第47回騒音対策委員会での本会質問と回答


第47回騒音対策委員会質問事項と回答

成田空港から郷土とくらしを守る会

1、「成田空港の軍事的利用は絶対に行わない」と約束した『取極書』の約束を遵守すること

 浜田靖一防衛大臣は昨年12月9日の衆院安全保障委員会で,共産党赤嶺政賢議員質問への答弁で,成田空港の軍事利用について「自衛隊が多様な空港、港湾を使用できるようにしておくことは重要であり、また、日頃から当該空港、港湾を使用した訓練を重ねておく必要がある一方、自衛隊による使用に様々な制約、制限が課されている空港、港湾もあります。具体的な事例として、例えば、下地島空港については、いわゆる屋良覚書等により自衛隊機による使用が制限されているほか、成田空港については、一九七二年の取決めにおいて軍事的に利用することは絶対に認めないとされております。」とし、また、「我々とすれば、地方自治体に対して御説明をしていきたいというふうに考えております。」と答弁しました。

 さらに、福田参考人は「自衛隊が既存施設を平素から柔軟に利用できるよう、関係省庁や地方自治体、関係団体などから御協力いただけるよう努めてまいりたいと考えております。」と答弁しました。

 しかし、浜田防衛大臣も触れられているように、成田空港(当時は新東京国際空港または三里塚空港)には昭和47年(1972年)4月15日付けで,当時の本会会長でもあり、三里塚平和塔奉賛会会長兼日本山妙法寺三里塚道場主任でもあった「佐藤行通」と、「丹羽喬四郎」運輸大臣、千葉県知事職務代理者 千葉県副知事「川上紀一」、新東京国際空港公団総裁「今井榮文」との間で『取極書』(注:1)が結ばれております。

 この『取極書』では第三条第一項で「第三条 平和塔等の遷座、移転にあたつて、乙等は次の事項を約束する。

 「新東京国際空港は純然たる民間空港であり、安保条約およびこれに基づく地位協定の存在にもかかわらず、これを軍事的に利用することは絶対に認めない。その意味においてマックのチヤーター機(注;2)の離着陸もこれを認めない。」とされており、一切の軍事利用は行わないと取り決めています。

 さらに、第四項では「別紙第二の主眼点について十分な政策再検討を加え、関係諸団体との間に別途協議する。」としております。

 この第四項に基づき、『航空公害に関する交渉覚書』(注:3)が、 新東京国際空港公団(現、成田国際空港株式会社)総裁 今井榮文氏と本会(当時は「三里塚空港から郷土とくらしを守る会」)事務局長 円道寺政直 との間で、1972年9月20日に、航空局長立合の元に結ばれています。 

 この中でも、空港公団側は「新空港の運営にあたっては、誠実に騒音対策に取り組み地元住民に迷惑をかけないよう対策を行なって行く。一、新空港は、純然たる民間航空のためのものであり、軍事利用させることはない。
 軍事施設と思われるものの設置も一切認めない方針である。MACのチャーター機問題についても約定どおり処理する。又、民間機優先の原則は、新空港においても貫かれており、このため百里空域は、御要望どおり、北方に縮少して民間機との接触の危険がないようにする。」と回答しています。

 浜田防衛大臣は、このような「新空港は、純然たる民間航空のためのものであり、軍事利用させることはない」とする約束があることを承知しながら、成田空港を自衛隊や米軍が自由に使用出来るように「地方自治体に対して御説明をしていきたいというふうに考えております。」と答弁しています。

 この発言は『取極書』と,その付属文書である『航空公害に関する交渉覚書』に違反する行為であることは明白です。

 成田空港が一度でも国家間の紛争の際に軍事的行動に利用されれば、軍用施設として爆撃やミサイル攻撃の対象になることは明らかです。

 このような事態になれば、成田空港そのものが被害を被り、利用する旅客をはじめ、周辺地域住民や空港内で働く人々が犠牲になることは必然となります。

 本会のホームページ「成田空港サーバー 取極書のページ」にあるように、当時の平和塔は,現在のA滑走路南端脇にあり、この平和塔がある限り、A滑走路が完成しても、航空機の離発着には利用できない状態でした。

