2011年騒音制御工学会秋季発表会の感想
望ましい夜間騒音は屋外で Lnight40dB、暫定目標55dB(欧州WHO)
2011年9月15日の出来事でも書きましたが、15日と16日に東京で「騒音制御学会秋季研究発表会」が開かれました。この研究会に参加してきました。
画期的な事は、私の知る限り、騒音制御工学会で「騒音による健康影響」というセクションが取り上げらでたのは初めてです。しかも、トップセクションとして開催されたことです。
発表された論文は以下の4本でした。
(1)交通騒音の健康影響と欧州夜間騒音ガイドライン | ○松井利仁(京都大) |
(2)環境騒音による心臓血管系への影響一欧州での疫学調査と今後の課題一 | ○宮川雅充(関西学院大) |
(3)騒音による健康影響をめぐる近年の動向 | ○影山隆之(大分県看大) |
(4)我が国における各種基準値の課題一健康影響の視点に基づく考察一 | ○松井利仁(京都大) |
内容は、日本での研究もありましたが、欧州での研究成果の解説が主でした。しかし、詳しく知ることが出来ました。
解釈を間違っているところもあるかも知れませんが、私の理解できる範囲で、ごく簡単に重要な点を書いておきます。
1、夜間騒音は虚血性心疾患発症のリスクが高い
夜間騒音による健康への主な影響は、睡眠不足が主因となる高血圧などの虚血性心疾患発症リスクの増大である。発症リスクの上昇は“60 L day“(当時“L night ”の測定値はなかった)から始まる。
2、健康を維持する睡眠は最低8時間必要、そのためには夜の静穏な時間が連続10時間必要
健康な生活を維持するために必要な睡眠時間は最低8時間。これを確保するためには夜間の連続した静穏環境が10時間必要。
特に、幼児や高齢者や妊婦や病気を持つ人や変則時間帯勤務者には、10時間以上の連続した静穏時間帯を確保しなければならない。
3、欧州夜間騒音ガイドラインは屋外で L night 40dB
以上のことから欧州世界保健機関(WHO)は2009年10月に夜間騒音ガイドラインとして、 屋外で L night 40dB、暫定目標値 L night 55dB を公布した。
なお、“L night”は夜間の等価騒音レベルを示す。また、住戸による遮音効果は日本では平均“25db(A)”とされたが、日本の木造家屋の遮音効果はもっと小さい。なお、欧州の夜間騒音ガイドラインでは住戸による遮音効果を平均“21db(A)”としている。
4、生涯死亡リスクは1万人で2人、しかし、騒音下では100倍にも
我が国における交通騒音による生涯死亡リスクは全国では、約1万人に2人(10-4)で火災や中皮腫による生涯死亡リスクと同じ程度。交通事故によるリスクよりもかなり低いといわれる。
しかし、交通騒音にさらされる人たちだけで見ると、リスクは約100倍になる(10-2)と考えられ、交通事故の生涯死亡リスクよりも大きくなる。