着陸高度見直しに関する検討資料 (1)
2005年12月27日
成田空港から郷土と暮らしを守る会
本件の概要
着陸機の高度を6000フィート(約1800m)から4000フィート(約1200m)に下げる案が提示されています。
成田空港へ到着する航空機は、霞ヶ浦南端のレイクスポイント上空6000フィート(約1800m)から着陸を始めます。この点の高度を4000フィート(約1200m)に下げる案で、11月24日に国土交通省から佐原市に提示されました。その後、栗源町、山田町、小見川町や茨城県稲敷市にも提示されています。
本件は朝日新聞が11月3日付けで報道しました。同紙は「開港当初からの県と国の取り決め(の)変更見直し」「混雑緩和狙い」と報じています。
国土交通省の案は、分かりやすく例えると「レイクスポイントから先を1車線道路から上下に分けた2車線にする」ことです。このため新たに「上下に分かれる着陸開始点を、鹿島灘、小見川町、山田町に設定」します。着陸開始点の高度は6000フィート(約1800m)ですが玉造は一部4000フィート(約1200m)です。下のイメージ図を参照して下さい。
着陸高度が下がれば、騒音は大きくなります。
見直し案で着陸高度が下がる地域は、茨城県の鹿島、潮来、牛堀、桜川、東、江戸崎などと、千葉県の佐原、小見川、山田、栗源です。
この検討資料は、国土交通省や千葉県の説明資料等を分析した報告です。
騒音の影響度を明らかにすると同時に、国説明資料の間違いや矛盾も指摘します。
なお本資料は、国資料を解析速報した11月27日発表を吟味したもので、基本見解は速報と同じです。また、続編の検討資料(2)も参考にして下さい。
1 12月中に市町村民が了解できるか ?
国土交通省は、佐原市に対し12月中の了解を求めました。国の提示を受けた佐原市では、議員から「重大問題だ」「即決同意できない」「市民への説明資料が必要だ」という意見があり、保留状態です。
静かな環境が維持できるか? うるさくならないのか? 関係地域の市民・町民へ十分説明し、意見を聞いた上で、議会や行政当局が諾否を審議すべき重大問題です。
国土交通省は、関係する市や町当局の立ち会いの元で、市民・町民に直接説明する機会を設けて然るべきです。市や町当局が広報紙で1〜2度説明したとしても、市民・町民の疑問について国土交通省に代わって説明が出来る内容と状況でしょうか?
百歩譲って理解が進んだとしても、市民・町民の意見を集約し、議会内の議論を尽くすには、最低でも数カ月は必要でしょう。万が一、12月に市・町議会で決着を計ることがあっては、県政・市政・町政に汚点を残すことになるでしょう。
2 国と会社に説明責任がある
日本の現行法では、環境影響の調査と説明は、発生源の事業者が行う責任を持っています。本件も法の精神に照らせば国土交通省と成田空港株式会社に、調査と説明責任があります。 千葉県と茨城県当局は、事業者側でなく県民と環境を保護する立場です。
運航責任者の国土交通省が提示した今回の説明資料も、極めて不十分であり、7年前の暫定B滑走路供用前の説明資料と比べても不親切です。 現在B滑走路北伸に関し空港会社は「環境影響の調査」作業中ですが、佐原市周辺も茨城県南部も対象地域から除外されています。
やむなく、一民間研究団体ですが限られた資料を駆使し、ふる里の静かな環境が守れるのか否か検討し、以下報告することとします。
3 静かさの限界は65〜70デシベル
朝日新聞は、国土交通省が「『取り決め当初に比べ、飛行機の性能が大幅に向上し、騒音も小さくなっている』と指摘」と報じました。
確かに昔のダグラスDC-8型機やボーイング707型機は姿を消し、比べると騒音の低いボーイング777などの航空機が増えてきました。ここで検討すべき点は、高度4000フィートの飛行騒音が、静かな環境に影響しないか否かです。
騒音が60デシベル(昔の単位はホン)を超えると会話に支障があります。基地飛行場の騒音訴訟では“65デシベル以上の飛行騒音を住宅地に到達させるな”と請求しています。新幹線鉄道騒音の環境基準は70デシベル以下です。“静か”と“うるさい”の境は、日中でおよそ65〜70デシベルと言えるでしょう。
深刻な問題は、夜間の騒音です。
睡眠障害をおこさない騒音レベルは各種の調査から40デシベルと言われています。本会が空港公団今井総裁と交わした交渉覚書きの中で公団側は「屋内における航空機騒音のピークレベルは夜間50ホンを越えないことが望ましい」と回答しています。
家屋の遮音量は、一般民家で10〜20デシベル程度、防音家屋で25〜35デシベル程度です。屋外の夜間飛行騒音65デシベル程度でも睡眠障害が懸念されます。
ですから、日本の騒音規制法は、特定工場の騒音(屋外)は住居地域で夜間40〜50デシベル、もっともゆるい工業地域でも夜間65デシベルを許容限度と定めています。
4 国土交通省の説明間違い
肝心の騒音値、まず国土交通省の説明資料は「高度を4000フィートとした影響の検証概要は別表のとおり」「実際の運用は、概ね半分程度は6000フィート以上を飛行することが予定されているが、仮に全ての機材が4000フィートを飛行したと仮定した場合、騒音予測値の平均は、現在と比べ、2デシベル程度の増加となっている」と記述しています。“なるほど”と納得したくなりますが・・・
そこで別表を見ると、「全ての機材が4000フィートを飛行した」数値が掲載されていません。掲載されている内容は、佐原市付近とLAKESで「現在、高度約6000フィートで65.5デシベル、変更後高度約6000〜4000フィートで67.6デシベル」だけです。「変更後高度約6000〜4000フィート」と言う意味は、機材の半分が高度6000フィート、半分が4000フィートです。
