97年8月の出来事

*8月31日

@開かれていた日米航空交渉の第2回次官級公式協議は29日に物別れのまま終了しました。次は9月22日から5日間の予定で東京で開かれます。対立点は日米双方の国際航空市場を完全開放することを段階的自由化の最終目標にするかどうかと言うことのようです。根には現在の日米航空協定が著しく日本側に不利な不平等状態にあることが影響しています。

@31日の千葉日報によりますと、反対同盟旧熱田派の一部の人達が一坪共有地の所有者約800人に所有権を維持するように訴えた手紙を送っていたことが明らかになりました。その中で「私たち反対同盟の闘争方針にはなんらの変更もございません。」と書いています。

【コメント】旧熱田派と言いますが、一つのまとまった集団としての実態はないようです。シンポジュウム、円卓会議の流れが出てくる中でこの路線に反対する人達も多く、代表をしていた熱田一氏も自分の名前を組織名から外してくれと要求し、旧熱田派と言う呼び名が一般化したのです。シンポジュウム、円卓会議の中で中心となった石毛博道氏も円卓会議終了直後に旧熱田派事務局長をやめてしまいました。現在、旧熱田派は円卓会議に参加した人達の中でも2つに分かれ、22項目で闘争を集結しようとする流れと、『地球的規模の実験村』を平行滑走路予定地に作らせることによって完全空港化を阻止しようとする流れに別れています。また、シンポジュウムや円卓会議の流れそのものに反対する人達もいます。しかし、全体としては衰退の方向に向っていることは確かなようです。今回の手紙は、実験村を推進しようとするグループから出されたもののようです。

*8月30日

@ 空の日、空の旬間成田地区実行委員会は9月19日に行われるジャンボ機との綱引き大会の参加者を募集しています。対象は来春小学校に入学する児童とその保護者です。問い合わせ先は空港公団広報室(電話0476−34−5060)。また、9月23日に行われる中学生の空港施設見学会の参加者も募集しています。こちらの問い合わせ先は新東京空港事務所(電話0476ー32ー6512)です。どちらも期限は9月10日で応募者多数の時は抽選になります。

@空港の南側15Kmに位置する山武郡松尾町の酒造会社が[成田エアポートビール]を今月から空港内などで販売しはじめました。これ以上は宣伝になるので書きません。

*8月29日

@ 新聞報道によると、成田空港地域共生委員会は28日第17回の会合を開き、来春からの増便問題を話し合いました。この増便に対して、委員から、「低騒音機が増え、騒音基準は問題ないというが、現実に今よりも騒音があがることは確かだから、地元住民の意見をきちんと聞いてほしい。」という要望が出されたようです。また、この席で、運輸省は「平行滑走路が完成されれば、現滑走路の便数は330便程度までに減少する。」と説明しました。

 【コメント】共生委員会では「この増便を認めない。」という意見はなかったようです。「そのかわり住民が要求することを実現しろ。」という事のようです。これで良いのでしょうか。守る会は環境基準を早期に達成するか、達成できない70WECPNL以上の地域に対して完全な対策を要求しています。それと、新聞記事では『騒音基準』という言葉が使われていますが、これは『環境基準』の事ではありません。ここで言っているのは『騒防法』の第1種地域を指定する75WECPNLのコンターの事です。運輸省は「10便増えても第1種地域の外側が75WECPNL以上の騒音になることはありません。」と言っているのです。まぎらわしい『騒音基準』と言う言葉は使うべきではありません。また、「平行滑走路が完成されれば、現滑走路の便数は330便程度までに減少する。」と言うのですが、これはあくまでも平行滑走路が完成した直後の話ではないかと思います。航空需要が増えたり、各国の増便要求が増えたりすればこの330便が増やされることが予想されます。

@ 新聞報道によると、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直し問題でアメリカ側が日本周辺の有事の際にアメリカ軍が使用する可能性のある民間空港と港湾10箇所余りの名前を伝えてきたことが明らかになりました。空港では、新千歳空港、関西空港、福岡空港、長崎空港などのようです。成田空港の名前はなかったようです。

 【コメント】守る会では1972年9月20日に運輸省航空局長立ち会いのもとに当時の空港公団総裁;今井栄文氏と守る会事務局長;円道寺正直の間で『航空機公害に関する交渉覚書』を締結しました。その中で、[<原則1>当空港の軍事利用は一切許さず、当空港周辺の空路及び管制空域の設定等において軍事を優先させないこと。]と要求しました。これに対して、空港公団側は[一、新空港は純然たる民間空港のためのものであり、軍事利用させることはない。軍事施設と思われるものの設置も一切認めない方針である。MACのチャーター機問題についても約定どおり処理する。又、民間機優先の原則は、新空港においても貫かれており、このため百里空域は、御要望どおり、北方に縮少して民間機との接触の危険がないようにする。]と軍事利用をしない旨約束をしています。