  これを憂慮した「千葉県土地収用委員会会長」の斡旋を受け入れて、当時の「運輸大臣」と「新東京国際空港公団」及び、「千葉県知事」と交渉をつづけて、『取極書』の締結に至ったものです。

 これらの状況を考慮し、非暴力での空港建設反対運動を行っていた民主勢力や日本山妙法寺や平和塔奉賛会や本会などは交渉の席に着き『新東京国際空港の軍事利用は絶対に行わない』と約束したものです。

 また、当時の空港周辺住民の中でも,空港建設に賛成する住民も含め「平和利用のための空港なら、建設もやむを得ないのではないか」との意見が多数でした。

 以上の経緯から斉藤鉄夫国土交通大臣や熊谷千葉県知事や田村成田国際空港株式会社(NAA)社長は、国からの自衛隊や米軍からの成田空港利用要請があったとしても、これを断り、開港時の約束を遵守する事を再度約束してください。

回答:

国交省
 成田空港においては、昭和 47 年に交わされた「取極書」において、「新東京 国際空港は純然たる民間空港であり、安保条約およびこれに基づく地位協定の 存在にもかかわらず、これを軍事的に利用することは絶対に認めない。」とされ ていることなどを踏まえ、自衛隊や米軍からの成田空港利用要請に対する受け 入れ可否については、慎重に判断しております。

千葉県
 昭和47年に取り交わされた取極書については、現在も有効であるものと考 えています。

NAA
 
NAA といたしましては、今後も取極書等の約束は守っていくという認識に変わ りはございません。
 また、取極書を含めた成田空港の建設の経緯等については、 NAA のみならず、国・千葉県もそれぞれしっかりご理解頂いているものと認識し ております。

2,『更なる機能強化計画』の内、B滑走路の北伸と第3滑走路の新設はコロナなどによる需要低迷を見るとき、計画の見直しを行うべきである

 次に「さらなる機能強化計画」についてですが、新型コロナウイルス感染症の影響もありますが、当初計画の年間発着回数50万回の達成見込みは大幅に遅れ、最近の予測によりますと、「50万回」に達するのは約20年後の2042年頃とのことです。

 これから見ますと、「B滑走路の北伸」と「第3滑走路の新設」を急ぐ必要はありません。

 この両滑走路の工事を一時凍結し、「本当にこの計画の必要性があるのか」も含めて,再検討すべきではないでしょうか。

 今、行うべき事は、ターミナルなどの老朽化した空港内施設の再編や改修ではないかと思います。

回答

国交省
 成田空港の更なる機能強化は、我が国の国際競争力強化や訪日外国人受入れ 等を図る観点から必要不可欠な事業であり、今後の需要増加に的確に対応でき るよう、着実に進めていく必要があると考えております。

NAA
 NAA としては、新型コロナウイルスの影響は甚大であり、コロナ影響前の水準 まで回復するには相当程度の期間を要するものの、我が国においては、国際線・ 国内線ともに政府による水際緩和や国の支援等により、観光需要・ビジネス需 要が確実に回復期に入っている状況です。
 加えて、世界の航空需要は、今後も増大していく見通しであり、首都圏の中長期的な航空需要も、引き続き増大していくものと見込まれております。
 更なる機能強化については、中長期的な航空需要に対応するために必要な施 策であり、また、我が国の成長戦略の一環として、首都圏空港の更なる機能強 化を着実に進める必要があるとの観点から、国からの財政支援も頂いているこ とから計画どおり進めて参ります。
 C 滑走路・ B 滑走路延伸の早期完成に向け、 引き続き丁寧かつ着実に進めていき、1 日も早く滑走路を供用できるように努力 して参ります。

