LAKSEポイント問題での千葉県知事要望と県の回答


千葉県知事 堂本暁子 様

LAKESポイント付近における高度変更に対する要望書


2006年1月12日

成田空港から郷土とくらしを守る会
会長 木内昭博



 貴職の私たち成田空港周辺県民への日頃のご配慮に感謝いたします。
 昨年、国土交通省は成田空港の着陸開始点LAKESポイントの高度を「6000フィートから、6000フィートと4000フィートの2段階にしたい。」と佐原市等に提案し「早急に了解が得たい」としています。
 この提案は北総地域一帯の住民の騒音被害を拡大するもので、下記に述べる理由から見過ごす事は出来ません。(詳しくは別紙「検討資料1・2」を参照して下さい。)
 本会としても成田空港の機能拡充に一概に反対するものではありませんが、真の共生は「急がば回れ」の教訓通り、騒音被害を被る住民との十分な議論によって成立するものと考えます。
 貴職におきましても、国土交通省に対し、成田空港建設当時(昭和46年1月)の友納知事と橋本登美三郎運輸大臣との「千葉県内の通過高度は6000フィート以上とする」との約束を遵守し、騒音被害の拡大を伴わない別案を検討するよう働きかけて下さい。

理由

1 70デシベルを超える高騒音が発生する

 国は「現在65.5デシベル、変更後67.6デシベル」と説明しましたが、これは記述間違いで、2000フィートの騒音差から69.0デシベルが正しものと考えられます。
 しかも、この値は平均値であり、空港周辺の実測値は±10デシベル程度のズレがありますから、騒音は60〜80デシベルと予想されます。
 70デシベルを超えると会話や睡眠に障害が発生することはこれまでの研究で明らかで、新幹線騒音の環境基準限度は70デシベルですし、最もゆるい工業地帯の特定工場騒音であっても夜間の限度は65デシベルです。
 高騒音をもたらすボーイング747型機の一日の到着は、現状159機、10年後の予測でも146機です。
 佐原市・栗源町・山田町・小見川町や茨城県の旧桜川村・東町などの騒音は一段と強まる事になります。
 今回の提案は今まで、発生源からの航空機騒音の軽減のため低騒音機の導入促進に力を入れてきた国土交通省の方針に矛盾するものです。

2 安全も理由にならない

 国は「LAKES6000フィートからB滑走路への着陸は高度処理に余裕が少ない」と説明し、安全面から4000フィートの了解を得ようとしています。
 しかし、B滑走路供用時に「国際基準の最適降下率にするため、LAKESポイントを東へ3.7km移設する」と説明しています。
 B滑走路の再北伸によって着陸経路が320メートル短くなりますが、中間に水平飛行区間もあり、再北伸も理由になりません。再北伸を理由にするなら、LAKESポイントを再度東へ1.8kmほど移設すれば済む事です。

3 混雑緩和は騒音増加を伴わない別案を検討すべき 

 国の案は「LAKESポイントからの1ルートを、上下2ルートに分離して混雑緩和を計る」と説明しています。
 しかし、国は7年前のB滑走路北伸決定時に「面的運用を導入し、年間22万回の発着に対応できる」と説明していました。現在はまだ年間20万回未満ですし、着陸の混雑時間帯を調べると午後1時からの4時間だけです。。
 仮に上下2ルートに分離するなら、B滑走路着陸機は現行方式、A滑走路着陸機は元LAKES(現LAKESの西約3.7km)まで進んでから降下を始める方式もあります。
 さらに昨年来、羽田空港D滑走路新設に関連し、千葉市や木更津市上空の着陸高度は3000フィートから4000または5000フィートに引上げて騒音を低減することで国土交通省と千葉県は合意しました。同じ千葉県民を対象にして、説明不足のまま着陸高度を引下げることは納得できません。

4 友納知事との約束「6000フィート」を厳守すべき

 成田空港は、建設当時の友納千葉県知事と運輸省の間で (1) 利根川〜九十九里浜間は直進上昇・直進降下、 (2) 県内通過高度は6000フィート以上、の約束があります。
 友納知事は、県民の環境保全をおもんばかり騒音をできるだけ少なくすること考慮して前記の協定を結びました。
 当然(1) と(2) はセットであり、特に(2) は当時「御宿の電波施設から利根川までの着陸機は6000フィート以上とする」ことを双方が検討した結果で一般化された表現です。
 国は今回、LAKEポイントから北、南東、南、
鹿島灘の約18km離れたところに新たなポイント4カ所を設定し、「そこから『着陸』とするのだから通過ではない。協定は遵守している」と考えているようですが、これは友納知事との約束の趣旨から外れています。
 この考えからすると、北総一帯は低高度への切替えが自由になり、騒音の増加を伴う事になります。

以上


話し合いの要旨
(県からは総合企画部の次長、同空港地域振興課長、同成田共生室長が出席しましたが、過激派のテロもある事から個人名は伏せます。)