では、皆さんが一番知りたい「4000フィート」の騒音値を推算しましょう。騒音の計算は算術計算でなく、対数計算式を用います。隠された「4000フィート」の騒音値は69.0デシベルです。 空中の減衰などを無視した理論式で計算すると、6000フィートで65.5デシベルの音は、4000フィートでは69.0デシベルとなるはずで、前記の推算とも一致します。
ですから国土交通省の記述は間違いです。正解は、全ての機材が4000フィートと仮定した場合、騒音予測値の平均は、現在と比べ3.5デシベルの増加です。
なぜ間違ったか、裏の作業過程も分ります。佐原市への公式説明前の事務方説明文では「仮に全ての機材が4000フィートを飛行したと仮定した場合・・昭和60年当時の・・6000フィートにおける騒音・・と同程度」と記述されていました。昭和60年当時6000フィートの騒音は68.9デシベルと推算しています。高度変更後の67.6デシベルを、昭和60年当時と比べるより、苦情の少ない今と比べた方が良いと判断して書き替え、その際ミスをしたのでしょう。
5 4000フィートの騒音は平均でも69デシベル
なお、平成17年11月 7日付け千葉県総合企画部空港地域振興課の資料は、国土交通省と同じ数値を示し「上記の音は蓮沼局の測定値を基にした予測値」と注釈が付けられています。
そこで平成16年度の蓮沼局(同村役場)のデータを検証すると・・着陸騒音の年間平均は69.9デシベル、高度は3300フィート(約1000メートル)です。この値から推算すると、高度4000フィートの騒音は68.3デシベルです。この値は、佐原市説明3日後の速算でした。厳密に計算すると、測定局が着陸コースから東へ500メートル余離れているので、コース直下の推算値は71.0デシベル、高度4000フィート推算値は68.5デシベルです。飛行態様は、脚出し降下中です。
なお、国は蓮沼局の高度を3600フィートと口頭説明していますが、この高度では蓮沼村役場が波打ち際にある? ことになります。役場は波打ち際から1.6km空港寄りです。
羽田再拡張論議の際に国土交通省が千葉県側に提示した資料があります。この資料で、4000フィート高度のボーイング747-400(新型機)の騒音値は、脚出しの場合で水平飛行70.6デシベル、同降下中で68.2デシベル、脚格納の場合で水平飛行68.7デシベル、同降下中で66.8デシベルです。
ただし、羽田関連の提示資料には2つの問題点があります。現在もっとも高騒音のボーイング747(旧型機)の騒音値が示されていませんが、成田市が分類した機種別集計表から推定すると、新型の747-400より1〜2デシベル高くなります。また、千葉県当局が精査した実況値は、国の提示値より平均2.8デシベル高く、ボーイング747-400で1.7デシベル高いことが指摘されています。
検討データを総合すると高度4000フィートの騒音は、およそ平均値69デシベルでしょう。
6 着陸高度は低めにずれる ?!
騒音問題で、国側はいつも「平均値」だけを説明します。しかし、実際の飛行高度や騒音は、高くなったり低くなったり偏りがあります。
開港時に運輸省は、佐原上空の飛行コースを線で示し、高度6000フィート以上と説明しました。しかし、市民の苦情に応え佐原市公害交通課が測定した結果、コースずれが全市域に及んでいたことが立証されました。当時、本会は佐原市役所に招かれ、飛行位置測定法を説明しました。
資料を見直すと、1978年10月23日午後2時36分から夜10時6分まで、空港に向かう58機が測定されています。精度不良と思われる6機を除く52機の高度は、1900〜1300メートルとばらつき、最頻高度も平均高度も1600メートルでした。当時も佐原上空の指定高度は6000フィート(1800メートル)以上です。
本会が1998年10月運輸省と交渉し、コースずれと騒音コンターについて質した際、運輸省側は「騒音は線で計算しているものではなく、標準偏差で計算しています」と回答しています。
国は最高の技術スタッフを擁しています。高度のずれ(標準偏差)がどの程度か、その結果騒音値の大小幅はどの程度か、この説明責任を国は果たすべきでしょう。
7 70〜80デシベルの高騒音も !
国側が騒音の大小幅を説明しないので、国に代わって説明します。 類似地点として、横芝町上堺測定局(小学校)での着陸機の騒音値(平成16年度)を検討します。飛行態様は脚出し3000フィートの水平飛行で、年間平均の騒音値は67.7デシベル。高度に比べ騒音値が低い理由は2つあり、短い暫定B滑走路に着陸できる低騒音機だけであること、2km余離れたA滑走路の着陸騒音も低レベルで捕捉し合わせて平均するためです。年間の最大値は78.6、最小値55.1デシベルで、最大騒音と平均騒音の差は10.9デシベルです。
第5項で引用した蓮沼測定局(村役場)の着陸騒音は、年間平均69.9デシベル、年間最高騒音81.0デシベルです。蓮沼の最高騒音を4000フィートへ換算すると80.6デシベルに相当します。
ほとんどの地点で、平均より10デシベルほど大きい騒音が実測されています。平均より小さい騒音もあります。ですから高度4000フィートの騒音のおよそ半分は、70デシベルを超え、最高騒音は80デシベルに達すると予測されます。
8 高騒音機が一日 数10〜150機も !