3,1月7日の爆破予告事故の対応に見られる。国土交通省とNAAの対応を再検討し、緊急時の対応を再考すべきである

 去る1月7日に起こったジェットスター・ジャパン機への爆発予告電話ですが、このトラブルに対する国土交通省や成田国際空港株式会社(NAA)の対応は,あまりにもお粗末でした。

 9日の「CBC news」(注;4 1月9日の出来事)によりますと、成田空港に爆破予告電話があったのが、午前6時18分でした。所がこの件がジェットスター・ジャパンに連絡されたのが同6時53分だった、との事です。

 この間にジェットスター・ジャパン501便は同6時35分に離陸してしまいました。

 万が一、この爆破予告が本物だった場合、何時、爆発・墜落が起こってもおかしくない状態でした。

 このような場合には管制官なり,国土交通省成田空港事務所なりが、501便の離陸を止めて、乗客を避難させ、機体を他の運航便に影響しない場所に移動させ、安全確認を行うのが原則ではないでしょうか。

 国土交通省や成田国際空港株式会社(NAA)の危機管理体制が機能していなかった、と言わざるをえません。

 この国土交通省や成田国際空港株式会社(NAA)の危機管理体制についての検討が行われた、と言う報道は今もってないようです。

 今回のトラブルで,成田空港の危機管理体制の杜撰さが,世界中に明らかになったことになります。

 国土交通省と成田国際空港株式会社(NAA)の危機管理体制責任者などの所在はどうなっているのでしょうか。お答えください。

回答

国交省

 関係する空港会社や航空会社においては、国の指針等に沿って対応が取られ ていたことを確認しております。
 また、本件事案への対応については、手順や 体制の詳細を類推させないこと、模倣を誘発させないこと等の理由から、詳細 についてのお答えは差し控えております。

NAA

 対応については当局にも報告し、国の指針等に沿って対応が取られていたこ とを確認頂いております。
 爆破予告のような不法妨害行為に関する情報については、これを防止するた めの手順や体制の詳細を類推させないこと、模倣を誘発させないこと等の理由 から、詳細についてのお答えは差し控えさせて頂いております。

4、同一集落の分断について

 「更なる機能強化計画」によって、騒特法特別防止区域が拡大されていますが、成田国際空港株式会社(NAA)は「線引きに当たって,集落の分断はしない」と表明してきました。所が,ここに来て集落が分断されている事が明らかになり,同じ集落の中で移転補助の対象になる人と,ならない人の分断が明らかになっています。

 このような分断は成田国際空港株式会社(NAA)の最初の説明と食い違うものです。

 最初の説明の通り、同一集落は同じ区域に統合し、全ての人が不利益を被らないよう線引きのやり直しを行うべきと,考えますがお答えください。

回答

国交省

 成田空港の更なる機能強化に伴う騒特法の防止特別地区の変更に際しては、 集落の一体性に可能な限り配慮するとともに、地域の実情も踏まえ、範囲が設 定されたものと認識しています。
 また、集落のほとんどが移転対象となる区等 において、少数の方のみが結果的に対象外となる問題、いわゆる「一戸問題」 に対しても、関係者間での協議を重ねた結果、移転に対する補助制度が創設さ れたことなど、地域分断を解消する様々な取り組みが行われているものと認識 しています。

回答

千葉県

 騒特法の防止特別地区は、Lden66 デシベルのコンターに、基づいて設定する こととされており、これまでも集落の一体性に可能な限り配慮して地区設定を 行ってまいりました。
 今回の地区設定に当たっては、昨今の人口減少、高齢化により、祭祀や地域 行事などの集落における活動が、「組・班」を超えて「区」等の大きな単位で行 われている実情を踏まえ、集落の捉え方を変更するなど、騒特法の制度の範囲 内で可能な限り運用の拡大を行ったところです。