岩田事務局長;「(要望書の要旨について説明)今日は該当地域だけでなく成田空港周辺地域から参加している。これまでの約束が簡単に反古にされようとしている事に、『これ以上騒音を増やされてはたまらない。』との危機感を持って参加した。」

次長「成田空港は首都圏の国際空港である。機能を拡充する事が急務で平行滑走路の再北伸を決めた。国際空港としての役割を果たす事は地域との共生にとっても大事だ。今は、混雑がひどく茨城県上空での待機飛行が多くなっていると聞いている。そこで、今回国から上下に分けたいとの提案があった。確かに6,000フィートの約束とは違うが、地域の理解を得たいと言う事で意見を聞いている。機能を維持しながら騒音が下がる事が良いのだが。」

課長;「私も羽田空港の再拡張の件でレイクスポイントに何回も行って様子を見た。レイクスポイント付近では相当な幅で飛行機が飛んでいる。百里空域があって6,000フィートで水平方向に2つのコースをとるのは無理があると思う。」

岩瀬調査部長;「無理ではない。国は面的運用として既に10Kmもの幅で飛ばしているではないか。空港南側のように2本のコースの水平間隔を2〜3Kmにとれば、上下2,000フィートにした場合と同じく航空機同士の間隔をかなり取れるはずだ。」

課長;「どういう場合に大丈夫かは管制の勉強をしないと厳密には言えないのかもしれないが、うるさくなるのは目に見えているので、何か案がないか考えている。空港機能を大切にしながら騒音被害との落着点を見つけたいと思う。住民側からの具体的な案を聞くのは貴会が初めてなので検討したい。」

岩瀬調査部長;「成田空港の北側からの着陸にワーフノース・アライバルと言う着陸コースがある。パイロットは『これを使えば混雑の解消になる』との事だ。このような事も含めて、千葉県として複数案を検討して欲しい。」

課長;「それは北風の時に、南側から着陸するためのコースではないか。」

岩瀬調査部長;「そうではない。公式なチャートにも載っている。」

馬込成田市議;「パイロットによると確かに上下に分ければ着陸は楽になるが、出来ないと言うわけではないと言う。」

課長;「現在は茨城県上空で待機している。待機の幅は10Kmもある。迷惑をかけている。」

岩田事務局長;「待機空域は鹿島灘の沖合にもある。ここで待機させれば、問題はないはず。千葉県としては、たとえ少しであっても騒音が増えると言う事について、どう考えているのか。」

課長;「もちろん、騒音が増えないにこした事はない。誰でも、騒音が増えるのは嫌なものだ。」

坂本佐原市議;「佐原の騒音は空港近くに比べれば大きくはないが、それでも、時によれば目が覚めて眠れなくなったり、携帯電話をかけている時に聞こえなくなったりと影響がある。『成田空港がなくなったら大変』と言う気持ちはあるが、6,000フィートから下がったらどうなるのか不安もある。羽田空港の再拡張の時のように考えて欲しい。佐原は観光に力を入れているが、4,000フィートで騒音が大きくなっては町のマイナスイメージになる。」

宇井山田町議;「『地元の理解を得たい』と言うのはどういう方法で得ると言う事なのか。町当局や議会で説明して、了承されればそれで良いと考えているのか。住民に伝えるプロセスがなければならないと思うが、どうか。」

坂本佐原市議;「『夏ダイヤのために答えを出せ。』と期限を切るのはおかしいのではないか。」

課長;「どのように理解を得るかと言うのは難しい問題だ。地域の実情はそれぞれ違うので、県としては市町に任せるしかない。空港の運用上から『夏ダイヤまでに』と言う気持ちは分かるが、地域との共生は大事だ。」

岩田事務局長;「混雑をダイヤの面から考えられないのか。便数をすいている時間帯に移すとか。」

課長;「これは難しいのでは。地球の大きさと航空機のスピードとの兼ね合いで航空会社はそれぞれ都合の良い時間を希望する。1〜2便移す程度で解消されるだろうか。」

岩瀬調査部長;「混雑するのは午後の4時間ぐらい。そのために常時2段階に分けると言うのはおかしい。県には国から混雑に関する詳しい資料は来ているのか。」

課長;「そう言う資料は来ていない。」

次長;「『混雑時間帯に』と言う事で、『常時』と言う事ではないのではないか。」

室長;「国は栗源町での説明で、『混雑時間帯に』と言っていた。」(会議後、「山田町で」と訂正)

岩瀬調査部長;「それはおかしい。国の説明文書では『上下で半々』と書いてある。適当に言ったのではないか。」

次長;「ダイヤの組み方も色々ある。6,000だけでどうしてもだめなら4,000へ、と言う事もある。」

丸山県議;「『そうでなければ、受けない』と言う選択もあるかもしれない。」

臼方神崎町議;「神崎町上空では飛行機は通らないはずだが、コースも高さもでたらめだ。国や成田国際空港株式会社の言う事は信用できない、と言う気持ちが強い。県がしっかりとして欲しい。」

(以上で約1時間に渡る話し合いが終了しました。文責は岩田にあります。録音しませんでしたので、間違っている所もあるかもしれません。一部訂正しました。)

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