成田空港会社ヒアリングの報告
(2009年7月16日)

 ヒアリングには本会から13名が参加しました。
 会社側は行方共生部長他5名が参加しました。
 下記がその内容ですが、順番の入れ替えなどはありますが、ご承知おき下さい。ヒヤリングの時間は約2時間でした。

1, 今後の需要の見通しを聞かせていただきたい

 短期的にはきわめて厳しい状況。2010年3月期見通しでも発着回数を前年比+1.5%、航空旅客を同-4.5%、航空貨物量も同+1.6%としている。航空貨物は底入れしてきていると見ている。しかし、長期的には航空需要は伸びてくる。中国では旅行での航空機利用者は中国国民の約3〜4%と言われているが、日本は約15%である。中国は人口も大きく、今後日本並みに伸びるとすると、相当な需要となる。景気はアジアでは比較的早く回復するのではないか。

2, 「30万回に向け検討する」としているが、どの程度進んでいるのか、また、今後のスケジュールは

(ア) 飛行方式は
 飛行方式は基本的には国土交通省の所管であり、我々が言える立場ではないが、安全第1で、騒音を拡大させない方向で検討中と聞いている。

(イ) 騒音予測は
 飛行コースが決まらないとコンターは計算できない。国土交通省が飛行方式と飛行コースを発表し次第、取りかかれるように準備を進めていく。

(ウ) 駐機場の確保は
 30万回になるかどうかは分からないが、容量拡大に向けて、検討していく事で、地元と合意している。いずれにしても、駐機場は足りなくなることは確か。しかし、具体的な検討は回数の合意を得ることが先決。

(エ) 出入国管理施設は
 これも、基本的には国の関連施設で我々としては言えないが、今後の検討課題。関係機関と相談して検討していきたい。

(オ) 空港内の場内管制は
 これも基本的には国の管轄になる。

(カ) 貨物施設は
 今後、北側で千葉県の企業庁が造成している土地を手に入れるなどして、対応していきたい。



1・2項目についての質疑応答

守る会
「長期的に見れば、航空需要は増えると思うが、今の状況の中で、いきなり、会社側から持ち出した『30万回』にする必要があるのか。地元から『30万回了承』と言うお墨付きを取って、自由に増便できるようにする、と言うことではないのか。我々にしても『増便絶対だめ』と考えているわけではないが、騒音を増やすものについては反対せざるを得ない。それなりの対策を取ってもらいたい。」
会社
「増便の話は地元の経済から出た話で、『30万回』とは限らない。黒野顧問の話だけで『会社が持ち出した』というのはどうだろうか。需要見通しは2年前頃までは、こんな状況になるとは予想できず、当時は航空自由化推進などの方針が出て伸びるだろうと言うことになっていた。航空需要はアジアを中心に案外早く回復をするのではないだろうか。」

守る会
「航空需要は『10年後には首都圏の国際航空容量が4850万回で満杯になる』との見通しでたてられたものだが、緊急経済対策でも航空需要の見直しが言われている。この見直しは航空需要を下方修正する方向での見直しとなると思うのだが、どうだろうか。また、40ヵ国が乗り入れを希望していると言うが、来年の枠増加でどのくらいの乗り入れがまかなえるのか。」

会社
「見直しについては、現段階では分からないが、国土交通省で検討中と聞いている。来年になると成田空港と羽田空港で首都圏国際線が8万回分増えるが、今のところ、成田空港の2万回は航空交渉で65%程度埋まっている。この中にはエミレーツ航空などの新規乗り入れがある。羽田空港は夜の3万回が欧米各国の人気があり68%程度埋まっていると聞いている。」

守る会
「22万回の増便の時の約束で、『更なる増便は、地元と相談して』というのがあるが、『30万回』まで、一気にするのか、それとも、段階的にするのかどちらか。」
会社
「容量拡大については昨年の『成田国際空港都市づくり推進会議』で『成田空港で、どのくらいの容量拡大が出来るか』と問われて、検討し昨年3月の『成田国際空港都市づくり推進会議』で『30万回』について説明した。そして、今年1月の『四者協議』で『成田空港の更なる容量拡大の検討に当たっての確認書』を締結したところだ。今後、『30万回』を前提にした騒音コンターを作成し、地元と協議することになっている。」

