「運用時間制限緩和案」公開質問書に対する回答要旨

2013年2月8日 成田国際空港株式会社本社


回答者 国土交通省航空局 航空ネットワーク部 首都圏空港課 成田国際空港企画室 専門官 佐々木勇幸氏
    成田国際空港株式会社 共生・用地部門 地域共生部 担当部長 月岡 孝夫氏

本会参加者 副会長 鵜澤、 事務局長 岩田、 理事 馬込


回答 (なお、まる1、まる2、などの修飾数字は文字化けするので(1)(2)・・・としています。)

質問
1、今回の運用時間制限緩和による、飛行コース直下住民の心身に対する影響をどのように考えているのでしょうか。
2、影響がないと考えているならば、その根拠を示して下さい。

【会社回答】

1と2をまとめてお答えしたい。平成15年に共生財団が実施した、A滑走路直下地域住民に対する健康調査では影響はなかった。また、成田市が行った調査では睡眠に影響がある事が認められている。今後、周辺の自治体から調査の要望があれば、実施を考えたい。地域のみなさんに負担をかけていることは十分認識している。

3、 騒音下住民に、地域ごとに、直接考えを聞く機会を設ける気持ちがあるでしょうか。

【会社回答】

地元の説明会は市町と十分に相談をして実施し、ご理解を得られるように努力したい。

4、昨年12月14日の「成田空港の離着陸制限(カーフュー)の弾力的運用について(案)」の第8項目で「オープンスカイの実施を念頭に置きつつ出来るだけ早い時期に実施」としていますが、今回の「運用時間制限緩和」と、「オープンスカイ」はどのような関係があるのでしょうか。

【国土交通省回答】

今年の夏ダイヤから航空自由化(オープンスカイ)が実施される。乗りいれや就航地点は今までの2国間交渉ではなく、航空会社と空港の自由な交渉で決められる。これからは空港間の競争が激しくなる。少しでも、「使いやすい空港」としてアピールしていかなければならないので、これまでの運用時間の約束は守りながら、柔軟性を持たせ、成田空港をアピールする事から提案した。

4、貴社が出している「20102012年度NAAグループ中期経営計画」の「プレゼン資料30ページ」の考え方と、今回の「成田空港運用時間制限緩和」との関係について、説明して下さい。

【会社回答】

平成21年12月の成田空港圏自治体連絡協議会(2009年12月16日出来事参照)で運用時間制限緩和の提案を受けた事、当時、羽田空港再拡張を受けて、「成田空港の可能性はどうか」との質問を受けて発表したものである。今回は、23時〜翌朝6時の約束を守ることを前提に、カーフィーの限定的な改善を提案したもので、プレゼン資料とは別のものである。

5、 現行の「緊急またはやむを得ない場合」の措置と、今回の提案はどこが違うのでしょうか。昨年12月14日の「成田空港の離着陸制限(カーフュー)の弾力的運用について(案)」の第1項目(1)(2)(4)(6)の場合は、従来も受け入れているもので、ここで取り上げる意図は何でしょうか。

【会社回答】

現在は急病や燃料不足や機材トラブルや、成田空港の気象条件などでやむをえない場合にのみ、厳格に運用時間外の離着陸を実施してきた。今回はこれに加えて、出発空港のトラブルや気象条件などで、遅延した場合も受け入れることになる。これが(1)(2)(4)(6)の場合だ。

6、 時間外に離着陸を受け入れるかどうかの判断は、どこで、どのように決定するのでしょうか。航空会社の申し出を全て受け入れるのでしょうか。

【会社回答】

航空会社から「遅れる」「早まる」との申請があり、これを、成田国際空港株式会社が受け入れるかどうか判断する。航空会社側の責任による遅延などは認めないこととなる。 

7、 朝の時間帯(5時〜6時)の到着機受入の判断はどのように、誰が行うのでしょうか。

【会社回答】

6の場合と原則的に同じ事になる。到着が早まると航空会社が判断した場合は速やかに連絡するように航空会社を指導する。

8、 説明の中で、「1ヶ月の回数が20〜30回」と説明していますが、根拠を示して下さい。また、「受入回数に制限はない」と言う事でしょうか。

【会社回答】

今回の処置は、大雪や台風などのやむをえない場合を想定している。そこで、その月の状況によって回数は異なる。LCCの運航状況から見て、(1)(2)(4)は日常的ではないので発生回数は低い。あえて言うならば、1ヶ月に3回程度。(3)はLCCの玉突き遅延になるが、これは1ヶ月で5回程度と考えられる。しかし、今後LCCが増えると増えので、あえて言えば1ヶ月当たり15回程度。(5)の早期到着はペナルティーとの関係があるが、あえて言えば1ヶ月に8回程度。これにより、1ヶ月20〜30回程度と考えている。しかし、あくまでも試算である。