騒音回数に関しても、国の説明資料がありません・・! 千葉県空港地域振興課の資料に、南風時の運航状況として平成16年8月の着陸機数表が掲載されているだけで、同資料では一日平均193機です。羽田再拡張論議の際、千葉県当局は木更津上空の到着機数について月別・日別の高頻度に焦点をあてて資料を作成しました。成田空港についても同様に高騒音、高頻度に着目して論議することが必要でしょう。
国側の資料提示がないので、高騒音の回数も検討します。南風が卓越する日は、到着機が東、南東、南の4方向からレイクスポイントに集中します。その一日の機数は、現状で約274機、2015年度で322機(空港会社の希望)です。この機数は、年間発着回数(現状20万回、2015年度コンターで23.5万回)の半分を365日で割算しました。
機種別の騒音値は、国土交通省・千葉県・成田市等の資料に掲載されています。各種資料から、高騒音をもたらす航空機はボーイング747の旧型と新型の2機種です。この両タイプの着陸機は、成田空港の平成16年度資料で58.2%一日平均159機です。2015年度の予測コンター資料では45.1%で146機です。低騒音機であっても操縦方法等により70デシベル以上の高騒音を発生させることは、車の運転騒音と同じです。
従って、レイクス付近で4000フィート飛行を認めると、70デシベル以上の高騒音の着陸機は、地域によって違いますが一日数10機から150機程度と推察されます。
9 “うるささ”基準が高すぎ無対策
朝日新聞は「空港会社は『4000フィートになったとしても、10月に発表した騒音コンターに影響を与えるものではない』としている」と報道。国土交通省も「騒防法による騒音対策等を変更する程の影響にはならない」と説明しています。この見解は、民家防音助成区域の見直しが必要か否かだけが、国と空港会社の関心事であることを示しています。
航空機騒音のうるささは、騒音の大きさと回数を組み合わせた“うるささ指数(単位WECPNL)”で評価されます。現行法令で民家防音の助成対象は75WECPNL以上、学校等の助成対象は概ね70WECPNL以上です。
国は、この環境基準指数を伝家の宝刀として苦情に対処していますが、成田空港ではこの「環境基準の70WECPNL」についてさえ触れることを避け、2015年度の予測コンターも75WECPNLまでしか提示していません。
本件の対象地域は、着陸高度を引下げても指数は70WECPNLに達しませんから、補償の道は閉ざされたままです。しかし、70WECPNL未満の地域でも70デシベル以上の高騒音はあります。 “うるささ”の基準が高すぎるのです。
もう一つ、うるささ指数の最大の問題は、年間平均値を用いる点です。うるさい時間帯、うるさい期間が問題ですが「うるさい日があっても静かな日もあり、平均すれば数値は低いから我慢しなさい」という考えです。この理屈は、環境保護の理念に背理しています。
最近、平均値ではなく著しい高騒音機を規制しようという意見が多くなってきました。住民が望む静かな環境は、騒音値65デシベル以下、高くても70デシベルが我慢の限界でしょう。この点を十分議論しないと、孫子の代に禍根を残します。
10 高度:原則は遵守 ? 用語で抜け道 !
朝日新聞は「高度6000フィート以上から・・着陸するという開港以来の飛行方法について、国土交通省が変更に向けて検討を始めた。」と報じました。
国は「千葉県との約束は守っている」という考え方です。約束を遵守しながら、なぜ4000フィートに下げられるのか? この疑問を解く鍵は、国土交通省成田国際空港課の説明文の中にあります。この説明は「一部の機材をレイクスポイントより手前で着陸降下を開始させる」と記述しています。同じ資料の図の中で、レイクスから南・南東方向約18kmの位置と鹿島灘に6000ft(フィート)と刻印があります。冒頭のイメージ図のΔ印と点線を参照して下さい。“ここから着陸降下させる”ことにするから「通過」ではない、「着陸」に変えたのだから高度は自由・・という言い分でしょう。このように着陸開始点を運航管理側の都合だけで移動し、高度を下げることが形式上は容易に行えます。
千葉県は開港時に友納知事が運輸省と (1) 利根川と九十九里浜の間は直進上昇・直進降下、(2)離着陸を除いて県内上空の通過は6000フィート以上、の約束を結んでいます。知事の真意は騒音地域をできるかぎり狭くすることにあり、この英断は国策に協力しつつも県民の静けさを維持したいとする、ぎりぎりの心情から発したものです。
特に(2) は当時、航空機に位置と方位を知らせる電波施設が、成田周辺では御宿しかなかったため「御宿の電波施設から利根川までの着陸機は6000フィート以上とする」ことを運輸省と千葉県双方が検討した結果一般化された表現です。ですから本来、(1)と(2)はセットになったもので、国もこれまで直進降下部分以外は6000フィート以上を、守ってきました。 国は約束の本旨に立ち戻り、高度引き下げを再考するべきです。
11 着陸高度、羽田は引上げ、成田は下げる・・!?
