「30万回の説明」とその問題点


 先月27日に成田空港会社に行き四者協議における「30万回への説明」を聞いてきました。その内容の概略は12月26日の出来事でまとめましたが、改めて載せたいと思います。

1、同時離陸は可能
 最初は国土交通省から、「A滑走路・B滑走路からの同時離陸は可能」との説明がありました。ただし、このためには、両滑走路の離着陸を管制する管制官の他に、両滑走路を離陸した航空機の間隔を監視する管制官が必要となります。このため、同時離陸の導入は2011年度になるようです。設備の新設や管制官の訓練が必要になると思われます。
 また、悪天候時の対応については、今後の検討になる、とのことです。
 これらのことからみると「可能」とはいうものの、「安全上のリスクはついて回る」と考えざるを得ません。

2、「混雑時」には南側への離陸で途中から飛行機の向きを左右に振る
 「混雑時」には南側に離陸した航空機を従来の約束のように九十九里浜まで直進させず、概ね、高度が6000フィートを超えた段階で、A滑走路離陸機は西向きに旋回させ、主に山武市上空を通ります。下図右のオレンジ色点線のコースになります。B滑走路離陸機は東側に旋回させ、主に横芝光町・匝瑳市上空を通ります。これは、同時離陸導入時ではなく今年10月に準備ができ次第導入する。
 「混雑時」についての定義を質しましたが、「国土交通省からの説明はなかった。」とのことで、要するに管制官が「混雑と思ったら出来る」と言うことのようです。この変更は「同時離陸導入時以降も適用される」とのことですから、「便数が増えてくれば、いつでも使える」と言うことになります。

3、ヨーロッパや北海道から来て南から着陸する時は早めに内陸へ
 これも「混雑時」との条件付きですが、ヨーロッパや北海道方面から飛んできて、南から着陸する(北風の時)場合は千葉県との約束を変更して、高度6000フィート以下で主に東庄町・旭市上空で高度を下げながら早周りをして太平洋に抜けるコースを新設します。上の左図の赤い点線のコースになります。
 30万回になれば、「常時混雑時間」になるわけですから、千葉県との約束を完全に破棄するのと同じになります。
 下に同時離陸導入時の飛行コース図を載せます。

 なお、記者会見説明資料によりますと、これらの変更は「地域への丁寧な説明を条件に了承された。」となっており、友納元千葉県知事との約束は事実上、「破棄された」ことになるようです。

4、2011年に25万回・2012年に27万回可能
 上記の飛行コースの元で、成田国際空港株式会社が示した「30万回」へのロードマップが下記の図です。

 これによりますと、今年度中に「への字」誘導路部分を改修すること、これで、着陸し誘導路を進行中の航空機が「への字」部分で後から着陸する航空機の通過を待つことがなくなる、とのことです。
 次に、2011年度に「同時離陸」が導入されると、駐機場の整備もありますが、「25万回」の離発着が可能になる、とのことです。
 そして、2012年に「平行滑走路と第2ターミナル駐機場をつなぐ新誘導路」が完成し、駐機場の整備が進めば「27万回」の離発着が可能になる、としています。
 さらに、駐機場の整備や燃料タンクの増設などが順調に進めば、「最速」で2014年度に「30万回」が可能になる、と言うものです。もちろん、この間にターミナル内の出入国管理施設やロビーなどの拡張も必要になります。
 説明にあたった成田国際空港株式会社の社員に「需要が見込めない場合はどうなのか。」と聞いたところ、「需要が見込めなければ、変更もあり得る。」とのことでした。当たり前のことですね。過剰投資は成田国際空港株式会社の経営危機に結びつきますから。
 下に整備計画図を載せておきます。

5、「環境対策」「地域対策」の概要

(1)騒音予測
 騒音予測コンターにつては、すでに別ページに載せてありますが、このコンターの特徴は階段状に先端に行くほど幅がすぼまっていることで、今までの予測コンターと大きく違っています。これについて質問したところ、「航空機の性能が良くなって、上昇率が上がっている。騒音を飛行コースの延長上に拡げないために、最初はフルパワーで上昇し、早く高度を上げる。一定の高度になったときにパワーを絞るので、騒音が急に小さくなるため。」との説明がありました。急角度で上昇するために、滑走路端近くではコンターの幅が拡がっています。
 第2の特徴は「年間発着回数が30万回」と現在の1.5倍になるにもかかわらず、騒音地域の面積がわずかに減少していることです。これは、現在の航空機騒音の計算方法の弱点と、私達は考えています。何回も指摘していますが、現行の評価方式では同じ音ならば、飛行回数が「2倍」になってもWECPNL値は「3」しか上がらりません。今回はこれに加えて、旅客機の小型化と低騒音化が影響してこのような結果になっています。騒音をエネルギーとしてとらえると、このような結果になるでしょうが、住民の感覚とはかけ離れています。エネルギーの量と「住民の感覚」・「心身への影響」との相関関係についての調査は未だ、不十分と考えています。

(2)地域対策
 「地域対策」としては16項目が挙げられています。これを表で載せておきます。

 この中で騒音下住民からみて注目すべき点を上げておきます。
 第1点目は騒特法で移転補償が受けられる「防止特別地区」について、「集落分断の実態をも踏まえ、関係市町の意向を最大限に尊重しながら(中略)見直しを行っていくこと(後略)」としていることで、いわゆる「道路1本で対策が違ってしまう」現状を解消する方向性を打ち出していることです。
 第2点目は防音施設について、その更新工事を「恒久化する」ことを打ち出したことです。今までは更新については「再助成」とか「再々助成」とか言っていました。
 第3点目は周辺対策交付金の使途を拡大する意向を表明したことです。これにより、柔軟な使用が出来るようになります。しかし、周辺対策交付金の算定基準を改正して、交付金そのものを増額する方向は今回も出しませんでした。成田空港会社によると「使用規定があるので・・・」と言いますが、「使用規定は社内規定ですから会社で変更できるはず」と聞いたところ、「これは、国の航空燃料への税金に準じて規定されているもので、国土交通省の許可がなければ出来ません」とのことでした。
 第4点目は午後10時台の発着回数を10回以下とすることを今後も続ける、としたことです。

以上

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