9、 離着陸料1回分のペナルティーを徴収し、騒音地域の住民に還元する、とのことですが、対象世帯数では何世帯になるのでしょうか。また、20〜30回として、1年間で金額にしてどの程度になるのでしょうか。

【会社回答】

あくまでも試算だが、20〜30回として、年間で8000万円程度と考えている。これを、騒防法第1種地域のある6市町に均等配分する。


質疑応答

【守る会】

一般的な自治体などの夜間騒音規制値は住宅地域で40デシベル、工業地域でも60デシベルとなっている。しかし、この間の騒音体験でも、低騒音機でさえおおよそ76デシベルとなっていた。自治体の規制値は睡眠に影響があるから住宅地の野外で40デシベルとしているではないか。空港からかなり離れたところでも60デシベル以上にはなる。一般的には静穏な時間が8時間あれば、大体の人は健康を維持するにたりる睡眠が確保でる、と言う事で言われる。ヨーロッパのWHOでは、「8時間の睡眠を確保するためには、静穏な時間が10時間必要」と言っている。ヨーロッパの調査では、睡眠中の騒音が10デシベル上がると、血圧が14%ずつ上がるという報告もある。空港周辺住民は開港以来、静穏な時間が7時間で、成田空港に協力してきた。しかし、今回の提案は「静穏な時間を5時間」にするというもので、常識をはずれているのではないか。騒音と健康についての権威である学者は「夜間の騒音はWECPNLやLdenなどの平均化した数値では測ることが出来ない。単発騒音の規制が必要」と言っている。項目1と2はこのようなことをどう考えているかを聞きたかった。

【会社】

日頃から内陸空港と言うことで迷惑をかけている、と思っています。その中で、法律で定められた民家の防音工事もきちっと進めている。また、30万回時の約束もきっちとやりたいと思っている。今回、説明している中でも、健康について心配する意見をたくさんいただいている。これについては、弾力的運用が始まった時点で、関係自治体と相談して、健康調査をしたいと思っている。

【国土交通省】

今回の提案は運用時間の約束を変更するものではない。ダイヤ設定そのものを変えるものでもない。実施後の検証も行い、成田国際空港株式会社と自治体が相談して健康調査を行ってもらいたい。

【守る会】

早朝の到着便であるが、かなり遠くから来るものもある。それについて、成田国際空港株式会社の方で「これは適当・不適当」の判断は出来るのだろうか。

【国土交通省】

偏西風の影響で早く着くのは冬場が多い。恒常的に待機しているようなものは、適当でないと判断し、除外する。あまり何回も旋回していると、お客さんも「何かあったのか」と心配するので、そのような場合には許可したい。

【守る会】

印象としては、早朝の方が基準が緩くなる印象を受ける。

【会社】

航空会社の一番の使命は定時運航だ。早く着くことが目的ではないが、それでも、早く着いてしまうことがある。しかし、着陸料が倍になるペナルティーがあっても、航空会社が「早くおりたい」という判断をしたものについては、受け入れることになる。後に事情も含めて弾力的運用の趣旨に該当するかどうか検証し、便名も含めて公表することになっている。

【守る会】

九十九里浜では5時50分頃から旋回が始まる。これを、緩く認めるのであれば、事実上の運用時間短縮になってしまうのではないか。ペナルティーがあるにしても、旋回の燃料費と天秤にかけて「降りよう」という判断になるかも知れない。これでは歯止めがなくなる。

【守る会】

オープンスカイの交渉の中で、羽田空港再拡張との絡みで、成田空港の運用時間を「延ばしてくれ」と言う、話が出てきていたのか。

【国土交通省】

担当でないので、はっきりしないが、交渉の中では「成田はこのような条件の中で」と言う事でやっている。しかし、成田空港も「このような柔軟的な対応をしてますよ」とアピールをしたい。

