【声明】 騒音下住民の暮らしと命を守る抜本的な騒音対策の実施を
2015年10月
成田空港から郷土とくらしを守る会
オリンピック招致を機に、首都圏空港の機能強化が叫ばれています。
9月17日に開かれた四者協議会では(1)第3滑走路の新設を推進するための調査を早急に行う、(2)B滑走路を3500mに延伸すること、(3)空港運用時間を延長すること、の3点を検討することで合意した、とのことです。
この3点の内、当面は空港運用時間の延長について地元住民と相談する、としています。
7月30日の厚木基地第4次騒音訴訟の高裁判決では、午後10時から翌朝6時までの自衛隊機の飛行を禁止しています。裁判長は判決で「住民がこうむっている睡眠妨害の程度は相当深刻だ。」と述べており、損害賠償を命じています。
現在の成田空港運用時間は午前6時から午後11時です。静かな夜の時間は、基本的には午後11時から翌朝6時までの7時間しかありません。
現行の運用時間でも、厚木基地騒音訴訟判決に照らせば「非人道的な運用時間」になります。
その上、「カーフュー弾力的運用」で、一定の条件ながら、午後11時00分から同11時59分までの離発着が認められています。一部報道によりますと、この「カーフュー弾力的運用」をさらに拡大し、緩和する案が考えられている、とのことです。
このような「非人道的な空港運用時間」を、航空会社の利益を優先して、さらに拡大しようとする、もくろみは到底認められるものではありません。
また、国土交通省は希望的予測による将来の航空需要は「成田空港の現在の目標『年間30万回』をはるかに超える見込み」とし、第3滑走路とB滑走路の3500mへの延伸が必要としています。
しかし、成田空港の現状は予測とはかけ離れています。年間発着回数を見ますと、昨年度は目標26万回に対して、22万8220回にとどまり、今年度から「30万回可能」となりましたが、4〜8月までに9万8002回となっています。新規の路線開設もありますが、その一方で、羽田空港への路線移転や、撤退・減便も出ています。このまま推移すれば、単純計算ですが、今年度の年間発着回数は23.5万回を越える程度にしかなりません。
また、成田空港で来年度着工予定の高速離脱誘導路が完成しても、国土交通省は、ほぼ同時に、都心ルートの新設などで羽田空港国際線をさらに4万回増やす事を計画しています。
これが実現しますと、航空会社は成田空港路線を、利益率の高い羽田空港路線に移行する可能性が濃厚です。
2020年オリンピックで、一時的に発着回数が増えても、成田空港の年間発着回数が30万回に達する可能性は長期的に見ても「相当低い」と言わざるを得ません。
このような状況下で、周辺地域に新たな騒音地帯を生み出し、既存の飛行コース直下地域の騒音を増大させ、さらに、1000億から2000億円という(これも控えめの数字と考えられるのですが)膨大な国民の税金を投入する「第3滑走路建設」を進めるのは、国の財政状況にとっても「無謀」と言わざるをえません。
一方、甚大な騒音に苦しめられている周辺住民に対する対策は遅々として進まず、自治体は創意工夫をこらしていますが、飛行コース直下地域は人口も減り、老齢化が進む一方です。「B滑走路2500mへの北伸」や「年間発着回数30万回」の時に約束された騒音対策も積み残したままです。
さらに、騒音下住民が要望する「移転に見合った補償の増額、移転補償地区や民家防音工事助成区域の抜本的拡大、落下物根絶への対策、民家防音工事基準の格上げ」などは、不十分なままです。
また、成田国際空港株式会社(NAA)は国に対して、毎年70億円程度の配当金を払っているにもかかわらず、周辺地域振興や騒音対策に使える「周辺対策交付金」の「交付規定」を見直して、抜本的に交付金を増額する意向は全く見せません。
成田空港周辺地域の振興と活性化は当然必要ですが、「経済効果と企業の利益」のみを優先し、騒音地域住民の人権と生存権を無視した非人道的な「運用時間の更なる延長」や「第3滑走路新設」を許すわけにはいきません。
以上