昨年来、羽田国際空港D滑走路新設の議論が活発に行われました。その中で騒音低減を主張する堂本千葉県知事と湾岸11市は超党派で国土交通省と交渉し、(1) D滑走路の方向を9.5度海側に曲げ、(2) 千葉市や木更津市上空の飛行高度を1000フィート、また2000フィート引上げて騒音を低くすることで決着しました。
このとき浦安市は、羽田D滑走路の延長線が市を串刺しにするはずでした。浦安市は、市長を先頭に機敏に運動しました。成田開港時の佐原市のように飛行高度やコースずれを測定、また独自に予測図も作成するなど専門家も交えて検討し、データも揃えて国土交通省と対応しました。
本件に関し千葉県空港地域振興課の資料には[県としての考え方]として「今回の国の提案は、再拡張後の羽田と同様の状況となるので、ルート下の4市町と連携して対応」したいと記載されています。すでに国提案に“同意した”とも読める文章です。高度3000フィートを4000,5000フィートに引上げることは環境改善ですが、高度6000フィートを4000フィートに引下げることは環境改善と逆行する措置です。東京湾沿岸も北総も同じ県民、茨城南部も同じ国民です。悪い環境に“右へならえ”するのではなく、少なくとも国の提案について十分な検討を行ってから、各県の方針を決めてほしいと考えます。
千葉県の堂本知事は三番瀬など環境問題に熱心です。羽田再拡張と同様に、北総の環境保全をお願いしようではありませんか。
また、県当局にお願いするだけでなく、地元市町村民の注意を広報などで喚起し、地元自治体が超党派で対処することが求められています。
12 複数以上の代替え案で再検討を
環境影響評価法は、影響を最小に低減するため複数以上の代替え案を事業者に求めています。本件についても、国土交通省と空港会社は複数の案を提示すべきです。
一つの案だけでは疑問も数多く湧きます。たとえば南からの進入は平行直線進入ですが、水平距離2500メートルの間隔と、進入開始点九十九里沖のORIONをCOSMOより1000フィートだけ下げて高度間隔もとり運用しています。北からの着陸も、A滑走路へは元レイクス(現レイクスの西3.7km)から、B滑走路へは現レイクスからと上下に分離する方式もあります。面的運用を定式化しレイクスポイントを分割する方式もあるでしょう。是認するわけではないが、引下げルートを設定したとしても運用時間を混雑時に限定する、また低騒音機に限定するなど、事業者はあらゆる可能性を検討して説明する責任があります。
国土交通省の提案文書は「実際の運用は、概ね半分程度は現行どおり6000フィート以上を飛行することが予定されているが・・」と記述していますが、飛行断面図の説明書きは「現在の降下方法・・を行う航空機もある」と微妙に表現が異なります。国側は少なくとも、4000フィート高度の使用率・使用時間帯を明示するべきでしょう。
今回の提案は、航空管制専門の技術陣が練り上げた案でしょうが、優秀なスタッフならば、羽田再拡張で滑走路方向を変更し飛行高度を引上げたように、本件でも別の案を検討できるはずです。国土交通省は、代替え案を数種類提示し、その根拠を分かりやすく説明する責任を果たして下さい。
航空の安全、定時性と環境保全は、互いの考えを理解しあい十分議論して結論を得るべきです。
以上 (検討資料2に続く)
着陸高度見直しに関する検討資料(2)
2005年12月27日
成田空港から郷土と暮らしを守る会
「混雑緩和」? 理由に疑問
国土交通省は、佐原市付近の着陸高度を4000フィート(約1200m)に下げる提案をしました。国が理由とする「混雑緩和、安全、定時性」は“もっとも”とうなずきたくなります。しかし、調べると幾つも疑問があります。問題点を分析し検討資料(2)を発表します。この資料は12月1日発表文を吟味したもので基本見解は同じです。
矛盾している2つの文書
着陸高度変更について、次の二つの文書を比較すると疑問点が明らかになります。
1) 平行滑走路供用開始後の標準飛行コースについて(以下「B供用時文書」と略記)平成10年8月 運輸省航空局・新東京国際空港公団
2)LAKESポイント付近における高度変更案について(以下「今回提案文書」と略記)2005年11月 国土交通省航空局成田国際空港課
7年前の運輸省説明
運輸省と空港公団は7年前のB滑走路供用時文書で次のように説明しました。
(a) 飛行コースは・・年間飛行回数22万回・・に対応できるものとして設定します。
(b) 到着機の集合地点レイクスを東方へ約3700m移設します。
これは平行滑走路に向かう到着機について、国際基準の最適降下率(4〜8%)に適合させるためです。移設後の降下率は約8%。
(c) 到着機が多い時間帯は面的な運用(注)
1) 到着機が新レイクスを3分間隔で通過すれば、理論上面的運用は必要ありません。
2) 混雑時間帯は2分間隔で通過する事態が継続するので、面的な運用が必要です。
3) このため、新レイクス通過の前と後、面的に運用します。
(注):説明図には、北、東、南東、南方向から新レイクスに集合する経路が描かれていた。
面的運用とは、この標準経路から外れた飛び方。この図には、美浦村を大回りする経路、東町を近道する経路、
山田町や小見川町を通過する経路が例示されている。
今回の国土交通省説明
まず、国土交通省が今回提案文書中の項目「高度変更の必要性」で述べている事柄を、問題点ごとに分けて引用します。
(1) 発着回数が20万回に近づく中で、円滑な運航を確保するため、高度変更が必要になった。
(2) LAKESから利根川まで一本の経路で、非常に非効率。
(3) LAKES 6000フィートは、B滑走路への着陸機にとって高度処理に余裕が少ない。
(4) 開港時と比べ格段に交通量が増え、経路が外側へ膨らんだり、空中待機、遅延が生じている。
(5) 羽田・百里空域と接し、水平方向の経路分離は限界があり、垂直方向に経路を分離したい。
(6) 本対策により、遅延解消及び運航ダイヤの柔軟な設定が期待でき、利便性向上が見込まれる。
問題点・疑問点を解く
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論点1 今回提案の信頼度は・・???
平成10年に運輸省と空港公団は「年間飛行回数22万回に対応できる」ものとして飛行コースを設定したと説明しています。 ところが、「20万回が近づく状況の中で・・」変更せざるを得ないほど、見込み違いがあったのでしょうか?