【守る会】

首都圏の枠で考えれば、あえて、成田空港の時間帯枠を緩和しなくても、海上ルートを使う、羽田空港の深夜・早朝時間帯枠で対応可能、と考えるのだが。

【国土交通省】

真夜中は羽田空港を使うことになる。オープンスカイで航空会社が空港を選ぶ時に、成田空港を選んでもらうための今回の緩和である。

【守る会】

では、今回の緩和でどのくらいの航空会社が成田空港を選ぶのか。それほど影響があるとは思えないのだが。

【国土交通省】

具体的な数字は分からない。

【会社】

ダイヤで便数を増やすと言うことではない。「午後10時台は10便」という約束も守る。ただ、やむを得ない理由で10分、15分遅れを受け入れて欲しい、と言う事だ。今までは、厳格に適用してきた。お客さんを乗せて、スポットをでても、車輪が滑走路を離れる時間が1分過ぎになる場合でも、スポットに戻っていた。

【守る会】

いつも「やむを得ない」とつくが、「やむを得ない」理由が全部個条書きにされていて、住民に示されているわけではない。だから、住民から見ると、疑心暗鬼にならざるを得ない。

【会社】

今回の提案は「前後に1時間の幅を持たして欲しい」と言う事だ。

【守る会】

それでは、早朝の場合も、5時ちょっと過ぎに「着陸したい」と航空会社が言ってきたら、受け入れざるを得ないことになるではないか。

【守る会】

良く「運用時間が厳しいからLCCが成田空港から逃げていく」という言い方がされているが、LCC側は運用時間問題も言っているが、「成田空港の着陸料が高い。施設使用料も高くて使いにくい」と言っている。成田国際空港株式会社側の努力が十分でないのではないか。

【会社】

マスコミが言っていることについては、私たちは関与するところではない。成田国際空港株式会社としては着陸料も引き下げてきているし、努力はしている。

【守る会】

マスコミが言っていることではなくて、LCCトップが「着陸料が少し下がっても、他が上がる。専用ターミナルも200億円かけると言うが、もっと安くして使用料を安くしてもらいたい」と言っている。

【会社】

担当は違うが,成田国際空港株式会社としてもLCCの要望は聞いているし、,その結果、着陸料の値下げもやってきた。

【守る会】

LCCの玉突き遅延で,2から3空港さかのぼって,申請が適正であるかどうかの判断が日常的に出来るのか。

【国土交通省】

最初に遅れがでた段階で報告を受け、逐次,報告を入れてもらい、最終的に判断できるように,航空会社にも指導をしたい。「客が遅れた」などは航空会社の事情でこれは受けない。気象条件などで遅れた場合は様子を見る。

【守る会】

安全上の理由も,整備で「ここをもうちょっと点検したい」ということで遅れた場合も「安全上の理由」に入ってしまうと、数が増えてしまうのではないか。

【会社】

バードストライクの場合などは,航空会社にきちんと整備してもらわなければいけないので、これは,当然理由となるが,検証はやっていく。

【守る会】

下総地区は一言で言えば「今度の提案は、とんでもない」というのが一致した意見だ。だから、説明会も拒否をしている。今回の増える分の睡眠に及ぼす影響は甚大だが、これによって、騒音値はどうなるのか。また、コンターに変化があるのか。

【会社】

コンターは予測で引くものである。我々が見なければいけないのは,騒音が騒防法に指定された区域内で守られているかどうか、と言う事だ。検証はしていく。

【守る会】

現在の騒音のエネルギーを平均化する評価方式では,今回の飛行回数の増加では、騒音対策区域や移転補償区域は拡がらないだろう、と考えているが、評価値がどうなるのか知りたい。下総地区は「一部の人が騒いでいる」と言うものではない。現地に行って声を聞いてみて欲しい。今回の提案は是非,撤回してもらいたい。

