第26回騒音対策委員会の報告

 第26回騒音対策委員会は1999年3月30日にリーガロイヤルホテル成田で開かれました。その簡単な報告をしておきます。


1.空港公団の挨拶と報告

 最初に委員会の委員長である空港公団副総裁の永井さんから挨拶がありました。永井副総裁は東峰地区地権者との空港公団側の窓口になっています。

 その後、報告に移りましたが、今年の報告の目玉は「エコ・エアポート構想」のようでした。この報告が長々と続き、報告終了後に休憩に入りましたが、会議の予定時間3時間の内、ここまでで1時間10分を費やしました。

2.各部会からの要望と答弁

 3時20分に再開され、各部会からの要望とそれに対する答えが出されました。各部会ごとに簡単に書いていきます。

☆成田部会(小川成田市長)

(1)空港周辺の環状道路、放射状道路の整備に力を入れてほしい。

(2)活性化のために広域公園の整備を早く具体化してほしい。

(3)万一の事故の場合に、補償が航空会社によってバラバラであっては困る。国として考えてほしい。落下物事故対策も根絶を期してほしい。

(4)平成9年度に共生財団によって決められた、「隣接地域」は部落などを分断している。この「隣接地域」を拡大してほしい。

★千葉県;道路網は周辺地域の発展にとって重要と考えている。延長される成田財特法で県道の成田ー松尾線と成田ー小見川線が認められた。後は県のマスタープランを今検討しているので、それを待って計画を建てたい。広域公園はリクリェーション施設としても防災上としても大きな役割をもっている。財政面も検討していきたい。

★運輸省;事故は未然に防ぐことが前提だが、万が一の時には国の問題として考えていく。落下物事故対策は洋上脚下げを徹底しているが、効果が出ていて大幅に減少している。尚、ICAOなどにも要望している。着氷については2月にも調査して降り、この結果を分析して対策を建てたい。

★公団;事故の当事者が補償も含めて対応するのが第1であるが、社会的な影響も大きいので、国・空港公団としても全力を尽くしたい。現在行っている隣接地域の防音工事に目途がついた段階で考えたいと思っていたが、11年度当初から市町村と相談を始めたい。

☆成田部会;落下物事故対策は南側は対策が取られているが、北側の落下物をどうするのか考えてもらいたい。隣接地域の拡大は住民の要望が強いので是非お願いしたい。

☆芝山部会(相川芝山町長)

(1〕羽田空港の国際化は成田空港の歴史的な経緯を踏みにじるものだ。強く反対する。これに対して、明確な答弁をお願いしたい。

(2)騒音防止特別措置法の都市計画が明らかにされないので、特別防止地区に新しく家が建てられるケースもある。いつ頃都市計画ができるのか。

(3)農業公園の計画を進めてもらいたい。町としても協力をして行くつもりだ。

(4)騒音の影響を受けている住民への健康調査を以前から要求しているが、是非、実施してほしい。

★公団;平行滑走路の完成は国民的課題であり、国際的な公約でもある。全力で努力している。

★運輸省;成田空港は国際線、羽田空港は国内線という考えは以前から変わっていない。千葉県民への騒音の影響などを考えると羽田空港国際化は非常に難しい。

★千葉県;都市計画には土地利用の問題も絡む。土地利用はそれぞれの地域の特殊性があるので今調整を進めている。難しいところもあるが、できるだけ早期に成案を得るように努力したい。

★公団;農業公園であるが、南側地域の振興にとって大事なことは承知している。予定地に公団の用地が73%含まれている。そこで、貸与している農地は契約が3年であるが、今年が契約更改の年なので、この契約を1年契約にしてすぐに対応できるようにしている。健康調査については宇部空港で行われたものを調査した。コーネル大で考えられた厳密な調査のようだ。共生財団の中に学識経験者の検討会を設置して現在まで2回の検討会を開いた。この結果を待って考えていきたい。

☆芝山部会;騒音防止特別措置法の都市計画は合意から確定までにどのくらいかかるのか。

★千葉県;運輸大臣と建設大臣の同意が必要だが、そのために調整をしている。従って、同意が得られればそれほど時間はかからないとは思うが、時間を言える立場ではない。

☆松尾・横芝・蓮沼部会(實川横芝町長)

 (1)平行滑走路が供用されると当地区は両滑走路からの騒音を受けることになる。ところが、そのための特別な考慮はない。就眠が安心して生活できる対策を考えてほしい。

(2)光町にテレビの中継局ができたが、住民は光町向きと千葉テレビのための東金向きの2本のアンテナを建てなければならない。老朽化したときにアンテナの取り替えを空港公団でやってほしい。

(3)当地域の活性化にとって芝山鉄道の延伸が欠かせない。九十九里海岸には観光資源もある。是非、芝山鉄道を九十九里海岸まで延伸してもらいたい。

★公団;平行滑走路は2500mで離陸は短距離便だけで騒音区域は小さくなる。しかし、両方からの影響は飛び始めてから調査して相談したい。テレビ電波の状態は整備されたと思っている。従って、アンテナの建て替えは自己負担と考えている。共用アンテナについては一部の自己負担をお願いしたい。芝山鉄道の工事は現在順調に進んでいる。しかし、一部の土地が未買収なので完成の時期は見通せない。芝山町の中心部までの延伸は今、協議会で検討している。さらなる延長については今は考えられない。当面は千代田地区までの1日も早い完成が第1である。

