稲毛民間航空記念館 開館25周年記念講演会

「奈良原式鳳号 製作記」

2014年3月16日 中澤愛一郎氏


 去る16日に千葉市稲毛にある「稲毛民間航空記念館」の開館25周年記念講演会「奈良原式鳳号 製作記」に行ってきました。

 この記念館の目玉はなんと言っても「奈良原式鳳号」の復元機です。日本の航空機創生期に、国主導の軍用機開発とは別に、この稲毛海岸で民間航空機の製作、飛行が行われていました。その中心となったのが奈良原三次、白戸榮之介、伊藤音次郎の3氏でした。

 この内、奈良原三次氏が明治45年5月に設計製作したのが、「奈良原式4号 鳳号」でした。この鳳号は日本各地を演示飛行で巡り、まだ、飛行機というものを見たことのない人たちを熱狂させました。

@中澤愛一郎氏略歴

 この「鳳号」の復元機の製作を依頼されたのが、この日講演を行った「中澤愛一郎氏」です。中澤さんは昭和22年生まれの66才で、「株式会社 日本モーターグライダークラブ」の代表です。

 父親の「中澤寛次」氏の影響を受けて、高校1年生から飛行を始め、現在まで、飛行時間は約15000時間にも及びます。この飛行時間は航空会社の路線パイロットなら、このくらいの飛行時間は珍しくないかも知れませんが、グライダーや軽飛行機の飛行時間としては、「超ベテラン」と言って良いのではないでしょうか。

 中澤愛一郎氏の講演要旨を書きます。ただ、私も素人ですので、良く分からない「飛行機は何故飛ぶのか」「飛行機に加わる力」の専門的部分は割愛します。

@講演要旨

 この話が来たときに、「ただ単に、飾るだけのものではおもしろくない」と思いました。そこで、「実際に飛ぶものをつくるのなら」と条件をつけました。しかし、言ってしまった瞬間から後悔してしまいました。同僚の三田隆道に相談したところ「よし、やろう」と言う事になり引き受けることにしました。

 この条件が了承されたので、製作を始めましたが、考えていた以上に大変でした。そもそも、「鳳号」は写真しか残っていません。探して、探して、ようやく見つかったのが、誰が書いたものか分からない「三面図」1枚でした。

 その内に、当時の名古屋空港に「スケールモデルがある」との情報があり、大利根飛行場から、仲間と共に、セスナ機を操縦して見に行きました。

 (写真は左が参考にした「三面図」、右が約100年前の「鳳号飛行大會」のポスターです。)

 しかし、本物の大きさが分かりません。そこで、人物と一緒に映っている写真から本物の大きさを類推しました。

 すると、かなり大きなもので、予定されていたこの記念館の展示スペースには、とても収まりません。そこで、翼長を本物の80%程度のものにすることになりました。翼面積は本物の約64%とすることになりました。

 次の大きな問題はエンジンでした。むろん、当時のエンジンはありません。色々考えて、セスナ150型機のエンジンを流用することにし、このエンジンを160万円で買いました。

 このエンジンが147Kgありました。このエンジンの推力から逆算して、全体の重量は500から550Kgとし、設計をしていきました。

 色々な苦労を克服しながら、7ヶ月製作に没頭しました。

 一方、昭和62年(1987年)11月8日の記念式典で、記念館前の広場で実際に動かすための、許可を航空局から得るための折衝を始めました。航空局としても、このようなことは初めてのことで、折衝は難航しました。

 11月8日には「滑走するだけ」との条件で、ようやく許可が出ました。ところが、当日は走っている内に、車輪が少し浮いてしまいました。この日は、航空局の人も来ていました。

 後日、航空局に呼び出され、「中澤さん、あのときは浮いているように見えましたが、あれは、飛んだのですか、跳ねたのですか。慎重に答えて下さい」と詰問されました。「跳ねました」と答えたところ、「では問題ありません」とのことでした。実際は浮いてしまったのですが・・・。

 翌年、昭和63年(1988年)5月に、大利根飛行場で、初めにして、唯一の飛行を行いました。私が操縦しましたが、飛ぶのかどうか心配しました。実際に離陸すると、安定した飛行だった。この時には、約10分間飛行し、高度は200mまで上昇しました。着陸も、自分で想像した以上にスムースな着陸でした。パイロットにとって、速度が遅いほど、着陸は楽になるのですが。

 この時も、航空局の許可を取るのに苦労しました。当時は、このような飛行に関する規則はなく、運輸大臣の許可が出れば、オーケーでした。

 (上の写真は講演の中で演示されたスライドです。右は大利根飛行場で飛んでいる復元「鳳号」です。左は操縦席の計器類ですが、中澤さん自身も「何の計器だったかな〜」とのことでした。25年前のことですから無理もありませんね。)

@記念館に展示されている「鳳号」
 この日の、講演会参加者は正確に数えたわけではありませんが、30人弱でした。参加者は復元「鳳号」が飾られている段の上に入れてもらい、実際の鳳号をなでることが出来ました。周囲を廻って、細部までじっくりと見ることが出来ました。翼などは布製で「よくこれで飛べたな〜」と感心してしまいます。


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