「平成15年度新東京国際空港周辺航空機騒音測定結果報告書」を読む
先月末に千葉県環境生活部から「平成15年度新東京国際空港周辺航空機騒音測定結果報告書」送られてきました。平成14年度からは千葉県が独自に実施していた夏と冬にそれぞれ1週間連続測定が廃止され、測定値は「財団法人 成田空港周辺地域共生財団」の「航空機騒音研究所」(2004年2月14日の出来事を参照)がまとめている固定測定局の数値を使っています。
同財団では既に昨年9月段階で平成15年度の測定結果をまとめており、貴重で膨大な「年報」として公表しています。測定値そのものは同財団の「年報」の方が詳細なのですが、この「年報」では「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(以下、騒防法と呼びます)の基準のみを問題にしており、「航空機騒音の環境基準」については一切触れないものとなっています。従って、騒防法の第1種区域などの中で騒音が騒防法の基準値を超えていないかどうかのみを問題にしています。
これに対して千葉県の報告書は「航空機騒音の環境基準」に適合しているかどうかを検討しています。これが、千葉県の報告書の一番大事な点と思います。また、測定値に基づき騒音コンターを引いているのも、成田空港周辺地域の騒音を視覚的に把握するためには非常に有用な手段と思います。
@環境基準達成率は50.6%・前年より9ポイント上昇
15年度の航空機騒音に関する環境基準達成率は下表でも分かる通り,50.6%となりました。
これは前年度の41.5%に比べますと9.1ポイントの上昇になります。この改善の原因は航空機の音が小さくなったというのではなく、重症急性呼吸器症候群(SARS)とイラク戦争によって、航空需要が冷え込み便数や乗客が少なくなった事によると思われます。下のグラフからもこのことがよくわかります。
(成田空港周辺地域共生財団年報より)
この結果、騒音コンターも前年度に比べて若干小さくなっています。
@逆転現象を生じたのは20カ所にも・前年度は6カ所
2本の滑走路からの騒音を合わせたWECPNL値よりも、1本の滑走路の騒音のみのWECPNL値の方が大きくなると言ういわゆる“逆転現象”を起こしている測定局は20カ所にもなりました。前年度は6カ所でしたから3倍以上の増加になります。逆転を起こした測定局は下図のようになっています。
(成田空港周辺地域共生財団年報より)
以上が平成15年度報告書の概略ですが、環境基準達成率が上がった、とは言っても騒音そのものが改善されたとは言いがたく、「外的な要因で一時的に下がった。」というのが実態と思います。航空需要が改善し、離発着回数が過去最高となる平成16年度の報告書を注目したいと思います。
@千葉県は成田空港周辺の騒音対策に積極的に取り組んでください
千葉県は羽田空港再拡張については「新たな飛行コースが騒音被害をもたらす。」と国土交通省に強硬に申し入れていますが、騒音の被害は成田空港周辺地域の方がはるかに大きくなります。しかし、千葉県には成田国際空港株式会社から出される周辺対策交付金も入っているにもかかわらず、夏冬に実施していた騒音測定を取りやめるなど、騒音軽減への取り組みは後退していると言わざるを得ません。成田空港周辺住民の中には「県が羽田空港の時のように、国土交通省や成田国際空港株式会社に強行に申し入れてくれないと困る。不公平だ。」との意見を言う方もいます。