航空管制の専門家が設定した飛行コースというものは、それほど不確定・不安定で信頼できない内容なのでしょうか? とすれば今回の「4000フィート引下げ」も「機材の概ね半分だけ引下げ」も信用できない・・ということになります。
論点2 経路1本でも対応可能
「LAKESから利根川まで一本の経路で、非常に非効率」と今回説明していますが、7年前にB滑走路供用後も一本道でも「対応できる」と判断し、コースを設定したはずです。上下に分離する必要があるなら、検討資料(1)で述べたようにA滑走路へは元レイクス(現レイクスの西3.7km)から、B滑走路へは現レイクスからとする方式もあります
当時のB供用時文書は、「地域への影響をできる限り少なくすること」という説明もあり、今回の説明文書に比べるとコース設定の説明が懇切丁寧です。
論点3 面的運用で対応できるはず
B滑走路供用以後、混雑回避策として面的運用を採用しました。「経路が外側へ膨らむ」ことは面的運用するのですから当然であって、今回の高度変更の理由にはなりません。
「水平方向の経路分離は限界」とする今回の理由は、一見もっともですが、B供用時文書と矛盾しています。当時の説明図には、美浦村を大回りする経路と東町を近道する経路が例示されています。その間隔は、レイクス通過直後で南北に約6km、旋回コースで約12kmもあります。直線進入の平行コース間隔は2.5kmです。面的の経路分離を検討し、複数案を提示すべきでしょう。
論点4 待機も遅延も目新しくない
国は「空中待機」と「遅延」を理由に上げています。しかし「待機」は、A滑走路単独運用時から洋上で実施されていることで目新しいことではありません。それでも「遅延」が著しく多くなったことを理由とするならば、5年前、10年前、20年前と比べた遅延資料を示さなければ説明責任を果たしたと言えません。誰も納得できないでしょう、
論点5 現行経路は最適降下
今回提案文書は「LAKESポイント 6000フィートは、B滑走路への着陸機にとって高度処理に余裕が少ない」と説明し、それとなく安全面から了解を得ようとしています。しかし、B供用時文書に照らせば、全く理由になりません。現行の高度6000フィートからの降下率約8%は、国際基準の最適降下率の範囲内として設定されたのですから。
B滑走路が北に延伸されるので、レイクスとB滑走路間の距離は今までより320メートル短くなります。でも、この区間距離はおよそ35キロメートルもあり、中間に水平飛行区間もあります。B滑走路供用開始時には、安全な降下率を設定するためレイクスを3700メートル東へ移設しましたが、今回のB滑走路北伸ではそのような必要も全くありません。
なお、国土交通省の飛行断面説明図は、レイクスからパーチ(高度2800フィートからA滑走路へ)とバーディ(高度1800フィートからB滑走路へ)まで斜めの直線。現行の着陸指示は2800と1800フィートの水平飛行区間があります。もし説明図の通り直滑降できるなら、桜川や江戸崎の騒音低減が可能。水平飛行より高度が高く、降下騒音は水平騒音より小さいからです。
論点6 常時4000フィートが狙い・・?
7年前のB供用時文書は「混雑時間帯に面的運用を行う」と説明しました。騒音の影響をできる限り少なくする配慮が推察され、面的運用も“限定”使用です
それに比べ、今回提案文書はずる賢い内容です。つまり、混雑回避を理由に示しながら、2段階コースを時間限定する考えを全く示していません。 また、下段の4000フィートからの機材使用は「概ね半分程度」と記述しながら、飛行断面図の注釈では「変更後においても現在の降下方法を行う航空機もある」とニュアンスが変わっています。
歯止めが無いと、混雑時を除いた時間帯も4000フィートが常態となるでしょう。
論点7 混雑は午後1〜5時だけ
混雑時とは、どういう状況なのか? 7年前のB供用時文書は「レイクスを2分間隔で通過する状況」と説明しました。今回提案文書は、黙して語らず、説明責任を果たしていません。そこで、国土交通省に代わって、平成16年度の成田空港の資料を分析します。
年間の日平均時間帯別着陸便数が10機以上は13時から17時までで、1時間あたり約14機です。また、空港に北側から着陸する月別便数は6,7,8月が多く約5800〜6000機です。この夏場の着陸便数は年平均の1.6倍ですから、この比率で夏場の午後の機数を推測すると1時間あたり約22機程度です。平均間隔は2分にはなりませんが3分を切るので、実際には航空管制に苦労する状況が推察されます。
この混雑時の処理方法がB供用時文書では、新たに導入した面的運用でした。いずれにしても、混雑時は13時から17時であることを、関係者が共通の認識として議論を進めるべきでしょう。
国が説明を避けていると、混雑時だけでなく“常時4000フィート使用”を目論んでいると疑われます。
論点8 8割は千葉県からレイクへ
レイクスへ集中する到着機経路は、B供用時文書では面的運用を除くと東、南東、南からの4方向でした。
コース下の人々の関心の一つは、頭上を何機飛ぶのか? です。国土交通省の説明がありません。出発地別の到着便数を、到着経路別に調べました。南から帰ってくる航空機は、一部銚子を廻ってレイクスに向かうことがあり、その比率が分りません。おおよその割合ですが、レイクスに南から5割、南東から3割、東から2割と推察されます。
千葉県側は佐原、栗源、山田、小見川、茨城県側は鹿島、潮来、牛堀、玉造、麻生、桜川、東、江戸崎の騒音影響が懸念されます。
騒音回数は、現在の2割増になる見込みです。増える騒音回数と強まる騒音レベルにより環境悪化は深刻になるでしょう。
論点9 百里空域との関連は?