@12日に山口県岩国市の上空で、香港発広島行きの香港ドラゴン航空350便と米子発福岡行きの日本エアコミユーター172便が異常接近(ニアミス)をしたという報告が、香港ドラゴン航空の機長から運輸省に報告されました。航空機衝突防止装置が警報を発したために回避措置をとったとのことです。

@26日に出た新聞記事をめぐる問題も含めて、28日に芝山町議会空港対策特別委員会が開かれました。守る会会員である萩原議員は「この増便について町民がどう考えるか、町民の意向を調査するべきだ。」と主張しましたが、結論としては、町民が求めているものがなんなのかを良く考えて、9月10日の議会全員協議会で考えようと言うことになったようです。町当局としては、町民の意向がNOと出た場合に完全空港化を決議している立場と矛盾が生じる、と心配しているようです。


*8月28日

@27日に運輸省航空局新東京国際空港課に、「今回の増便に関して、自治体には説明しているようだが、騒音対策委員会のメンバーでもある守る会には説明してもらえないのか。出来れば、臨時の騒音対策委員会を開いてほしい。」と申し入れました。これに対して、夕方回答があり、「騒音対策委員会のメンバーの多くが自治体の首長であり、騒音対策委員会を開くと2重になる。騒音対策委員会の主催は空港公団なので守る会には空港公団を通して説明させるようにします。」との事でした。やがて公団から連絡があると思います。

@宇宙開発事業団は27日、北海道苫小牧で行う予定の固定ロケットの爆発実験を中止すると発表しました。これは、5月に実施した実験で7Km離れた養鶏場のニワトリ500羽が驚いて圧死した事からその原因と対策を検討していましたが、原因が上空の逆転層により音が地上に戻ってきたこと、建物を共振させる超低周波が発生したこと、今後の予定されている実験が5月のものより10倍以上になり5月の時のような事態が避けられないと判断したようです。今後の実験は海外で行うよう検討するようです。エンジンテストの騒音などでも耳には聞こえない低周波の発生があり、成田空港周辺でも大丈夫なのか心配です。

@27日運輸省と空港公団は成田空港に関する来年度予算の概算要求を発表しました。それによると、新しい事業として[航空機の夜間の整備中の騒音を常時監視する装置、エンジンテストの際の防音壁、平行滑走路が完成したときの騒音監視システムの設計]などが含まれています。また、共生関係の予算は194億円になっています。

*8月26日

 23日の読売新聞に『芝山町が周辺の市町村として初めて来春からの10便に同意した』と言う記事が出ました。しかし、この報道は事実と違うようです。記者が間違ったと言うよりは取材を受けた議長の話し方に問題があったようです。

 守る会の会員である議員の萩原弘幸氏によると、次のような経過のようでした。芝山町では運輸省から7月31日に要請の文書が来たようです。それを受けて、8月12日に空港対策特別委員会が開かれました。その席で、運輸省は「(1)成田空港の利用者が増大している、(2)飛行機の低騒音化が進み10便の増便では現在の騒音コンターを拡大することにはならない、(3)共生財団の発足で騒音対策を充実する環境が整った。」という3点を挙げて「増便を認めてほしい。」と要望しました。これに対して萩原議員は「円卓会議の中で運輸省自身が『現在の便数は限界に達している。』と言っていたのに何故増便するのか。」と質しました。これに対して運輸省は「1時間あたりの管制能力からすると、1日430便は大丈夫だが、夜間に便数を増やさないようにすると1日あたり400便であれば、問題ない。」と答えました。さらに、萩原議員は「県のアンケート調査によっても住民は『現在の騒音でも気になる』と言っている。」と追及しましたが、運輸省は「10便程度ならWECPNLは変わらない。」と答え、「芝山町が同意しなくても強行するのか。」との質問には、「コンセンサスが得られなければ、増便は行わない。しかし、何とかして同意してもらえるように努力する。」と答えました。この特別委員会では『概ね、運輸省の言っていることは理解できるが、議会にはかって考えたい。』と言う事になりました。これを受けて、8月22日に全員協議会を開きました。そこで、町当局は『10便程度の増便はやむ負えない。そのかわりに空調機器に対する補助の成田市並みの増額、夜間飛行の制限、道路整備のための交付金のアップなどを要望したい。』と見解を表明しましたが、議員から質問や意見が出て、時間をオーバーしてしまいました。議会全体の雰囲気としては『この際、とれるべきものはとって認める。』と言うものでしたが、結論は出ずに、『特別委員会に差し戻す。』と言う事になりました。この後、読売新聞の記者が議長に取材をして、23日の記事になったようです。議員の間から、「議長が全員協議会の結論と違ったことを話したのなら問題だ。」と言う声があがり、28日に空港対策特別委員会が開催されることになりました。