【国土交通省】

繰り返すようだが、運用時間を拡げる、と言う事ではないので、理解して欲しい。

【守る会】

しかし、住民は「なし崩しになる」と考えている。「やむを得ない」という理由がはっきりしない。

【守る会】

寝ているときに目が覚めてしまう、と言うのは非常につらい。数値で測れるものではない。直下でない人にはなかなか分からない。30万回の時にも説明会は行われたが、「あのときの我々の反対意見はどうなったのだ。説明会は国土交通省や成田国際空港株式会社の『アリバイつくり』ではないのか」という人もいる。ペナルティーも6市町に均等配分する,と言うのもおかしな話しだ。実際に被害を受けている人に配分されないのか、と言う意見もある。各地の騒音訴訟の判決で国は補償金を支払っている。2010年7月の普天間の判決(2010年7月29日出来事参照)では過去5年分として、75WECPNL地区の原告には1日100円、80WECPNL地区の人には1日200円として賠償金を支払っているではないか。今回の分も含めて、実際に騒音で悩んでいる人たちにどのくらい届いているのだろうか。幸い、今回のコンター見直しで移転補償区域に入った下総地区の高倉の3人の人は、ストレスで病院通いに明け暮れた。芝山ではB滑走路が供用開始になって、騒音が降りかかってきてから「騒音がしてくる時間になると,頭痛がしてきて鎮痛剤を手放せなくなった」と言っていた。こういう人がいるのに、今回の緩和案を持ち出すのは常識外れではないのか。このような事を国土交通省や成田国際空港株式会社がどう考えているのか聞きたいというのが,1・2項目の質問の意味だ。健康調査については「要望があれば,考えましょう」と言うが,「要望があるからやる」のではなく、被害を発生させている側が,自ら実施し、「被害はありません」などを証明するのが責任ではないのか。ある学者は、相川町長が「運用時間を午前0時から翌朝5時までにする」と言うことを提案した段階で、「これは人体実験と同じだ」と私へのメールで書いていました。私たちは成田空港の発展を妨げようとしているわけではない。今までも制限時間7時間で,35年間も協力してきた。開港当初に周辺市町村が要望していた制限時間は,大体が9〜8時間だった。それを、当時の運輸省は「国際空港なのだから7時間にする」と決めてしまった。ドイツのフランクフルト空港では,認められていた深夜・早朝の17便が,最近の裁判の結果、全面的に禁止されている。オープンスカイで成田空港を宣伝したい気持ちも分かるが、周辺住民に負担を押しつけて「使いやすい空港」を宣伝するのではなく、他の面、例えば着陸料を引き下げるとか,施設使用料を安くするなどの努力で,やっていただきたい。これが本当の「共存・共栄」ではないか。

【会社】

先ほどのコンターの話しだが、誤解があると困るのだが、今回の緩和ではWECPNLの数値そのものは変わらないだろう。便数を10倍するというのは,午前6時台でも午前5時台でも同じになるので。ペナルティーの均等配分であるが、配分されたものをどのように使うかは,市町の判断になる。

【国土交通省】

ペナルティーは第1種区域のある6市町に均等に分配する。6市町くまなくご迷惑をあたえている、と言う意味で均等配分する。

【会社】

「実績づくりになる」との意見があると聞いていますが、下総地区にも是非、直接に説明させていただき、ご意見も伺いたいので、説明会を開かせていただきたい。健康調査の件ですが、成田国際空港株式会社はやらない」と言っているのではなく、成田国際空港株式会社がやると,みなさんに信じていただけるかどうか分からない。そこで、共生財団などを通じてやる、と言う事も考えられる。「継続的にやらないと意味がない」との意見も出ていたので、市町と相談していきたい、と言う意味です。

【守る会】

お金は出すが、口は出さず、学識経験者も含めた第3者機関に任せるというやり方もあるではないか。

【会社】

そう言う面も含めて市町と相談する、と言う事です。

【守る会】

それは、「緩和を認めるなら、健康調査もやる」と言う意味なのか。疫学的な健康調査をやって、その結果「影響はこうこうだから、運用時間延長はどうでしょうか」というのが順序ではないか。

【会社】

そういうことではないが、そのような相談も含めて,意見を聞いて進めていきたい、と言う事なのだ。

【守る会】

30万回時の直下対策と、今回の「ペナルティー金」を一緒にする、と考えているのか。

【国土交通省】

それは全く別です。

【会社回答】

直下対策については千葉県や市町と相談して,どのようにするかは合意している。今回のペナルティーは全く別になる。

以上


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