されることもある』と言うことになるのか。」
*森島次長「そこは、総合的に踏まえて対応する必要がある、と言う事だが、私どもとしては答えにくい。」

*岩田事務局長「私たちとしては『安保条約があっても、地位協定があっても』と言うことではっきり約束している。『平成16年の法律で手順は決まっている』と言うけれども、我々は40年以上前にこのような事態を考えて、『安保条約があっても、地位協定があっても』と言う文言を入れてもらったのだが、これについては国土交通省はどう考えているのか。」
*森島次長「私どもとしては『総合的に考えて判断する事になる』と言う事しか言えない。本省から指示されているもので。」

*岩田事務局長「文書ではいただけないのか。」
*森島次長「私どもは本省から口頭で指示を受けているもので、このようにしか対応できない。」


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