国の2つの文書を比較検討すれば、レイクス高度引下げの必要性は無くなります。それでも、引き下げる理由は何か?
百里飛行場は軍民供用化が検討されています。最近は米軍機の受け入れ可否も報道されています。レイクスポイントの高度引下げに、百里空域との調整が関連していないのでしょうか?
この点は、資料が皆無で論評できません。ただ、騒音を増す提案に関連するので、国土交通省には説明責任があることだけ指摘しておきます。
以上
着陸高度見直しに関する検討資料(3)
2006.1.16.
成田空港から郷土と暮らしを守る会
佐原市へ国が再説明
佐原市に対し国側は1月13日に第2回目の公式説明をしました。国土交通省航空局と成田国際空港(株) が提示した資料を分析し報告します。
資料と分析の概要
先ず資料と批判の概要を述べ、次項から主要な問題点ごとに記述します。
資料第1項 騒音の影響について、佐原の短期測定データを添付し「法基準に及ぶ影響はない」と切り捨てています。
資料第2項 千葉県と通過高度6000フィートを約束したが、増便化と低騒音機化により“協定を破棄したい”と読める記述をしています。
資料第3項 低騒音化への取組みの項では、国際制度の説明とともに成田空港における使用料6段階制による低騒音化を説明していますが、肝心のコースと高度設定にかかわる代案はありません。
総じて、関係者の疑問に答える説明責任を果たしているとは言えません。
1 4000フィート騒音は+3.5デシベル
佐原市への当初説明資料(11月24日)で国が「全ての機材が4000フィートで飛行した場合、騒音は2デシベル程度の増」と記述したので、本会はその間違いを指摘しました。今回の再説明で「最大3.5デシベル程度増加」と訂正されました。
佐原付近上空6000フィートの騒音を、国は推算65.5デシベルと説明していたので、4000フィートの騒音は65.5+3.5=69.0デシベルとなります。
なお、4000と6000フィートの騒音差3.5デシベルは拡散による理論計算値ですが、この他に空気吸収による減衰があるため実際の騒音差は3.5デシベルより若干大きくなります。
参考資料 【国土交通省と千葉県の資料】から推算
平均騒音値 4000フィート=69.0 6000フィート=65.5デシベル
羽田再拡張論議の際、国土交通省が機種別騒音値を提示しました。この騒音値について、千葉県は木更津市畑沢測定局の実測値を分析し「直上飛行(高度3000〜3300フィート)の騒音は、国設定値より平均2.8デシベル大きい」と国に対し異議を唱えました。
今回は千葉県へも佐原市等へも、この種の資料提示がありません。この資料の主要部分を紹介します。概算ですが、この数値から2.1デシベル引算すると4000フィートの騒音値が推算できます。平均値で69.0デシベル、うるさいボーイング747で71.7デシベルです。また、5.6デシベル引算すると6000フィートの騒音値になるので、県平均値71.1ム5.6=65.5デシベル、この数値は国の初回説明資料と一致します。
2 佐原の測定データの分析
再説明の資料として国側は、平成15年度に佐原市役所付近と石納で測定されたデータを提示しました。この騒音値と回数が小さいので『おや?』『安心!』と思いたくなりますが、分析すると隠れた心配ごとが浮び上がります。
騒音値が小さいのは 騒音をまきちらすから
この資料は、短期測定といって連続7日間だけです。夏季は2003年7月4日から、冬季は2003年11月26日から7日間です。北側からの着陸機の要約結果を次に示します。(騒音平均はパワー平均値)
市役所夏 市役所冬 石納夏 石納冬
騒音平均(デシベル) 60.4 63.1 59.8 62.5
騒音最大(デシベル) 66.5 68.0 69.0 70.0
騒音日平均(回) 16.9 2.3 31.7 2.4
この騒音値を高度6000フィートの値とすると、当初の国説明資料65.5デシベルより3〜6デシベル小さい値です。何故違うか? 再説明資料は「航空機の位置を考慮すると、必ずしも航空機の直下で音を聞くとは限らないため・・騒音は小さくなる」と記述しています。この考察は正しいでしょう。ただ、この状況は「佐原周辺はコースずれが大きく騒音がまき散らされて平均値が低め」と言い換えることができます。
着陸も離陸も70デシベルを超える
上表の騒音最大値に3.5デシベルを加算し4000フィートの最大騒音を推算すると約70〜74デシベルとなり、年間を通すと最大値が75デシベルを超えることは確実です。なお、上記の短期測定期間中でも離陸騒音の最大値は75デシベル前後です。この上さらに4000フィートの着陸騒音が加わると静かな田園環境は一層乱されるでしょう。
騒音回数は 飛ばない日も平均するから 少ない
上表の騒音日平均回数が“こんなに少ないの?”と不思議に思われます。航空機騒音の大きさや回数を考えるとき『平均』の魔術にひっかからないように注意が必要です。今回の再説明資料に日々と時刻ごとの回数データ含まれていません。そこで、航空機が風に向かって飛ぶので、当時(夏季)の1時間ごとの風向きから回数を推算すると次の通りです。
7 月 4日 5日 6日 7日 8日 9日 10日 7日間
市役所 7 20 0 44 0 0 47 118(回)
石 納 13 38 0 82 0 0 89 222(回)
レイクス付近は最大一日322機
なお、騒音回数について補足説明しておきます。
検討資料1で紹介した開港時1978年10月23日の午後は、佐原市公害交通課が約7時間半の間に58機の到着機を測定しています。終日南風の場合は、およそ2倍となります。
現在、暫定B滑走路が供用されていますが、1850メートルの長さでは大型機の発着に無理があります。滑走路が長さ2500メートルに伸びると大型機も着陸できます。空港会社の資料で2015年度の到着機数の予定は次の通りです。
昼間 夕方 深夜早朝 一日計
A 滑走路 134 27 8 169
B 滑走路 115 29 9 153
終日南風の場合、全機がレイクスに集中し、レイクスからの一本道を322機の着陸機が通ります。レイクスまでの北、東、南東、南方向の地域は、それぞれ数十機から百機以上でしょう。国は手持ちの方向別到着割合を提示して協議すべきではないでしょうか。
3 常時4000フィート使用か・・?
