成田空港周辺の騒音問題に関する要望と報告
千葉県知事 堂本暁子 様
2008年7月29日
成田空港から郷土とくらしを守る会
会長 木内 昭博
貴職は羽田空港の国際線を年間6万回に拡大することについて「深夜早朝時間帯に千葉県の騒音を増やすことのないように。」(6月20日国土交通大臣との会談)との要請を行いました。
しかしながら、成田空港の容量拡大については「成田空港には無限の可能性がある。」(5月20日、成田空港30周年記念レセプション挨拶)として、押し進める立場をとっています。
空港容量の拡大は当然のことながら、騒音の増加をもたらします。しかも、成田空港周辺の航空機騒音は県内の羽田空港関係飛行コース地域の航空機騒音とは比較にならない激しさで、私たち、成田空港周辺の住民は日夜その騒音に悩まされています。
ところが、貴職は成田空港の容量拡大による航空機騒音の増加については一言半句も触れようとしません。
このような貴職の態度は成田空港周辺騒音下住民にとっては、同じ千葉県民に対する態度として納得できないものです。
私たちは貴職が成田空港周辺住民の苦しみを理解して千葉県民として平等・公平に対処し、成田空港の航空機騒音被害軽減のため、努力していただくことを切に要望いたします。
千葉県への要請行動の報告
7月29日午後3時から千葉県議会棟の応接室で要請行動を行いました。要請行動には日本共産党の小松 実県議に同席していただきました。
県からは総合企画部の空港地域振興課と環境生活部の大気保全課の方5名が応対してくれました。
まず、本会側から要請の趣旨について、上記要請書と6月に出した 声明「容量拡大議論の前に、騒音下住民への科学的な健康調査と被害住民への補償制度の創設を」に基づいて、「容量拡大をうんぬんする前に成田空港周辺住民への騒音の影響を真剣に考えてもらいたい」と要請しました。
@「『無限の可能性』とは単に容量の問題だけではない」
これに対して県からは「成田空港周辺の騒音が激しいことは言うまでもない。知事の『無限の可能性』というのは単に容量拡大が『無限』と言ったわけではなく、『成田空港周辺地域には無限の可能性がある』という意味だ。羽田空港との兼ね合いでは『もっと増やせるのではないか』との議論がある。30万回はあくまでも可能性の話だ。」との話がありました。
@「健康調査については勉強させていただきたい」
会の方からは「成田空港周辺住民の騒音被害をきちんと把握してほしい。そのためにも、科学的で疫学的な健康調査をすぐに実施してほしい。容量拡大をどうするかはその調査結果に基づいて考えるべきではないか。」と要望しましたが、県としては「調査については全く考えていなかった。」とのことで、本会が「是非、早急に検討・実施してほしい。」と要望したのに対して、「検討するかどうか言える立場にない。今後、健康調査について沖縄県の調査、EUの調査などを勉強したい。」と述べるに留まりました。
@「騒音の軽減は航空機の技術革新に頼るしかない」
容量拡大が騒音の激化に繋がることは議論の余地のないところですが、成田空港周辺の環境基準の達成率が改善されていないことについて県は「達成率はあまり改善されていないが、内容的には少しよくなっているのではないか。」と述べ、「根本的には低騒音機などの航空機の技術革新がないと改善は難しい。」と答えました。本会から「容量拡大で便数が増えれば、結局同じではないか。」と質したのに対し、「それはそうなのだが・・・」と歯切れの悪い答えでした。
@「地元との約束事項の中でなかなか進んでいないものがある」
共生大綱時の約束や民営化の時の「覚書」などの地元との約束事項について本会が「置き去りにされている。県は本気になっていないのではないか。」と質したのに対して、県は「少しずつは前進しているが、残っているものには難しいものが多い。これがなかなか前に進まない。」と述べました。
@国際線の需要予測は過大ではないのか?
本会から、「国際線の需要予測は2005年にたてられたものを元にしているが、現状から見ると、これは過大な予測になっているのではないか。こんなに容量の拡大は必要ないのではないか。森中社長も『羽田再拡張と成田の平行滑走路北伸で、10年や15年の需要はまかなえる。』と言っている。」(6月20日の出来事参照)と質したに対して、「需要予測は国で作っているもので、県としてはそれに基づくしかない。ただ、東京都はさらなる羽田空港の容量拡大を言っている。」と述べました。
@「県は騒音問題を取引の道具にするのではなく、県民の立場に」小松県議
小松 実県議は「県は騒音問題を羽田と成田の綱引きの道具と考えるのではなく、騒音被害に苦しむ県民の立場に立って真剣に考える必要がある。」と述べました。
以上が約1時間にわたる要望行動の概要です。