☆松尾・横芝・蓮沼部会;アンテナは2本建てなければならない。考えてほしい。芝山鉄道で地域は発展できる。是非、考えてほしい。

☆大栄・多古・下総部会(澤田下総町長)

(1)平行滑走路2000年度完成に向けて努力しているが、周辺地域の振興では東西格差が顕著である。これをなくしてほしい。

(2)地域の振興の中心は道路網の整備である。路線を決める検討会に参加させてほしい。例えば、下総と大栄を結ぶ道路について、今年は下総部分には予算が付いたが、大栄部分には付かなかった。これでは、道路整備の効果が半減してしまう。

(3)標準飛行コースの発表で、幅が決められたが、平行滑走路供用開始になれば、20万回も飛びこの幅ではずれが騒音を拡大してしまう。幅を見直してほしい。

★公団;空港は地域にマイナス面だけをもたらすわけではない。プラス面もある。しかし、市町村によってばらつきがあるのも確かで、今後、できるだけ公平になるように考えたい。そのためにも、2000年度完成が必要である。

★千葉県;今、素案の段階で検討している。下総・横芝・松尾への放射状道路も検討しているところだ。

★運輸省;旋回部分の飛行コース幅をどうするか、と言うことと思う。今は直進部分の幅を守らせることだ。違反した航空機には指導もしている。将来的には旋回部分の幅についても検討していきたい。

☆大栄町長;せっかくの道路が1Kmほど中途半端になってしまうのだ。是非検討してほしい。

☆富里・山武部会(相川富里町長)

(1)道路の整備計画について聞きたい。環状・放射状道路の案が未だ出ていない。どうなっているのか。

(2)共生大綱が出されたが、これについて、どう取り組めばよいのか教えてほしい。

★千葉県;空港周辺のナットワークをどうとって行くか、が問題だ。地域活性化の中で道路をどうするかと言う観点で検討して行きたい。

★公団;共生大綱にはすべてが書いてあるわけではない。だから、今後も地域と密接に連絡を取り合って考えたい。成田空港周辺農業対策協議会の成果として公団用地の貸与を行っている。このような事業に公団は今後も積極的に参加していきたい。

☆佐原・神崎部会(後藤神崎町長)

(1)飛行コースを遵守してもらいたい。夜間に低い航空機があり、大きな騒音を出す。平行滑走路が完成すれば、この部会の地区の飛行コースも回数も増えるのだから。

(2)道路網の整備はどうなっているのか。国道51号・356号・圏央道の整備はどうか。当地区でも、空港へ通う人も増え、混雑するようになっている。

(3)当地区は空港東側で遅れており、航空機事故の多い“魔の3分間”の地域になる。事故に備える消防隊の整備や県立佐原病院の整備をお願いしたい。

★運輸省;飛行コース違反については昨年の3月30日からレーダーによる監視の結果を公表している。また、今年1月28日からは幅の監視もし、逸脱したものには事情を聞き、正当な理由がないものは指導をしている。

★千葉県;県としても国道51号の整備に取り組んでいきたい。県立佐原病院は地域の中心として大きな役割を果たしている。

★公団;消防施設の整備拡充については今後も協力していきたい。

☆河内・新利根・江戸崎地区部会(野高河内町長)

(1)現在でも“うるさい”と言う苦情が増えている。平行滑走路が完成すると騒音が激しくなると予想される。民家防音区域を拡大してほしい。供用開始後の調査を十分に行ってほしい。

(2)飛行コースが乱れている。低いものがある。定められた飛行コースを守るようにお願いしたい。

★公団;民家防音区域の拡大は難しい。平行滑走路についても昭和60年に設定されている。この範囲に騒音は収まると考えるが、供用開始後に測定して様子を見たい。今も、当地域での測定は24時間行われている。これで様子を見たい。飛行コースの測定もしている。

★運輸省;飛行コースの幅を逸脱したものについては調査をし、対策を取っている。

☆成田空港から郷土とくらしを守る会(岩田事務局長)

 [質問内容については『質問要旨』を参考にして下さい。以下、回答のみを書きます。]

★運輸省;『成田空港の軍事利用』については、社会通念上も経済上も空港の処理能力上から見ても慎重に対応すべき問題と考えている。

★公団;『環境基準』については公団は法律に基づいてやらなければならないので、第1種区域の民家防音と谷間対策と隣接地域の民家防音を、工夫をしながらやっているところである。

★運輸省;『待機空域』であるが、指摘の待機空域はコスモポイントを基準とするもので、北風の時に、しかも混雑やアクシデントの時に使用するもので、一部陸域にかかるが影響はないと考えている。『県内通過6000フィート』についてだが、この約束とおりに飛行している。標準飛行コースは離着陸時に該当する。『面的運用』についてだが、安全対策から考えられているものである。『飛行コースの幅』であるが、遵守するべきと思い逸脱には指導をしている。この幅は諸外国に比べても広いものではない。『標準飛行コース』については基本はできる限り線の上を飛ぶことにある、ことは言うまでもない。

☆岩田事務局長;明白な約束があるのに、軍事利用をするとすれば、平行滑走路の2000年度完成などの空港整備に重大な影響を与えることになる。この点をよく考えてほしい。環境基準問題では、空港公団の立場からすれば、答弁の通りだ。法の改正などがなければ、公団としてできることは限られる。だからこそ、事前に渡した質問要旨で、「答弁は運輸省に」とお願いしたのに無視された。


 以上で質疑応答もすべて終わりました。終了は5時20分でした。この後、ホテルの別室で懇親会が開かれましたが、毎回のことですが、私と本会からの傍聴者は出席しませんでした。

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