増便26%と高度下げ=冷たい提案
レイクスから上下2経路を設定すれば、原則としてレイクス6000フィートからA滑走路へ、4000フィートからB滑走路へ分離することは、誰でも推察できます。運航側の都合だけで考えるなら、着陸機の半数が高度4000フィートを常時使用することは一つの理想でしょう。
しかし、今、空港会社は年23.5万回までの増便を提案しています。平成16年度実績より26%もの増加です。コース下の地域は高度の引下げと増便により環境悪化が懸念されるのです。平成10年8月の国・公団の説明資料には「地域への影響をできる限り少なくすること」と記述され暖かみが感じられましたが、今回は「法律による対策基準に及ばない・・騒音対策を変更する程の騒音影響にはならない」と冷たく突き放しています。
混雑緩和が理由なら 限定4000が道理
今回の国側資料も「着陸機の約半数の高度を・・4000フィート以上にしようとするもの」と記述しています。「約半数」という表現は前回から一貫して変わらず、この意味するところは“4000フィートを朝から晩まで常時使用する”ことに他なりません。
国は変更の主たる理由を「混雑緩和・遅延解消のため」と説明しています。そうであるなら「混雑時間帯だけ4000フィートを使用する」ことが道理でしょう。
1月12日に県当局と話し合った際、企画部次長は「4000フィートの使用は混雑時間だけと考えたいが・・」と述べ、室長は「国は山田町でそう説明しました」と述べています。そうであるなら、協議の前提として【混雑時間帯の資料提示】【将来にわたり混雑時間帯のみ使用の意志表示】があって当然ではないでしょうか。
混雑時間帯は4時間 しかも面的運用で対応できるのに・・
国側は、初回提案でも再説明でも「混雑時間帯が何時か」説明資料を提示していません。
朝日新聞(2005.11.3)は「午後・・混雑」と報道しました。本会の調査では「午後1時から5時までです」。その理由は検討資料1の論点7で述べてあります。論拠は、平成10年8月の運輸省と空港公団の説明資料「レイクス上3分間隔ならば何ら問題はないが、平均2分間隔の混雑時間帯には面的運用が必要」の一文です。時間帯別到着機数を調べた結果が上記の4時間です。
しかも、この「面的運用で22万回まで・・対応できるものとして(コースを)設定します」と千葉県や市町村に説明してきました。今回、まだ「20万回に近づく状況で」で変更を求めました。
何故でしょうか? 国の説明は、それほど信頼性に欠けるのか? 別に隠した意図があるのでしょうか?
国の意図は 4000フィートをメインルートに・・
国が説明責任を果たさないので推察すると、混雑しない時間帯も着陸機の大部分を4000フィートルートで降下させ、混雑時間帯だけ6000フィートを使う意図が窺えます。国の初回説明図のコメントに「赤線(注:6000フィート現行ルート)は、変更後においても、この飛行方法を行う航空機もある」と微妙な言い回しになっています。説明文の中でも「仮に全ての機材が4000フィートと仮定しても」「昭和60年当時と同程度」とか「現在と比べ2デシベル程度の増加(注:本会の指摘後、国は3.5デシベルと修正した)」と将来をにらんだ伏線を敷いています。
4 うるささ指数は湾岸並み
航空機騒音は、騒音の大きさと回数を組み合わせた「うるささ指数(単位記号W)」で評価されます。国側は、佐原市役所付近の指数を夏季56W、冬季59Wと算定し「対策基準70Wに及ばない」と解説しました。
うるささ指数は年間平均値を用いるので、この短期間数値が適切か否かは分りませんし、年間平均値の魔術については検討資料1の論点9で述べてあります。でも、せっかく国側が提示してくれた資料ですから、このデータを仮に適切として今後の予測を加えておきます。
先ず騒音回数が38%増(平成15年度運航実績と2015年度の増便予定数の比較でうるささ指数は+1.4W、さらに機材の半数が4000フィートになると+2.1W(全て4000フィートになると+3.5W)、従って、うるささ指数は60〜64W程度と推算されます。
参考資料として、千葉県が国に提示した羽田再拡張関連資料[固定局別航空機騒音の状況(平成14年度)]から、うるささ指数を抜粋すると、木更津市[畑沢66.4 貝渕66.2 大久保64.6] 君津市[坂田52.3 糠田60.8] 浦安市[高州60.3 当代島54.3]です。
この状況を改善するため、千葉県当局は湾岸11市と超党派でまとまり国と交渉しました。国土交通省も着陸高度を引上げるなどの修正案を提示し、双方が了解点に達しました。佐原の数値は、東京湾岸のうるささに匹敵します。
5 50の疑問点
国側は佐原市へ二度目の説明です。今回、関係者が“疑問に思う点”が明らかになったかと思いましたが、ほとんど答えがありません。以下50の疑問点を列挙します。
協議期間と手続き
1)市や町が市民・町民に周知し 疑問に答え 意見を聞く期間は どの程度考えているか
2)市民・町民の疑問について 国はどう答えるのか
3)地元了解をせかさず、夏ダイヤ改正を見送り、共生の理念で協議を続ける考えがあるか