守る会
「黒野顧問は航空セミナーで『私が30万回を地元の会合で初めて話したときに、「とんでもない」と怒られると思ったが、そう言う話は出なかった。』と言っていた。これから見ると、『30万回』は成田国際空港株式会社から出たものではないか。」

会社
「黒野顧問が言ったとしても、私たち共生部としては地元の方々と話しを煮詰めて、了解をしていただくことになる。」

本会
「飛行コースの問題は国土交通省と言うが、飛行コースを15度変えるという話が出ているが、これは、膨大な新たな騒音地域を発生させる。しかし、方式としてはこれをとらざるを得ないのではないかと思うがどうなのか。」

会社
「15度ずらすと言うのはICAOの勧告にある。しかし、世界の空港では平行滑走路でも色々工夫している。成田空港は空域も狭いのでどのような方式があるか検討している段階で結論は出ていない。しかし、『成田空港の更なる容量拡大の検討に当たっての確認書』の中でも『騒音を出来るだけ増やさず、安全を確保できる方式を』と約束されているので、これにそったものを考えたい。」

本会
「森田知事は『飛行コースを変えて30万回を目指す』とマニフェストで言っているが、今の話だと森田知事の考えは間違っていることになるがどうか。」

会社
「我々としては騒音地帯を出来るだけ増やさない方式を考えるしかない。」

本会
「現在でも、飛び上がってから飛行コースはずれていく。『30万回』になれば、ずれがさらに激しきなると考えざるを得ない。」

会社
「飛行コースには幅を持たせている。安全上などの場合以外にはこの幅を出ることはない。これを守っていく。」

本会
「15度変更になると、それ以上に30度・40度とずれが激しくなるのではないか。」

会社
「国土交通省も確認書の事項は承知しているので、そう言うことのないように国土交通省にお願いしていく。」

本会
「『30万回』は両滑走路を目一杯の15万回で使用することになっている。しかし、平行滑走路は『くの字』部分があり、A滑走路と同じような運用は無理。とすると、『30万回』は当初から『出来ない』と言うことになるのではないか。」


本会
「第3誘導路について、東京新聞では着工・完成時期について何も書いてなかったが、どうなのだろうか。」

会社
「『成田国際空港都市づくり推進会議』で説明するはずが、事前に記事になってしまって、今、地元の方々に謝罪にまわっている。推進会議で説明するまで待って欲しい。その後で守る会にも説明する。」

本会
「40ヵ国の新規乗り入れを全部受け入れたとして、どのくらいの増便が見込まれるのか。」

会社
「条件が色々あって予測は難しい。航空交渉はイーブンだから、日本の航空会社が運航したいと考えないと交渉はまとまらないし。」

本会
「今まで国土交通省や会社は『乗り入れ希望が40ヵ国もあるのだから、発着枠の増加が必要』と言ってきた。しかし、どのくらいの国が乗り入れられるかもはきっきりしない。乗り入れ希望国の中にはEUのブラックリストに載っているような所もある。発着枠拡大の理由にはならないのではないか。」

本会
「『30万回』にする場合に、運用時間を変えるのでないか、と心配しているがどうか。」

会社
「3月のフェデラルエクスプレス機事故の時にはご迷惑をかけたが、あのような場合を除いては、『30万回にするから』と運用時間を延ばすことはない。」

本会
「前回の容量拡大の説明会で『安全上、A滑走路については1日375回以上は飛ばしません』と約束した。今の説明ではこの約束は反故になるのか。また、平行滑走路の大型機材投入は『航空会社の考え方次第』と言うことだが、平行滑走路についても1日当たり175回という約束があるが、これも反故にされることになる。平行滑走路に大型機材が入ってくれば、騒音は激しくなるはずだが、会社の説明では『低騒音機の投入で騒音区域は縮小します』と言っている。本当にそうなるのか。」

