成田空港を軍事利用させないための千葉県への要望と回答・話し合い要旨


千葉県知事 森田 健作 殿

         2015年11月30日

三里塚平和塔奉賛会       
成田空港から郷土と暮らしを守る会

成田空港を軍事利用しないための要請について

 三里塚平和塔奉賛会は、千葉県土地収用委員会会長の斡旋を受け入れて、千葉県知事と交渉をつづけてきた結果、当時の運輸大臣、千葉県知事、東京国際空港公団総裁と、1972年(昭和47年)4月15日に「取極書」をとりかわし、その第3条で、4点の事項を約束するとしました。

(1) 新東京国際空港(当時)は純然たる民間空港であり、安保条約およびこれに基づく地位協定の存在にもかかわらず、これを軍事的に利用することは絶対に認めない。

(2) 新東京国際空港の騒音対策については、各種対策に努力する。

(3)周辺農民に対して現在用地買収未済の地主およびやむをえず集団移転を余儀なくされる地主に対して、その個々の要望を聞きその移転補償問題の解決に誠意をもって対処する。

(4) 第二項、第三項の細目については、要望する主眼点について十分な政策再検討を加え、関係諸団体との間に別途協議する。

 そして、第4条で、「本約定に関し、特に定めなき事項があったとき、または、疑義を生じたときは、別に協議する」、となっています。

 しかるに、9月19日に強行採択された安保関連法の審議のなかで、「取極書」に反すると思われる事態が生じています。そこで以下の点について要請します。

1.「取極書」の約定をまもるために、県としてどのように努力されているか明らかにしてください。

 【回答】最初に県の基本的立場は「取極書」は今後も尊重すべきである、と言う事だ。防衛省からも情報提供を受けた。

2. 成田空港の軍事利用とは、民間機で武器弾薬等の物資を運ぶこと、自衛隊員を輸送することなどは、これに該当すると思いますが、どう考えますか。

 【回答】自衛隊の活動が「軍事的」かどうかは、防衛省が判断すべき事と考えている。

3. 2004年から2006年までのいわゆるイラク復興支援活動に於いて、成田空港から武器弾薬等を輸送していないという根拠を示してください。
 なお、日本共産党の辰巳孝太郎参議院議員の「武器弾薬なども民間航空会社が運んだということでよろしいですね」との質問に対し、中谷防衛大臣は、「民間の航空会社と契約をして運んだ」と答えています。
 また、情報公開による防衛省提出の契約記録によりますと、成田空港を使った輸送が複数回あったことが確認されています。

 【回答】確認できていない。

4.「軍事的利用することを認めない」という約定に反する状況が生まれており、「取極書」の約定事項の第4条に基づいて、4者による協議の場を設定してください。

 【回答】国が「軍事利用ではない」と言っているので、協議の場の設定は必要ないと考えている。

以上


質疑応答

高橋勲弁護士「私は当時、この取極書の作成にもかかわった。文案の作成も佐藤行通氏とも共に考えた。当時の千葉県の土地収用委員会から、仲介があり話し合いに応じることになった。当時は県の空港対策室が担当した。このような経過を踏まえて、千葉県としての「軍事利用は絶対にしない」との立場に立つかどうかを聞きたい。今の回答ではその点が曖昧。もう一度、検討したらどうか。」

田中副課長「先の回答は総論的な立場を言っている。当時の経過は、用地問題で国と地元の方々との間で、解決の糸口を見つけるために仲介したと聞いている。」

高橋弁護士「そのことを前提にして、聞きたい。イラク復興支援時の航空自衛隊の派遣については、2008年に名古屋高裁が『航空自衛隊の行動は、それが、米軍への輸送であっても、戦闘行為の一環であり、憲法に違反する』との判決を下している。国は勝訴し、控訴できずに、この判決は確定している。安保法制が成立し、自衛隊の海外派兵が現実となる中で、千葉県は一層の緊張感を持って当たって欲しい。名古屋高裁判決について、千葉県として検討したのか。」