航空機騒音の影響
1)会話に支障を起こさない航空機騒音のピークレベルは 何デシベルか
2)睡眠に障害を起こさない航空機騒音のピークレベルは 何デシベルか
3)病人や乳幼児など 昼間も睡眠や安静の必要な場合の 騒音限度は何デシベルと考えるか
4)騒音規制法の限度[特定工場:住居地域]最大値平均夜間50デシベルをどう考えるか
5)新幹線騒音の環境基準と同じ70デシベル以上の航空機騒音は 望ましくない騒音ではないか
高度・コース・騒音のずれ
1)着陸機の高度のズレは 佐原市上空で現在どの程度か把握しているか
2)開港時指定高度1800mに比べ佐原市の測定では平均1600mだったことを どう考えるか
3)佐原市付近の飛行コースと高度のズレを 監視測定し公表する考えがあるか
4)4000フィート高度の着陸騒音の高低幅(標準偏差など)は どの程度か
5)高騒音機ボーイング747の着陸騒音は ボーイング747-400と比べどれだけ高いか
飛行回数
1)高騒音機ボーイング747と747-400の到着便は 現在一日平均159機か
2)高騒音機ボーイング747と747-400の到着便は 10年後一日平均146機か
3)B滑走路延伸後 上記高騒音着陸機のA・B滑走路使用比率はどのように見込んでいるのか
4)レイクスに集合する東、南東、南方向からの到着機の割合は それぞれ何%ずつか
5)国は「発着枠は現状のまま」高度変更を提案、空港会社は増便を要請。矛盾しないか
6)レイクス付近と茨城南部は、数年後一日最大300機前後が飛ぶ この影響をどう考えるか
うるささ指数
1)レイクスポイント付近のうるささ指数は 現在、変更後、10年後で年平均幾らかになるのか
2)うるささ指数70WECPNL未満は 生活に及ぼす影響が無いと判断するのか なぜか
3)航空機騒音評価は年間平均値を用いるが、年間の日最大値を用いるべきではないか
暫定B滑走路供用開始時(7年前)の運輸省説明との相違点
1)7年前「レイクス通過平均2分間隔の場合だけ面的運用で処理」の説明は間違いだったのか
2)7年前 レイクスから1本の経路で「対応できる」とした説明は 見込み違いだったのか
3)7年前「年間22万回まで対応できる」今回「20万回に近づき変更が必要」は矛盾してないか
4)僅か2年余の面的運用で対応できなくなった理由は何か
5)7年前の説明が見込み違いになるほど 国の提案は不安定で信用できないものなのか
6)今回の着陸高度変更で 面的運用は廃止せず併用するのは 何故か
提案理由「混雑」
1)なぜ混雑時間帯の具体的説明をしないのか。混雑時間帯は午後1時から5時までか
2)年度別の遅延資料(便数・割合)の提示を求める。ただし空域混雑を理由とするものに限る。
3)レイクス高度4000フィートは、混雑時間外も常時使用するのか
4)レイクス4000フィート使用を 混雑時間帯だけに限定しない理由は何か
5)レイクス4000フィート使用を 低騒音機だけに限定しない理由は何か
提案理由「特にB滑走路に向かう高度処理に余裕が少ない」
1)新レイクス6000フィートからの降下は、国際基準の最適降下率8%にしたはずではないか
2)レイクスからパーチとバーディまで 水平飛行区間なしの斜め滑降をAIPで指示するのか
3)この斜め滑降は 直下の騒音低減を考慮した結果か 操縦技術上もクリアーできるのか
直進降下域外に6000フィート以下の着陸開始点を設定すること
1) 70デシベルを超える騒音の、区域の拡大や回数増大につながることを認めるか
2) 友納千葉県知事と交わした「県内通過6000フィート以上」の約束を廃棄するのか
羽田再拡張対応との相違点
1)羽田は 着陸高度を5000フィートまで上げ騒音を66デシベルまで下げる。その理由は何か
2)羽田再拡張について 千葉県はルートや高度の複数条件検討を求めた。本件では一つだけか
3)木更津など7局は52〜66WECPNLだが、季節変動や騒音値を考慮し高度を上げたのか
コース設定
1) 上下分離は A滑走路へは元レイクスからの降下に戻せば 高度引下げは不要ではないか
2) 前項の上下間隔が狭ければ 現レイクスを東へ1.8kmほど移設すれが可能となるではないか
3)上記の変更で 最も多い南からの進入機を元と現レイクスに振分けることも可能ではないか
4)ワーフポイントを活用し、混雑緩和が図れないか
5)主としてレイクス6000フィートからA滑走路、4000フィートからB滑走路へ向かうのか
6)レイクス4000〜パーチ〜A滑走路の使用頻度の%は どの程度か
7)将来、レイクス4000フィートからの着陸を主、混雑時だけ6000フィート使用をするか
8)面的運用は標準経路を数kmも外れている。それでも平行経路を設定できない理由は何か
別案の提示
1)環境影響評価法の考えに則り 複数案を提示すべきでないか
以上
【検討資料訂正】
国説明資料を誤解した部分がありました。レイクス北方の玉造-麻生コースはなく、ワーフポイント経由コースは変更ありません。お詫びして訂正します。(2006年2月9日)