会社
「1日375回については成田国際空港都市づくり推進会議で『容量拡大して下さい』と言うことで、その中で1日の回数を増やすことも含めて了承してもらっている。コンターを計算して引くが、実際に測定してみてコンターの外側で大きい騒音になっていれば、その時点で修正していくことになる。」

本会
「実際にコンターを修正することもある、と言うことか。」

会社
「コンターは大きめに計算するので、そう言うことはまずないと考えている。」

本会
「会社側は『コンター外の騒音が75WECPNLを超えていないから良いじゃないか』と言うが、住民は『騒音を減らしてもらいたい』というのが本当の気持ちなのだ。各地の裁判の判決でも75WECPNL以上を受忍限度として、超えるものに対して賠償を命じている。『民家防音工事をしているから良いではないか』と言うことではない。『民家防音工事をしても受忍限度を超えているから賠償せよ』と言うことだ。『発着回数をどうしても増やしたい』と言うことであれば、きちんとした対策を講じ、それでも75WECPNL以上になるところに対しては新たな賠償などの対策を考えるべきではないか。」

会社
「成田空港の場合には谷間対策など他の空港にはないことも行っており、コンターも大きめに引いている。」

本会
「芝山の住民が一番心配しているのは『平行滑走路でジャンボ機がどのくらい飛ぶか』と言うことだ。先ほどの説明では航空会社に任せていると言うことだが、これを成田空港会社で管理できないのか。」

会社
「どの機種を使うかは航空会社の判断だが、機材は小型化する傾向にある。また、成田空港の場合は騒音によって着陸料を決めている。これにより、ジャンボの比率もだんだんと下がってきているところだ。」

本会
「推進会議でも共栄と言うことを言っており、先日、『平行滑走路南端の激しい騒音直下に人が住んでいる状況は人道上も問題ではないか』と国土交通省課長とも議論したが、課長は『その問題は成田空港会社にお願いしてある』と言っていたが、どうなっているのか。」

会社
「難しい問題だが、地元自治体の方にもご努力をお願いしているが、相手のあることで、解決していない。先日は森田知事も訪問してくれた。」


3, 安全対策

(ア) 滑走路・誘導路上の忘れ物などはどの程度あるのか
「滑走路のタイヤ片などは月に5〜10件あるが、会社としては毎日点検している。」

(イ) 航空機事故時の対応(フェデックス事故の教訓から学ぶことは)
「フェデラルエクスプレスの事故の時には、まずは消火だったが、地元の方々も来ていただいて、30台以上で早い消火が出来た。A滑走路が閉鎖になったことで、平行滑走路だけで運用したために、ジャンボ機は利用できなかった。また、午後11時の運用時間を過ぎての運用も出て、地元の皆さんにはご迷惑をかけた。事故後の復旧は業者の皆さんの協力も得て、25時間で再開できた。しかし、今回の経験から教訓になる点もあったので、今後に生かしていきたい。」

(ウ) 強毒性伝染病発生時の対策は
「新型インフルエンザに対してはマニュアルに沿ってやってきた。特に、昨年から地域のホテルなども含めて『新型インフルエンザ対策協議会』も設立してあったので、水際対策についてもこれにそい、関係機関と連携を取って対処した。また、生活に影響が多い各事業所もガイドラインに沿って対処してきた。」

(エ) 空港内、特に貨物地区の混雑対策は
「貨物地区の混雑については、2006年に交通ルールを変えた。これにより事故も大分減った。」

4, 成田国際空港株式会社民営化の見通し

(ア) 完全民営化までのスケジュールに変更はあるのか
「民営化のスケジュールは国が決めることで、何とも言えないが、現国会に提出している改正案が廃案となれば、秋以降の国会に出しなおすことになる。」

