機能強化計画公聴会における供述原稿
(2019年12月24日)


 こんにちは、成田空港から郷土とくらしを守る会の事務局長をしております、岩田公宏です。
 私は.成田空港、当時は三里塚空港と呼ばれていましたが、この建設計画が閣議決定された、1966年にA滑走路飛行コース南側直下にあります、県立松尾高校に就職いたしました。
 それ以来、53年に渡りこの空港問題に関わってきました。

 私達は成田空港の公害を拡大しない地道な発展に反対するものではありませんが、今回の機能強化に反対する理由の第一は、この計画が周辺地域の環境、特に住民への騒音環境への影響が非常に大きくなる事にあります。

 特に、空港運用時間が午前5時から、翌朝午前0時30分に拡大されることです。計画では三本の滑走路の南北でスライド制を行い、南北での静穏時間を7時間確保する、としていますが、この静穏時間の交代間隔も明らかにせず、しかも、安全運航上、風向きによって変更する、とのことです。

 この方式を世界で本格的に採用しているのは、ロンドンのヒースロー空港ですが、ヒースロー空港周辺の住民からは「運航方法をころころ変えては困る」との不満が出ています。

 このような不規則な変更に人の体が順応できないのは明らかです。

 これが、騒音下の人々の睡眠習慣をズタズタにして、睡眠不足を曳き起こし、心疾患やストレスによる各種の健康被害を増大させることは明らかです。

 世界の学者による研究・調査によりますと、「人間が健康な生活を営むには、7時間以上の睡眠が確保されなければならない」との学説でほぼ一致しています。

 ところが、準備書では、動物や植物については、膨大なページをついやしているにもかかわらず、住民の健康への影響については、ほとんど書かれていません。

 この事を踏まえれば、今年10月末から実施された、A滑走路の運用時間拡大も、A滑走路飛行コース直下と、谷間地区住民の方々の健康を著しく破壊することは明らかです。直ちに開港時の約束である午前6時から午後11時に戻すべきです。

 私たちの会は開港前の1972年に、当時の空港公団総裁と、航空局長立ち会いの下に、「航空機騒音に関する覚書」を取り交わしました。
 その中で総裁は「羽田空港並みの運用時間にすることは可能」と回答しました。具体的には「午前6時から午後11時」と回答したことに他なりません。これが、周辺自治体との約束となりました。

 さらに、C滑走路建設により、南側の横芝光町・横芝地区は、新たに、激しい騒音被害地域になります。
 色々な騒音対策を実施したとしても、現在の飛行コース直下地域と同様に、人口の減少に悩み、高齢化が益々進むことは明らです。

 もし、C滑走路建設をするのであれば、騒防法第一種区域に入ると予想される地域の集団移転などの、抜本的対策を考えるべきです。

 第二の理由は、計画が需要動向を精査したものではなく、「政府の『2020年に訪日外国人を4000万人に、2030年に6000万人に』という「希望的目標」に基づいたものになっている、と言う事です。
 みずほ総研は11月29日に「2020年の訪日外客数は3400万人にとどまる」との見通しを発表しています。つい最近、JTBも「約3400万人」との予測を発表しています。

 更に工事費用も、計画当初の2016年の発表では「滑走路建設で.1500億円」としていましたが、現在では、「滑走路などの建設で約5000億円、ターミナルの建設などの付帯工事で約8000億円」と、何と、合計1兆3000億円に膨らませています。

 これは、「大企業もうけのため、大金持ちのための工事」と言わざるをえません。

 これらの費用は、政府が財投融資などの低利資金を成田国際空港株式会社( NAA )に貸し付けて、後は、訪日外国人増でNAAが稼ぐ利益を当てる、としています。

 しかし、需要が伸びなかったり、世界景気が後退した場合には、これらの投資は大きな負債になって残り、結局、我々国民が、苦しい中で払っている血税で穴埋めされることになります。

 本当にNAAの利益がこんなに増えるのならば、騒防法第一種区域全戸の移転など、思い切った周辺対策費にまわすべきです。

 もし、どうしても訪日外国人4000万人や、6000万人が必要と言うのならば、騒音被害を拡大する首都圏空港の機能強化ではなく、地方空港を積極的に活用すべきです。その方が地方の活性化につながるはずです。

以下の部分は制限時間を超えたため、ほとんど、述べることが出来ませんでした。もう少し、早く話すべきでした。原稿を読んだ段階では収まっていたのですが)

 最後に、今回の準備書では全く触れていない地球全体の温暖化について、述べたいと思います。

 今回の台風による千葉県の強風被害、また、今、米国やオーストラリアなどで発生している大規模な山林火災など、地球温暖化が原因と見られる気候の大変動が各地で起こっています。

 私は魚が好きで、1日1食は魚料理を食べたいと思っているのですが、この所、魚が小型化しているのを実感しています。今や鰯やサンマが不漁で、高級魚となっています。
 明らかに海の環境に大きな変化が起こっているように見えます。
 学者の中には「海の環境変化が回復不能な段階に入りつつある」との警鐘を鳴らしている人も出始めています。

 もし、北極や南極の氷が溶けて、海水面が1メートル、2メートル上昇したら大変なことになります。
 例えば、台風による南東の強風と高潮や豪雨が重なった場合に、九十九里平野の川を遡った水が毎回周辺地域にあふれ、避難を余儀なくされ、田畑に海水が流れ込むこともあり得ます。

 そのような世界を私は見たくありません。しかし、このまま行けば、次世代の若者達は、その嵐の中に巻き込まれる事になります。

 人が航空機で移動するときに出す温暖化ガスは、鉄道を使った場合の20倍にもなる、とのことです。この事を考えた場合には、これ以上の航空機に起因する温暖化ガスは増やすべきではありません。航空機が出す温暖化ガスは、全体の3〜4%にもなる、とのことです。

 陸地での移動が多いヨーロッパでは、スエーデンの16歳の少女「グレタさん」が訴え、若者を中心に「短い距離の移動は、極力、鉄道などを利用しよう」という、「飛び恥」という運動が起こっています。

 日本でも、先日、浜松の高校生などが、「これ以上暑くなったら、野球が出来なくなる」と訴えてデモ行進を行いました。

 島国の日本では、飛行機を使わざるをえませんが、極力便数増を抑え、環境への負荷を抑えるべきです。今回の、機能強化計画はこの意味からも行うべきではありません。

 以上で、私の公述を終わります。


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