回答

NAA

 更なる機能強化における騒音対策範囲の前提条件となる予測騒音コンターは、 発着回数 50 万回時という相当先の将来を見越した幅広い範囲で対策範囲が設定 できるようお示し、その上で、これまでの地域の皆様からのご意見を踏まえ、 従来の運用に囚われずに対策区域案を作成すべきではないかと NAA からも千葉 県に対し伝えて参りました。
 住民の皆様等からのご意見や近年の集落の実情等を踏まえ、千葉県において どのような対応ができるか検討した結果、騒特法に基づく区域設定に当たりま しては、防止特別地区の設定基準について集落の捉え方を変更し、これまでの組・班という単位から、区等の単位まで拡大して防止特別地区が設定されたと ころです。
 この騒特法による区域設定により、集落の大半が移転対象となる防止特別地 区に指定され、結果的に対象外として残されてしまう、いわゆる「一戸問題」 が生じましたが、この問題に対し、国・千葉県・関係市町・NAA の四者で協議を 重ね、関係 3 市町を事業主体として、移転に対する新たな補助制度を構築する 事で、2020 年 3 月 27 日の四者協議会において合意し、2020 年 4 月から運用開 始されております。
 こうした取り組みについて、地域へ丁寧な説明をし、住民の皆様の不安の払 拭に努めて参ります。

5、A滑走路の午後11時以降の利用は、騒音下住民の健康被害を考え、開港時の「午前6時から午後11時」に戻してください

 深夜早朝時間帯の航空機騒音は,住民の睡眠を妨げ、長い年月には、心疾患などにかかるリスクの増大などの影響があることは,内外の健康調査(注;5)で、明らかになっています。

 航空会社の利便性を優先するのではなく、周辺住民の健康と命を守るために空港の運用時間を開港時の約束である「午前6時から午後11時まで」に戻すべきであり、これは,国土交通省と成田国際空港株式会社(NAA)の強い意志で実現すべき事柄です。

 次のダイヤ改正の時期に成田空港の運用時間を「午前6時から午後11時」に戻してくさい。

回答

国交省

 夜間飛行制限の変更については、2018 年 3 月、航空局、千葉県、空港周辺 9 市町、空港会社で構成される四者協議会において、発着時間を 6 時から 24 時ま でに変更することが合意されております。
 延長される深夜時間帯の運航を低騒 音機に限定することや内窓等の防音工事の充実を図るなどの対策を講じること で、周辺住民の皆様への負担を軽減することができるものと考えています。

NAA

 夜間飛行制限変更は、訪日外国人旅客に利便性の高いダイヤ設定を可能とす るとともに、LCC の高頻度運航、航空貨物のネットワーク拡大等を可能にし、観 光立国を目指す政府目標への貢献、激化する空港間競争を勝ち抜くうえで、必 要不可欠な施策です。
 また、新型コロナウイルスの影響により、旅客便の運休・ 減便が多くなっているものの、国内外の市民生活、生産活動を支える必要物資 の航空輸送は活発に行われており、成田空港がこうした需要に応え重要な社会 インフラとしての役割を果たすためには、引き続き、24 時までの運用時間(夜 間 1 時間延長)は必要だと考えております。
 あわせて環境対策の実施が必要と認識しており、内窓設置工事の申請を、1 件でも多く頂けるよう周知に努め、延長する時間帯の運航機材を低騒音型機に 限定する等、周辺地域の生活環境保全に取り組んで参ります。

以上

 なお、下記に参考資料と注記事項のURL などを,書いておきます。

 注;1 http://naritaairport.sakura.ne.jp/

     archives/torikime.html

 注;2 http://naritaairport.sakura.ne.jp/archives/

     mactoyuubin.html

 注;3 http://naritaairport.sakura.ne.jp/

     archives/oboegaki.html

 注;4 http://naritaairport.sakura.ne.jp/23nen1gatu1.html

 注;5 http://naritaairport.sakura.ne.jp/tyousarinku.html


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