(イ) 約束の周辺対策は完全民営化までは棚上げになるのか
「民営化されたとしても、私どもが現在行っている周辺対策についての変更はない。」

(ウ) 現在の世界的な景気後退の経営への影響は
「経済は水物だが、この経済状況の影響は非常に厳しいものになると考えている。」

(エ) 周辺対策の部門が縮小されているのでないか
「『成田空港サーバー』に載ったご意見に関しての質問かと思うが、『縮小された』と言うことはない。」



3・4についての質疑応答

本会
「新千歳空港で忘れ物が多いと言うことだが、工具などの忘れ物はないのか。これにタイヤが当たると事故につながるのではないか。」

会社
「午後11時に運用時間が終わると、多数の業者が入って補修などの作業を行う。しかし、作業には本社社員が2人ずつ付いて、工具の管理点検などを行っている。全ての作業が終わった段階で社員が滑走路の点検を行っており、また、朝の運用開始前点検で忘れ物がないように見ている。開港以来全くないとは言えないが慎重にやっている。」

本会
「先日の大韓航空機の尻餅事故でも、乗客の話では『ジェットコースターのように上下した。着陸後もバウンドした。』と言っている。これはフェデラルエクスプレス事故と共通点があるのではないか。成田空港でも風速の急変などが増えているのではないか。これに対するレーダーなどの対策は考えられないか。また、強毒性のものが空港外に拡がるのが心配。蚊などが媒介するものがある。対策はどうか。」

会社
「成田空港には風を感知するドップラーレーダーが設置されており、監視している。また、パイロットのウインドシェアー報告も着陸するパイロットに伝えるようにしている。しかし、予知できない風の急変はある。異常気象のためかどうかわからないが、このような風の急変が『多くなっている』と言う話は聞く。」

本会
「四者協議の約束で『完全民営化までに行う』と言う事項があるが、これは、『完全民営化まではお預け』と言うことなのか。完全民営化はいつになるか分からないではないか。」

会社
「約束事項のチェックを地元関係者と今進めている。『完全民営化まで』と言うことで、引き延ばすのではなく、出来るものは『完全民営化』を待たずにやるつもりだ。ただ、難しい事項もある。」

本会
「『周辺対策部門の縮小はない』とのことだが、新常務取締役を見ても昨年と違い、周辺対策担当がいないではないか。これは会社の姿勢を示しているのではないか。重点が空港の運営や拡大に重点が移っていることを示しているのではないか。」

会社
「勇退した常務がサーバーを見て『もう少しやれば良かったかな』と言っていた。『若い人に道を譲る』と言うことだった。『常務取締役のメンバーが若返った』と考えて欲しい。私も共生部長としてきちんとやっていくつもり。共生部は会社の中でも最大の部で、約70人いる。社員の10人に1人は共生部だ。」

本会
「空港内貨物地区での死亡事故以外はどのくらいあるのか。」

会社
「細かい資料が今はないので、後ほど出す。」

本会
「国土交通省が対策を検討しているようだが、制限エリア内で何であんなに事故が起こっているのか。今でも事故が多いのに『30万回』を言う。『安全対策はお座なり』という印象を受ける。空港内で働く人の話を聞くと、『着陸から20分ぐらいで出発する飛行機もある。その間に作業をしなければならず、非常に大変だ。そこで、事故も起こりやすい。時とすれば、運航に支障が出る事故もある』という。」

本会
「今年の騒音対策委員会でも副社長は『事故は絶対ないとは言えない』と言っていた。空港の外で事故が起こった場合に、『火災は水をかけても消えない』『人命救助は』などの問題があるが、この点はどうなっているのか。」
会社
「地域医療体制などの連絡も取ってる。危機感だけを強調するのも良くない。」

本会
「地域の会議でも事故の安全対策を要望する強い意見が出た。油火災に対応できる消防車などは配置されているのか。」

会社
「事故の時には周辺地域消防施設にある8台の化学消防車が出動することになっている。」

以上

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