成田空港振興課「国の方で、検討する事柄ではないか。千葉県としては検討したことはない。」

高橋弁護士「重要な判決なので、是非、検討して欲しい。」

丸山県議「一方が『疑義がある』と言っているのだから、4条にあるように4者の協議を行うべきではないか」

田中副課長「国が『約束を守っている』と言っているのだから、その必要はないのではないか」

小松前県議「千葉県と国は同格の立場で『取極書』を約定している。国は成田空港からの輸送を認めている。千葉県としてはこの事実をどのように捉えているのか」

田中副課長「国土交通省に確認している。窓口として国土交通省を通して事実確認をしている」

高橋弁護士「国会での辰巳議員の質疑(8月26日の参議院平和安全法政特別委員会9月10日の参議院内閣委員会)を読んでいるか。読んでいなければ是非、読んで欲しい。『窓口』と言うが、「取極書」は県が主体的に仲介して結ばれたものだ。県が主役なのだ。県民に説明する義務があるのではないか」

田中副課長「県としての立場で対応している。議事録は読んでいない」

成田空港振興担当者「県は国に軍事利用はなかったと確認している」

武田上人(日本山妙法寺)「成田道場は40年以上、成田空港の平和・安寧を祈ってきた。11月22日には平和塔14周年の法要があった。この席には NAA からも出席者があった。ベトナム戦争当時、羽田空港には多数の軍事チャーター便が入っていた。このような空港にしてはいけないと取極書で『一切の軍事利用は行わない。MACチャーター便にも使わせない』と約束をした。今回この約束が守られていない恐れがあるのだから、県としても4者の協議が開催されるように働きかけて欲しい」

岩田(成田空港から郷土とくらしを守る会事務局長)「この『取極書』や『交渉覚書』があったから、米軍機の成田空港使用も1度だけでになっている、と記憶している。県はこの事実を把握しているか」

谷が崎(当時の共産党現地対策本部長)「『国土交通省が言っているから』では県民の公僕としての役目は果たせないのではないか。これからはテロの危険もましてくる。県民の命を守る立場から対処して欲しい。県は『軍事利用』を、どう捉えているのか」

田中副課長「民間機が何を運んでいるかを把握することは難しく、分からない。問い合わせすることも出来ない」

小松前県議「参議院の特別委員会質疑で、中谷防衛大臣は『武器・弾薬を運んだ』と言っている」

田中副課長「確認してみる」

斉藤和子共産党衆議院議員「新聞報道では、国民の8割が『テロの脅威が高くなる』と答えている。これが国民の意識だ。それだけ身近な問題になっている。県民をしっかりと守る立場に立つ必要があるのではないか」

成田空港振興課「米軍機が使ったという事実(2011年11月21出来事参照)は知らなかった。国が『適切な使用をしている』と言っている以上、それを、信頼するしかない」

高橋弁護士「中谷防衛大臣は『アントノフや日本航空を使った。武器・弾薬も含まれている』と言っている。

川副共産党千葉県委員会「名古屋高裁だけではない。自衛隊の内部文書でも『純然たる、武力行動だった』と書いている。そのような状況で成田空港が使われている。そうであれば、成田空港が攻撃される、重大な危険性がある」

小松前県議「本当に県民の命を守る、県民の立場に立つことが必要ではないか」

田中副課長「危険にさらされることは本意ではない。ただ、事実確認をしないといけない」

小松前県議「今後の千葉県としての態度を聞いている。今回のこの話し合いだけでは済まないと思う」

田中副課長「『成田空港の軍事利用は絶対に認めない』と言う立場で私たちはやっている」

小松前県議「と言う事は『成田空港の軍事利用はない』という考えなのか」

成田空港振興課「私たちは何度も防衛省に確認している」

高橋弁護士「もう一度、話し合いの場を設ける必要がある、と考えるのでよろしく」

以上


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