*8月25日

 運輸省は来春から10便の増便を行う件について25日成田空港騒音対策連絡協議会と成田市議会に説明を行いました。この中で、増便は午前中の時間帯で行うこと、例え、400便[現行は360便]になっても騒音の基準はクリアーできること、この処置は平行滑走路が使用できるまでの暫定的な措置であること、を説明したそうです。これに対して、連絡協議会と議会は騒音対策を進めることや事故防止などを要望し、事実上了承したようです。しかし、何を根拠に『400便になっても基準をクリアーできる』と言っているのでしょうか。現在でも環境基準は周辺の半数近くの測定点で達成されていないのです。また、平行滑走路が完成した当初は確かに現滑走路の便数が減ると思われますが、需要が増えれば必ず増便問題が再浮上するはずです。

*8月24日

 午後8時ごろ名古屋発ポートランド行きのデルタ航空74便のMD−11の第2エンジンが故障して、太平洋上から引き返し,成田空港に10時に緊急着陸しました。この日の再出発は見送られ、乗客は空港周辺のホテルに泊まりました。

*8月23日

 3時20分ごろシカゴから成田に向っていたノースウエスト航空5便が燃料不足のため新千歳空港に臨時着陸し、燃料補給のあと2時間の遅れで成田に到着した。アリューシャン列島で火山活動があり、コースを変更したためらしい。しかし、この飛行コースは超過密路線で、毎日多くの飛行機が飛んでいる。が、この日、燃料が足りなくなったのはこの便だけだった。(私見だが、またノースウエストか!と言う気持ちだ。飛行機は天候不良などで他の空港に着陸しなければならない場合も考えて、余分な燃料を十分に積んでいるはず。このような事態になる原因は、燃料の計算を間違えたのか、航続距離が十分でない機体を使ったのか、機体を軽くして燃料の消費を少なくし経費の節減をはかったのかのいずれかと考えられる。いずれにしても、安全上問題がないとは言えないのではないだろうか。)

*8月22日

 成田空港から郷土とくらしを守る会はこの日の午後空港公団に出向き、公団の地域共生推進総室共生企画室長伊藤斉氏と話し合いをもった。内容は10便増便する件、B滑走路完成後の飛行コースの発表の時期の件、騒特法の用途指定の進捗状況、羽田空港の国際空港化論に対しての公団の考え方、騒音対策委員会便り発行の要望、環境基準未達成地域の民家防音工事助成の要望などでした。詳しくは、あとで報告します。なお、話し合いには会員8名が参加しました。

*8月21日

@ 茨城県竜ヶ崎市の上空で民間の小型機と陸上自衛隊のヘリコプターが空中衝突し、双方共墜落し3人とも亡くなりました。原因はまだわかりませんが、このあたりの空域は成田空域と羽田空域と百里空域が複雑に入り組んでいる空域となっています。

@ 21日夕方に成田からシカゴに出発する予定だったユナイテッド航空882便は整備不良のために出発を22日に延した。このために乗客270人が第3サテライトで一晩をすごした。通常、このような場合は航空会社でホテルを確保するのだが、この日はホテルが満杯だったらしい。

*8月20日

 空港公団は1996年度の決算を発表したが、9億円の赤字になっていた。赤字分は内部積立金で埋める。航空会社側から要望が出ていた、給油施設使用料の値下げなどが響いたとのことである。航空機の発着回数や利用客数は過去最高でその分の収入は増えている。

*8月19日

 空港敷地内のC滑走路(横風用)予定地に住んでいる、旧熱田派の小川一彰さんと小川直克さんは用地外に移転することで、空港公団と合意しました。円卓会議で22項目の合意ができたときから予想されていたことです。C滑走路予定地には1坪運動の土地が残っていますが、近くC滑走路の工事が始まるものと思われます。しかし、C滑走路は22項目の合意でB滑走路(2500mの平行滑走路)が完成するまでは凍結されることになっていますので、当分は離発着が行われる事はない予定です。ただ、これによって第2ターミナルからA滑走路に向う飛行機の交通が単線の交互通行でなく対面通行になり混雑が緩和される事と、長い間、工事がストップしていたC滑走路の下を通る、芝山鉄道と空港内を南北に貫通する道路用のトンネルが作られる見通しになり、空港南側の芝山町の人達にとっては朗報になります。そして、道路の貫通により、南側にも、ターミナルに行けるゲートができることになり、朝夕の空港東側の交通渋滞が緩和される事が予想されます。(現在は一般道路を通って第1、第2ターミナルへ行くためには北側のゲートから入るしか方法がありません。南側にもゲートはありますが、これは工事局や整備地区へ行くためのものでターミナルへは行けないのです。そこで、一般道路の朝夕の渋滞が激しいのです。)